大田花き 大田花きコーポレートサイトへ
 

« 2009年10月 | トップ | 2009年12月 »

2009年11月30日

花活けのアプローチから頂上を目指す

28日の土曜日、両国の江戸東京博物館で開催されている特別展示「いけばな?歴史を彩る日本の美?」を見てきた。大変見ごたえのある展示で、文人としてだけでなく一人の男子として、花を活けることが欠かせない教養であったことを教えてくれた。江戸も末期の頃になると、個人の道というより、花を飾り見ていただくこと、その見る人の視点に立った世の中となってきたため、また日本が家庭を大切にしていく円熟した文化生活となったため、生け花は女性の欠かせない教養の分野になっていった。

フラワーデザインはデザイナーと花屋さんの間の境はほとんどない。花屋さんの息子さんがすばらしいデザイナーであったり、デザイナーが花屋さんになった人たちも多い。だから大田市場の仲卸には多数のデザイナーやデザインスクールの先生方、そして仲卸を指定してその店で花材を揃えなさいと言われているスクールの生徒さんもいて、仲卸は繁盛している。しかし生け花となると先生は芸術家と教師の二つの顔があるが、生け花の先生方はいずれも歴史的に花屋さんから花材を仕入れることが多くあった。しかしこの頃、大田市場の仲卸を利用する生け花の先生方も増えてきた。枝物や葉物、あるいは花にしても、伝統の上に新しい創造がなければならないし、伝統的であればあるほどいつも時代を捉え新しくなければならないということを華道家は再確認し始めたからだ。仲卸の評価眼は鋭いものがある。その眼を利用し始めた華道家たちは、21世紀の次の10年、日本のフラワーデザインを発表し、日本花き業界に大きな力を与えるようになっていくだろう。G7ではなく、G20が話し合わない限り、世界経済の成長はありえない。経済に裏打ちされた古くて新しい花の文化が元気なアジアに認められ、消費活性化して輸出業務に結びつき、日本の花き産業が今まで通り、先頭集団を走れるようにしたいと考えている。日本のフラワーデザインとそして華道が花き業界の中では発信源となって先頭を切り、種苗業界まで含めた既存の生産、卸、小売業界がそれを助け、支えるような形で商売をさせていただく。消費宣伝活動や花育活動まで含め原点に戻り、G20時代の花き業界はもう一度生け花とフラワーデザイン、そして庭造りの活性化から始めていく必要がある。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年11月23日

文化から食と花を見る必要性

日本のように周りが海で囲まれて、あたかも自然発生的に生まれてきた国をネーションという言い方をしていて、ドイツやアメリカのように連邦国家で成り立っている国をステイツと呼んでいる。ステイツが世界では圧倒的に多くて、ネーションはそんなに多くない。世界が一つになって、人類はみな兄弟なのだが、日本のようなネーションは頭の切り替えと対応が素早く行かず、ステイツから見ると、何をそんなにもたもたしているのだと思われたり、動きがのろいので傲慢に映ったりすることもあるらしい。文化という切り口で見ると、人目を気にするだとか人からこう思われたいというところまで含めて、文化と大衆文化であるサブカルチャーを物差しに日本人は毎日生活している。

食は栄養補給、身体のメンテナンスという物理的な機能面から、もちろん旨さもあって、ファーストフードや牛丼店などが繁盛しているが、文化を感じさせる食卓を週に何回かしないと、それは例え肉じゃがであっても、ダシをしっかりとった味噌汁でも、日本人は心が寂しいと感じてしまう。一生に一度しかない人生のこの一時を、食文化で心と身体を充足させ、幸せと明日の活力をもらう。だから、小さな差異が生産者の心配りや流通業者の畑のままの美味しさを損なってはならないという使命感を感じさせ、料理人の技と心配りに触れるたび、私たちは日本文化を体で実感し、日本人で良かったと思う。もちろん中華料理を食べて中国文化の素晴らしさを堪能したり、イタリアンやフランス料理を食べてそれぞれの文化を堪能する。日本の食文化は素材にこだわり、それが多様化を生み、産地間競争や市場間競争、料理店の競争が絶えず新しい食材と料理を生み出す力になっている。この文化としての食は零細な生産者や小売業者が十二分に活躍できる世界である。文化としての食がファーストフードと異なるところで、日本はグローバリゼーションとともにファーストフード化しながらも、ファーストフードとスローフード、さらにその中間にある手作りお惣菜など、文化という切り口から生産流通を整理していくというアイディアが必要ではないかと思う。

花は食と同様、文化に根ざしたもの。花の消費は文化消費と言ってもいい。そうなると文化に根ざした小気味良い差異が価値につながり、この小さな差が値段に反映される。F1種などに代表される作りやすく良いものを安く生産供給できる体制、これが本流であるということは分かる。しかし金を一つの物差しとし、安くてよいものを尊ぶグローバル社会であっても、日本はこの小さなこだわりをとても大切にして、マーケットを作ってきた。ダイバシティーは生物の多様性のみを言うのではない。日本文化の食や日本の花飾りでは、素材の質にこだわり、生産販売する。こだわる生産者と小売店、そしてその素材価値を正しくジャッジする卸売市場の存在がどうしても一定数以上必要で、この人たちが日本文化を支えている。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年11月16日

