大田花き 大田花きコーポレートサイトへ
 

2016年11月 7日

バラに消費拡大を期待する

 11月4日(金)、横浜で『日本ばら切花協会創立60周年記念式典』が挙行された。世界のバラ生産は、生産立地に適合した、赤道直下の高地が供給基地となっている。しかし、美の象徴であるバラ切花を国産でも欲しいと、もちろん、生産が存続できる価格でないと困るのだが、その国民も好んで国産のバラを買うということが起きている。北欧のノルウェーでも、コロンビア、エクアドルの花が圧倒的に多いアメリカでもこのような現象が起きている。

 日本は、世界の先進国の中でもずば抜けてバラ切花の国産比率が高い。カーネーションの切花をみると、日本だけがコロンビアや中国等の輸入品と競争しても、半分弱を国産が保っている。バラはさらに国産比率が高く、現在のところ、国産4:輸入1、少なくとも、東京オリンピックまでは、このまま温暖化が進んだとしても、国産2:輸入1程度は保っているとみてよいだろう。

 では、何故そうなのか。それは、バラ切花生産者が、お客様一番主義で自己改革を行い頑張っているからだ。具体的な一面をお知らせすると、日本ばら切花協会の記念式典の後に開催された『第47回全国ばら切花研究大会 横浜大会』の参加者は、トップフローリスト達と協力してマーケッターの役割をしている卸売市場の社員や、ブリーダー、苗業者、試験所・普及所の先生方、品質向上と切花生産増の為の、炭酸ガスや細霧冷房等の関連会社、ポストハーベスト関連の資材業者、そして、ディストリビューターとしての運送会社、卸売市場の人たちだ。このような人々が、産地が継続して生産・出荷できるよう支えている。当日の基調講演では、育種ならば、良いとこ取りの、香りが良くて花持ちが良い品種作りに必要なものは何かが講演された。また、切花本数を倍増とまではいかないが、5割近く上げる新生産方式の情報が、愛知県の先生によって開示された。このように、消費者が喜んで買ってくれるバラの生産の為に、積極的に技術革新、投資を絶えず行ってきた60年であった。

 大田花きでは、いいマムの日(11月6日)として、(新しい大人たちと呼ばれる)団塊ジュニア、団塊世代に向けたディスバットマムをご家庭に飾ってもらい、新たな仏様の花ではない菊の需要開拓をしようとしている。日本の、ドイツと同様の悩みは、若い人達が花を買う習慣が無くなってきていることだ。今は菊のシーズンだから、新しい大人たちに菊の素晴らしさを知って頂こうとしているが、特に若い人達に絞れば、バラが一番の花き消費拡大の切り込み隊である。がくが落ちたところで彩花し、しっかり後処理をすれば、夏でも10日は保つ。咲いていく過程で、人々は幸せを感じる。また、すっかり咲いてしまっても、花びらが落ちてテーブルを汚すことが無い。しかも、香りのあるものが多い。このバラを、日本中どこの花売り場でも売れるようにしていく必要がある。具体的には、専門店、ネット販売、量販店、ホームセンター、この四つの小売店で売れるようにしなければならないのだ。現在は、一度買ってベントネックで懲りたのか、スーパーとホームセンターでバラが売れない。この二つのマスマーケットチャネルで売れるようにすれば、単価が下がれば量販店に行くので、相場の乱高下は少なくなると思う次第である。

 専門店と業務需要に特化してきた日本のバラ。これを、もっと広い範囲に顧客を求めて品種選定、また競合時期を考えた出荷のピーク期を策定し、所得の安定に繋げてもらいたい。輸入品との競争は激しくなるが、国産バラに対する期待は益々高まっているのである。

投稿者 磯村信夫 : 12:39

2016年10月31日

卸売市場の社員に期待する

 働き方において、生産性が一つの問題だ。一日は二十四時間しかないので、それをどのように使うかということである。まずは覚悟から入り、重要なポイントを嗅ぎ分け、そこにエネルギーを集中する。そして、その後はなるように任せておき、残された時間に新規顧客の獲得へ向かう。それが全てだ。

