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2012年10月29日

くれない族

 好きな番組の一つに、NHKラジオ朝4時6分からの"明日へのことば"と日曜日のこれもNHKラジオFMの12時15分からのトーク番組がある。これを聴きながらウォーキングやジョギングをしたりしている。大変ためになるし面白いので機会があったら皆さんも是非一度聴いて下さい。

 私は本や他の番組でも学んだので、ノートルダム清心学園理事長の渡辺先生のお話の中に出てくる"くれない族"のことは、ベストセラーの著者でもあるのでお聴きになったことのある人も多いかもしれない。"くれない族"とは「認めてくれない」「~してくれない」という風に思ってしまう人のことで、私たち誰にでもそんな気持ちがある。

 急に「うつ」の話になるが、私自身の経験ではうつ病を克服し、以前よりもさらに良い仕事をしている人はいずれも"くれない族"を脱した人であることが分った。能力がある筈なのに、もったいない。何年もまだ"うつ状態"のままの人は、相変わらずどこか自分を被害者の立場に置きながら相手を責めているのではないか、そのこと自体が物事をあるままに受け取れない我欲のなせる業であるということを気付かないのではないかと思う。

 腹を立てることは自分が一番偉いと思っている傲慢な結果であるし、周りから嘱望されているのにうつが治らず狭い範囲でしか働けない人には、その人の具合を看ながらだが、「そうじゃない。くれない族にならないようお互いに気を付けよう」と云いたい。現実を受け入れ、その場で精一杯生きていくことの難しさは一定の年月を生きてきた者として理解できるが、自然の花とそれとは違って人間の都合で作られた栽培の花、いずれも文句も云わずに素晴らしい花を咲かせようと生きている。その花を見ていれば、花の教えである他を批判しない、あるがままを受け入れ、その中で精一杯生きていくことが学べるのではないかと思う。花作りの名人は棟方志功のようにその花の持っている能力を十二分に開花させるお手伝いとするのだ。

 花き業界で遇されていないと思っている人は花を見て、自分が"くれない族"になっていないかチェックしてみよう。社会からも花からも教わることは山とある。

投稿者 磯村信夫 : 17:14

2012年10月22日

素材の旨味が日本文化の特徴

 昨日の21日、大田市場祭りがあった。花は文化そのもので、華道池坊流の組織は神社仏閣の建築業の金剛組に次いで現存する二番目に古い組織体であることでもわかる通り、今に生きており、世界のフラワーデザインにも強い影響を与え続けている。

 食においてはゲルマンの民やアングロサクソンの人たちのように身体を健康に保つ為のものとしている国がある一方、中国・トルコ・イタリア・フランスのように食を文化として捉えている国がある。日本食は素材そのものの持ち味を活かし料理する。素材に過度の手を加えていないように見えて適確に手を加えるその手法は現代フランス料理のみならず、中華料理、近頃はベトナム料理にも強い影響を与えている。素材を活かした装飾と食の文化、これを支えるのが我々卸売市場である。

 全国花卸協会(仲卸)は目利き会を開催し、「情報取引が多くなっている中で我々仲卸が真の目利きが出来なければならない。そうでないと、規模は小さいが本物を作りこなす生産者の品物を適切に評価出来ない」と勉強会を開き後継者の育成に力を入れている。我々卸売会社もセリ前相対の比率が大きくなり、実際に品物を触る機会がめっきり少なくなった。産地においても共選・共販が多くなると農協担当者が実際に畑に行ったり集荷場で品物を触ったりする機会が少なくなる。それでは良くない。農協の担当者も本物を見極めることが出来る人であって欲しい。

 そんな危機感から大田花きでは3年前、研修所をもう一つ作り農業実習を行っている。新聞で見るとモスバーガーやワタミ他、美味しい野菜を積極的に食べてもらおうとしている外食産業の人たちも農業実習していると云う。農業実習はとば口だが、日本の食文化・花卉装飾文化をさらに前進させる為に我々市場人は目利きを発展させなければならない。

