2012年11月21日
vol.98 奥 隆善 氏(チョコレートコスモス)後編
前回の続きで、育種家の奥隆善さん後編です。
さて、ここでハボタンも少しだけご紹介いたします。奥さんはこれから旬を迎えるハボタンも育種、生産されています。
↓ハボタンの圃場
大田花き営業担当のYモトによると、奥さんのハボタンは、こんな感じなんだと↓
ナヌ??(・_・*)(*・_・)(*~^~)/??
全然わからん。ハボタンてこんな形だったっけ?
スプレー状に頭がたくさん付いていて、根も付いているってこと?(上も下もスプレー??)
「そうなんですよ」
とYモト。
これはただならぬ気配・・・
こちらが、奥さん的スペシャルハボタンの圃場。
摘心をして、スプレーに仕立てています。
しかもこれだけきれいに高さも頭のサイズも揃って、巻きも美しい@@@
「ハボタンをスプレーに仕立てるのはとても難しいんだ」と奥さん
Yモトに聞いても、現時点で奥さん以外にあれほどきれいなスプレー仕立てができる人はいないんじゃないかといいます。
「普通のハボタンよりも栽培に2カ月長くかかるよ。その分、虫や病気のリスクも上がるし、台風対策もしなくちゃいけないし、コストがかかる割には製品率が低いからね、大変だよ。そして技術は意外とローテクなんだ。でも、できるだけ手間がかけずに製品率を高めるような技術を確立したんだ」
どうのようにやっていらっしゃるんですか?
「チッチッチ。それは言えないな」ヒミツ(o′З`)b☆
これは、ウンチク探検隊の切り込み術を以ってしても、スプレー仕立てにする秘密は門外不出と教えていただけませんでした・・・(+_+)チーン!修行が足りん!
では別のことを教えていただきましょう。
どうして根付きでご出荷されるのでしょうか。何か意味があるのでしょうか?
「① 日持ちが良い
② 気持ちが良い
③ 縁起が良い」
なるほど“良い”ことが三拍子揃いましたね。
効率も良いのですか?
「効率は悪いかな(笑)。
気を付けて慎重に抜かないといけないしね。
でもお正月は縁起物が大切。効率は関係ナシ!」
なるほど、あくまでもユーザー目線を離れない奥さんのポリシーは、何を作るにしてもぶれることがありません。
そしてハボタンの圃場でも見つけました!「外側が大きくなる」現象。
端の株が一回り大きくなっているのが、写真からご覧いただけると思います。
この露地の場合は、そこだけ土質が砂地になっていて、水はけが良い分、生長も早くなってしまうのだそうです。それも「泥に交じって土質を研究し尽くしてわかったこと」。
輪サイズも測ってみると、直径が異なります。
↓圃場の中の方は、仕上がりの直径10cm程度。
ところが、“外側”の直径は、なんと15-6cmにもなるのです。
直径が小さい物の方がキュッと締まって、巻きも多い。しかし、外側はだら~ん、びよ~んと・・・(あ、失礼)・・・ってほどでもありませんが、プロが見ればわかるくらいの違いではありますが、巻きが甘く、全体的に大きくなってしまっているのです。
「だから“外側の商品”は極力大田花きには出荷しない」
ありがとうございます!
話をチョコモスに戻しまして、みなさんが不思議に思っていらっしゃるであろうチョコモスの色についてご説明したいと思います。
チョコモスはなぜこんな色をしているの?
チョコモスの色はアントシアニンとカロチノイドからできます。
「アントシアニンは紫外線と酸素で誘導されるんだよ」
なるほど。奥さんの施設に張ってあるフィルムは、紫外線を透過するものなんだそうです。
同じ透明のフィルムに見えても、紫外線を通すものと通さないものとがあるのだとか。
施設内で作れば、昼夜の温度差も大きくなり、よく丈が伸びる上に、紫外線も着色に十分な強さを吸収することができるので、その分品質の良い物ができるのです。
増殖は?
