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2015年1月26日

売買担当者に知識と情報を持ってもらおう

 会員制のリゾートホテルチェーンから、フロントにユリを中心とした花を活けてくれる業者を紹介して欲しいと連絡があった。世界のリゾートクラブでもユリの需要は多いと聞いてはいたが、日本のリッチな方々は大のカサブランカ好きで、必ずユリのオブジェの前で写真を撮るという。従って、そのホテルの方は、より花に詳しいユリ種苗会社に連絡をとり、弊社、大田花きにたどり着いた。そして、お客様をびっくりさせる、また、感動させるような良いユリを、様々な種類を活けて欲しいとおっしゃった。この話を受け、私は買参人のどなたかに活けてもらおうと思っている。

 さて、このように、想定するお客様が六十歳以上で、しかも、カサブランカ以外にもユリの種類をいくつかご存じの層がいることを、我々は意識してマーケティングをしていなかった。とある大手食品卸によると、高齢者をライフスタイルにより五つに分けて商品ラインナップを揃えているとのことだった。我々は、団塊ジュニアの方々、また、それよりも若い二十、三十代の方が、花をあまり買ってくれないので、まずは、フラワーバレンタインで男性が女性に花を贈ることはカッコいいというイメージ、また、団塊ジュニアの花の消費、この二点を狙って販売活動をしている。そして、花のファンである年配の方々が、消費税増税で消費を控えるようになったと、一律ワンパターンでそう勝手に思ってしまっているが、年配者にも、そういう人もいるし、そうでない人もいる。ここを明確に分けていかなければならなかった筈だ。また、ユリを中心にした花飾り、チューリップを中心にした花飾り等、どんなシーンでどの年代の人がその花を使ってくれるか、という想定すら体系化されていなかった。お花屋さんは分かっているのだろうが、業界でその情報が共有化されていない、あるいは、方程式化されていない。ここに大いなる無駄が、小売商と生産者が結局損をしてしまうということがあったのではないか。

 生鮮食料品花き業界において、実際の商売や物流、情報流は農協の担当者、あるいは、経済連(全農県本部)の担当者と卸売市場の担当者が行っている。この担当者があらゆる情報を持ち、価格が決定されていく。どこのどのような消費者に買ってもらえば、最も良い相場で取引出来るかを判断する。何をどのように、いつ出荷したら良いかどうか、新品種情報やマーケティングの知識も含め検討していく。このことが必要である。従って、系統農協と卸売市場は、第一線で売買している社員を教育しなければならない。その義務があるのだ。大田花きも、足元を見るとそれが出来ておらず、ここでお話しすることすら憚られる。しかし、この教育と担当者の実践こそが最も大切である、と痛感する次第である。

投稿者 磯村信夫 : 11:18

2015年1月19日

花の生産、まだ増えない

 加工食品メーカーに勤めている方にお聞きしたのだが、大手外食チェーンの鶏肉消費期限切れ問題から、「うちみたいに万全の態勢で生産・出荷している業者まで、多数の取引先から『中国工場のものはやめて欲しい』と言われ、中国と全く同じような工場をベトナムで立ち上げる算段をしている」と彼は言っていた。大手衣料品メーカーの品質を見ると、素晴らしい品質で、中国の方々の仕事に対する姿勢が伝わってくるが、食品については悪いイメージになってしまった。同じ大手外食業者からいくつもの商品の不具合が出てくると、今度は料理されたものの素材が、どこの産地のもので、どこで料理され、製品化されたものであるのかと、安心して食べたい消費者の希望は国内産の農産物に関心が来ている。大手外食チェーンでは、"当店の野菜は国内産です。"と宣伝文句にしている所もあるし、さらに、"自社農場です"ということを売物にしている業者も出てきた。

 国産野菜の卸売市場経由率は、農水省の発表によれば約9割とのことだ。とある仲卸さんに話を伺ったところ、「伝票だけは通っているものを入れたら8割近くあるかもしれないが、9割はどうですかね。」ということだった。しかし、日本列島は縦長で、桜前線、紅葉前線が春、秋にこれだけ足早に移動する立地条件だから、天候によって大きく影響を受ける農産物は、特定の地域と契約していたのでは、質、量とも計画通りには確保出来ない。卸売市場は契約取引の仲介を今後とも本格化させるだろう。

