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2013年6月17日

vol.100 JAみなみ信州 【前編】ダリアがみなみ信州を救う!の巻

ぬぁんとみなさま、このうんちく探検隊も今回で第100回を迎えました!v(≧∇≦)vワーイ!!遂に!

 

これも一重に読者のみなさまの応援、並びに取材にご協力くださった産地のみなさまのお陰です。いつも本当にありがとうございますm(_ _)m

 

そしてこの記念すべき第100回にお邪魔させていただいたのは、長野県のJAみなみ信州です。

まずはJAみなみ信州(以下「みなみ信州」と呼ばせていただくこともあります)の概要をざっとまとめちゃいます!

 

◆どこ?

長野県の南側のこの↓辺りで、飯田市を中心とした1市3町10村から成る地域を指します。

MAPIIDA.jpg

南北に流れる天竜川、豊かな自然、安定した地盤、周りをアルプス山脈に囲まれ、キラキラまぶしい緑溢れるこの地域を車で走るだけで、東京砂漠で都会の垢にまみれた心を洗い流すことができます。ナンチャッテ~←でもホント!

DSC04890.jpg DSC04891.jpg

◆広さは

みなみ信州管内の面積はおよそ2,000平方キロメートル。なんと香川県の面積と同じくらいなのです!

北から南まで車で縦断するには1.5時間くらいかかるのだとか。その南端は愛知県、岐阜県、静岡県に接しています。

 

う~ん、ぬぁるほど。

ちなみに香川県は日本一面積の小さい都道府県で、長野県の面積は全国第4位です。(香川県での花生産は、産地うんちく探検vol.82,83,84をご覧ください) 

 

◆標高は?

およそ400メートルから1,500メートルにまたがります。

季節になれば、1,500メートルのところではヒマラヤの青いケシ(メコノプシス)が咲き誇ります。この標高差が出荷時期をリレーで繋ぐことができ、長い期間供給可能にしているのです。また、昼と夜との寒暖の差ができるため、花の品質を良くしている地の利のひとつといっていいでしょう。

◆生産者さんは何人くらい?

およそ570戸

 ◆何を作っているの?

栽培品目・・・色々

 

って本当に色々なんです。

品目にして200種以上、品種にしたら全くもって数えきれないくらい栽培しているのです。

 

もう少し申しますと、花形品目ダリアを中心にオキシペタルム、デルフィニウム、アストランティアなどの草花、フサスグリ、ヒペリカムなどの枝物など。ま、「作れないものはない!」といった具合ですかね。

大田花きの品目別大分類がおよそ120くらいですから(その中でまた品目が分かれているのですが)、それと比べるといかにみなみ信州が多種多様な品目を栽培しているかがよくわかります。

  

P6030002.jpgこのたびご案内くださったのは、JAみなみ信州で米・野菜・花など幅広い品目を統括される敏腕課長塩澤昇さん(しおざわ・のぼる)さんです。

 

では早速、みなみ信州を支えるメイン品目ダリアから紹介してまいります。

 

★ダリア 

1軒目はダリアを専門に栽培する大平正彦(オオダイラ・マサヒコ)さんです。本日のダリア先生です。施設をメインに露地でもチョコット作付けされています。

DSC04923.jpg「ダリアの良いところは定植から2カ月で収穫できるところ。

定植しても最初の1カ月くらいはたいして伸びずに、ごにょごにょ、もちょもちょしているんだよ。

それから後の1カ月でグッと伸びてパッと花を咲かせる

 そこをチョキンと切るわけですね。まるでダリアの生長はグーパーチョキのじゃんけんのようです。

こちらをご覧ください。定植からおよそ1カ月のダリアの苗です。

DSC04951.jpg

まだもちょもちょしています!

(ここで言う「もちょもちょ」の意味=上に大きくならず、背が低いままなんとなく葉を広げる感じ。何かをためらい、ごにょごにょ、もじもじ、もちょもちょしているイメージです)

 

定植前の苗はどのようになっているのですか。

「これだよ。

DSC04936.jpg DSC04937.jpg

 

まず裏を見て、ポットの下穴から根が飛び出ているものがいい。

DSC04934.jpg

 だけど、その元気具合も良く見極めないといけないんだ」

 

むむ・・・つまり?