チョコモスは挿し芽で殖やします。
「放っておいたら、生き残れない」と奥さん。
チョコモスは自然に殖えない品種です。美しい一面のコスモス畑はご覧になったことがあると思いますが、チョコモスは放っておいてもあのようにならないわけです。
なぜでしょう。
「自家不和合性が高く、・・・つまりチョコモス同士では、タネもできない。
野生のチョコモスは絶滅したとされている。チョコモスは園芸界のトキかパンダみたいなものなんだ」
それを人の手によって命を繋いで、生活者の皆さまが楽しめるようにする。
そこにひとつのチョコモスのワンダーがあるのです!
この世のチョコモスはすべからく人の手によって種の保存が図られたもの。
種で殖やせるようになるのが次世代チョコモス育成の課題だと奥さんは言います。
こちらは奥さんの作業場。
あちらで作業をしていらっしゃるのは、奥さんの奥さんですか?
「母です~」(*^-^*)
あ、お母様でいらっしゃいましたか。これまた失礼いたしました。
あまりにも若々しくハツラツとされていたものですから^_^;
奥さんのお母様で奥泰子(おく・やすこ)さんです。
泰子さんの主なお仕事は、こちらの出荷場で品質チェックと選別、梱包をすることです。
25本ずつ束にして、50本1ケースでご出荷いただいています。
しかし、奥さんはいつも26本と、1本多く入れていただいています。
「保険だよ。お客様に迷惑かけちゃうといけないから」
なるほど、奥さん親子ならではのお心遣い。
アラ?なんだか出荷場の中を見ていると、不思議がたくさん!
まず1つはすんごい数の軍手、軍手、軍手!!!アッチ見ても、コッチ見ても!
一体、何人の従業員様がいらっしゃるのでしょうか。
「私と母だけだよ。アルバイトもなし」
え!?
じゃあ、この軍手は何にご利用されているのですか?
「使い捨てなんだ。ウィルスとか入らないように、使い捨てにしているんだよ。
古くなるまで使っていては衛生面が保てない。
これらの軍手は手を守るためではなく、植物を守るための物なんだ。
使い捨てなのに、洗濯して干してあるのはどうしてですか?
「私が捨てると、父が拾ってきて、自分の趣味の園芸に使うんだよ・・・(笑)」
だからなんですね。奥さんが使う時はいつも新品を下ろします。
ハサミも圃場で使うものはさておき、親株に使うものは、1回1回必ず消毒をするそうです。
大きなトラブルを未然防ぐこと。これが大切。ウィルスとかの病気は一見わからないけど、ある日突然ドカーンとやってくるんだ。
例えばタバコにもウィルスがあるって知ってる?」
タバコですか?すみません、勉強不足で・・・(+_+)トホホ
「乾いたタバコにも、タバコモザイクウィルスという、とても感染力が強いウィルスがいるんだ。
モザイク病という植物の病気を引き起こすウィルスだよ。
だから、スモーカーは圃場にも作業場にも立ち入り厳禁にしている。たとえお客様でもご遠慮いただいているんだよ」
いがっだぁ~、ウン探はノン・スモーカーです♪
その時にタバコを吸っていなくても、入場厳禁。なぜならスモーカーの手には、既にウィルスが付いているからです。
特に苗を管理したり、親株がある圃場は、一つ一つの作業でコマメに消毒をするのだそうです。
軍手といい、この徹底ぶりは奥さんのプロ意識の賜物!
この秘密の小部屋は何でしょうか。
作業場の奥でドア越しのぽわ~んと光る幻想的なスペースを見つけました。
なにやらフラスコ苗らしきものがたくさん置いてあります。よもや・・・
「私のバイテク室だよ」
やはりッ!さすがバイテク修了した奥さんだけあります!個人でバイテク室を所有している方は初めて拝見いたしました。
「培養(=殖やすこと)をしたり、バクテリアのあるなしをチェックしたり。時間も忘れて、夜な夜なここにこもって組織培養などの仕事をするんだ」
バクテリアが付いていたものと付いていないものをシャーレーでチェックすると、こんな感じ。
ギョ(@_@;)↓バクテリアが付いていた場合 ↓付いていない場合
奥さんはこのくらい繊細に、一つ一つの苗が正常な状態であるかどうかをチェックしているのです。
その姿はこういう感じ。
このようにして、新品種の開発や無菌の質の良い親を培養しているのです。
うわぁ~、ココ一帯だけ突然理系な感じ。
この大きいタンクは「高温高圧滅菌機」
キッチンにある圧力鍋と同じ。これで煮物作るとおいしいんですよ
こちらは、マグネティックスターラーといって、マドラーのような棒やオタマジャクシを使わなくても、中身をグルグル撹拌できる秘密兵器。マグネットでこれがクルクル回ることで撹拌される。
すんごいバリエーションに富んだピペット群!
