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2005年9月26日

粗利

 どんな役割を担うのかリスクはどの程度かによって業界の粗利が決まってくる。
量販店は経常利益を4%代に乗せる為27%の粗利は欲しい。尤もアメリカの株主はこれでは満足しないからアメリカ量販店の粗利はさらに高いことは言うまでもない。だからアメリカでは経常利益10%を出すのが経営者の仕事だ。話を元に戻してオランダの輸出専門にやっている仲卸でも35?40%の粗利である。 EUの国々へ輸出する場合は25%、セリ場で仕入れ代行だけをする他のことは何もしない場合で10%の粗利をもらう。理由は即日決済だからだ。この10%に銀行の借り入れ金利やプロの目利き料も含まれる。

 日本の仲卸はあの小分け作業を見ていると箱から出してピッキングまでするのが仲卸の仕事だから、最低でも15%ないと社員の退職慰労金積み立てまでの経費を捻出できない。花は季節指数が高いので社員のみだったとしたら残業手当(25%増し)、深夜手当て(50%増し)で利益は飛んでしまう。社員の構成を派遣社員やアルバイト、パートをいれて考えていかなければならない。

 さて卸だが地方卸売市場の10%、中央卸売市場の9.5%の手数料、これらは現在合法的なカルテルで認められている。
売上高経常利益率をみていくと1%に満たない会社が殆どだ。これは考えなければならない。花の生産には多数の中小の生産者が頑張って存在している。花屋さんも頑張っている。だから多数と多数を結びつける卸の機能は十二分に果たせる素地があるわけだ。であるにもかかわらず売上高経常利益率が1%未満であるというのは経営がなおざりにされているということではないか?
加工食品メーカーは数が絞られてきた。スーパーマーケットも系列化され会社自体は店舗数とは裏腹に少なくなってきている。このような中にあって加工食品卸は経常利益1%を確保している。会社として活躍できる素地がありながら花の卸は経常利益で1%の利益を稼ぎ出すことが出来ないのは無駄をしているからだ。会社に価値を与えていない証左である。ではどのようにすればよいのか、

?コストダウン
?地元の為の卸

以上の2点を集中的に行うことによって消費者の為の卸売会社として再出発することが必要である。消費者の為の地産地消であり消費者の為に国内外のブランド産地を買い付けてでも取り扱う必要がある。いずれも自社が地域の消費者の為に存在することを忘れてはならない。
また粗利に話を戻すとして、では生産者粗利はどのくらいになっているのか・・・
需要が少なくて売りあぐんでいると想定しよう。それは消費者価値が下がっているということだから自分の花を売ってくれる量販店の粗利目標が25%以上だとすると生産者も粗利が25%以上となる目標をたて、経常利益4%を確保できる販売を意識することが必要だ。
世の中はコカ・コーラでさえも自社で値段をつけることが出来ない。需給バランスによるマーケットに価格は委ねざるをえない。これを20世紀後半から始まった潮流、ダイナミック・プライシングという。これがメーカーである。農業者にもコカ・コーラ目標は当てはまる。
まずは最悪を考え利益を出す生産を行う必要がある。

投稿者 磯村信夫 : 17:58

2005年9月19日

若い世代に花き業界を託す

 日本は農産物に補助金を付けているのだが、戦略を明確にしてそれに則った助成をするならまだしも、相変わらず一定の条件さえ満たせば助成金を出すのではそれは前世紀のやり方だ。現在、インドまでのアジア圏で輸出補助金を付けているのは台湾、中国の雲南省政府、インドである。他は例えば韓国やマレーシアなど運賃の助成をしたことがあったが、現在はしていない。日本で問題になるのは運賃だ。だいたいがスポット輸出なのでIATAの基準からしてどうしても割高になる。昨年の11月、ASEAN首脳会議が日本で開催された。日本はアジアの一員として生きようとしているのだから、外交上は上手く進んでいないものの、農産物の輸出と言えばアジア圏で一定のところというのが基本になろう。もう少し広げてAPEC諸国ということであろう。日本はどうも外交の基本戦略が見えないが、農産物の輸出も政府の方針に合わせて補助金を付けるのであれば付けることが必要だ。

 さて、弊社の例で恐縮だが、花き業界には大きく分けて二種類の人間がいる。一つは花き産業で働こうと花き産業を意識して働いている人たち。1990年以降に入社したり、他業界から転入した人が多いであろう。もう一つはそれを意識せず、花の生産や花市場、あるいは仲卸、そして花屋さんに入って働いている人たちである。何となく花業界に入った人は、他の産業との比較や他の経済界のことなどをわかろうとしないし、わかっていない。もちろん以前から花き産業に入り井の中の蛙ではいけないと、社会の中の一つの経済活動が花き産業だと意識している人はいるが、本当に少ない。現在社内でめきめき頭角を現している人たちは、自分が働いている花き業界という一業界は生鮮食料品花き業界であり、嗜好品の業界であり、天候に左右されるが商品回転率と限界利益を追求する業界だということを彼らは知っている。もちろん為替にも敏感で、一般常識は一般企業のサラリーマン並には備えている。こうした若い人たちが新しい日本を作ってきている。これは花き業界も同じである。

