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2006年6月27日

Vol.17 長野県 上伊那郡?飯田市 編

長野県産地訪問第2弾!今回はアルプスの山々に囲まれた上伊那郡?飯田市へ。
国道153号線沿いを南下して、4件の拘り産地を探索してきました!

?唐澤忠克…お花屋さんの味方です!?

  (長野県上伊那郡)
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唐澤さんのハーブMIXは“若草物語”、さらに月毎
旬のハーブ類をMIXして、例えば今月なら
“若草 水無月”といったネーミングが
つけられています。
きっと詩人のような方なんだろうなぁ、とお会いする
前から勝手に想像を膨らましておりました。


さて、さっそくハウスにお邪魔すると、ワイルドストロベリーがありました。
なんと、5年間 無農薬、水だけで育っているのだとか。
赤はこんもり盆栽のように、白は勢いよく!…と色で生育にも差があるんですね。
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「イングリッシュローズに襟のようにして組み合わせるとかわいいんだよねぇ」と唐澤さん。
でも実はみんな大好きだけど、その葉っぱが花束に使えるなんて想像しませんでしたよね。
「商品になりそうなもの探してて、イチゴの葉っぱと花を組合わせたらいいんじゃないかって、
すっげぇ苦労して見つけたのに、知り合いの女の子にハウス見せたら『わぁ?コレかわいい?!』
ってひと言。」
「女の子のかわいいものに対する感性、見つける力は違うよね、特に3枚葉って女心をくすぐる
みたいね。」

スゴイ!女心まで読んでます。
時にはコンビニで若い女の子が読むような雑誌を立ち読みするとか。
「初めは恥ずかしかったけど、ファッションとか流行してる化粧品の色使いとか勉強になるんだよ。」
そんなリサーチ活動によってヒントを得ているんですね。

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    利休草                 ブルースター                ヒマワリ


唐澤さんが研究熱心になる切っ掛けは、恵比寿にある花屋さんで売られていたブーケとの出会い。その可愛さとセンスの良さにイイモノの価値観が崩れるほどのショックを受けた事なのだとか。
そして、“誰が言ったからじゃなしに、自分の目で確かめて、信じたことを自分の納得いくようにやる!”というスタイルに行き着いたのです。
その為には月に一度は東京でお花屋さんを見て廻ったり、直接意見を聞いたりしているそうなん
です。
もしかしたら、あなたのお店にも???
研究熱心な唐澤さんの熱い思いが、話の節々から伝わってきました。

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それから、ワックスペーパーの秘密を聞いてみました。
すると、「例えばラムズイヤーがダンボールの茶色や新聞紙に包まれているより、この方が箱を開けたときのイメージが違うでしょ?」
「セリの一瞬でイメージを伝える、デザインをひらめかせるにはどうしたらよいのか?って考えたんだ」
そうしてグリーンを際立たせる落ち着いたトーンのワックスペーパーに至ったのです。
セリ場での見え方まで考えているなんて、感心するばかりの私達でした。


そしてなお、「これからも、モノを見る目、技術をつけていきたい」と意欲的!
座右の銘(?)は『いいものを高く作れるのは当たり前、いいものを安く作ってこそ職人のワザが活かせる』という日本の町工場の技術者の言葉だそうです。

お花屋さんの味方!唐澤さんの花をお試しあれ!

?田中一男…主役から脇役まで 幅広い品揃えが魅力!?

  (長野県上伊那郡?シード会)

最近、地元の村議会議員のお仕事が忙しい田中さん。村おこしの一環として地元産商品の開発も
手掛けていらっしゃいます。ちょうど訪問した日も地ビール作りの為、山に水を汲みに行ってらしたとか。
そんな田中さんの本業の(?)花を見せていただきました。
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                               ↑ずっと私達の足元をうろちょろしていた
                               人懐っこい猫ちゃんと伴に。
                               ちなみに猫の名前は仏語で黒を意味する「ネロ」
                               だそうです。
    
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クレマチスのハウスを見ていると…あれ?区画からはみ出してるインテグリフォリアの白を発見!
「コレは?」と尋ねてみると、「もう作ってないんだけどコレだけ残ってるんだよ」と。
そう言えば、インテグリF白ってピンクやブルーに比べると入荷量も少ないんですけど…。
貴重な存在ですよ。
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そして、シードも出荷されてます。
花が終わっちゃったらどれも一緒!と思いますが、
驚くことに色によって出来が違うらしいのです。
田中さんは「中でもブルーの方がきれいなシードに
なるんだよ」とおっしゃっていました。

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次にエリンジュームを見せていただきました。
紫外線に当たることでキレイに色付きます。
まだコレは変身途中、出荷される6月下旬には
色ものってますよ!