“ピペット”という音自体が懐かしいなぁ。
「ピペットもそれぞれに名前があって、これがコマゴメピペット、これがメスピペット、これがパスツールピペット、★Θ▲×Σピペット・・・」
あぁ、もうい~です。。。(+_+)ムズカシ
とまあ、ネット上のこのコーナーにご紹介させていただくには多いくらいの情報量、しかしアタクシのノートの中に眠らせておくにはもったいないくらいのオモシロ・ストーリーなのですが、ざっくばらんな性格代表のアタクシにえいやーとまとめさせていただければ、奥さんのチョコモスをスペシャル品質たらしめているのは・・・
“ひたむきな情熱と、この上なく緻密な仕事”です。
軍手やハサミの取り扱い一つとっても然り!
たとえば、この日、外国から仕入れた苗をプラグ苗用のトレイに入れる作業をしていました。
その作業たるや、動きに無駄がなく、美しく、丁寧だけど素早く、この器用そうな手先ですいすいと仕事を片付けていくのです。
なんだかもう、犬で言う“腹をご主人様に見せて何でも言うこと聞いちゃいます”と言っているかのごとく、土も苗も意思を持った生き物のように、奥さんの思う通りに動いていくのです。
そして、それほど能力のある奥さんが、例えば大企業でスター選手として活躍するでもなく、或いは独立されて大規模経営するでもなく、なぜこのようなスタイルで営まれているのか、・・・ま、愚問かもしれませんが、聞いてみました。
「自己責任でやれば、言い訳をしなくて済む。
また経営は、規模ではなく質を向上させたい」
というポリシーがあるからなのです。
このような独立心の強い奥さんがこの伊賀の里に生まれたのか・・・ということですが、これはあくまでも一探検隊員としての見解にすぎませんが、
“ココが伊賀の里であるから”だと思っています。
つまり、この辺りの忍者の里と呼ばれるところは、奥さんから教えていただいた通り、元々は土着の豪族が治める土地でした。しかし、朝廷や幕府などの国家勢力が山を越えて攻めてくるわけです。
そこで、豪族たちは「我らが土地だ!」と武装して、敵が山を越える前にゲリラ戦や奇襲戦で応戦していたのではないかと思います。応戦する際には山を目に見えぬ速さでシャカシャカと走り回っていたでしょうし、相手を罠にかけようと山に穴を落とし穴を掘ったりして様々な仕掛けを施したことでしょう。
この辺りに忍者の里と言われる所が多いのは、このような武装した土着の豪族が元だったのではないかと思いました。
マンガのハットリ君のような「はっとトリック」のような忍術はどこまで本当か定かではありませんが、元々はそのような武装した土着の豪族から、忍者と呼ばれる人たちが生まれたのではないでしょうか。
また、奥さんのような独立心旺盛な方がこの地に生まれたのは、国家勢力に迎合することを潔しとしない、この辺りの里山気質を反映してのことではないかなと。
中でも伊賀忍者は、野草を薬草にすることを研究したそうです。つまり、伊賀忍者の末裔は薬屋さん。
奥さんの研究熱心なところも、この土地の気質を反映しているのかもしれません。
仕事の緻密さもひたむきな姿勢もまた、奥家のDNAとこのお土地柄が色濃く反映された結果ではないかという思いを馳せながら、帰路に就くウンチク探検隊でした。
推測が違っていたらすみません。
ところが「僕の祖先は忍者ではなく武士です」と。
なるほど、奥さんのご自宅は武家作り。脇の小道は、まるで帯刀した武士が、威風堂々歩く姿が見えてきそうです。
そもそも、どうしてチョコモス?