 仕事はアウトプットだから、私生活の時間も大切だ。"やる気×スキル"で、スキルの学習を、給料を貰っている時間だけで行うのか、私生活の中でも行うか。それだけでも随分と違ってくる。一消費者として、ウィンドウショッピングをしたり、散歩をするだけでも、心がけ次第でスキルアップにつながるし、的確な判断にも役立つ。そして、地頭をトレーニングし続け、ポイントを嗅ぎ分ける。頭で考えるのだから、重要なものの記憶は大切だ。しかし、全てを知っている必要はもちろんない。的確な知識は、正しい知識を持つ友人や、疑ってかかってみる必要のある新聞・インターネット等を参考にすればよい。「疑ってかかる」というのは、例え一面から見た真実でも、他の面から伝えていないことがある。だから、「それが全ての真実ではないこと」を知っておくということだ。

 今、手短に一般論として書いてきたが、相場をつくり出す役目の卸売市場で働く者は、この通りやればそんなに外れた相場は出ない。カテゴリー別の再販業者と、各商品群を作る出荷者。そことのマッチングでも、高いときには痛み分け、安いときには、まあまあ互助の精神で受け取ってもらえる。

 ここの所、切花の中で最も大切な、取扱いの三分の一を占める菊が不作だ。また、この時期に最も重要な、パンジー等の苗物も不作となっている。いずれも、想定外の天候不順によるものだ。しかし、代替品で上手く調整し、消費者に不満を与えないで済んでいる小売店や卸は多くいる。この調整能力、臨機応変な対応は、いずれも消費者をよく知り、扱っている野菜や果物、花を良く知るプロの社員が生み出したものだ。人を知ること、そして、取り扱っている生鮮食料品花きを良く知ること。ここを知らずして仕事をしようとしても、空回りばかりして無駄に働くことになってしまう。卸売市場の社員には、パフォーマンスを上げる為、人格を鍛え、そして、人間通、生鮮食料品花き品通になって業務に取り組んでほしい。

投稿者 磯村信夫 : 12:56

2016年10月17日

花き産業の健全なる発展には鉢物生産増が欠かせない

 伊豆大島の土石流災害から3年が経った。伊豆諸島は火山活動が活発で、三宅島でも花き生産に大きな打撃をもたらしている。あれだけ素晴らしい葉物を量的にも生産していた三宅島だったが、今では特産のサンキライを除き、葉物の生産が少なくなってしまったのが残念だ。大島は八丈島と並び称される大の花産地で、日本のブバルディアの主産地であった。今は花き生産が少なくなったが、それでも、ブバルディアや椿の枝物、葉物等の重要な産地だ。将来に向け増産を期待したい。弊社 大田花きの「産地ウンチク探検隊」でもその一風景を特集しているので、是非ご覧頂きたい。

 本日、10月17日(月)の入荷分は、天候不順による不作と端境期が重なったことで、花き、青果共に高騰している。ここ数か月、生産者は悪天候から思うように生産出来ずストレスを感じていたのだが、それと同じ気持ちを、卸売市場や小売店が共有する段階となった。小売店は大変だろうが、可能な限り代替品を揃えて、生活者に選んでもらえるようにして頂きたい。中でも、果実と鉢物は長く続いたデフレと高齢化によって生産減を余儀なくされている。しかし、花き産業の発展に鉢物類は欠かせない。生活者がすぐそばにいるので、価値観を共有できるのが強みなのだから、日本の生産者に再度奮起をしてもらい、花き業界発展の為に生産増をお願いしたい。そこで今日は、ヨーロッパ、アメリカと比べた日本の現在と、今から目指すべき方向を考えたい。

 日本の果物は"水菓子"として、嘗ては街に果物専門店があり、高い品質を保ち、生活者からもそう要望されていた。しかし、果物屋さんが街から消え、スーパーで売られることが多くなってくると、カジュアル価格になり、デフレ圧力から抜け出せなくなってきた。そして、団塊世代より上が主たる消費者だったが、「ナイフで剥くのは面倒くさい、そのまま食べられるのだったら買って食べるわ」という、手軽さを求める、若い人たちへ向けての商品開発がやっと出荷されるようになってきた。子どもたち、若いお母さんたちの葡萄好きは、"皮ごと食べられる"という、手軽な時代に合せて品種を更新していく大切さを示している。しかし、需要の主役はホームユースである。価格はリーズナブルでなければならず、コスパが高くないといけない。