中小規模の生産者と小売店は継続して発展できる

幕張メッセで11月11日から3日間行われたIFEXではたくさんの方にお越しいただいた。花と緑、そして関連業界のショーとして今年もまた見応えのある内容であったと思う。ただ海外の出展業者からはあまりお声が掛からなかったとの声が聞こえた。残念だった。それはもうすでに大手の輸入商などは現地の生産者をよく調べていて、最も重要な財務基盤なども掌握している。買い手からお金が取れないのも困るが、出荷者が破産しては取引先にも迷惑がかかるので、国内外ともに産地の財務基盤による格付けが花き業界でもされてきたということであろう。闇雲に取引しようとする状況ではないのだ。

弊社の関係会社では開発力の高い花の生活研究所やディーオーシーが脚光を浴びたが、それ以外の流通会社はこのような展示会では名前を知ってもらうということにとどまった。同じ流通業者でも、大田市場の仲卸19社は、切花鉢物流通の約90%のシェアをしめる卸売市場流通が変革期にあるため、大田市場の買参権を持たない花の関係者に強くアピールできたと今回の出展を高く評価している。

今、卸売市場流通は全国規模の中核市場と道州制の中心となる中核市場に分けられ、ここが中央卸売市場として今まで以上に評価機能と品揃機能を強めていくことが予測されている。地産池消で文化の香りがする生鮮食料品花き流通と世界の花や国産の特産物、また価格競争力の強いロット商品を扱う大規模中核市場に分かれる。それは物価と賃金の調整が本格化した日本において、日本国民が求める方向に卸売市場が対応する。消費者が行く方向に小売店は対応し、卸売市場も農家も対応する。大きな事業家農家や1億円以上の農協の花き部会しか残れないようでは困るので、ファーマーズマーケットや道の駅が盛んになった今、産直農家と地元の市場に出荷する農家、地域の拠点的な市場に出荷し地域の拠点的な産直市場でも販売する農家、都市部の大規模拠点市場に出荷する農家。少なくても農家の諸事情によって4種類の生き方ができるようにしていくのがよいと思う。現状、小規模農家と対になっていて、その人の荷を地元の市場で買っている街の小売店がいる。農家の場合には地域が小規模農家を支える。しかし小売店の場合には組織化や地域で助け合う習慣がない。よって地元の市場はリテールサポートや的確な消費宣伝活動を行う。特に地元の小売店で花を買ってもらえるよう業界をあげて支援する意味で物日などに消費宣伝活動をする必要があると思う。大規模ではないが良い仕事をしている小売店は多い。家賃がいらないから、良いものを安く提供できる。また花の小売店は八百屋さんや果物屋さんと違って素材屋さんではない。料理のように花束やアレンジを作ってお客様からお金をいただく。例え仏様の花にしても、自ら味付けした店独特の味である。だから私は、花屋さんは小料理屋さんだから絶対に街で、しかも個店で生き残っていけると思うのだ。

街の花屋さんと小面積の生産者が対になっている。どちらかがなくなると、どちらもなくなる。死ぬまで現役でいられるこの商売を時代にしっかり対応させて、存続させることが花き業界の重要な課題だと考えている。ASEAN統合とAPEC、FTAとEPA、WTOなど、世界が一つになって的確にその世界の中で自分の役割を見つけていく日本。共存共栄を図る中で、まず我々は小売店と生産者の発展を期さなければならないと考えている。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年11月 9日

デフレ下での存続法

世界の三大花の消費地、日本、ヨーロッパ、北アメリカで今日切花相場の下がっていないのはトルコギキョウの八重とシャクヤクだけではないだろうかとの意見で、三極に住む花の事情通の意見が一致した。今年のオランダのFORTI FAIRは昨年の3分の2の人出であった。同時開催のアールスメールの展示会は例年並ということだったが、8月末に開催されたモスクワの花の展示会が3分の2であったことを思うと、景気動向からオランダのHORTI FAIRはまあまあの人出であったのではないか。

今週の週中、国際フラワーEXPOとガーデンEXPOが幕張で行われる。弊社グループでは関連会社が新しい考え方や新しい商品を紹介する予定だ。ぜひともお立ち寄りいただければと思う。弊社大田花き本体としては、個人消費の開拓にポイントを絞って素材開発やリテールサポートを行っている。基本に忠実に、当たり前のことを当たり前にやるのが取引所運営会社であり、花の卸売会社であるから、大田花きの活動はあえて展示しない。出会いの場そのものを大田市場で持っている大田花きはB2Bの展示会で新たな出会いの場を作らなくてもよいのではないかと考えている。


さて、花の単価が下がり、デフレが本格化してきている。そして2015年まで続くと考えている。世界単一マーケットで今まで高かった日本の物価と賃金の調整が本格化してきたと判断している。生産者の皆様方は生産資材が値上がりし、売る単価は安くなってきているので今後の見通しが立たないと言う方も多いと思う。原因と解決策は次のようだ。