奥さんはどのようにしてチョコモスに出会い、育種人生を懸けるまでになったのでしょうか。
「腐れ縁だよ」
あ、今、4,000字くらいのストーリーを“腐れ縁”の3文字で片付けようとしましたね(-ε-)
「うん、まあ簡単に言うとね、最初の出会いは学生の時に見たカタログだったんだけど、写真も不鮮明だし、妙に黒いし、フェイクだろうと思っていたんだ。だけどアルバイトをしていたお花屋さんで仕入れた実物を見てみると、本当に黒くてかわいくて、本物のチョコレートのような香りがあった。
↓
そこで、試験管の中で挿し芽をしてみたら、うまくいった。
↓
殖やしていたら、研究室の教授にチョコモスは「野生の条件下では絶滅したものだ」と教えもらった。
人工的に殖やそうとしなければ、生き残れない品種だってこと。“自家不和合性”が強く、花粉が付いても、種ができないんだ。でも、チョコモスでもあっちとこっちの品種だったら、受精できるのではないかと教授が背中を押してくれた。
↓
別の准教授に「キバナコスモスを育ててみない?」と勧められて、チョコモスの隣に植えた。
↓
するとある日、子房が膨らんでいてね。“もしかして、タネできた?”って思った。
↓
でも結局枯れて、タネは採れなかった。胚珠培養(※)ならいけるかも!?と思ってやってみたら、うまくいったんだ。
※胚珠培養
異なる品種の間で交配すると、受精はしても胚(=エンブリオ、人間でいうところの胎児)が発達しにくい場合がある。そのようなケースにおいて胚珠を人工培地に移して培養する方法。子房ができれば、そこから胚珠を取り出すのは比較的容易。
でも“チョコモスの子供ができた!”と研究室で報告したら、“大丈夫、何か間違いだよ”と皆に一蹴された(笑)。
↓
そこで花を咲かせてみたら、見たこともない赤い花だった。
虫がキバナコスモスと受粉してくれていた。虫はチョコモスだろうが、キバナだろうが関係なく花粉を運んでくれる。
チョコモスとキバナコスモスとを隣に植えさせてもらったことが運命だった」
それ以来、奥さんのチョコモスに対する飽くなき探求が続いているというわけです。
「チョコモスの件でメキシコの大学の先生のところにお話しを伺いに行ったり、今度はその先生がココ伊賀の里まで遊びに来てくれたりしたこともあったよ。
コスモスを通じてインターナショナルな付き合いが始まったんだ」
花は言語を越えて、人と人とを結び付ける。・・・奥さん語録④
あ、ちょっと待ってください!
お話を伺っている間に・・・あれれ~???!!!∑(゚ロ゚!)
奥さん!一斉にチョコモスの元気がなくなってきちゃいました!
大丈夫ですか、この状況?
水不足?
それとも寒くなったから?どうしよ、どうしよッ??(汗)アワワ
「チョコモスは夜になると寝るんだよ。
たまに“首が曲がっているから”と返品になったりするんだけど、それはチョコモスの性質なんだ。太陽が上がればまたピンとする。
チョコモスの首が曲がってきたら、夜になった証拠。一緒寝てください」
奥さん語録集
“外側”の商品は極力出荷しない・・・特に大田花きには、よく選別して出荷していただいています。奥さんのチョコモスは信頼の印!
花生産はP-Q-S!・・・Price(価格)、Quality(品質)、Style(形態、流通面)をお客様の求めるものにシフトせよ!
泥の気持ちは泥になってみないと分からない・・・農業を始める時は、泥まみれになってでもその土地の地形や地質を徹底的に調べるべし!土質のみならず、全てに対する飽くなき探求心が必要!
花は言語を越えて、人と人とを結び付ける・・・すヴぁらすぃ!(≧∇≦)
湖は生きている・・・農業はその土地の歴史を知ることに始まる。Explore Japan!