 日本の鉢物は、花売り場で生産者が作ったものをそのまま売るから、果物と同じく、完成品を生産者がつくることになる。嘗ては、鉢物売場の主体は街のお花屋さん達であった。それが今では、ホームセンター、日があまり当たらない街のお花屋さん、室内であることが多いスーパーの花売り場、この順に売り場面積の広さがある。切花は水の取り換えなど、商品を良い状態に保つには手間がかかるが、鉢物も、花がらを摘む等、手間がかかる。まして、日当たりが良くないところに置いておくと、生産者の環境下とあまりに違うものだから品質が下がってしまう。花屋さんにとってロスが多いのが、苗物、ついで鉢物、三番目に切花である。

ヨーロッパを見ると、苗物でもアレンジのように寄せ植えをしたり、根のついたものを切花と一緒にアレンジしたり等、鉢物売場は専門店が中心となっている。そして、手入れの仕方を、あるいは、飾る場所をかなり丁寧に説明している。ヨーロッパで鉢物を取り扱っている人々・場所としては、フローリスト、フラワーデザイナー、インテリアデザイナー、ガーデンセンター、ホームセンター等である。特にヨーロッパでは、ガーデンセンターからホームセンターになった会社も多い。このように、しっかりした、しかも、インテリアやエクステリアにマッチした鉢物の需要がある。

 日本では、お花屋さんも多くの鉢を扱う「クリスマス・年末」、そして。「母の日」。この二つの物日には、鉢物生産は減っていない。しかし、お花屋さんがあまり力を入れないそれ以外の時期は、生産が減ってしまっている。フローリスト向け、デザイナー向けの鉢物をもう一度作り、切花と同様、日本中の市場が鉢物を取扱いたいと思うようにしたい。日本は、鉢物の売場が主にホームセンターなので、良い完成品である鉢物を作る生産者ほど、市場に出すのではなく、直接、小売店に、或いは、生活者に販売したいと考える人が増えている。それが出来ればそれでよい。しかし、生産者が直接、集金業務、情報提供まで含めて行うとなると、出来る人が限られてくる。そこで、花市場は、お花屋さんが売りたい鉢物の情報を地元の生産者に伝え、需要に合せて作ってもらう。そして、生産者が忙しいのであれば、商流や物流、情報流や代金決済の4つか、その中のたとえ一つだけでもお手伝いをし、実費を頂く。日本では、男性が花を買うとすればまず鉢物からだと言われている。新規の需要を増やす為にも、もう一度、小売店・卸売市場は、鉢物を取り扱う意欲をもち、生産者に作ってもらうようお願いしないと、日本の生活者の負託に応えられないことを知るべきである。

 農業改革の年となる平成28年度、遅まきながら弊社 大田花きでは、専門店とデザイナーに絞って、鉢物の取扱金額を拡大しようと人員を増強し、仕事のやり方を変えた。是非とも、日本花き卸売市場協会の会員各社も、取り組めるところから取り組んで頂きたいと思う次第である。

投稿者 磯村信夫 : 12:42

2016年10月10日

これからもお花屋さんのあるまちをつくる為に―本屋さんの流通に学ぶ―

 国は、農業政策について将来を見通し、卸売市場についても抜本的な改革を行おうとしている。人口が増えてきていた20世紀の「公正に生鮮食料品花きを分配する」という、現行の卸売市場法である必要が無くなったと判断し、法の規制緩和をする方向で結論付けられそうである。卸売市場に必要なことは、既に行っている多面的な機能の強化を図った上で、生産者の所得向上に繋げ、消費者や小売店にメリットを与えられる仕事を実行することだ。

 どうすれば日本中に今まで通り花屋さんが営業し続けることが出来るか。どうしたら地元の花き市場が存続し得るか。小生が考える、小生がやるべき仕事の参考になるのではと、弊社大田花きが広報等でお世話になっている(株)パラフの小林さんから、本屋さんの存続と流通についての本『本屋がなくなったら、困るじゃないか(2016年、西日本新聞社)』を貸して頂いた。この本を二週間しっかりと読み、考えがかなり煮詰まってきた。本日は、花き業界人として、今後の仕事を「このような形でやっていきたい」ということをお話ししたい。

