大田花き 大田花きコーポレートサイトへ
 

« これからもお花屋さんのあるまちをつくる為に―本屋さんの流通に学ぶ― | トップ | 農業関連改革は本気だ »

2016年10月17日

花き産業の健全なる発展には鉢物生産増が欠かせない

 伊豆大島の土石流災害から3年が経った。伊豆諸島は火山活動が活発で、三宅島でも花き生産に大きな打撃をもたらしている。あれだけ素晴らしい葉物を量的にも生産していた三宅島だったが、今では特産のサンキライを除き、葉物の生産が少なくなってしまったのが残念だ。大島は八丈島と並び称される大の花産地で、日本のブバルディアの主産地であった。今は花き生産が少なくなったが、それでも、ブバルディアや椿の枝物、葉物等の重要な産地だ。将来に向け増産を期待したい。弊社 大田花きの「産地ウンチク探検隊」でもその一風景を特集しているので、是非ご覧頂きたい。

 本日、10月17日(月)の入荷分は、天候不順による不作と端境期が重なったことで、花き、青果共に高騰している。ここ数か月、生産者は悪天候から思うように生産出来ずストレスを感じていたのだが、それと同じ気持ちを、卸売市場や小売店が共有する段階となった。小売店は大変だろうが、可能な限り代替品を揃えて、生活者に選んでもらえるようにして頂きたい。中でも、果実と鉢物は長く続いたデフレと高齢化によって生産減を余儀なくされている。しかし、花き産業の発展に鉢物類は欠かせない。生活者がすぐそばにいるので、価値観を共有できるのが強みなのだから、日本の生産者に再度奮起をしてもらい、花き業界発展の為に生産増をお願いしたい。そこで今日は、ヨーロッパ、アメリカと比べた日本の現在と、今から目指すべき方向を考えたい。

 日本の果物は"水菓子"として、嘗ては街に果物専門店があり、高い品質を保ち、生活者からもそう要望されていた。しかし、果物屋さんが街から消え、スーパーで売られることが多くなってくると、カジュアル価格になり、デフレ圧力から抜け出せなくなってきた。そして、団塊世代より上が主たる消費者だったが、「ナイフで剥くのは面倒くさい、そのまま食べられるのだったら買って食べるわ」という、手軽さを求める、若い人たちへ向けての商品開発がやっと出荷されるようになってきた。子どもたち、若いお母さんたちの葡萄好きは、"皮ごと食べられる"という、手軽な時代に合せて品種を更新していく大切さを示している。しかし、需要の主役はホームユースである。価格はリーズナブルでなければならず、コスパが高くないといけない。

 日本の鉢物は、花売り場で生産者が作ったものをそのまま売るから、果物と同じく、完成品を生産者がつくることになる。嘗ては、鉢物売場の主体は街のお花屋さん達であった。それが今では、ホームセンター、日があまり当たらない街のお花屋さん、室内であることが多いスーパーの花売り場、この順に売り場面積の広さがある。切花は水の取り換えなど、商品を良い状態に保つには手間がかかるが、鉢物も、花がらを摘む等、手間がかかる。まして、日当たりが良くないところに置いておくと、生産者の環境下とあまりに違うものだから品質が下がってしまう。花屋さんにとってロスが多いのが、苗物、ついで鉢物、三番目に切花である。

ヨーロッパを見ると、苗物でもアレンジのように寄せ植えをしたり、根のついたものを切花と一緒にアレンジしたり等、鉢物売場は専門店が中心となっている。そして、手入れの仕方を、あるいは、飾る場所をかなり丁寧に説明している。ヨーロッパで鉢物を取り扱っている人々・場所としては、フローリスト、フラワーデザイナー、インテリアデザイナー、ガーデンセンター、ホームセンター等である。特にヨーロッパでは、ガーデンセンターからホームセンターになった会社も多い。このように、しっかりした、しかも、インテリアやエクステリアにマッチした鉢物の需要がある。

 日本では、お花屋さんも多くの鉢を扱う「クリスマス・年末」、そして。「母の日」。この二つの物日には、鉢物生産は減っていない。しかし、お花屋さんがあまり力を入れないそれ以外の時期は、生産が減ってしまっている。フローリスト向け、デザイナー向けの鉢物をもう一度作り、切花と同様、日本中の市場が鉢物を取扱いたいと思うようにしたい。日本は、鉢物の売場が主にホームセンターなので、良い完成品である鉢物を作る生産者ほど、市場に出すのではなく、直接、小売店に、或いは、生活者に販売したいと考える人が増えている。それが出来ればそれでよい。しかし、生産者が直接、集金業務、情報提供まで含めて行うとなると、出来る人が限られてくる。そこで、花市場は、お花屋さんが売りたい鉢物の情報を地元の生産者に伝え、需要に合せて作ってもらう。そして、生産者が忙しいのであれば、商流や物流、情報流や代金決済の4つか、その中のたとえ一つだけでもお手伝いをし、実費を頂く。日本では、男性が花を買うとすればまず鉢物からだと言われている。新規の需要を増やす為にも、もう一度、小売店・卸売市場は、鉢物を取り扱う意欲をもち、生産者に作ってもらうようお願いしないと、日本の生活者の負託に応えられないことを知るべきである。

 農業改革の年となる平成28年度、遅まきながら弊社 大田花きでは、専門店とデザイナーに絞って、鉢物の取扱金額を拡大しようと人員を増強し、仕事のやり方を変えた。是非とも、日本花き卸売市場協会の会員各社も、取り組めるところから取り組んで頂きたいと思う次第である。

投稿者 磯村信夫 : 2016年10月17日 12:42

Copyright(C) Ota Floriculture Auction Co.,Ltd.