チョコモスを小売店頭であまり見かけたことのない方へ
チョコモスはこの時期よくウェディングブーケなどによく使われます。
“え?赤黒いのが?”と思われるかもしれませんが、この時期のウェディングブーケで“シックな秋”と“大人なニュアンス”を演出するのに、チョコモスの品の良さがピカイチなのです。
(写真ご提供:pianta様)
奥さんから消費者の皆さまへひとこと
・ チョコモスは鮮度保持剤を必ず使ってください。
そうすれば決して日持ちの短い品目ではありません。
・ 夜は首を曲げて寝るので、枯れたと思って驚かずに、一緒に寝てください。
・ 伊賀の里から情熱を込めて作られたチョコモスを是非使ってください。
超おまけ的 伊賀の里雑学のススメ☆☆☆
そしてここは何と松尾芭蕉生誕の地でもあるのです。
ここが芭蕉の生家。正保元(1644)年、次男としてこの家に生まれたそうです。
そしてその隣が奥さんが生まれた病院!昭和52(1977)年、奥家のご長男として生まれました。
只今、花嫁さんを大募集中です。奥さんのところにお嫁に行ったら、きっと幸せになれますよ。
丸1日お世話になったウン探が保証します
2012年11月20日
vol.98 奥 隆善 氏(チョコレートコスモス)前編
は~い!みなさん、お久しぶりでございます(≧∇≦)!
今回は、近年人気急上昇のチョコレートコスモスを特集しちゃいます!
しかも、取材先はチョコレートコスモスの育種からやってしまうという三重県の奥隆善(おく・たかよし)さんです!
“あ!その人知ってる!”とか、“どこかで見たことあるなぁ~”という方は、なかなか冴えていますね。なんと奥さんはNHK番組の『趣味の園芸』などにもご登場される業界の有名人なのです!若きホープなのです。
さすが、撮影慣れしていらっしゃるのか、
そのスマイルは爽やか~ン≧(´▽`)≦
この爽やか奥さんがどのような思いでチョコレートコスモスを育種、生産されていらっしゃるのか、その秘密に迫ります!
その前にチョコっと一言、チョコレートコスモスは長い名前なので、流通に携わる人の間では略して「チョココス」とか「チョコモス」などと呼ばれます。
仮にここでは「チョコモス」と呼ばせて頂きたいと思いますので、宜しくお願いしモス!!
さて、その奥さんのチョコモスですが、現在市場ではどのような評価を得ているのでしょうか。大田花きの営業担当S藤(イニシャルトークの必要ないんだけど^_^;)に聞いてみました。
「ピンと立つんですよッ!茎の下の方を持つと、こうやって、ピンッて」(ゼスチャー付き)
なるほど、イメージ的にはとても細い茎なのに、背筋を伸ばして自立しちゃうんですね。
「それから買参人さんに“チョコモスいかがですか?”とご紹介させていただくと、
“え~、欲しいけど、奥さんのじゃないといやだぁ~”って言われたりするんですよ~☆ウフ
ピンと立つ茎、胸がキュンとする輪サイズと色載り、奥さんのチョコモスはピカイチですね」
S藤からかなりの高評価!
(品種:アンティークレッド)
ウン探のスイッチが入りましたモチベーションUP☆いざ出陣です!
やってきましたのは三重県伊賀市。
そう、伊賀と甲賀の伊賀です。ニンニン!!
ここは周囲を山に囲まれた伊賀の里。
あの山の向こうが甲賀の里。
近くには信楽(しがらき)が。タヌキの信楽焼で有名ですね。
そしてこの先が柳生の里。
おっと、柳生十兵衛の柳生の里ですかぁ?あの全盛期の千葉真一が扮する柳生十兵衛??
キャーッ!懐かしい~(≧∇≦)って、あまりいうと年代がばれるのでホドホドにしつつ、
「そう、この辺りは全部忍者の隠れ里だよ」
と今回の主役兼ナビゲーターの奥隆善さん登場!
「●賀とつくのはその昔、忍者が住んでいたところなんだ。
でも伊賀は忍者云々の前に、地方豪族が住んでいたところ。忍者の里というよりは、土着の豪族の土地なんだよ。古墳もたくさんある。前方後円墳もいくつかあるよ。畑にしちゃってるけどね」
(; ゚ ロ゚)ギョッ!えッ?前方後円墳、つまり古代の御墓の上で何か作っちゃってるってことですか?
いいんですか?そんなことッ??(・_・;)_・;) ナントッ!!
「いいも何も、ダメって言われる前からそうしているんだよね。だから今更ダメッて言えない。
石室が残っているのに、前方後円墳の“円”側で果樹を作って“方”で野菜を作ってたりね(笑)。
これがまたよくできちゃんうだよ、土がいいから。」
土がいい・・・?