 本が書店に届くまでには、「取次」と呼ばれる卸が介在している。主にトーハンと日販の大手二社が中心となって、卸売市場的な役割を担っている。取次店は、本の小売価格の65%から70%位で出版社から仕入れ、書店に納品するのは平均で78%位だそうだ。物流費が割安に済む大手書店へは、仕入れ価格に少し上乗せした価格から、ものによっては仕入れ価格を割ることすらあるという。そして、大手の取次店に直接取り次いでもらえない小さな出版会社だとすると、地元にある第二の取次店、ここが小売価格の5~7%をとり、第一次のトーハンか日販の取次店に出すことになる。そこから、それぞれの店舗別に割当制のような形で本を置いてもらうのだ。

 現在の本屋さんは、多数あるコンテンツの中から売りたいものは何か、限定したものを販売する"セレクトショップ化"してきている。それが、街の本屋さんの生き残る道だ。またセレクト化してくると、現在の日本のような、再販価格は決められているが委託取扱い・返品可制度ではなく、ヨーロッパのようにリスクを冒して買取りをしながら、直接出版会社と取引する。さらに、直接取引だけだと限定されて、自分の売りたい本が売れない。また、地域の生活者を満足させることが出来ないことがある。セレクトショップ化した本屋さんが多くなると、受注先の小さな出版社に集まってもらって、事務代行・物流代行的な取次店を作ってもらい、そういう取次店からも本を揃え、品揃えを充実させていく必要がある。

 ヨーロッパの本屋さん業界でも、一人一人の生活者が買ってくれるのは一冊で、トータルでも少ない数量だ。だから、まちの本屋さんからすると、直取引しても、一定の手数料を払って取次店の物流や決済機能を使う方が安く済む。このように、取次店が物流・決済の代行をして、出版社と書店の直取引をスムーズにする仕組みが、日本でも必要だ。これを花で置き換えると、地元の卸売市場は、そういう市場外取引も物流と代金決済は市場内で行うと安く済み、出荷者と小売店に役立って手数料をもらうことになる。

 また、ご主人自らが営業している本屋さんでは、月販で350~500万円、年5,000万円の売上が一つの目標だ。優秀なパートさんがやめてしまうと、売り上げが下がってしまう。それが今の本屋さんの悩みだ。これは花店も一緒である。日本がオランダやドイツと違うのは、本屋さんの資格、花と緑の小売店の資格が、国家で明確にされていない点である。試験を受けて資格を持った人たちが、本屋さんや花店を経営すれば、あるいは、働いてくれれば、店は必ず繁盛する。今後、日本はここにも力をいれていかなければならない。

 さて、出版社の方も、中小がこれだけ多いというのは、世界の中でも日本だけだ。トーハン・日販に代表される取次店だけでなく、それなりに取次店の数があったからで、再販価格制度と委託出荷で、アイディアと資金があれば出版社をつくることが出来る。アメリカ・ヨーロッパの中小の出版会社は、基本は「取次」はないから、大手の系列化に入っている所が多い。そうしないと、消費者に届かないからだ。一方、日本の中小の出版社は、そのまま独立会社のままでも良いが、活動を活発化するには、自分の地域か、あるいは、自分が得意とする分野の取次店、即ち、花で言えば、農協や専門農協をイメージして貰えればよいが、そのような機構をつくり、集金、物流、そして情報を他の大手の出版社と同様のレベルで仕事が出来るようにする必要がある。

 情報革命がおこっている最中の本屋さん業界。それよりも、生存競争は緩やかだが、同様に街から花屋さんが消えてきている日本の花き業界。同じ規制業種として、卸売市場や取次店の機能を考えると、今までの卸売や取次店の役割を超えて、商流以外でも、小売店支援、出荷者支援を行っていくということが、生活者にとって、花店のあるまちづくりに、本屋のあるシックなまちづくりに欠かせないのではないかと思う次第である。この方向性で、卸売市場の規制緩和を歓迎し、花き市場はやっていきたい。