 今は野菜から食べ、メインディッシュ、そしてごはんという様に、炭水化物を最後にする食べ方が定着してきたので、去年は新米価格も戦後初めて下がった。このような潮流の中で、野菜は必要不可欠になったので、花から野菜生産へ変わった人もいるし、併用して野菜と花を作っている人も、野菜のウェイトが高くなった。そして2014年、そろそろ野菜の需給バランスが取れて余りだした。2015年、私は花が足りなくなっているので、その単価が上がるとみていた。そして、単価が上がるので、2015年後半ないし16年には花の生産がまた増えていくと想定していた。しかし、お総菜や外食まで国産野菜が優位になってくると、花の生産は増えないことを前提に花き流通をしなければならない。今年はどうすれば予算内で美しい花束、装飾を作ってもらえるか。また、花のある生活を消費者に楽しんでもらえるか。今しばし、業者の知恵の出しどころが重要な時となってきた。

投稿者 磯村信夫 : 15:41

2015年1月12日

ドーパミンとエンドロフィン

 今日は成人の日。新成人達の自覚は昔と同様変わらぬものだ。今までお世話になった社会に、今度は自分が役立とうとする気持ちが表れていて大変頼もしい。そして、週末は家族の団欒、友人同士のホームパーティのような集まりで花が飾られた。スイートピーやチューリップなど、春の花がよく売れていたそうだが、花束としては、枝物や葉物、あるいは、グリーン系の花も一緒に使われたものがよく出ていたそうだ。この辺が、お洒落感覚のある世代がいよいよ成人していくのか、といった花飾りである。

 年末は、どんなお店がどのようにして花を売っているか拝見したが、人通りのある賑わいゾーンの花店がよく売れていた他、消費税増税の影響であろうか、ディスカウント的に花を売っている店がよく売れていたのが特徴的であった。我々人間は、ITが発達しても脳や身体は未だ狩猟民族の頃とあまり変わらないのではないかと思う。止まっているものは風景として捉え、動いているものに注目する。また、「欲しい」というのは英語で"Wanting"で、食べるものであれば1日3回お腹が空く。お腹が空くから、「何を食べようか」、こう思って考えるだけでも楽しくなるが、腹が減りすぎていれば、人と争っても先に食べようとする。例え夫婦の間でも、おかずが大きいか小さいかということは大問題だ。脳内ホルモンでいえば、ドーパミンが働くのである。また、食べるものを探している間、つまり、食べる前がむしろ楽しいという事はままある。食べた時、あるいは、やりたいことを行った時、楽しかったり美味しかったりすると、"好き"や"Liking"等の脳内ホルモンである「エンドロフィン」が出てくる。しかし、中毒性のある"Wanting"のドーパミンと違い、エンドロフィンは中毒を誘発するものではない。ドタキャンをしがちな人は、"Liking"よりも"Wanting"がとても強く、洋服を買ったけれど一度も袖を通さない人や、お腹が減った時に買った食品を冷蔵庫に入れっぱなしで忘れてしまう人である。それくらい、"Wanting"は強い欲なのである。

 何故こんなことをお伝えしたかというと、花は"Liking"であり"Wanting"ではないと私は思っているからだ。花は無かったら寂しくなって買うが、食品と違い、食べて無くなるものではないので、切花であれば週に一回、鉢物でも平均月一回買えば事足りてしまう。また、身近に無いことに慣れれば、散歩の時に山茶花や椿、日本水仙が咲いているのを見て、「いいなあ」で済ませてしまうのである。花を買ってもらうのは大変難しいのだ。従って、花中毒にさせることは出来ないが、人通りの多い所に花屋さんを開店させて「花って素敵」とお客さんに訴えかけて欲しい。また、効能を謳って頭で買ってもらう。さらに、「物日に文化として使うものだ」ということを教える。これらが、需要を確実にするために必要である。私自身は、花の効用は全てを受け入れる素直な気持ち、そこから出発しようとする勇気を与えてくれると思っている。私自身が思っているだけでは駄目で、事実として我々は科学的に花の効用を消費者に説明しなければならない。