「この辺は大昔、琵琶湖の底だったんだよ」
び、琵琶湖っ??
琵琶湖って2つあるんでしたっけ?「琵琶湖1」「琵琶湖2」とか?
滋賀県にある琵琶湖はドッチなんだろ?あっちが本家の「琵琶湖1」かな。
あれ、ココ何県でしたっけ?あ、三重県か。「琵琶湖1」まで何キロあるんだろ。あー、もう全然ワケわかんなくなってきました。
奥さん、琵琶湖って、あの琵琶湖ですか?滋賀県の?
「そうだよ。湖って移動するんだ」
えッ∑(゜◇゜;)
そ、そんな。学校では誰も教えてくれませんでした。(多分)
奥さんのお話によると、“湖は生きている”。
琵琶湖の誕生はおよそ400万年前。バイカル湖、カスピ海に次いで古い世界有数の古代湖なんだそうです。もともとはココ伊賀に生まれ、それが地殻変動で北に移動して、現在の琵琶湖になったということです。
なんて物知りな方なんだ。(T_T)感動
「湖の底に土だったから、粘土質なんだよ。だからたいていの物は締まってよくできる。
ただ、さっきの“古墳”ていうのは、粘土質の土に黒ぼくという肥沃な土を盛り上げて築かれているみたいで、とても排水が良かったりするんだけど、排水の悪い粘土質だと育ちにくい植物にも向いているということなんだ」
なるほど、粘土質ということは、近くの信楽で焼き物の技術が発達したのもその影響があるのですかね。
さて、この辺りのことを少し知ったところで、こちらが奥さんの圃場です。
奥さんの育種生産に関するこだわりの要素は、「日月火水木金土」に象徴されます。
曜日とは関係ないのですが、なぜかハマりました。ですから、これに沿ってご説明したいと思います( ^―゜)b
まずは水から。
潅水について。株元にパイプを通して潅水します。
「でも1週間に1回くらいかな。それ以上やると、よく丈は伸びるけど、茎が柔らかくなってしまうんだ」
なるほど、この通り、水をやった直後でも土の表面は乾いています。
「施設内でも外側の畝を見てごらん。そっちの方が全体的に背が高いでしょ」
あ、ほんとだ!どうしてですか?
「雨が降ると、どうしても外から水が入ったり、地面に浸み込んだ水を吸い込んで、丈が伸びやすくなるんだ。早く育って丈は採れるけど、茎が柔らかい。
このような外側の商品は極力大田花きには出さず、場合によっては廃棄したりするよ」
なるほど~!
水のやりすぎは厳禁!意図していなくても、自然に水を吸って育ってしまう“外側の商品”は、茎が柔らかいだけでなく、日持ちにも影響してくるそうです。
大田花きには施設の中央のものからご出荷いただいています。
S藤が言っていた細くてもピンッと立つ茎の秘密は、1つここにありました。
“外側の商品”は極力大田花きには出荷しない・・・奥さん語録①
木
株の育て方です。
ピンチをして生かす花芽を考えたり、バランスを整えたりするのですか?
「ピンチはしていないよ。
ピンチをする必要のないものを育種段階で作っていくんだ。」
つまり、育てやすい品種を育種するというわけですね。
そして“花はPrice-Quality-Style”という奥さん。
Price(価格)=小売に合った価格で提供する。また提供できるよう、生産コストを管理する。
Quality(品質)=お客様が求める品質になるよう作り方をシフトする。自分が求める最高を目指すのではなくて、お客様が求めるものであることが重要。
Style(形態、流通面における要素)=流通のための箱、形態、作業効率、梱包時刻や出荷時間など、どのようなスタイルを採るのが最適かを考える。
これらの点のそれぞれを追求してチョコモスを生産する。持続可能な農業生産を行うには、これが大切な要素だと奥さんは言います。
花はP-Q-S・・・奥さん語録②
金
ところで奥さん、千葉大大学院をご卒業されたということですが、何を専攻されていらしたのですか?
