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2009年6月29日

地域の産業 農家の売り方作り方

農協と取り組む場合がほとんどだが、町と取り組んで産地振興をする場合もある。町と取り組んで、今では町の職員が出荷計画や会合のときの司会をしてくれている場所がある。それが水戸や大洗のすぐそばの涸沼で名高い茨城町である。私=作る人、あなた=流通させる人、そして主に小売店のあなたを通じて消費者に届けていただく。こういったチームを作ろうと取り組んできた成果が知る人ぞ知る産地となった。作る花によって消費者に届ける小売ルートは違う。菊や小菊は、大手の花束加工業者に取引いただいている。カーネーションやバラは、個人出荷だから高品質のものを扱う特定の仲卸と小売店のお抱え産地として安定した経営を行っている。グラジオラスやキキョウなどの草花は、個人出荷だが必ず茨城町の○○というように名前を売っているので、せり前取引、せり取引とも、有利に販売できていると思う。お得意の枝物や鉢物も同様で、いけばなの先生だけでなく、特定の大手小売店から、時期になると必ず発注があり、新しいものを作るときもそのお取引先に事前調査ならぬ一声掛けてから作付けを始める。こういうコミュニケーションを効かせた花き栽培を行っている。年に何回というより、ほとんど1ヶ月に1回、弊社の担当者は主要メンバーと顔を合わせ、生産者と品質や取引先の満足度、もっとこうしたらよいという改善案を話し合い、実行に結び付けている。

「PDCAのサイクルを回している」と口で言うのは簡単だが、まさにPlan-Do-Check-Actionを種まきし、育て、収穫しているわけだ。相場が乱丁な時でも、茨城町の人たちはなぜ安いのかを知っており、今後について不安はない。これからもコミュニケーションを密に行い、生産者が希望を持って生産できるようにしていく。それが仲介業者としても卸売市場の役割だ。やりがいを感じている。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年6月22日

続・2009年初夏の販売状況

昨日の雨は大変残念だった。小雨だったらまだしも、あれだけ強いと買い物に行かないし、父の日の花を売り損なったところが多かっただろう。しかし、金・土とよく売れたので、駅周辺の店や地域一番店の本店格のお店は大変賑わった。5月の下旬から晴れの日が少なくて、関東地方はもう1ヶ月近くも梅雨が続いているようなものだ。昨日は夏至で日が一番長いと言うが、残念ながら花の主産地は例年の半分しか日射量がない。だから今後、夏は少し不足するのではないかと心配している。

日本の花の産地は6つだと思っている。輸送園芸の産地として、九州、東北、北海道。三大都市圏の半径200?300kmの産地で首都圏(含む長野、新潟)。中京圏含む北陸(新潟を除く)、関西圏である。輸送園芸の夏場の産地、東北、北海道が日射量不足で悩んでいる。かつては専門店でほとんどの花を販売していたので、花屋さんたちは粗利が5割あったから、品不足のときには粗利を削ってでも高く買ってくれていた。しかし今は花束加工業者がスーパーマーケットに納品し、地方に行くほどスーパーが花売場の中心になってきた。今まで鉢物、苗物を中心に売ってきたホームセンターも切花を扱うようになり、地方では人気の花売場となっている。ここでは粗利を27?8%とする薄利多売方式を取っている。だから例え量が少なくてもかつてのように小売価格近くまで相場が跳ね上がるということはない。

消費は政府の相次ぐ経済対策で、マインドは以前よりもだいぶ明るくなったが、7月のボーナスは出るところでマイナス15%、出ないところも多いといわれているから、値ごろ感と安全安心、ストーリー性と売れる基本は変わらない。一進一退を続けながらの夏の市況展開になるだろう。そうなると、7月のお盆、8月のお盆の菊やリンドウの相場がどうなるのかである。ここ1年ですっかり消費者のマインドは変わってしまった。象徴的なのはデパートが2桁でマイナスである点だ。消費者は良くて安くなければ買わない。花は嗜好品かも知れないが宝石とは違う。生鮮の文化品だ。だから小売店は良いものを今の消費者の価格に合わせて販売しようとする。しかし生産地は別の意識を持っている。良いものをそれなりに販売し、評価してもらわなければならない。生産資材も値上がりしたままで、石油は安くなったが、それ以外は高止まりしたままだからだ。そこで卸は中に入り、消費者の代弁者として、産地に対し「その価格提示では結局デパートのように2桁マイナスになってしまいます」と話し合いの土壌を作っておくことが必要である。売り手と買い手がどこで折り合うか、買い手ともよく協議し、質・量・価格・納期などの、スペックを詰めていきましょう。この夏の花き業界は、お盆という日本の文化的行事を控え、ボーナスが前年よりもかなり低いという消費者の懐具合の中で、消費者に喜んで買ってもらえる販売戦略、価格戦略が必要である。喜んで買ってもらえる夏の花を供給しようではないか。今年の花き業界は今から心して支度に取り掛からなければならない。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年6月15日

