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2015年6月22日

初心にかえって取り組む新荷捌施設投資

 現在大田花きでは、大規模な新荷捌施設建設プロジェクトが進められている。この取組みをみていると、二十数年前、大田市場に入場した時のことが思い出される。当時市場外流通の台頭に対し、卸売市場流通強化策として老朽化した施設の建替え、市場の統合・大型化が盛んに進められていた。青果、水産につづき花きについても大型市場流通への取組みが始まった。当時、花き流通は地方卸売市場が中心となっていたが、青果、水産に比べまだ市場流通が強かった。しかし、いずれ同じような課題に直面すると想定された。当時卸売市場を取り巻く流通環境は大きく変わっていたが、その変化に十分に対応できているとは言えなかった。従って、これまでの延長線上での施設建替え、大型化だけではない取組みが求められていた。

 大田市場での当時の取組みは、正に流通環境変化に対応した新しい卸売市場づくりへの挑戦であったと思う。現磯村社長(当時は専務で若きリーダー)を中心としたワーキンググループで、これからの卸売市場にはどのような機能が求められ、それをどのように実現すればよいかということを白紙の状態から議論した。私も当時エンジニアリング会社の立場でこの取組みのお手伝いをさせていただいた。卸売市場整備の場合、どうしても施設建設が中心となってしまう。他の卸売市場整備プロジェクトを見ても、施設(ハード)建設プロジェクトに変わってしまい、生産地から小売店、消費者まで流通システム全体の中での卸売市場の役割・機能が見直されていない。流通環境変化に合わせ、取引方法、品質管理方法、集荷から分荷、配送までの荷の取扱い方法など、運用システム(ソフト)面での見直しも必要であり、ソフトとハードを一体にした見直しが求められていた。また、取組みによっては、業界全体で対応しなければならいケースも出てくる。機械セリシステムの導入はそのようなケースであったと思う。

 機械セリシステム導入にあたっては、産地、卸売市場などを回りアドバイス、コメントをいただいた。新しい取り組みへの意欲は評価していただいたが、上手くいかないだろうとのコメントが殆どであった。確かに、当時の流通環境そのままでは、機械セリシステムを導入してもうまく機能しなかったかもしれない。事前出荷情報も十分に入手出来なかったし、荷姿も段ボール箱以外のものがかなりあった。また、段ボール箱だけで何百種類もあり、入数も統一されていなかった。出荷ロットも小さかった。これらが変わらなければ、どんなに性能の良い機械セリシステムを導入しても効率的に機能しなかったろうし、取引方式として受け入れられなかったであろう。これら流通環境の整備は、生産者から小売店までの業界全体での理解、協力がなければ実現しなかったものと思う。機械セリシステムには、取引の公平・公正、取引時間の短縮、情報共有化、事務処理の効率化など大きなメリットがあった。又、取引情報は物流合理化にも活用でき、後の自動仕分装置導入につながっている。開場時はシステムトラブルもあり、新しい取引方式が受け入れられるには時間がかかることが想定されていたが、一ヶ月位過ぎたころには、産地と買参人双方から圧倒的な支持を受けていた。

 当時の関係者の努力の賜だったと思う。卸売市場流通の競争力強化を図るためには、卸売会社の取組みだけはなく、生産者から小売店までの流通システム全体での対応も必要である。常に環境変化への対応は求められている。今回の新荷捌施設が、業界関係者の理解・協力を得て業界全体で有効活用されることを期待している。

取締役 奥野 義博
(元 JFEアドバンストライト株式会社 代表取締役社長)

2015年6月22日 06:54

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