「植物細胞工学だよ。
英語でPlant Cell Biotechnology(プラント・セル・バイオテクノロジー)だから、略してバイテクって言われたりするんだ」
へー、ザイテクですか。
「ザイテクじゃないよぉ。バ・イ・テ・ク。
財テクなんてやり方全然わからないよ。お金には縁がない」
円には縁がないんですか・・・。(デタデタ^_^;)
「ここで農業を始めたときは、大学院を出たばかりでお金ないし、実家は農家じゃないし、農機具も揃っていないし、施設もない。ゼロからだったよ」
就農資金も十分にない状態でどのように始められたのですか?
「水田の土地だけは少し持っていたからね、そこを耕して露地で始めたんだ。
アサガオ、ケイトウ、エリンジウム、モルセラ、ミント、カラー、グラジオラス、麦ナデシコ、フウセンカズラなどなど、色々やったよ」
奥さんは、現在切り花ではチョコモスとハボタン、ナズナをご出荷くださっています。
この3つに辿り着いた理由は何ですか?
「まず一つは育種をしたかった」
バイテクを修められたわけですから。
「だけど一般的に“育種は10年不採算”と言われるほど収益性は見込めない分野。だから一方で何かを生産しなくてはならない。
自分の持っている水田で露地でこの気候でできるものは何かって考えて、色々やってみて、その結果だったんだよ」
伊賀は三重県ですから、ひょっとしたらみなさんは暖地性の気候というイメージを持たれるかもしれませんが、奥さんによると実は内陸性で結構寒いといいます。春の到来は遅く、冬は早い。この気候と限られた資金と持ち合わせた土地という条件で、トライアンドエラーを繰り返して今の奥さんがあるのです。
土
この辺りは先述のように粘土質(伊賀古層)で、関東ローム層とは異なり花崗岩に水や空気が入りながら風化したものなのだそうです。
う~ん、さっきも粘土質で何でも締まってできるとおっしゃっていましたが、粘土質だとなぜ何でも締まってできるのでしょうか。σ(゚・゚*)ンート・・・
「砂地っていうのはサラサラしているから、水はけがいい分、肥料の持ちも悪い。
粘土質はその逆で、肥料や水の持ちが良く、また根が伸びるのに力が必要な分、ゆっくり根が発達する。時間をかけて生長するから、株ががっちりと固く生長するんだ。
でも、伊賀の土が他と違う分、同じ花や野菜でも育てる品種が違ってくるし、使う農機具も異なってくる。
種まきひとつから伊賀地方に合った育て方をしないと、本やテレビで紹介している一律の方法ではうまくいかないことがある」
なるほど~、伊賀には伊賀の農業があるわけですね。この土地だけの最適農業が。
そこで奥さんは「伊賀農業の伝道師」として、地元のケーブルテレビにレギュラー出演されたり、地元の公民館で園芸教室をされたりして、伊賀農業の啓蒙活動を行っています。
「少なくとも失敗しなければ園芸は楽しいはずでしょ。だからその地域に合った農業を提唱して、楽しい園芸を伝えていきたい。
延いては消費アップに繋がるわけだから。各地域でそういう最適農業を伝授できる人がいるといいなと思うよ」
ヌァント素晴らしいスピリット!
「それに粘土質って言っても、何でも一辺倒じゃないんだ。
砂利採取なんかで土を移動させてる場所もあるから、同じ水田の中でも土は違ったりするんだよ。
だから、最初は雨が降ったら長靴を履いて、泥まみれになってこの水田の土の性質はどうなっていて、どこに水が溜まって、どこにどんな畝立てをしたらいいのかなど、徹底的に調べたよ。泥の気持ちは泥になってみないと分からないからね」
蓋し、名言!!(≧∇≦)
普通は泥になれんもんなぁ。そもそも泥になろうとも思わんて。この名言が出るっちゅうことは、それだけご苦労されて土質を研究し尽くしたということやろな。
「この施設は農業高校で非常勤講師などをやって、コツコツとお金を貯めてやっと建てたんだよ。最初から良い施設があったら徹底的に土質を調べるところまではやらなかっただろうね」
もう、奥さんに脱帽です。
実際、チョコモスの場合は、どのような土が適しているのですか?