2009年初夏の販売状況

イタリアでG8の財務相会議が開催され、世界経済は明るい兆しが見えてきたと言う。出口(財政再建)の話も出たそうだから、お先真っ暗な状況から確実に改善の方向に向かっているのだろう。

5月に主幹事の野村證券のお誘いで支店セミナーに参加し、大田花きの紹介と花と緑の話をしてきた。資産の中で株式の比率が高い60歳代、70歳代の方々が中心のセミナーだ。不況による株価の暴落で、気分は落ち込んでいたが、ここのところに来て株価は回復の兆しが見えてきて、後期高齢者医療制度も改善されていく方向が明確になるなど、60歳代、70歳代の消費活動は活発化してきた。それは花の売れ具合を見ていてもよく分かる。法人需要が少なくなったので、付加価値の高い高品質な花が花屋さんの店頭に並ぶようになった。それを5月の下旬くらいから(母の日にもらった花が終わって)、店頭で買い始めている。景気も良くないし、お天気も愚図つき気味の6月。ジューンブライドというのも昔の話で、今は結婚式も6、7、8月と少なく、花の市況はパッとしないが、しかしその中でもヘビーユーザーに支えられて、まあまあ質の良いものはこじっかりした相場となっている。

そういえば昨年と違い、上物の単価が15%ほど安いのは法人需要、とくに会社の経費削減によって少なくなっている活け込みの需要の影響で、特に枝物と葉物が安い。活け込み需要の分野では、今ようやく輸出産業が少し在庫調整の目鼻が付いたところだから、今後個人消費や設備投資に回ってくるまで、しばらく時間がかかる。それは2011年からだと今のところ予定をしておいたほうが良い。

今それなりによく売れているが、しかし期待したほどでもないのがトロピカルの花である。ヘリコニアやジンジャ、ランや葉物など、期待値からすると少しがっかりしている。それは旅行業界やデパートの水着売場にもその雰囲気が出ている。今年の夏の旅行の受注状況は、ボーナスが前年よりも下がること、9月にゴールデンウィーク並みの連休があることから、いまひとつパッとしない。パッとしないから、「梅雨を吹っ飛ばせ」とか「暑い夏を楽しむ」だとか、そういう気分に消費者はなれないでいる。ようやく沖縄県でジンジャやヘリコニアが増えてきているのに、今回の不況は誠に残念だ。

だが、今回の不況で復活したのが、お父さんの価値だ。花き業界では定番の黄色のバラをずいぶんと前から予約相対を組んでいる会社がある。またひまわりを父の日の花として、業界ではキャンペーンをしている。お父さんはこの不況でがんばってくれている。同情票半分感謝半分のプレゼントが、今年ほど活発な父の日はないのではないだろうかと花き業界は期待をしている。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年6月 8日

長い目で見ること=信用

先週新潟市の大凧合戦を見に行った。日本の素晴らしさは何百年も続く行事が国中にあって、若い人たちが中心になって運営をしていて、それが地域の活気となっていることだ。経済上むずかしい時期であるが、地元の会社や商店の人、もちろん地元の新潟みらい農協もこぞって協賛し、会社の社長も若者たちに勤務中だろうとも手伝いをさせている。こういう地域活動や事業活動が日本の持ち味だ。長い目で見て仕事をするということは、あらゆる仕事が社会性を帯びてくる。取引先や自分だけでなく、社会にとってこの仕事は有意義なものなのかを問うことになる。そして店主はやりがいを再確認し、従業員と一緒にさらに一所懸命仕事に打ち込む。商人も商人道を身に付けることになる。

しかし近頃、社会に迷惑をかける恥ずかしい商いがあるのが残念だ。業績が思うようにいかなかったり、個人としてお金に困ったりすると、社会に反することをやったり、目先のことだけで判断したりすることが多くなりがちだが、それは気をつけなければならない。ときによって多少事業を縮小してでも大凧合戦のように長く仕事を続けることを考える。不易な価値があり、大凧合戦も事業も時代に合わせていく。チャンスと見れば拡大する。時の風に吹かれて生きるのだ。