 

「苗のポットに入っている状態は、普通は内側から外側に根が伸びていくでしょ。

でも外側に伸びきると、今度はポットが窮屈で内側に根が伸びるようになるんだ。

roots.jpg

(↑大平さんの説明のイメージ図。根が伸びてポットにぶつかると、今度は内側に向けて伸び始める)

そうなってからだともう遅い。

一度内側に向いた根を、定植後にまた外に向けようとするわけだから、伸びるのが遅くなるんだ。そうすると収穫も遅くなっちゃうでしょ。

だからポットの中で根が伸びきる前に定植する必要があるんだよ」

 

なるほど、ポットの中で根が窮屈になって内側に伸び始める前に定植する!←ココポイントです。 

 

◆どこまで伸びたら開花する?

もちょもちょしていた苗が、後半の1カ月でパッと伸びて、どこまで伸びたら開花するのですか?

 「品種にもよるけど、ダリアは8-11節伸びて開花することが多いよ。13節もせんと咲かんような品種はNG。天井にぶつかっちゃうからハウスには不向き」

 

ダリアにも竹のような節があるのです。DSC04980.jpg

一番下から数えて・・・・イチ、ニィ、サン、シィ・・・あッ、ホントだ!ちょうど8節目に花が付いている!!

 

もちょもちょ苗から最初にグッと伸びてきた芽は、下から3-4節目のところで思い切ってバチーンと切り戻します。

それぞれの節に脇芽が2つずつ付いているので、3節目で切れば6本、4節目できれば8本の大きな側枝がグィ~ンと立ちます。1株に6-8本立てるのが基本!これが花枝となります。

それぞれの節からまた側枝が出てくるのですが、途中で間違って開花してしまった花は取り除き、開花していない側枝を残す。それが8節に達したところでパカッと開花したものを商品にします。

 

ひとつの株でたくさん花を付けると、株のエネルギーを花たちの間で分け合うことになり、一つ一つの花が小さくなってしまうので、本当に出荷したい花枝のみ残して、あとは小まめに掃除していきます。

1度に6-8輪の花を残しますが、1シーズンで3-4回転させるのがみなみ信州流(植え付け時期やシーズンによってパターンが異なります)。

 DSC04940.jpg

「 需要期の秋に焦点を当てていかに良いものを作るか、夏の切り戻しのしかたにかかっているんだよ。

 

例えば、暑い夏は株を働かせるのではなく、休ませた方が秋に良い花が咲く。

だから5月下旬から6月には伸びた枝を切り戻して株をコンパクトにしておく。すると、夏を越してから出てきた芽は元気があって良い花を咲かせるんだ。 

みなみ信州は暑いから、いかに夏を越すかが秋に勝負するコツなんだ」

 

なるほど、出荷ピークの5-6月を超えたら、株を刈りこんでコンパクトにして休ませるということですね。

そして秋から再び本格出荷再開。

  

「ウン探さん、ダリアの球根って見たことある?」

 

・・・はぃぃ、サツマイモみたいな形をしているのは国際ダリア園(秋田)のダリアの赤い魔術師こと鷲澤幸治氏のところでちらっと拝見したことがありますが・・・

 

「球根の形は品種によって様々でね、丸かったりサツマイモみたいだったり。

これを見てごらん」デデーン!

DSC04956.jpg DSC04957.jpg

 

ギョッ、ギョギョーーーッ!こ、これは?

ユ、U.F.0.のような形(見たことないけど)をしていますが・・・Σ(゚口゚;オドロキ

 

「ダリアの球根だよ」

 こちらは「福は内」という品種の驚愕の球根。

これ、土の中に埋まっていないということは、使わずに捨てちゃうんですか?

 

「そうだね。

実はダリアの根はどんどん子供を付けて代替わりするから、ずっと使えるんだけど、土の中に埋めておいて上から水をかけられると、徐々に土も固くなり、土中の酸素が少なくなるでしょ。

根も酸素が必要だから、酸欠になると良いものが出来なくなっちゃうんだ。

 

だから、理想的には1年で掘り起こして新しいものをまた定植するのが正解。

ウチの場合は、6月に定植して、8月に一番花が咲いて、2番花から出荷する」

 

ダリアの球根は次々と子供を作って、働く球根は代替わりしていきます。 働く球根には「クラウン」という発芽点があり、ここから新芽が伸びていくのです。

 konkei.jpg  DSC04988.jpg

 

ところで大平さん、こんなに暑いのに先ほどから地面が渇き気味なのが気になって気になって。

なんだかダリアも気持ち元気がないように見えるのは、気のせいでしょうか・・・^_^;

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ウン探が来たから灌水できないとか?お仕事の邪魔をしてしまっているようであれば、こちらは気にせず灌水していただければと・・・