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マリーゴールド、アマランサス、チョコレートコスモスが
秋の出荷に向けて芽を出し始めていました。


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全て田中さんのセレクトかと思いきや、「コレは息子が始めたんだよ、
これからは息子に任せるから」と。
後継者不足でお悩みの生産者さんには羨ましい話ですね。
ハウスには他にもダリアの黒蝶・熱唱、ベッチーズブルー、
あじさい、ビバーナム、ギボシなど様々な品目が栽培されていました。
主役から脇役まで揃ってます。

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そして、「これが主力のハウスだよ」と案内されたのがカーネーションのハウス。
残念ながら、まだ花は見れませんでした…。
SPカーネの一重オレンジ、薄ピンク色の“クィーン”、濃いピンク色の“ピンクハート”などなど
沢山の品種がありました。

昭和48年から花作りを続ける田中さん。
減反政策が始まって、周辺にハウス団地ができた事がカーネーション栽培を始められた切っ掛け
だそうです。始まりはそうでも、長年花を作り続けてこられたのはなぜですか?と言う質問に
「う?ん」と考えた後、「やっぱり、花が好きだから!それが一番かな。」という答えが返ってきました。

穏やか?な雰囲気の田中さんが作る花々、これからは若い息子さんの意見も取り入れられて
何が出荷されてくるか注目です!

?小林淳一…年間通して安定品質のナデシコを!?

  (長野県上伊那)

ハウスの裏はすぐ山。2100坪という広大な面積でナデシコを栽培しています。
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                                     (只今 採花中)

パチン、パチンと軽快にはさみの音が響く採花風景を見ていたら、「市場の人に切って欲しいんだ」と
小林さんにはさみを渡されました。
「切っていいんですか?」と花をたどって足元を見ると、なんと茂っていて咲いた花がどの茎につながっているのか分からない…1本切るのにも時間がかかって大変な状態です。
慣れない内は翌朝になると剪定した周りの花がしおれていることもあるとか。
これは余計な茎まで傷つけてしまっている証拠なのです。
だから、『はさみを閉じた状態で差込み、上で花を摘んだ指の感覚でコレだ!っと思ったら切る』
と事も無げにやって見せてくださる小林さんでしたが…難しい!!!
そして、「パソコンをキーボード見ないで打つのと一緒。自分には真似できないけどね(笑)!」と。

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                            プロはよそを向いていても切れちゃいます。スゴイ!
                           「切るの楽しいの」と嬉しそうにご指導してくださいました。

こんなにカワイイ花達が咲いています♪
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それから「みんないい品物作る為に努力するけど、うちはいいもの作らない為に努力してるんだ」
と小林さん。私達の頭には???
どういうことかというと、ナデシコは一般的に1番花は立派に出来るけど、2番花はそのぶん貧弱な
出来になるのだそうです。
だから、1年中コレで売りたい!というスタイルには向かないのです。
そこで小林さんが考えたのが“立派な1番花を作らない=いいものを作らない” という事。
そうして冬も夏も同じボリュームの花ができるように工夫をされているのです。
根元が茂って見えないような作り方も、そんな工夫の表れだったのですね。
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足元にはもみ殻が敷き詰められていました。これにも秘密があるのでは?と尋ねてみるとこんなお話が聞けました。
「ナデシコはカーネーションに比べてデリケート!
だから同じ肥料を与えると根がやられてしまうほど弱いんだ。」
その為に化学肥料ではなく、ボカシ(動物性や植物性の肥料)を使用しているのだそうです。
ふすま(製麦時に出る小麦の皮くず)や、焼きぬかを混ぜたりして、とにかく根をいじめないように細心の注意が払われているのです。