投稿者 磯村信夫 : 17:55

2016年9月26日

花き産業は生活者のお金で成り立つ

 「顧客は未来」という言葉が示す通り、顧客のニーズに合わせて花やサービスを供給していくことは、中間流通の卸・仲卸・小売の役目である。そして、卸は「もう何も欲しくない」という生活者に対し、「あなたの欲しいものはコレでしょう」と、生産者と一緒に新しい花を提案したり、デザイナーと一緒にスタイルや見せ方の提案を小売店に行う。青果マーケットでは当たり前の"マーケットイン"の仕事の仕方が花き業界にも必要だ。生活者からお金を貰って生活している訳だから、買ってもらうことに焦点を合わせ、仕事を組み立てなければならない。しかし、花の場合、青果より嗜好性が強いと言うのに、生活者主義、或いは、お客様主義で仕事をすることが徹底出来ていない。

 「顧客は未来」の反対語に、「業界は過去」という言葉がある。業界は過去の成功事例が基準のビジネスモデルになっている。そして、日本のように高齢化をしていくと、いつの間にか内向きになる。国内ばかりに目がいき、業界内だけに目がいく。いわゆる"ガラパゴス化"である。これは悪いことだけではない。「クールジャパン」で提供されるモノやサービス、社会のしくみ等は、このガラパゴス化のおかげで、世界から「さすが日本」と評価されている。しかし、企業側から見ると、家電製品を作っているメーカーや携帯電話のメーカー等は、結局、進化しながら独自に生き残りをすることは出来なかった。業界全体で、生活者が欲しがっているコトを可能にするモノや仕組みを作る必要があるということだ。「業界が過去」なのではなく、業界の各社が生活者主義に立ち、新しく生まれ変わる。これが出来れば良いわけである。こうなると、それを実践している日本の食品卸やコンビニ業界に、我々卸市場を含めた流通業者は学んでいかなければならない。

 世界は現在、政治経済・軍事の点において、大変不安定な時代となっている。そこへいくと日本は相対的に安定している。だから、世界政治における安倍首相のプレゼンスも高くなり、円も高い評価を受けている。生鮮食料品花き流通業界も、この安定した政治経済の基盤の上にあるわけだから、生活者の為に思い切った改革と、少なくとも、生活者に役立つよう改善する必要がある。漫然と昨日と同じことを繰り返さない。業界ばかりに目をやって、価格競争だけに走らない。昨日よりも良い一日を送りたいと思っている生活者に向け、自分の仕事で何が出来るかを考え改善する。或いは、イノベーションをおこす。そのことが、出荷者に富を渡せることに繋がるのだ。政治は一寸先は闇だと言うが、日本は安心して、それぞれの業界が変化出来る安定国家であるということを知って、実行をしていきたい。

 花き業界は大きなニーズを抱えている。人に優しい、心地よい社会とは、スペースで言えば、人に相性の良い自然がある生活空間ということだ。生物、特に植物や、少なくとも植物のデザインがある生活空間を作り、花き産業を発展させていく。

投稿者 磯村信夫 : 15:30

2016年9月19日

彼岸の時期に今後の中堅花き市場の生き方を探る

 宅急便のヤマトが日本企業で好感度NO.1に選ばれ、私たち物流業者からすると嬉しい限りである。生産者の視点と心持ちで宅急便を届けてくれるセールスドライバーの方々と接していて、このeコマース時代、まさにラストマイルの物流が大切で、しかも、いつも親切にしてくれている。そんなヤマトという企業の存在を有難いと思っているし尊敬もしている。そんな気持ちが日本中で高まっているということだ。物流業の市場の人たちも、ヤマトのセールスドライバーの人たちの気配りや対応を学び顧客視点に立って納品活動を進めていきたいと思う次第である。

 eコマースでは物流費が13%弱となるのが一般的である。これは、売上高別物流コストの比率である。アマゾンでラストマイルのヤマトや、アメリカではUPSに支払っている金額が売上高別コストの10%だというから、実際の物流量は売上高に対して12~15%、eコマース会社は占めているのではないかと思う。eコマースがますます発展すると、個別の配達する人たちの数が足りなくなる。2015年で運転手は15万人不足と言われている。今後、ますます運転手は足りなくなって、結局生産物流である纏めた荷物を産地のハブから消費地のハブに運ぶ運転手すら不足がちになる。現に、福岡-東京は、大阪に営業所のある運送会社がそこで運転手を代えないとワンマンで関東まで運ぶことはできない。そういう国のルールだ。卸売市場では、基本的に500~600km圏内はトラック運送のひとつの商圏になってきて、そこでの商売がある。しかし、それでは日本列島のように縦長で、季節ごとの最適気象条件の一級品は中核市場にしか集まらない。そうしたときに、どうしても地元産地のものは格落ちになる可能性がある。