DSC04947.jpg

 

「まだ灌水のタイミングじゃないよ。

土はサラサラしているでしょ。これがダリアにはいいんだ。水はけが良くて水持ちの良い土。これが最高なんだよ」

 

水はけがよくて水持ちが良い土?なんだか矛盾しているように思いますが・・・

 

「そうでしょ。でもね、土が団粒(だんりゅう)構造になっていると、この矛盾している二つの要素を同時に実現してしまうんだ。

表面はサラサラして乾き切ったように見えるけど、ちょっと手でかきわけるとすぐ湿った土が出てくるんだよ」

 

出ました!ウン探久々の四文字熟語「団粒構造」

簡単にご説明申し上げます!( ^^)b

 

土は、固相(こそう)、気相(きそう)、液相(えきそう)の3つの要素(三相)からできており、これらでできた土の粒子が塊(かたまり)を形成している構造のことを団粒構造といいます。ざっくり申し上げますと固相とは鉱物は有機物、微生物など、気相は空気、液相は水を指します。

この3つのバランスが良いと排水性と保水性の一見相反する性質を確保することができ、それだけ丈夫な根を張ります。

 

この団粒構造が良く三相のバランスの取れた土の間逆に位置するのが、学校などのグラウンドの締まった土です。グランドの土は固層の塊。空気を含んでいないので、根が張りにくいのです。なるほどどうりで雑草が生えていないわけです。

 

DSC04928.jpg大平さん曰く「栄養吸収の基本は土から!

人間も点滴ではなく日々のご飯を食べているのが一番元気という考えと同じということですね。

「そう、だからダリアも液肥で元気にするのではなく、良い土を作ってあげて、そこから栄養を吸収してもらうってことなんだ。つまり、

ダリアは俺が作るんじゃない。土が作るんだ

↑声低め

 

うひょーーー!!!v(≧∇≦)v

大平さん、カッコ良すぎッ!もうそのおヒゲといい、名言集といい、大平さんが勝新太郎に見えてきました!

 

「ダリアは水が欲しそうな顔をするんだ。

でもここで水をやったら、どんどん伸びて細々とした貧弱な子に育ってしまう。

DSC04959.jpgそれに切り戻した茎の断面に水が溜まって、夏の高温と相まって自らを腐らせてしまうこともあるんだ。  

 

かわいいから欲しそうな顔をされたら水をやりたいけど、それをグッとこらえてベストのタイミングまで待つんだ」

 

なるほど、かわいい子ほど貧弱な子に育ってスポイルしないように、心を鬼にして水やりのタイミングを見図るのですね。

  

◆ダリアは短日植物

キク科の多くは昼の時間が短くなると花芽を付ける短日植物。キク科に属するダリアも例に漏れず短日植物です。だから、秋になると花を咲かせるわけですね。

夏至が6月20日過ぎ頃で、この時の日長は東京で14.5時間くらい。8月のお盆前後になると13.5時間、秋分の日で12時間くらいです。

 

DSC04979.jpgハウスでは、電照を使って日長時間をコントロールします。大平さんは14時間を目安に電照栽培を行います。

これ以上電照を行うと、上へ上へ伸びて花芽を付けなくなってしまい、また逆に短くして13-12時間程になると露芯(ろしん)※してしまう可能性があるのです。

 

※露芯(ろしん)

その字のごとく、しべなどの花の中心部分が見えてしまうこと。露芯しやすいか否かは品種の性質や気温、肥料バランスなどにもよりますが、花弁の多い品種では多くの場合露芯してしまうと評価が下がってしまいます。

 

大平さん、色々お詳しくて説明も上手で、オオダイラさんがオオダリアさんに見えてきました!

 

◆切り前

切り前が難しいのではないかと思うのですが、どのように判断するのでしょうか。

 

「ダリアは光で動く」というオオダリアさん。

「光で動くということは、段ボールに入って暗い中で移動するときは花は開かないんだ。

DSC04970.jpg気温もあるから今の季節だったらこのくらいで採花する。

 

品種にもよるから特性を見極める必要があるんだけど、一般的には早すぎると花弁が散ってしまうので、外側の花弁が4分の3周くらい開いたら出荷するようにしているよ」

 

市場で見るときはもう少し開いている印象がありました。意外と早く切るものなのですね。

オオダリアさんはお花屋さんに到着したときにちょうどパカッと満開の売り頃になるよう考えていらっしゃいます。

DSC04971.jpg DSC04969.jpg

 

◆作付けする品種選びのポイントは何ですか?