↓道の駅ではこうして販売されていました。
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あえてダイアンサスではなく、ナデシコと呼んでいるのは、
『楚々としたもの作りたい!』という思いから。
「けれども、うちの花は細くてもしっかりしていて、花保ちがよいんだ」と小林さん。
自身をもってお奨めできるだけの工夫やプロの技を見ることができました。

2100坪の広大な面積で、ダイアンサスだけを生産している、というのは他の生産者に聞くと考えられないことのようですが、小林さんは 「とてつもないことらしいん」 と他人事のようにおっしゃっていました。

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                                  ↑こうした努力によって生まれた花は、
                                  数々の賞を取っていました。 

楚々とした雰囲気と丈夫な茎・花保ちを併せもつ小林さんの花を知るとナデシコのイメージが
変わるかもしれません。

?松山洋蘭園 松山彦志さん…存在感ある蘭の魅力を伝えたい?

   (長野県飯田市?シード会)

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訪問した日で出荷もひと段落、といった時期だった為、残念ながら花はあまり見られず…。
でも松山さんの拘りは伝わってきました!

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水遣りはこの管で足元から点滴のように与えています。
さらに、水不足にならないように上からもかけるのですが、花に水が当たってその日中に乾かないとシミになってしまうので、天気にも気を配りながらの作業なのです。

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松山さんのシンピの魅力、美しくしなるラインは松山さんの手によって作られていました。
重りをつけたりして自然に見えるように人為的に曲げていたのです。
「だけど立ち上がりは付けるよ、だって花屋さん困るでしょ」と
使い手の気持ちもしっかり考えていらっしゃいました。

そんな説明を聞いていると、突然ハウスの中にシャワーのような雨が降ってきました。
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細霧冷房(さいむれいぼう)です。
葉についた水滴が蒸発する時に空気中の熱を消費することで温度を下げる、という仕組みです。
でも「水を沢山必要とする夏場は、これが生命線となった!」と思わぬ効果も得られたようです。
さらに、「本来、半日陰を好むシンピジュームを直射で育てるには、葉の温度を上げないようにすることが大事なんだよ。
何でかと言うと、シンピは気孔の数が少ないからね。」と、植物についての基礎知識も勉強されているからこそ、植物の気持ちを汲み取り、作りにも自信が持てるですね。

そんな松山さんが作るのはシンピジュームだけではありません。
「採算を考えればシンピだけ作ってればいいけど、生きがいなんだ」というのが、少量多品種を誇る洋蘭類のハウス。
パフィオは2?3年に1度しか咲かないのです!
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洋蘭の魅力は「1輪の存在感」と語る
松山さん

こんなに個性豊かな表情をもつ蘭がいっぱいです。

右の松山さんが手にしている蘭も、ひげの長?いおじいさんのような趣きで個性的!


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これらの洋蘭は、松山さんのセレクトによりミックスでお届けしています。
シンピジュームのように安定して、計画的に切れるものではないので、
「あの時買ったアレがほしい」と注文しても、手に入るかどうかは分かりません。
でも、だからこそ“その貴重な花との出会いと、その時の感動を大事にしてほしい”と思わせる花
です。
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松山さん自信も、『届いた商品を見て、デザイナーの感性で飾って欲しい。
また、花を飾ることの楽しさを感じて欲しい。』そんな思いを抱きながら、箱詰め作業をされているのです。
「品質の違いは花屋さん、消費者のところに届いて初めて分かる。だから、作り方(土・水遣り・肥料)に拘りの気持ちを忘れずに、自分が感動した花をより多くの人に共感してほしい」
そんな思いで花作りをされてる素敵な松山さんご夫婦でした。

?おまけ?
(その1)
新たな感動を求めて松山さんも時折訪れるという隣町の“蘭ミュージアム・高森”では、
原種を中心とした珍しくて、神秘的な世界のランに出会えます。
 ホームページはこちらから→http://www.ran-museum.jp/