 そう思って昨日の市場まつりを見ると、卸と仲卸が用立てしたが、花では切花・鉢物とも良い品物を即売出来たと思う。鉢物は全て国産であったが、育種は外国の種苗であるものが半分あった。切花では外国産のものが1/3。球根・切花のように外国の球根を使ったもの、或いは種苗の発案が外国産であるものが1/3あった。

 グローバリゼーションは花の場合、当然のこととして日常の取引の中に存在している。それ故、国産の切花・鉢物類であっても海外の育種動向・生産動向を見極めておく必要がある。鮮度を加味した素材そのものの価値は国産に勝るものはない。しかし、その価値の差は輸送手段の発達やケミカルコントロールによって少なくなってきている。よって、大田花きは5年前時間が経つと飛んでしまう香りを国産の花の勝負どころの一つとして提案したのであるが、香りは重要な一つと云うよりも付随の価値に今のところ留まっている。

 素材そのものを活かしきる技、お花屋さん・華道家・アレンジャー、そして料理人の技と我々プロの市場人の評価眼、これが今後とも日本の装飾・食文化を支えてゆくのである。成田屋(市川家)の歌舞伎十八番助六の紫の鉢巻きは今でも築地の旦那衆、仲卸組合が届けている。このことこそ市場の目利きの役割を象徴するものである。

 さあ、農業実習をして生きたものに触れ、良いものを味わい、実際に市場で品物に手を触れ、目利きの役割を果たして行こう。品物のプロだけでなく、市場人は相場のプロでなくてはならないこともお忘れなく。

投稿者 磯村信夫 : 11:25

2012年10月15日

小さな会社もまずミーティング

 昨日の14日まで丸の内の仲通りでガーデンコンテストとIMFの総会に合わせてイルミネーションが施されていた。東京駅の新装開店と云おうか復興工事が終わり、10月に入ってこの2週間新しい装いの銀座・有楽町・丸の内を楽しんでもらった。国内外の人達は、日本の良さ、東京の素晴らしさ、そして可能性を再確認したことだろう。

 花き市場協会では青年部が6日(土)と10日(水)「丸の内花市場」を行い、花き流通における卸売市場の存在をPRし、セリでは双方向性のやり取りの楽しさを感じてもらいバラとユリ中心に抱えきれない程の花を買ってもらった。

 IMFの諮問機関である委員会のステイトメントは、世界経済は下振れリスクがあること。また、アラブ地域や日中間の領土問題などで不確実性が高まっていること。これを特に先進国の英智協調で再度安定した経済成長へ乗せていくことを期待し、共同声明とした。確かに世界中の株式の出来高は少なくなり、債券が買われていることを考えると先行きの経済見通しは明るくはないと見るべきだろう。

 大田市場の最寄の駅である流通センターからモノレールに乗って浜松町へ行く時、領土問題から乗客で韓国、中国の人達がめっきり少なくなっていることがわかる。また、東京の花の関係者の会議は秋葉原で行うが、電気街でも中国の人達が減ってもう一度秋葉原の店は日本人相手にメイド喫茶のビラを撒いたり、店舗を変えて飲食店になったりとにかく日本人向けの商売に既に変えて行っている。

 花も暦年で云えばまだプラスでいる所もあるが、4月~10月だと前年よりマイナスの所がほとんどと云える状況になっている。これは花き卸売市場の現状だが、この景気の悪さと止まらないデフレ現象をどうするかというものである。こういう時こそ経営力の差が出る。経営力の最たるものはもちろん経営者の力によるが、良き従業員がミーティングをしベクトルを合わせてPDCA(※)をしているかに尽きる。経営の良くない所は朝礼くらいは行っているが何をどう取り組むかなど、Pもなければ業務のブレイクダウンの話合いのDもない。

 社員教育まで含め、まずミーティングを行って良い会社になって、そして外部要因である景気や天気を跳ね除けたい。景気が悪くなると組織の大小を問わず、例え家族経営であっても話合いをして行動しているかという良い経営のところが伸びてゆく。伸びないまでも落ちが少ない。小さな会社もまずミーティング。これを今週は提唱したい。

(※)PDCA・・・Plan(計画)Do(実施・実行)Check(点検・評価)Act(処置・改善)