オオダリアさんは黒蝶と熱唱をメイン品種にするみなみ信州の中でも、それらの品種を作付けせずに、敢えて新品種にトライされています。

それはもちろん、部会に先駆けて新品種を作付し、品種特性を見極め良いものを広めていくという意味のみならず、幅広い品目を市場に出荷し、部会全体のマーケティング活動という意味を含んでいるのです。

 

オオダリアさんの品種選びのポイントを伺ってみましょう。

「①市場に需要動向を聞いて相談する。

②第一印象できれいと思ったもの。←コレ結構重要DSC04922.jpg

③8節で開花するもの。

④首が上を向いているもの。横を向いてヒマワリのように咲く品種があるから注意。

⑤弁数の多いもの。露芯しにくいからね。

⑥単色。お花屋さんにとってはこの方が使いやすいんだ。

⑦ミツバチによる交配種であること!」

 

な~っるほどぉ・・・ポイントが色々あるようですが、"ミツバチによる交配種"ってどういうことでしょうか。

 

「ミツバチによる交配だと黄色が入るんだ。黄色の単色は全体の中では少ない方だからね」

 

挙げていただいた7つのポイントの中で、第一印象できれいと思ったものというのが唯一インスピレーションや感性に頼ったものだと思うのですが・・・

 

「だってきれいなもの作りたいじゃん」

 

なぜ、ダリアを栽培しようと思われたのですか?ダリアに出会うきっかけは?

 

「歯を食いしばって頑張ってきたから、神様がダリアと出会わせてくれたんだ・・・」キラキラweather23.jpgweather32.jpgweather29.jpg

 

 

オオダリアさんのピュアな心が垣間見られた瞬間でした。花はきっと作り手の心を反映しています。

  

と、これはオオダリアさんのお話。JAみなみ信州全体では、みなみ信州では黒蝶と熱唱を主軸に据え、そのほかの品種は大田花きの担当とともに国際ダリア園の鷲澤師匠を訪問し、選定しています。

文中の秋田国際ダリア園のうんちく探検隊の取材はこちら(ダリアの赤い魔術師が登場します!)

 

 

◆オオダリアさんこと大平正彦さん語録

DSC04949.jpg・ダリアは定植から2カ月で開花。最初の1カ月はもちょもちょして、後の1カ月でグーパーチョキ!(グッと伸びてパッと咲いてチョキンと切る!)

・ダリアは水が欲しそうな顔をする。そこをグッと我慢して灌水のタイミングを見計らう。

・ダリアは俺が作るんじゃない。土が作るんだ。

・だってきれいなもの、作りたいじゃん・・・

・歯を食いしばって頑張ってきたから、神様がダリアと出会わせてくれた

 

皆様も一度みなみ信州のダリアを手にとって、平成の勝新のスピリットを感じてください!

 

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◆ダリア2軒目は森本利郎さん

DSC04991.jpg栽培はダリアが70%、オキシペタルムやラクスパー、ブルーレースなどの草花が30%。以前はキュウリやトマト、メロンなどを栽培していましたが、12年ほど前にオキシペタルムを導入。

「花はいいぞぉ~」と繰り返し言うオオダリアさん、・・・ではなくオオダイラさんの影響を受けて徐々にダリアメインになってきたといいます。

ダリアの他にも作付しているのは、連作障害を防ぐため。

 

森本さんの圃場から見る景色はこんなかんじ。

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ハウスの向こうに連なる山々。手前が仙丈ケ岳、その奥に役3,000メートル級の赤石山脈、通称南アルプスがそびえ立ちます。

森本さんの圃場は標高400メートル前後。みなみ信州のダリア産地の中では、低い方になります。

そこでは定植後5-6日の苗が(大平さんのおっしゃる通り)まだまだもちょもちょしていました。

 DSC04984.jpg

「根が張るまでは水を切らなさないように土を湿らせ、活着したら土が乾くまで水はやらない」

 

地表には乾燥させたサトウキビの茎(正確にはバガスといって、サトウキビを搾汁後の残渣のこと)を敷いて、地温が上がるのを防いでいます。

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森本さんは朝4時に起床し、日が昇ったら早速ダリアを採花するという働き者。

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「暑くなる前にひと仕事するんだよ」

早朝に採花し、午前中は選別、午後は箱詰めと圃場管理というサイクルです。

 

 

ん?この鯉は森本さんのですか?・・・と広い圃場の敷地内に見つけた鯉のいけす。

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「そうだよ。このあたりでは昔から淡水魚を飼っていたんだ」

なるほど、昔の人は海がないから魚は淡水魚を飼育して、貴重なタンパク源にしていたわけですね。 

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◆みなみ信州3軒目のダリア生産者さんは久保田直人さん

DSC04899.jpgこちらは15年前に農協の合併でJAみなみ信州が誕生した時の初代花き部会部会長の久保田直人さんです。

 

訪問時はちょうど、選別している真っ最中!