 農業でも法人農業、あるいは企業が参入することが盛んになってきた。自分が経営しなくてもサラリーマンとして農業法人に就職する。有給休暇は取れるが、まだ所得が安いことが問題だ。月給ベースで18万円以下と地元の一般企業より2割安い。だから、より儲かる工夫をして給料を上げることが必要だが、現状は外国からの研修生労働者に頼っている。茨城の園芸農業が北海道に次いで国内NO.2になったのは、外国から研修生に来てもらい、周年一定規模で農業をまわす周年作型に成功しているからだ。法人で農業をすると雇用が発生するから、農閑期を作らずに運営しなければならない。いつも適地であれば良いが、日本は赤道直下の高地ではない。となると、品質に妥協することが必要だ。花の場合、もう一度昔に戻って、ケイトウやらアスターやら菊類やら夏でもできるグラジオラス等を茨城にお願いしている。もちろん高冷地より夏の品質は劣ることが多いが、産地名を言い、中~中の上で攻めてもらっている。生産技術の革新で、あるいは品種改良の技術で、海水浴場が近い千葉の館山で上級のトルコキキョウが作られている。こういう可能性もあるのだ。

 今一度、納期ということを重点に、そして、質は一般的に専門店チェーンや駅ビルで扱うレベル。つまり、ピンでもキリでもなく、中~中の上で通常の真ん中のもので産地を選び出荷いただく。そのようにするのが、日本の花き市場で最も数が多い20億円未満の地元の花き文化を支える市場の生き方となる。

 どの産地と組むか、またトラック輸送状況についても申し上げたが、今後とも物流コストがますます高くなり、さらにトラックも鮮度保持ができる装置を付けていくことが必要となるので、運賃をいただく、あるいは運賃を必ず意識して商品に添加して販売していく。このことを適切に行ってほしいと思う。

投稿者 磯村信夫 : 14:33

2016年9月12日

トルコ アンタルヤ国際園芸博覧会

 9月7日(水)、トルコのアンタルヤ国際園芸博覧会で「ジャパンデー」が開催された。このイベントに、6つの花き団体で構成されている全国花き振興協議会の会長として、また、(一社)日本花き卸売市場協会の会長として出席してきた。オランダの花博とは違い、ランドスケープや庭造りが多く展開されていて、切花に力を入れている国は日本が中心であった。切花のロジスティックに大変苦労している日本館であったが、フラワーデザインコンテスト元チャンピオンの村松文彦さんや假屋崎省吾さん、そして、東北花き園芸復興協議会の金沢大樹さん、いけばな芸術協会 草月流の大久保有加さんご協力の下、ドーダンツツジやオンシジュームもさることながら、リンドウやトルコ、菊など、東北の復興を印象付ける花が日本ブースに飾られ、また、パフォーマンスにも使用された。国際花博に「日本は花を添えたなぁ」という印象を人々に与えていた。

 当日はレセプションの前に、岐阜大学の福井教授が議長となり、トルコ側の園芸植木業界と日本側との話し合いが行われた。トルコと日本には友好の歴史がある。それは、昨年12月に公開が始まった、日本とトルコの合作映画の題材にもなっている、1890年の「エルトゥールル号事件」だ。遭難したトルコの方を、和歌山の方達が自分を顧みず救援に力を尽くし、治療を行い、日本が生存者を送り届けた出来事だ。そして、1985年、イラン・イラク戦争でイランに日本人が取り残されてしまった時、日本からは救援の飛行機が飛ばなかった。そこへ、「エルトゥールル号事件の恩返し」にと、トルコから来た2機のうち1機を日本人に提供してもらい、無事イランを脱出できたのである。この事件を両国で知る人は多く、また、知らなくとも、お互いに友好国だと認め合っている。しかし、実際に輸出入をするとなると、もっとお互いを知り、交流を深めなければならない。さっそく、トルコの方々に、2017年に横浜で開催される緑化フェアにいらっしゃって頂き、日本の園芸業界の実情、そして、日本の文化を知ってもらおうということになった。