今時代は一つの節目で、人間の活動は地球の自己浄化能力を上回る程になってしまった。だから我々は二酸化炭素の排出を削減しようとしている。私はCO2マーケットについて甚だ懐疑的な目で見ている。誰がCO2を計って、だれがその測定値をオーソライズしたのか。大田花き花の生活研究所でもカーボンオフセットプランツを販売している。何ヶ月もこの植物の炭酸ガスを酸素に変える力を測定した。測定した上で販売しているが、これも一定の条件の下にである。甚だCO2マーケットやカーボンマイルに胡散臭さを感じていたら、先週朗報が入ってきた。OECDで環境へのインパクトに対する計測のワーキンググループを作ることになったそうだ。待ちに待った基準が出来、ようやく共通のものさしができる可能性が出て来たのだ。商売が先行していて誰もが納得する基準がないのはおかしなことだが、一刻も早く基準を創り、広めてほしい。これができれば日本の農林業多面的な環境価値が計れるようになる。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年6月 1日

新しい日本 内需産業の農業

ここのところの梅雨のような天候で、品傷みが多く出ている。寒暖差もあったので、切花・鉢物とも植物の体力は万全というわけには行かない。だから生産者や産地によって、例年の品質と異なるので注意が必要だ。

週末にかけて、2010年以降の農業政策案がいくつか発表された。私は、農業は日本にとって必要不可欠な基幹産業であると考えているし、今後アジアの諸国とともに生きていく中で、日本のものつくりの源流である日本農業のポテンシャルを深く信ずるものだ。なぜここで農業について語っているかというと、日本の産業構造や消費構造を変える必要があると判断しているからだ。向こう10年かけて、基礎固めをしていく必要があると考えている。それはこういう理由だ。4月?3月期の上場会社の決算が発表された。2009年1?3月期は年率になおすと15%あまりのGDPマイナスであった。しかし新聞紙上で発表されている通り、輸出企業の在庫調整は終盤を迎えており、むしろ内需の設備投資と個人消費が落ち込んだ結果だと言える。輸出企業は中国とアジアに輸出先を求めているが、肝心なのは設備が過剰で設備投資が減っただけでなく、失業率が上がり5%にまでなっていることだ。すなわち需要を内需型に変えていかないと、もう日本国が2002年以前の経済規模になっていくことすら難しくなっているという事実である。そうするといかなる産業がこの国を引っ張っていくのだろうか。内需の中でどんな需要があるのだろうか。「お互い様」でつながりを大切にし、日本の組織の特徴である助け合うことに価値を置く、日本の持続的な繁栄はどこにあるのだろうか。

環境が救世主になるわけではない。これはむしろ当たり前のことで、「足るを知る」から始めていく。この国で必要なのは、高齢化するわけだから、介護だけでなく年をとっても生きている喜びを実感できる有償無償の働く場としての地域社会や医療施設、文化施設そして家族との絆を応援するもの。街や家のインフラを整えていくこと、国内外で楽しめる旅行など、富国有徳の国家にふさわしい国に作り変えていく政策の中でそれらをサービスする産業が育っていく。国を挙げて、観光立国にすることによって、そこの国のそこの地域の第一次産業は地元の名物として、旅行者に楽しみを与え、地域に誇りをもたらす。フランスに行ってフランス国以外の食材の料理を出されて我々は喜ぶだろうか。

農業は現在、パナソニックより売上は少なく、8兆4000億円の産業だ。酪農・畜産が1位で2兆6000億円、野菜が2兆円あまり、3位が米で1兆8000億円といわれている。まず日本中どこでも米を作ってきたので、主食である米の問題に農政は取り組む。最も大切なことだ。ついでマーケティングのセンスを活かし、新たな価値創造が可能な果菜類、軟弱野菜、花・果物などを国の基幹的な農業にしていく。バイオテクノロジー、育種の力から、生産、出荷の技術、また製品までやろうとすれば、農業者は自らやることができる。そういった農業をこの国の基幹産業の一つにしていくのだ。これが今、我々が目線を合わせて目標を一にすることだ。その中で、生産者と消費者を思い、卸売市場であれば自分の役割を時代とともに変えていけばよい。今は不透明だといわれているが、決して不透明ではない。ただ今回の不況が通り過ぎたら、また元の通りになるといった甘い考えは持てないということだ。内需を盛んにしていく。ではどんな産業がというと、新たに活性化させていくのが外国からいっぱい観光客に来てもらうよう治安を維持し、フレンドリーなコミュニケーション力を高め、観光業界を発展させること、国内の人たちもいっぱい旅行するから地域の名産を作り、地域を挙げておもてなしすること、それに合わせた一次産業や旅館産業、交通インフラなどを充実させることだ。日本のように同一国主が長い間統治している伝統に根ざした国はあるまい。そこで我々日本の売りとは何なのか。それを地域や国の位置で目線合わせするのが今で、これを持てば持つほど日本の進路が、花き産業の進路が定まり、そこに向け我々は日々努力し、新しい花き産業を構築しようとするだろう。振り子はこう揺れだした。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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