久保田さんはダリア生産を専業としているために、1年で最も多く出荷されるこの時期は、1日に、3000本以上も出荷することもあるのだとか。ご家族を挙げて大忙し!!

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選別するときは次のようなポイントをチェックします。

①露芯していないか

②茎に曲がりはないか

③茎が細々としていて、弱くないか

④短すぎないか、50cm以下はNG

これらをクリアしたものだけが市場に出荷されます。

 

例えばコレ。DSC04906.jpg

途中から茎が曲がっているのがわかりますか?

このようなダリアは規格外として、はじかれてしまうのです。

 

そしてこちらも。DSC04908.jpg

横に並べたペンとほぼ同じ太さで、丈も足りていません。

 

こちらはその際規格外とはじかれたもの。

DSC04909.jpg

う~ん、山盛りになっていますがどのくらい規格外があるものなのでしょうか。

 

「だいたい1割くらい」

という久保田さん。 

単純計算でいけば3,000本出荷するときはおよそ300本も廃棄することになってしまうのですね。

市場に出荷する際は規格を揃える必要があり、ブランドを保つためにはいたしかたないことなのですが、これらの規格外商品を有効に二次利用する方法を模索中です。

 

★ここで注目!

久保田さんには頼もしい後継ぎさんがいらっしゃいます。ご子息の直之さんです。

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そして、この日、取材のために大忙しの中駆けつけてくださった同じく若手の上沼高明さん。

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(写真↑ 左:上沼さん 右:久保田さん)

 

「産地は小粒でピリリと辛い!」というお考えのお父上の久保田直人さん。若いイケメン二人が象徴するように、みなみ信州では魅力ある農業を実現されているため、若手後継者が続々と登場しているのです。

みなみ信州は今後規模の大小にかかわらず、ピリリとエスプリの利いた産地として全国に名を馳せていくことでしょう。

 

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JAみなみ信州敏腕課長の塩澤さんにダリア導入の経緯を伺いました。

◆なぜダリアを主力に据えたのでしょうか?

もともとみなみ信州はオキシペタルムを栽培の中心に据えた産地でした。しかし、徐々に連作障害に悩まされるようになり、みなみ信州の暑い夏を超えられずひと夏で枯れてしまうことも・・・<悩>

 

「平成16,17年には"忌地(いやち)現象"(=連作障害)を起こすようになり、植えても枯れるの繰り返し。ブルーレースやグリーンベルなど他の草花と入れ替えてやってみたりしても、どうしてもうまくいかない。こりゃもうダメだと思っていたところに、某市場から"ダリア、作ってみない?"って言われてね」

 

DSC04996.jpg作ってみないかと言われた塩澤さんも、当時ダリアがブレイクし始めたことを知らず「ふ~ん・・・ダリアかぁ」程度にしか思っていなかったそうです。

しかし、色々調べてみると今後伸びるだろうというご判断に至り、導入に踏み切りました。

 

手探りで作って出荷してみたら、思ったより結果が良かった。ならばこの品目を主軸において周年出荷してみよう、みなみ信州の柱になるのではないかと徐々に生産を拡大していきました。

みなみ信州はダリアの周年栽培の先駆け産地なのです。

  

◆周年出荷に抵抗はなかったのでしょうか?

「私たちにはなかったよ。

でも、大田市場の仲卸通りでプロモーションしていても、仲買人さんには"なんで周年作んだよ。ダリアはダリアの季節に咲くからきれいなんだよ!"と怒られたこともあったよ(笑)」

 

そこで何を思いましたか?

 DSC05092.jpg

私たちはこれでいくと決めたんだよね。

ダリアにみなみ信州の新しい活路を見出したんだ」

 

活路を見いだせたこと、周年栽培も含め生産拡大を実現できたのは、ダリアの赤い魔術師鷲澤氏がなんとも寛大なお考えの持ち主で、パテントのことは気にされず、みなみ信州で苗を増やせたことが大きかったといいます。みなみ信州では育苗事業も行っており、鷲澤氏から球根を譲ってもらい、農協で挿し芽をして増やしていくことができるのです。

だからこそ、もっとダリアの生産者仲間を増やそう、切磋琢磨して技術を上げていこうと自然発生的にダリア生産の輪が広がっていったといいます。

  

◆冬場の生産にチャレンジするのは大変だったのでは?