 交流を重ね、良く知り、お互いに花き園芸の分野でも良いモノを交換し合う。このようにやっていきたいと思った次第である。

投稿者 磯村信夫 : 12:45

2016年9月 5日

もう一度、高齢者の生活者に合わせた需要の掘り起こしを

 秋の需要期に向けて、切花・鉢物ともに出荷が本格化してきた。しかし、トルコギキョウやリンドウ、そして、小菊は需要期の前に咲いてしまい、調整が必要なようだ。特にリンドウは、花腐れ菌核病が出やすいので、箱に入れたまま定温庫で保管することは出来ないと考えてよい。箱から出し、水揚げをして管理すれば、低温で10日間保管した後に消費者の手に渡っても、10日間はもつ。定温庫やスペースのない買い手もいようが、調整作業は小売店までの流通供給サイドの仕事である。また、9月になり、結婚式や披露宴に使用される花が売れ始めている。結婚する人は年間約60万組、そのうち挙式する人は半分の30万組、さらに、その中の1割はハワイ他、海外で式を挙げる。このように、結婚式や披露宴をする人たちが限られてきた。従って、セレクトされた納品業者に活躍して貰わないと、素晴らしい花のある結婚式が出来ない。

 少しおおざっぱに言って、日本は現在、年間125万人が亡くなり、100万人が生まれている。このような人口減の中で、「あらゆるものが需要減で、縮小均衡の日本産業界だ」と思うのなら、それは悲観的過ぎる。我々が取り扱う生鮮食料品花きは、消費されてなくなる商品で、需要のチャンスが何度もあるからだ。また、鉢物でも、母の日にプレゼントされたアジサイの鉢を庭に地植えして毎年楽しんでいるが、もっとあっても邪魔にならない。だから、来年もお母さんにアジサイの鉢をプレゼント出来る。花はそういう意味で、普通の物財の商売よりも楽観的にみて良い。

 ドイツと同様、花き産業は1970年代・1980年代生まれに上手にアプローチしてこなかった。ここの消費を増やすよう、現在もプロモーションを行っている。さらに重要なことは、日本は男女平均でみると、世界最高位の長寿国だということだ。従って、健康寿命とクオリティオブライフに目を向けた消費拡大を図ることが必要だ。イノベーションで、より健康で質の高い生活をしてもらう。そういうものを生み出していく。

 関西は薬・繊維産業や弱電業界が多かったので、団塊ジュニア世代の人口比率が少ない。従って、関西の花市場は、地方に向けての転送需要を獲得する必要がある。しかし、国は、アンチエイジング等の健康寿命とクオリティオブライフの産業を、関西地方に集中させようとしている。従って、人口が増え地域は活性化する。関西だけでなく、日本人誰もが生活者の目的に合わせたイノベーションをする。花もそこに向けて行く。例えば、身体は病気でも精神は病気にならないよう、病院でもっと花を飾ってもらう、病院生活でのクオリティオブライフ。また、認知症予防の為の高齢者のフラワーアレンジメント等が挙げられよう。

 その国の素晴らしさの証である長寿。日本は世界のどの国よりも先に長寿社会になった訳だから、今は、介護やケア付き施設、葬儀にイノベーションが起きている訳だ。花も"ピンピンコロリ"の需要に合わせた花やみどり、クオリティオブライフに合わせた「オフィスに花を」等、日本の生活者、特に、65歳以上の生活者に合わせた需要に合わせ、花のサービスを供給する。花で、そのニーズを満たすイノベーションを今後行っていく。「日本で成功したら、他の先進国にも輸出出来る」という意気込みで、我々花き業界も、日本の高齢化社会に合わせた花でのイノベーションを、仏花の組み合わせや大きさ、色、香り等で行い、我々の所得の向上につなげていく。これが欠かせないことと思う次第である。

