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2015年7月20日

最新アメリカ園芸事情

 毎年6月末頃、米国農務省より園芸生産統計が発表になるが、1980年より多少欠けている年があるものの、流れが途切れない程度の統計をコピーして保存している。正式の統計資料の名称は:USDA Horticulture Crops 2014 Summaryで、この名前をネット検索すると過去数年のデータを無料で入手できるので便利だ。7月1日に得た最新情報から、いくつかのトピックを簡単にお伝えしたい。

 世界の園芸三極はアメリカ、欧州、日本であるが、欧州は国が多くあるため統計がまとまっていない。また、日本は農水省が統計を取っているものの、例えばパンジーが一人勝ちしていることもあり、他の草花の出荷統計等は10年ほど前からまとめていない。そこで、アメリカの単一巨大園芸市場を支える生産状況を時系列で分析してみると、そのまますぐに参考になるとは言えないが、面白い動きが把握できる。まず、この園芸統計は2005年より主要な生産地15州に絞り、年間売上げが1万ドル(100万円)以上の生産者(大規模のところは生産会社)を対象に調査している。ドルで話すと面倒なので、以降100円/US$換算で記すこととする。

 はじめに、基礎知識として日本とアメリカの基本的な園芸生産品の違いを述べることとする。

 日 本 (2013年農水省統計)    
1. 切り花   2099 億円      
2. 鉢物     980 億円      
3. 花苗類    323 億円      
4. 球根類    24 億円      
  
 アメリカ(USDA2014年統計)
1.花壇用草花   1260 億円
2.鉢物(花)    788 億円
3.観葉鉢物     599 億円
4.鉢物(宿根草)  562 億円
5.切り花      354 億円 

 日本では切り花がダントツであるが、アメリカでは切り花需要.消費は非常に大きいものの、生産地は中南米(コロンビア、エクアドル等)に移転しており、産地から冷蔵され飛行機でアメリカ全土に運ばれる。遠路運搬の難しい草花苗類がアメリカに残って巨大産業に育ってきたのだ。

 ここで、アメリカ草花苗産業に使われる花の種類を見ると、今回の統計で初めてペチュニアが、常勝品目のゼラニウムを押え首位に立った。それは、このペチュニアという花が、近年新しい花の色や複色系が登場し殆どない色は見つからないほどになってきたこと、草姿もコンパクトから匍匐するものまであり、花壇、吊鉢、プランター等どこにでも使え、春先より秋まで咲き続ける特性を持ち、さらに種子のみならず挿し木苗でも増殖できるという多様性を兼ねそろえた植物だからだ。従って、今後もこの花の花壇女王の座はしばらく揺るぐことはないと考える。

 もうひとつのトピックは、2007年に2位に上りつめ、以降2011年まで3位を堅持していたインパチエンス(アフリカホウセンカ)が急落して現在5位にまで下がったことである。その原因は、2011年ミネソタ州で発見されたベト病(Plasmopara obducens)という病菌が瞬く間にアメリカ各地に拡散し、この花を植える花壇が汚染されてしまったからだ。水で伝染する恐ろしい病気でこの花だけを冒す菌であり、欧州でも問題となっていて日本にも入国してしまいかねない。美しい花どうしの戦いに加えて、病魔が割り込むといった現状をきちんと把握しておくこと必要がある。 

取締役 須田 畯一郎
(元 株式会社サカタのタネ 代表取締役専務)

2015年7月20日 10:11

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