ベルリンの壁が崩壊して20年、世界は単一マーケットになった。文明にはフローの資源を利用する文明と、ストックの資源を利用する文明とがある。せいぜい馬車で移動するフロー資源利用文明のときは地球は耐えられる。しかし地下資源をエネルギー源として使うストック利用文明はどうだろうか。日本が明治維新で化石燃料を使う文明に入ったとき、世界の人口は15億。日本の人口は3千万人。ストックの資源を使っていた先進国といわれる国の人口は4億5千万人。だから地球はまだ耐えられた。だが現在、ストックを使っている文明で15億人、地球の人口は60億人。BRICsの中でアジアの同胞であるインドと中国だけでも25億人の人々がストックの資源を利用する文明に入った。こうなると石油だけでなく、農業資材が値上がりする。しかしこの人たちの人件費、農地の価格などを考えると、彼らは輸出を考えたとき競争力はあると言わざるを得ない。韓国や台湾からの花を見ていても競争力はあるのだ。だが地球は保たない。新しい発展の仕方、暮らし方、価値基準を持たなければならない。日本は25%CO2を削減するのだ。このような状況の中で日本の生産者が受け入れられるためには、日本人の価値基準に合った新しい花をどこよりも早く作出し、MPSやEUREP GAPなど世界でトップクラスの地球に優しい農業と鮮度管理を徹底している旨をアピールする必要がある。カーボンフットプリントもそのうちの一つである。

これらの消費者価値に適合した生産流通は、一軒の農家や一軒の小売店がやりきれるだろうか。時間や問題意識、資金問題などあるだろうから、どうすれば一段階上がったサービスを提供できるかが今問題になっているのだ。

今後、先進国では更に付加価値をつけた商品を消費者に楽しんでもらう競争になってくる。価値あるサービスをやりきれるかどうかに日本の花作りの存続のポイントがある。今やらなければならないのはまず意識改革で、規模の大小に関わらず、一つ一つ消費者価値を高め、デフレ下でも価値ある花に相応しい代金で買ってもらえるよう生産流通技術を革新し、それをPRして行こうではないか。世界で花の生産は微減だ。日本の小売店と消費者は必ずやりきれる。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年11月 2日

2009年下半期の花き生鮮品流通事情

10月29日版の週刊新潮で赤松広隆農水相が卸売市場の機能を強化する必要があることを、17日名古屋の市場を視察した際発言したが、その内容を揶揄したとも受け取れる記事があった。流通のプロを自認する小生としては、その記事の中の流通ジャーナリスト金子哲雄氏が「流通過程に介在する業者が減るので値段が安くなり、漁師の手取りも増える。確かに卸売業者は淘汰されるが、産直が悪いと言うのは時代のニーズに逆行しています」といったことに意義を申し立てたい。それは我々が利用するタクシー料金とバス料金を比べてみるとよく分かる。バスターミナルやターミナル駅が物流上必要不可欠で、結局消費者と生産者の利益は物流の中間にこのようなハブターミナルが介在することによってよくなる。直接生産者と小売店ないし消費者というのはそのときは良いが、取引の継続を考えると不都合が出てきて結局高くなる。このハブターミナルが卸売市場だという事実を認識してもらいたい。

さて下半期の10月は天候不順で、平年作以下で出荷量は少なくなっているにもかかわらず需要が足りず、デフレで花き生鮮食料品業界は低迷した。今までは会社が真っ先に節約する交際費にかかわる需要が少なくなって、個人でも儀式がこぢんまりとなり、エコを理由に長持ちする花に個人需要が移っている。商品回転率が鈍くなっていったのが理由だったが、この10年でかつては60%あった中産階級が世界単一経済圏になって、日本では中産階級は半分の30%(アメリカは15%、逆に中国はほとんど0から15%)になった。よって中産階級が少なくなった分だけ物日以外の日は荷が動かなくなっている。特に地方では中産階級の比率がさらに低くなっている。またデパートに次いでGMSも業態的に競争力がなくなり、食品スーパーでさえも大幅減益になったから、体力のあるうちに不採算店を閉鎖し、ネットビジネスを本格化させたり、海外に出て行こうとしたりしている。戦後一貫して増え続けてきたスーパーの生鮮食料品花き売場はこの10月からマイナスに転じ、その速度を速めている。だからまだほんの一部だが、行き場を失った花と生鮮品が滞留してデフレになっている。花は人口減と高齢化で一人当たりの居住スペースが増え、花好きも多くなって、将来見通しはやり方によって消費増が期待されるが、食べ物は人口減と高齢化でパイが小さくなる見通しがいよいよ現実のものになったと読み取れる。不況からの消費不足だけでなく、そこから発した売場面積減と少子高齢化を現在、事実認識をしておくことがまず大切だ。

生き残りの道はどの企業も一緒。コスト削減、生産性の向上と新しいものを生み出す力だ。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

Copyright(C) Ota Floriculture Auction Co.,Ltd.