投稿者 磯村信夫 : 16:30

2016年8月29日

新しい大人たちへ、まずバラから提案する

 日テレの24時間テレビが終わり、大田花きの『大田バラ会議』が終わって、花き市場は今日から本格的な秋物商戦に入る。あいにく、台風10号が接近しており「さあ、秋だ。これから売るぞ!」という訳にはいかない。しかし、夏を振り返り、これからの秋の需要期の作戦を練る週となる。

 今年はリオオリンピックがあり、「真善美」の感動を、普段の夏より多く頂いた。しかし、一方で、素晴らしい働きをした方々の訃報に悲しんだりもした。例えば、その中の一人で、新しい現代音楽を創ったアメリカのミュージシャン・プリンス氏がいる。モーツアルトやラフマニノフの系譜を継ぐ、「自分で作り、自分で演奏」をしたミュージシャンであった。「真善美」に関するモノは、人種や国境を超え、強く我々に訴える。

 日本は農耕地帯を取り巻くように森があるので、江戸時代でいえば、藩ごとに封建制が敷かれ、文化が花開いた。この風土から、ヨーロッパと同様の民主主義や国家が生まれた。しかし、世界には、この農村地帯の背後も牧草地帯にしかならない平原のところがある。そのような風土のところは、部族国家を束ねる部族長が一部族で世界を広げ支配し、多様化を認めない。日本やヨーロッパは、農業で言えば、大面積で均一的な作物を作らなくとも、高品質の作物がつくれる範囲内の面積で、それぞれの農家が農業を行うことが出来たのだ。

 「真善美」を見る時、バラを美しくないという人は、よほど可笑しい人であろう。バラの咲き姿や香りをかいで、因果律は分からなくとも人は感動する。日本のバラ生産は、「真善美」を極めようとするなら、海外の生産者の1/10の3ヘクタール以下でも充分やって行ける。もっと小面積の場合は協同出荷が欠かせない。

 次いで現代の花き消費だが、我々、日本の花き業界は、ドイツと同様、1970年代生まれの人達に対して、また、それよりも若い1980年代以降の人達に対して、花の素晴らしさを伝え損なってきた。豊かな時代に育った今、社会の中核を担っている新しい大人に、否定できない美しさを持つバラから、花のある生活を味わってもらい、忙しい仕事人生の中でも、判断も、身体も健全になってもらえるよう助力したい。精神の背筋を伸ばす「真善美」の中で、バラは、本物しか持ちえない力を持っている。煩悩で行動しても、あまり人から注意を受けなくなりつつある現代において、我々花き業界は、花き草木の真と美で、社会が良くなっていくことを願い、仕事をしていきたいと思う。かつての平原でつくられた、大規模栽培のケニア・エチオピアのバラと、日本の様々な国内需要を丁寧に拾った日本のバラと、棲み分けながら消費を拡大していく。

投稿者 磯村信夫 : 15:39

2016年8月22日

不足を補う市場間連携

 お盆の需要は、値段は抑えられているが確実に大きくなっている。こんなに暑い時に花を使ってもらえるなんて、日本の伝統文化は本当に有り難い。確かに、田舎から東京に出てきてお墓を守れなくなったといったこともよく聞く。しかし、急速にお墓参りに行かなくなる、或いは、花が売れなくなるかというと、そんなことはない。今年の小売店やスーパーマーケットの花売り場との競合は、直売所であった。場所によって、直売所と競合し思ったより売れなかったとする量販店や専門店があったが、どこかで花を買ってくれれば問題なしである。

 今年のお盆のポイントは、手不足から花束の供給が間に合わなかった点である。素材では、芽かき等の手間のかかる一輪菊や一輪のカーネーションが足りなかった。また、物流では、とくに、ジャストインタイム物流と消費地での個配物流に手不足感があった。物日のたびに日頃の何倍以上も売れる花の特性を考えると、今後どのように需要に合わせて品物を調達するか。必要なのは、前から買っても質を落とさない定温庫や、需要のピークに対応できる荷捌場だ。花き業界の成長は、この鮮度保持物流と人手不足問題にかかっている。これらを解決するためには、物流網の発達により、拠点市場と地元市場との連携でリテールサポートをすること。これをまず行っていくことである。

投稿者 磯村信夫 : 11:22

Copyright(C) Ota Floriculture Auction Co.,Ltd.