大田花き 大田花きコーポレートサイトへ
 

« vol.46 秋田国際ダリア園 | トップ | vol.48 山口県 柳井ダイヤモンドローズ(九州大田会) »

2007年11月27日

vol.47 千葉県 鈴木正之(シード会)

今回は房総半島の南端部に位置し、温暖な気候にはぐくまれて、稲作、酪農、そして花き栽培が盛んな町“丸山町”を訪ねました。
maruyama.JPG
丸山町は昨年、安房郡富浦町、富山町、三芳村、白浜町、千倉町、和田町の6町1村と共に合併して“南房総市”となりました。

PB070639.JPG

町のあちこちには、丸山町固有の農業文化のシンボルとして街づくりの一環で作られた“風車”を見ることができます。


PB070562.JPG

そして訪れたのはダイヤモンドリリーの育種家である鈴木正之さんのハウス。
品種改良を重ねること25年のベテランで、大田花きへは昔からご出荷いただいており、長ーいお付き合いです。
みんな親しみを込めて『正之さん』とお呼びしているので、ココでもそのように書かせていただきます。


?キラキラハウス?


早速、ハウスに入るとキラキラと輝く沢山の花に迎えられて感激しました!
PB070536.JPG



見てください、このツヤ!まるでラメを吹き掛けたみたいです!

PB070539.JPG PB070552.JPG

そんな輝く花を手にして、「ダイヤモンドリリーと言われるからには、光ってないとダメだと思って作ってるんだよ。」と正之さん。
やはり、ダイヤモンドリリーを育種する上でのポイントpo1.gifなんですね!

さらに、「脳天ハゲはダメね。」
…その意味とは?
PB070592.JPG
フォーメーションが悪く、天井が空いてしまっているもの。
確かに見栄えが良くないです。

だから、育種する上でのポイントpo2.gifフォーメーション

PB070611.JPG

ただし、キュッと花が集まってボール状になっていると、全体の見た目はいいのですが、「花弁が重なり合っていると一つ一つの花の良さ見えない。だから花房の長さはある程度はあった方がいいんだよ。」との事。

po3.gif絶妙なバランスが必要なのです!

その他、選別で排除されるのは、白系で葯(やく=おしべの意味)が黒いもの!
花が白いのに葯が黒だと変に目立ってしまい、見た目が良くないからだそうです。

「自分は趣味で品種改良しているわけではないので、見た目の良さだけでなくて、99%いい子が出るのを選んでるの。」
つまり、po4.gif切花生産に向く“開花率の良い品種”を作ることを目的とされているわけです。

PB070606.JPG
そんなネリネの原種は“プディカ”ですが、必ずと言っていいほど白地の花にピンク色の筋があり、花弁の先がクリクリとねじれているのが特徴です。
だから、「こういうのは原種に近いということなんだよ。」と教えてくださいました。

DSC00829.JPG
さらに、「今見れば、大して変わり映えしない色合いだけど、底白のピンクが好きなんだよ。
コレができた時はうれしかったー。」と当時を振り返っていました。


PB070597.JPG PB070556.JPG
しかし、ブライダル需要で引き合いの強い白は、「蕾で白でも、咲いてから芯の部分にピンクが入ってしまうと、イメージが違うと言われちゃうんだよね…。」とポツリ。
花が開いてみないと芯部に色が付いているかどうかは分からないので、コレだけの個体を持っていると、出荷の時の選別も難しいようです。

さらに、「いい品種を絞り込んでも、それを増やすのには3年以上かかるんだよ。」と正之さん。
早いスピードで移り変わる需要に合わせた育種をする事の難しさを感じました。


?Nerine collection?


20万球、1万個体ぐらいあるというハウスには、様々な花形のダイヤモンドリリーを見ることができました。
PB070656.JPG PB070547.JPG PB070671.JPG
PB070657.JPG PB070658.JPG PB070653.JPG
PB070620.JPG PB070663.JPG PB070584.JPG

和風な雰囲気を持つ花、花火のような咲き方、星のような花形、スモーキーな色合いなどなど、こんなにも沢山の種類があることに驚かされました!