「少しアルカリ性の土がいいね。だから少量の石灰を入れて、ミネラルを供給する。そうすることで固くしっかりしたものができる。
しかし、何よりも堆肥を中心に混ぜることが重要なんだ。堆肥を入れることにより、植物の生長に必要なアンモニア態窒素を絶えず必要な分だけを供給することができるんだ。
しかも株の勢いが保たれるし、老化しにくい」
つまり、堆肥を入れることでアンチエイジングの秘薬のようなものが手に入るってことですね!
アタシもほしぃーーー!
「でも化学肥料も使うよ。
有機農法の良いところと化学肥料や近代農法の良い所を組み合わせているんだ」
ところで何の堆肥ですか?
「伊賀牛の牛糞と・・・(なんて高級そうな響き≧∇≦!)豚糞と伊勢赤鶏の鶏糞のミックスだよ」
うわぁ!地元の高級そうな響きの畜産ブランドのミックスによって最適な土が作られているわけです。
泥の気持ちは泥になってみないと分からない・・・奥さん語録その③
日
太陽ですね。
露地で作っていると太陽の光が強すぎて、品質が頑丈になりすぎてしまうといいます。
「だから、施設の中でフィルム一枚通した光がベスト!もっとも細くて美しい姿をしていながら丈夫なものができる。
それからコスモスは短日(たんじつ)植物※、しかも“量的短日植物”といって、少しでも日が弱いと“日が短くなった”と感じて早く花を咲かせる。だから、フィルム1枚くらいがあるとちょうどいいってことなんだよ※」
※短日植物:ザックリ説明すると、日が短くなってくると花芽を付ける植物のこと。しかし、本当は夜の長さを感じて花を咲かせるようになるので、“長夜植物”というのが正解。
量的短日植物:これに対し、“質的短日植物”というのがあり、絶対値として●時間暗くしないと花芽が付かないという植物のこと。ポインセチアなどがこれに当たる。
月
月の巡りに合わせて、毎年同じようなタイミングで植え付け作業をしていきます。
「植え付けるサイクルは大切」という奥さんは、毎月第何週に何をするという作業スケジュールは最初から決まっているのだといいます。
これを忠実に実践していくところが当たり前のように見えて、とても大切なことなのです。
そして最後に火
これは冬の暖房・・・と思ったみなさん!イヤイヤ
それも確かにあります。出荷を急ぐために、暖房をジャンジャカ使えば、その分収量もスピードも上がりますが、茎は柔らかくなってしまいます。
いかに暖房を使うかというのも大切なポイントではありますが、ここでは「火」を奥さんの情熱に喩えたいと思います。
元を辿れば、幼いころは金魚のブリーダーになりたかったという奥さん。それが小学校5年生の時に、園芸好きのお祖父さまからもらったハボタンの種をきっかけに植物の道にハマって行きます。
これはまさに隔世遺伝!
そのタネをまいて出てきた芽を見た瞬間、奥隆善少年は、
「美しい!」*(о☯‿☯о)*キラキラ
と思い、植物へのスイッチが入ったといいます。
中学生になってからは、短日植物のアサガオを題材にして、“日が短くなったのを感じるセンサーは植物体のどこにあるのか、本葉ではなく双葉にもそのセンサーは備えてあるのか”を自ら研究するため、本葉が伸びてきてはちぎって・・・という実験をしていたといいます。
アタシャ、チューガクでなにやっとったかな。スゴイナ
それで、双葉だけでも開花したのでしょうか。
「したよ。奇形だったけどね」
その感動は現在に至っても忘れることなく、心の中に秘められた植物に対する情熱は、表に現れた温厚な笑顔に反して、とても熱いものがあると感じました。
伊賀には伊賀の農業がある。それぞれの地域で、それぞれのやり方がある。テレビや雑誌などで紹介されるやり方と同じやり方をしていたのでは、うまくいかなくなって園芸離れを起こしてしまうと、自ら地元の園芸伝道師を買って出る気概と熱意。金儲け主義に走らず、強いポリシーで地元で育種と生産をコツコツ続けながら、ひたむきに植物を愛するピュアな心。
もうこれは、ウン探は“恐れ入りました”と頭を下げるしかありませんでした。
☆後編に続く・・・
後編はハボタンや奥さんとチョコモスの出会いなどについても語ってもらっちゃいます!