 輸出補助金の話に戻ると、基本戦略を練るのは1970年代生まれの人がやるべき時代になっている。それは役所も花き業界も同じだ。時代がそのように動いている。

投稿者 磯村信夫 : 17:59

2005年9月12日

十条の花屋さん

 選挙が終わった。自民党が圧勝したのには様々な理由があろうが、大事なことを一つに絞って集中して行ったことによるところが大きいと思う。スーパーストアダイエーも青果の品質にこだわり、店を立て直そうとしている。特に所帯の大きい組織では、大切なことに集中し一つ一つ成し遂げていくことが必要である。

 さて、8月の末に十条という街に行って花屋さんを見てきた。十条という所は埼京線で赤羽から池袋方面に向かって一つ目の駅である。歩いて1時間で回れる範囲に10軒の花屋さんがある。こんなに花屋さんが密集しているのは東横線の学芸大学駅近辺―ここには15軒ほどある―に次いで多分都内で2番目ではないか。

十条は下町で仏花が良く売れる。まだ暑いから殆どキクを中心とした品揃えであったが、どうもターゲット顧客を年代層の高いところに置いている。私が見て、この雰囲気だったら花を買いたいなというお店は1軒しかなかった。でも、残りの9軒は営業している。いずれも冠婚葬祭の花をやっていないとしたら、年間3千万円売れるかなという店が殆どである。やはり平均して1日10万円、年間3,500万円は売上が欲しい。そうでないと時代や変化に合わせてお店を変えていくことができない。花屋さんは八百屋さんや果物屋さんと違って、素材販売をしているわけではない。技術を加味して小料理屋や出来合いのおかずを売っている花のお店だ。だから残っていけるわけだが、洋服屋がそうであるとおり、個人経営が残れるところは少ない。再度経営の見直しが必要だと思う。大変失礼だが、十条の花屋さんたちの約半分が10年以内になくなる可能性が高い。それは倒産ではなく後継ぎがいないため、高齢になって辞めていくからだ。近所にスーパーができて、花売り場が設置されるとその流れは加速する。個人の花屋さんは自分の料理人としての腕前を磨き、特徴を出して売れる店作りを是非お願いしたい。

投稿者 磯村信夫 : 18:02

2005年9月 5日

大田花きの前向きな改善はセリシステム投資

今度の衆議院選挙の国民の反応を見ていると、改革への要望がいかに強いかががわかる。かなり前向きに打って出ることができるところまで改革が進んだ企業が多いが、行政の構造や私たち中小零細企業の構造は更に改革する必要があると見ているわけだ。当事者になるとなかなかそうは行かない。いわゆる総論賛成、各論反対となりがちだが、改革ムードの中でセーフティネットを引きながら、一気に改革を加速するというムードが漂っている。何かわからないが、とにかく前向きに打って出るということであろう。

どこの業界でもそんな風で業界というのはゲゼルシャフト、目的を持って作られた組織体の集合だから、本来の役割は何か、新しい時代に合った機能は何か。維新を行う必要があるし、物余りだし、豊かですぐ飽きてしまう商品の寿命は短いから、顧客密着し、提案して打って出ようとしている。一方、ゲマインシャフト(構成員の幸せを一義に考える組織・家族・社会など)で、セーフティネットや職業訓練を行えばよい。花き業界を見ていても「類は友を呼ぶ」で、新たなサプライチェーンが幾つも形成され始めている。産地・運送店・卸・仲卸・小売りによる消費者基点の特定サプライチェーンである。

かつてはまさに調達物流であったが、大田花きの営業では小売店の要望を受けて生産委託して販売することが珍しくなくなってきている。これは21世紀型といえるであろう。市場法が変わり、かつては100%「取引所」を運営するについて、その時代に合わせた明確なルールを規定していることが多かった卸売市場法が、2009年4月からの委託販売手数料自由化が決定されて「取引所」というよりむしろ卸としての自由度を高める、いわゆる「商社」的・「問屋」的な役割を果たせるよう法の規制緩和があった。行政府が卸売市場に証券取引所のような役割を担わせることは難しいと感じ始めたのは、1993年食品流通改善促進法が始まった頃からではないか。だから99年相対取引をセリ入札と同等の手法として位置付けたり、2005年買い付けを自由化させたのであろう。

しかし、大田花きは1990年、セリをコンピュータ化することによって業界の発展に寄与してきた。また今日のアルスメール市場を見てもセリの重要性は維持されており、大田花きはここでセリのシステムを一新し、セリ場にいながら各自のパソコンで購入できるようにしたり、ライブネットオークションも可能にする。これは矜持だが、今までどおり日本の花の指標を生み出していきたいと考えているからである。

投稿者 磯村信夫 : 18:05

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