 愛犬ルークは賢くて良い奴だが、散歩をしていてもいつも匂いばかり嗅いでいる。頭もよくて、人とは見つめ合うのに、綺麗な花に感動しない。こちらが花を見て立ち止まっていると、先へ行こうとする。この辺が、いつもルークと気が合わない所だ。どうも人間というのは、真善美ではないが、そういうものに心を打たれるものらしい。花のある生活をしてもらうために、供給サイドでは、ドーパミンとエンドロフィンのことを考えながら流通させていきたいと思う。

投稿者 磯村信夫 : 10:38

2015年1月 5日

デザインし、素材を流通させる

 新年明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。

 1月3日にも書いた通り、デザインされた花束が昨年末は良く売れていた。ご年配の方々がサラダやカット野菜を好むように、花も手間要らず、さらに、自分では普段やらないデザインであったり、普段使わない花が入っていたりで新鮮な感じがして、買っていかれているのだろう。また、30、40歳代で松や千両の使い方が分からない方も、デザインされた花を買っていかれた。小売店やスーパーでも、もちろん、専門店でも、4、5千円のデザインされた高価な花束が売られていた。花のある生活を提案することは、デザインされた花束やアレンジメントにある。というのも、消費者がこれを欲しているからだ。

 話は変わるが、少子高齢化で人口が少なくなっている日本において、消費を増やすことが出来る農産物は"花"である。しかし、ミドル世代があまり花のある生活をしてくれないので、ヨーロッパやアメリカと違い、日本の花き業界は下り坂にあると言われていた。人生もそうであるように、下り坂もあれば、上り坂もあり、"まさか"もある。年末の菊類の相場でも、下り坂だと思っていたら、猛然と急反発し上り坂になった。急反発があったり、じわじわと上がっていったり、品目によって様々な上がり方がある。

 消費税増税で消費が振るわず、昨年は単価の上昇が期待出来なかった。今年は長さやボリュームの足りない品物であっても、花持ちが変わらない限り、手頃な大衆品として上手に花束にしたり、アレンジにしたりして買って頂く。鉢や苗であれば、寄せ植えの素材として流通させ、花屋さんや消費者の方に寄せ植えをデザインしてもらう。そういう風に無駄をなくし、単価を上げていけると思う。

 市場の仕事も、デザインされた"モノ"、それは花瓶にしても、広い空間デザインにしても、はたまたインドアプランツにしても、いずれも花のある生活文化をデザインし、素材を流通させていく。それによって、消費と生産を拡大する。そういった仕事のやり方をやっていくのが卸売市場の役割と肝に銘じ、邁進していきたいと思う。

投稿者 磯村信夫 : 14:22

2015年1月 3日

お正月作品が売れる時代に

新年明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。

年末は寒波で残念ながら例年より売上を落とした処もあったが、首都圏はお天気にも恵まれ、お正月の花はよく売れていた。繁盛店では創作した花束やアレンジはとうに売れて無くなり、1本売りで接客していたのでお客様が列をなす光景が見られた。その売れた花とは・・・・・

いくつかの繁盛店で、それぞれの室内空間に合わせたライフスタイルブーケのお正月バージョンが作られており、目を引いた。普段なら20㎝の花瓶に合わせた小さめのものが多いが、壺に活ける70㎝から80㎝の伝統花束から、水盤やボールに浮かすように活け、テレビを見るのに邪魔にならない低い創作花束までメッセージが添えられて売られていた。1本売りから創作花束へとお花屋さんのセンスと腕がモノを言う時代となった。

花束加工のお仕事をなさっている皆様も、生け花やフラワーアレンジをより勉強されて、花のある生活を提案して欲しい。専門店は更にその先へ行き、新しいデザインや出廻りの多い花を使っても作者の心が映し出された作品を販売して欲しい。
お客様はそういう花を欲しがっている、と花の売り場を見て感じた。

投稿者 磯村信夫 : 10:30

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