(その2)
松山さんの案内で、不思議な花が咲くという山へ行きました。
コレなんの花だか分かりますか?
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答えは、銀竜草(ギンリョウソウ ・ ギンレイソウ)です。
山地のやや湿り気がある腐植土の上に生息する腐生植物で、透明感のある白色を
しています。ほの白く光る感じがなんとも幻想的な雰囲気でした。


長野 上伊那?飯田市の格言



・カーネーションだけじゃない!魅力的な花が生み出される上伊那地域に注目すべし。
・花屋さんの使い勝手を考慮した、拘りのミックス花を使ってみるべし。

・自然なラインの美しさや、その花の持つ性質をデザインに活かすべし。

・荷姿にも生産者のメッセージが詰まっている!箱を開き、花に出会った時の感動を消費者に伝えるべし。


・こんな人が持ったら…、こんな花がメインだったら似合うかな?…と花束をイメージして作られるMIXハーブ など、唐澤さんの新しい発想で生み出される商品から目を離すべからず。

・多くは語らない控えめな人柄だが、流行をキャッチするのは人一倍早い!
 田中さんによって次々と作り出される時代に即した花々に注目すべし。

・楚々とした雰囲気に魅せられた小林さんが、創意工夫の末に生み出した細くても丈夫で、花保ち
抜群のナデシコをぜひ使ってみるべし。

・蘭の魅力は1輪の存在感!さらに、松山さんによる愛情が注がれて一段と美しいものに!
 その花に初めて出会った時の感動を大切にし、デザインに活かすべし。

(文責 中川美紀)

2006年6月21日

Vol.16 愛知県 I&Tクレマチスガーデン

出張! 産地ウンチク探検隊 

愛知県 I&Tクレマチスガーデン 『もっとクレマチスを!』


よく晴れた午後はすっかり初夏のここち。今年もクレマチスの季節になりました。
近頃の八重咲きブームでさらに加速したクレマチス人気。
一大ブームの予感を感じたウンチク探検隊は愛知県まで遠征、I&Tクレマチスガーデンを
取材してまいりました!愛知県といえども広し・・・クレマチスガーデンは愛知県稲沢市、
カラーやアルストロメリアでも有名な海部花きセンターにもほど近い場所に位置します。

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天気は快晴、ぬけるような青い空。
名古屋市から40分、どこまでも続く平坦な道を車で何時間走ったでしょうか。
きれいに舗装された道路は広々としているのに人っこ一人歩いていません。
コンビニの駐車場の広さまでも目にまぶしい。
静かでのどかな所です。
どうやらこの辺りは枝物の栽培地らしく、あちこちに枝物畑が見えました。


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あっ!見晴らしの良い平野に、何棟も連なる立派な鉄筋のハウスを発見。
今日の目的地I&Tクレマチスガーデンに到着しました。
ハウスの横で手を振って出迎えてくれたのは社長の石黒さん、初めまして!

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「よく来たね」と笑顔の石黒さん。穏やかな語り口調にひきこまれます。
あっ嬉しい、うちの会社のカレンダーを使ってくださってますよ。

石黒さんはサラリーマン時代から大好きなクレマチスをコツコツと研究、育ててきた
クレマチスの達人。
定年後はますますクレマチ切花ひとすじに、育種と普及につとめてきました。
流石、本当にたくさんのクレマチスハウスをお持ちです。
もちろん育種の企業ヒミツもあって、OKをいただいたハウスを密着取材する私たち。

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それでは早速ハウスを拝見させていただきましょう。こうやって圃場に足を踏み入れるときは
いつもちょっとドキドキします。クレマチスはどんな姿を見せてくれるのでしょうか。
ハウスの天井の高さも然ることながら圧巻な光景。
クレマチスってこんなに大きな背丈になるんですね!