?正之さんへの質問コーナー?


Q.JPGなんでキラキラしているの?
a.JPG『表皮細胞のデコボコによって、凹凸の高さが高ければ高いほど光って見えるんだよ!
蝶の羽も一緒!』
ぜひ、近くでじっくりと花弁を観察してみてください。

Q.JPG八重咲きって一般的に流行してますが、ダイヤモンドリリーの八重咲きはあるんですか?
a.JPG『多弁化しているのはあるよ。普通は6弁だけど10弁あったりするの。
でも綺麗じゃないじゃないから自分は作ろうと思わないね。』


Q.JPGどういう色合いを目指して育種しているのですか?
a.JPG『トルコの覆輪が流行ったでしょ!初めはそれを目指したの。でも最初はぼかしみたくなっちゃたり、できるまで時間がかかったよ。
今は晩性種で、12月のクリスマス時期に出せるイイ赤が作りたいんだよね。』
クリスマスに艶やかな赤いダイヤモンドリリーがあったらステキですよね!
楽しみにしています!!


Q.JPG正之さんの出荷は単一品種でなく、同じ色合いをミックスしていますが、なぜですか?
a.JPG『人と同じ事をするのはイヤだから、品種を絞った大量生産はしたくないのよ!
同じ白でも皆それぞれに個性があるから、その顔を活かしてほしいなぁ』
との事でした。


?ダイヤモンドリリーについての豆知識 基礎知識?


 南アフリカ原産のヒガンバナ科ネリネ属の球根植物のネリネ。
花びらに光が当たると宝石のように輝くことからダイヤモンドリリーという名前になったようだということは知られていますが、ここでは 正之さんから伺った とっておきの豆知識をご紹介します。

PB070659.JPG
hana.JPG6本あるおしべの内、3本が先に伸びて花粉が熟します!
そして残りの3つは危機分散の為、後から熟すのです。

PB0706150.jpghana.JPGおしべが異様に伸びている個体があるのは、受粉していないからです!
受粉できないと、開花しながら子孫を残そうと受粉しやすいように伸びていくという事です。

理科の授業でも教えてもらえないウンチク!
人に教えてあげたら、『へぇー、スゴイ!』とうならせる事ができそうです。


?花の美術館での展示会?


10月30日(火)?11月11日(日)まで、千葉市 花の美術館において『ネリネ展』が開催され、正之さんの育種品種 約100種類が展示されました。
PB040524.JPG PB040493.JPG

←画像をクリックすると大きくなります。

光輝く花弁に驚かれてたり、カメラを向けるお客様の姿が多く見られました。
ダイヤモンドリリーの魅力をみんなに知ってもらおうという思いから、このような展示会の開催が実現したそうです。


鈴木正之さんからお花屋さんへのメッセージ

PB070589.JPG
『花屋さんが望んでるものも分かるけど、それを用意するには時間がかかります。
育種のスピードは追いつかないんです。
希望されるものを出したい気持ちはあるけど間に合わないから、白でも少しピンクが混じってるのもミックスしてるんだよね。
バリエーションの豊かさがダイヤモンドリリーの魅力だから、そこをご理解いただきたいです。』

残念ながら今期の出荷は終了となりますが、来期に期待してください!!


鈴木正之さんの格言




shikaku.JPG育種のポイントは、花の艶、フォーメーション、そしてバランスが鍵!

shikaku.JPG作りたい性質を持つ個体を選び、種から育てて開花するまでには多くの年数を要しています!

shikaku.JPG品種を絞った大量生産はしません!
正之さんが生み出す多数の花の個性を活かすべし!もしかしたら一度しか出会えないかもしれません。

shikaku.JPG日本人の感性を注ぎ込み世界に通用する品種作りを目指しています!

(文責 中川美紀)
Copyright(C) Ota Floriculture Auction Co.,Ltd.