投稿者 磯村信夫 : 13:01

2012年10月 8日

卸売市場システムを転位させる

 2004年の市場法の改定により、自己の計算による買付けが中央卸売市場の卸売会社に許されてから、もう少しで10年経とうとしている。力の弱い卸売会社は「買付けだったら出荷します」と云われて買い付けて販売したところ、売上高営業利益率は1000分の3になってしまったのが、青果中央市場の卸売会社である。

 ただ単に買付けをしたというよりも買付けをした場合出荷奨励金が出ないから、産地から指値で委託出荷が行われ、指値で売れないから結局残品相対の形を取り差額を卸や仲卸が補填した形になって卸の利益率は今しがたお話したようになり、また仲卸も3分の1が赤字になってしまっている。

 花の卸売会社はこの轍を踏みたくないので、どのようにすれば産地と協業の形を作れるかを模索してきた。最終商品に近いところまで考えて生産流通させる今、農水省が補助金を出してでも推奨している第6次、生・配(卸)・販同盟の型となった。リスクを一方的に産地に取って貰うという形をとらない花き業界を今後とも進めて行く必要がある。運命共同体のサプライチェーンを作るのは市場流通の基本であり、日本以外で市場流通が主流のオランダも日本の農産物の第6次産業と同じ形をとっている。

 大田花きはこのように卸売市場流通は農業と花き消費の発展の為に欠かせないものと考えているので、中国雲南省昆明市にある"昆明国際花市場"をオランダの現フローラホランド、当時のアルスメール花市場と一緒に立ち上げた。セリ機やコンピュータなどの機材をアルスメール花市場が出した。またその前年に職員を研修させた。大田花きは中国の実用に合わせた運用の企画からオペレーションを教え指導するというものだ。市場の業務は上手く行くようになったが、大田花きが考える生産地の発展に結びついていないのが残念だった。

 問屋制度だと手数料がいくらで売られているかわからないので、手数料率が決まってよりオープンになっている取引所の卸売市場が必要だ。市場そのものがオランダのように生産者の組合が運用しているのであれば別だが、そうでない別の組織となると、日本の2分の1しか耕作面積のない中国の農家は、一軒一軒ではあまりにも非力だ。小さな農家の為に一箇所に荷物を集めて選別をし、まとめて出荷する農協の花き部会・組織が必要だ。"One for all、all for one"の精神に基付いた農協の存在がどうしても必要なのだ。しかし残念ながら、昆明地域では出来ずに農家から荷を買って市場に出荷する産地商人が多くなってしまった。今でも昆明花市場は立派に機能しているが、小さな生産者の所得向上ややる気の向上に直接役立っているとは日本人の私の目からは云えないのである。

 日本は卸売市場が機能しているので、生鮮食料品花きでは大手のスーパーマーケットもG7の日本以外の国のように寡占化が進んでおらず、中小のスパーや専門店では夫婦で営んでいる花店も十二分に競争し生き残ってゆける。消費者はその分選んで買える訳だ。このシステムをアジアにと思い、ASEANの花の中心はタイだから、タイと生産地にも恵まれ人口も多いベトナムに市場システムを使ってもらいたいと大田花きは考えている。

 しかし現実はそんなに簡単ではない。既に花の分野では、多数の問屋が存在し、彼らと競合して市場システムを根付かせなければならない。その為には台湾や韓国と同様、政府が後押しして行かなければならない。卸売市場は、市場システムだけ作っても駄目で大規模農業会社プラス小農家で構成される協同組合の生産部会がどうしても必要なのである。
イギリスの植民地であったところは、"One for all、all for one"の考え方があるので、FAOやJICA共々その国の主要な方々にご理解いただき、日本のような素晴らしい市場制度が日本から移植され社会インフラになる可能性がある。又、オランダの花市場がオランダ系のブラジル人生産者の為に花市場を作り、今では1億4,800万ユーロの取扱い金額を誇るオランブラ花市場(協同組合方式)のようにするかである。