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細い通り道の両側にそびえたつクレマチス。高さは2?3m近くあります。
ひらりと咲く大輪の白花の清々しいこと。大輪一重咲きのパテンス系をはじめ
今年一番人気の八重咲き「キリ・テ・カナワ」、純白が上品な「雪の粧(ゆきのよそおい)」が
顔をのぞかせてくれました。手の平よりも小さくほど良いサイズですが
さすがは八重、華やかに見えます。
八重咲きは、開花の後ちょっと花びらが落ちても形崩れしないから良いですね。

DSCF0806.jpg「雪の粧」
DSCF0795.jpg「キリ・テ・カナワ」まだ咲きかけ。

今にも咲きそうなキリ・テ・カナワ。花弁の裏側は白色で産毛がふんわり。
一重咲きのパテンス系品種とくらべると…見てください、このほっこりしたボリューム感。

「キリ・テ・カナワは茎が強いから切花向けだね、花もちも良いよ。」

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確かに細くてしっかりした茎、これならオアシスにシャキッとささりそう。
切花に向いているのはパテンス系の品種とのことです。

石黒さんはクレマチスを特に切花向けに普及させてきました。
切花に向く品種選びから、栽培過程でも脇芽を間引いたり…
本当に色々と手間がかかります。
「クレマチスを切花に?そんなクレイジーな!」
当時そう言われていたのが、今やクレマチスは大人気の切花に。
成果はちゃんと実るんですね。

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キリ・テ・カナワというオペラ歌手がいますが、その方にちなんだ
ネーミングなのかな?ニュージーランドのマオリ音楽を歌う人気の歌手です。

DSCF0820.jpg「キリ・テ・カナワ」咲いたよ。

石黒さんのクレマチスは、すべて支柱仕立て。支柱にツルをクルクル巻きつけている。
ネット仕立てだと、ツルがからまって取り外せなくなるからなんですね。
「クレマチスのツルはお隣さんとすぐ仲良しになっちゃうんだよ」
困っちゃうんだよ?と石黒さん。
一晩のうちにツルがあちこちと手をつないで、からまっちゃうらしい。
してみれば、クレマチスって本当に良く動く植物なんですね。

「長いツルの柔らかな動きが、一番の魅力だね」ズバリ語る石黒さん。

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一緒にくるり、仲良しクレマチス。

そう言われてみれば、クレマチスって立ち姿が美しい。
クレマチスのKlema(クレマ)をギリシャ語でつる、巻きヒゲという意味ならでは。
これがツル植物の魅力なのです。

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カッコイイクレマチスがある、と近頃、市場担当者の周囲でひそかに熱い
「花炎」という品種。その花炎にお目にかかることが、今回のミッションでもありました。
細く縮れた花弁は八重咲きで、鈍色の赤から緑へグラデーションが個性的な品種です。
んー、どう見ても玄人向け。

(花炎 写真 ?少々お待ちください。乞うご期待!?)

「花炎を今年の秋のスーパースターにしたい」と隊長。
石黒さん「いやいや、今年はキリ・テ・カナワだよ。花炎はまだこれから…」と
そんなやり取りも。秘蔵っ子は、じっくり、ゆっくり、ブームを待つのです。

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あでやかなパテンス系品種。クレマチスの色と形は和にも洋にもマッチしそう。
一年苗で、1株から10本ほどの花が採れます。

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「手間のかからない出荷がテーマ。
ハウスの外でも育てられるように色々試しているところだよ。」
やはり、これだけ立派なハウス設備を維持するのは大変ですよね。
今のところ、ハウスの中で育てるのは特に丈を伸ばして育てたい品種や
病害虫に弱い品種と白花の品種。でも、どうして白い品種なのかと言うと…?
「外だと酸性雨で花シミになっちゃうからね」と石黒さん。
酸性雨という言葉にドキリ、深刻な環境問題を垣間見てしまった。

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早速、ハウスの外で栽培中のクレマチスも見に行きました。

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そこで見つけた、奇妙な八重咲きカザグルマの一種。カザグルマという品種は日本の山野に
もともとあるクレマチスの原種です。
でもこれは奇妙なツルを伸ばして、なんと自分自身に巻きついて花首を折っている!
自然界で八重咲きとは、奇形なんだそう。ツルを自分に巻きつけようとするのは
正常なもとの葉っぱや茎に戻りたいという願望なのです。