SO.jpg暖房の燃料も高い中、長野の寒い冬は高い壁ではなかったのでしょうか?

「ダリアに電照栽培が必要だなんて誰も知らなかったんだ、少なくともうちのメンバーでは。

でも、勉強したらダリアも電照栽培が必要だってことがわかって、手探りでやってみたら最初の冬に出荷することができたんだ。最低気温も10度あれば株を維持することができる」

 

6年も7年も前のことなのに、まるで塩澤さんは昨日のことのようにお話されます。

それだけ生産者さんと一緒になって苦心されながら挑戦していたのでしょう。

 

「どこで芯を止めて、どのタイミングで暖房のオン・オフを行うか、難しいポイントもあるんだけど、まず、みなみ信州で2人くらいなんとか作れるようになってね、それが今では30軒以上の生産者にまで広がったよ」

 

数年のうちにたちまち広げるにはなにか秘策があったのですか?

「秘策というほどのことは何もなく、強いて言えば技術をオープンにしたことが軒数増加の理由かな」

 

技術を部会の中でオープンにして、作るのがうまい人のノウハウをシェアしたり、悩みを相談し合ったり、塩澤さんが自ら生産マニュアルを作成したり。

 

ゼロから始まったダリア生産は5年で1.5億円を超し、一気にみなみ信州を支える農産物に駆け上がりました。AR.JPG

 

「他の品目もそうだけど、何かいいなと思ったら、深く考えずにまずやってみる!」

という塩澤さん。

この意気込みこそ、みなみ信州をみなみ信州たらしめている理由でしょう。

 

 

◆みなみ信州の強みは?

DSC05002.jpg塩澤さん曰く、「年間を通じて数量が揃うところが強みです」

みなみ信州管内の標高の差を生かして、また30軒以上のダリア生産者さんの総力で1年中いつでも数量が揃う頼れる産地なのです。

 

「もうひとつは、品種選び」

みなみ信州は、大田花きと摺り合せを行った上で品種を導入します。需要を的確に捉えて品種を揃えているということです。

 

つまり、欲しいダリアがいつでも欲しいだけ揃う産地ということですね!

 

 

◆今後の課題は?

年間を通じて出荷量が多いのは5-6月。

graff_dahlia.JPG

 <大田花きにおけるJAみなみ信州のダリア取扱本数 2010-2012年合計>

 

「でも、マーケットがほしい時期は9-10月を中心とした秋のブライダルシーズンでしょ。

でも、この時期の物は暑い夏を越したもの。この需要期の品質をいかに維持しつつ、数量を増やしていくかが最大の課題なんだ」

 

なるほど、みなみ信州にお邪魔した当日はまさかの気温30度超えΣ(゚口゚;アッツ!!

「みなみ信州の夏は東京並みに暑いよ」weather07.jpg

 

標高が高いところは別としても、みなみ信州の多くの地域では、夏場の気温は優に30度を超えます。

山間部ですから、さすがに夜間は15度前後まで下がりますが(これがまた植物の生長には大変GOODなのですが)、それでもこれだけ昼間暑いと品種によっては株が萎れるという現象が起こるわけです。

 

う~ん、塩澤さん、なんとなくイメージは伝わりますがどうして暑すぎると株がダメになってしまうのですか?

 

「品種によっても違うんだけど、地温が下がらないと球根が弱ってくる。人間もずっと暑いところにいると疲れるでしょ。球根が弱ると病気にも弱くなって、いつの間にか病気になって球根が腐る・・・という現象が起こるんだ」

 

その暑いという環境が課題になると、克服するのが難しいように思いますが、どのように取り組まれているのですか?

 

「①遮光をする。(ハウスの天井に塗布剤=日除けのペンキを塗ったり遮光ネットをかけたり)

DSC04989.jpg

②風通しを良くする。

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③地熱が上がりすぎないように、ヤシガラやマルチを地面に敷く。(ヤシガラは日除け資材。森本さんのところはバガス)

DSC04998.jpg DSC04942.jpg

など、いろいろやっているよ」

 

みなさん、きっと今年はみなみ信州の暑さへの取り組みに結果が出る年です。

是非みなみ信州のダリアを使ってください。

 

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後編に続く

後編ではみなみ信州のダリア以外の品目をダイジェストでご紹介します!

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