 最後に日本の市場システムの発展型として当面の問題を解決しなければならない。目前の問題として、日本の卸売市場の利益率の少なさは困ったものである。これでは時代に合わせ、変わっていく為の設備投資資金が生み出せない。まずは、合併やグループ化で数の調整を行い、利益を出していくべきである。日本では加工食品卸で売上高営業利益率を1%確保しているが、このくらいないと生産者や取引先の業者に役立つ提案が出来ない。時代に合わせて変化出来ない。日本では次なる発展の為にグループ化・合併・買収(M&A)をする時期となっている。

投稿者 磯村信夫 : 12:54

2012年10月 1日

合言葉はスマートな市場

 台風17号で被害にあわれた皆様に御見舞い申し上げます。
そして15号、16号と2回の台風で甚大なる被害にあった、沖縄県、鹿児島県の産地の皆様このたびの17号でも甚大な被害があり、せっかく作業場、ハウスなどを建て直して、今ようやく冬用に植えつけようとしている最中でありましたのに、また台風被害に合われましたこと、お見舞いの言葉もありません。たとえ植え付けが遅れても、時機が来てご出荷頂ければ日本中の市場は一生懸命販売することをお約束いたします。

 花は今、物日の「花の買場」が専門店と量販店の2つになって量販店が力をつけてきています。消費は高いものが売れにくくなっていますが、しっかりしていると言ってよいと思います。肉、魚、野菜、花の生鮮4品の内、魚の消費が落ち込んでいます。どうにか挽回しようと「ファストフィッシュ」あとは煮たり、焼いたりすればよいだけの加工したものがでてきています。確かに、お店でさばいてもらわないと出刃包丁のないお宅が多いので魚は面倒くさいということでしょうか。団塊Jr.以降の人たちで魚のさばき方の上手な人は少数派でしょう。高学歴になって女性も働くから「ファストフィッシュ」の考えはもってこいです。しかしこれだけでは魚離れは止まりません。もう一度地元をあげて地産地消の食文化をPRする必要があります。PRしなきゃ困るところまで来ているということは魚市場の経営が悪化しているところが、多いということです。

卸売市場は中央卸売市場と地方卸売市場に分かれますが、今、魚市場で問題になっているのは公設市場と協同組合の地方卸売市場です。ただ単の地方卸売市場ならば開設者は民営ですから、国や地方自治体は責任はありませんが、公設となると市や県が開設者となります。また組合ですと当然その組合が責任を負いますが、市町村や場合によっては県などと深く結びついており、施設の老朽化などで優先的に公設や組合卸売市場の面倒を見なければならないようになっています。卸売市場の問題点は「営業成績(財務体質も含む)」によって業績の悪いところを出して、やる気のある所を入場させる、入れ替えのシステムがないことです。中央卸売市場の場合、総務省から「計画倒れの中央市場は地方卸売市場にせよ」という指摘があり、中央から地方化へ進みましたが、結局経営の問題なので業者の入れ替えがないというのは今の世の中おかしいことになります。今後は消費者の数が減っていくわけで、しかもその人達は忙しくても、あるいはリタイヤ組であれば時間がたっぷりあっても、上質な日常を送りたいと思っています。よってどのように品格のある国民生活を生鮮食料品、花きの分野から実現していくか、それが我々卸売市場の役目であります。そうなると中間流通業者として、自ら律し、勉強してレベルの高い経営をしていく必要があります。流行り言葉で言えばスマート市場を作りだすことです。もちろんIT化や低温化も必要です。何よりも消費者の立場に立って鮮魚を扱う。一次加工、2次加工したものを扱う。1社で品揃えできない場合が多いので、市場間でグループを組みネットワークで小売店の消費者のニーズを満たすのです。まず消費者ありきでネットワーク化された市場に自分の市場に作りかえるのです。今、生鮮4品では魚市場から淘汰が始まり、そろそろ最終局面にも来つつあります。国の責任から県や市町村の責任に、責任の所在が移管しただけではなりません。やはり民活です。我々花の業者は切花は手を入れないと商品にならない魚のようなもの、鉢物は果物のようなもので参考となる市場運営の例は違いますが、良い市場、悪い市場の2つを見て学び健全経営をしていきたいと思います。合言葉は「スマートな市場」であります。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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