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ようやっと顔を上げてクレマチスガーデンの周囲を見渡せば、広々と見晴らしの良いこと。
遠くの草原にヒバリがさえずっています。都会じゃめずらしい、白黒のツートンカラーの
野鳥カササギ(天然記念物)も見付けた。時おり「ケーン、ケーン」と聞こえるのは?
「ああ、このあたりは野生のキジがいるんだよ。」
そぅですか!…もう何がいても驚かないぞ、と。

ふたたびハウスの中へ。
香りがあるクレマチスに出会いました。来た来た、本日のサプライズ。
ウンチク産地にお邪魔すると、いつも何かしら新しい五感を体験するのですが
今日は初めてのクレマチスの香り。パウダリーなバイオレット(スミレ)に似た
あわーい優しい香りがするの。

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これがその「ワイドボーイ」という木立性の品種。さすがにこれまで一度も
かいだことの無い花の香りがします。芳香性をもつクレマチスは、木立性の
インテグリフォア系品種に多いそう。
「散りかけが一番良く香るんだ」と石黒さん。ふんふん、確かに十分開いた花ほど
香りが強いみたい。てことは、咲きかけが一番良く香るバラとは正反対なんだ。

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ヨーロッパではクレマチスを「旅人のよろこび」と呼ぶ。
それは道端や生垣に咲き、葉で木陰を作って旅人を休ませてくれるから。
石黒さんはクレマチスの木陰に何を思うのでしょう。

「40年以上、ちまちま研究しておったのよ」

もともとサラリーマンだった石黒さん。20代の頃から大好きなクレマチスを
少しずつ勉強しながら育ててきたといいます。

「もっと、もっとクレマチス。そう言いながら10年経っちゃった。」

大好きなもののことをいつも考える、追いかける、ビジョンを描く。
そうしたら何か大きな流れに乗って少しずつ近づいて
いつか、本当に叶ってしまうのでしょうか。

「切花をたっぷり普及させたら、いつか庭にクレマチスのグランドカバーを作ってみたいよ。」
まだまだ夢は尽きません。

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「クレマチスの育種はダメでもともと。でも、この子とこの子をかけ合わせたら良いかな?って。
毎朝ここに来るのが本当に楽しみなんだよ、今日はどんな新しい花が咲いているんだろうって…」
これだけ石黒さんに思われたら、咲くしかないでしょクレマチス!

石黒さんのお気に入りはテキセンシス系の「プリンセス・ダイアナ」。
ベル咲きのチェリーレッドがとてもキュートです。

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それにしてもダイアナさんは、空に向かって3mはあろうかという草丈。
上のほうは採花するのが大変そうだぁ。
そんなわけで、この草丈のまま出荷することも出来るとのこと。
テキセンシス好きな皆様、ご注文是非いかがですか?

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ババーンとそびえ立つ

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クレマチスの壁!


ここで問題。さて、これはなーんだ?!

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キューティクルつやつやの金髪、じゃありません。念のため。

このモシャモシャは、クレマチスの花が咲き終わって中心の部分が残ったもの。
ひとつの植物が育って花を咲かせて、実がなるまでに一体どれだけ姿カタチを
変えるんでしょうか。

クレマチスの株をひとつひとつ見ていると、ツルの動きの面白さも然ることながら
たまにドキッとするような葉っぱを見つけます。
小づくりなのに、上品な形をしているんです。実に繊細でキレイ。

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もうずっと利久草が人気ですが、つる性の葉ものとして
出荷されるのも間近かもしれません。

クレマチス百面相をご覧あれ!

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喋り出しそうなくらい表情ゆたかなクレマチの葉っぱたち。こうやって毎日、身振り手振りが
さかんだったら見ていても飽きないですよね?

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クレマチスの格言 ?自選、他選のクレマチズム?

その1、もっとクレマチスを!切花いっぱい普及させよう。


その2、散りざまに魅力あり…葉の姿、実の姿にも注目すべし!


その3、クレマチスの水揚げは切って30分間が勝負。たっぷり水を吸わせること。


その4、クレマチスはなるべくオアシスにさすべからず。
     クレマチの茎は空洞になっているので、オアシスが詰まって
     水上がりが悪くなりがち…!

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(文責 三浦 彩)
Copyright(C) Ota Floriculture Auction Co.,Ltd.