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2014年3月24日
vol.104 JAあわじ島のアカギク
今回は・・・
淡路島にやってきましたーーーーー!v(≧∇≦)v ワーイ!
ウン探、淡路島に初上陸です!訪れたのは、兵庫県南あわじ市灘地区。
ウグイスの透き通った鳴き声が、ここにも穏やかな春が到来したことを告げています。
青い空と碧い海、そして緑の・・・
・・・が、崖ッ?Σ(゚口゚;
ンわッ!海のち崖!
このようなところにウン探が取材するような品目が生産されているのか?
しかもえんらい急斜面やし・・・^_^;
ここで作れる花ってあるんかな。
まあ、淡路島というたらタマネギですが、これは内陸の平地における生産のこと。実は淡路島の灘地区という、このような急斜面ばかりの地域で、ある花を生産しています。
さてそれは何でしょーーーー!?(←ミステリーハンター風)
正解は、・・・
アカギクとは、その名の通り赤い輪菊(リンギク:1つの茎に1つの花が付いているキクの形)のことを指します。
淡路島は、JAあわじ島(以下、「淡路」と呼ばせていただくことがあります)から出荷されるアカギクの大産地なのです。
海と崖の狭間で・・・
このような急斜面のどちらにアカギクのハウスがあるのでしょうか。(ほんまにあるんかなぁ)
水先案内人は、JAあわじ島・灘花卉部会の部会長、林則幸(はやし・のりゆき)さん。
あ~、チョット、チョット・・・
早速、どちらに連れて行って下さるのでしょうか。
路上には大きな石がゴロゴロと落ちていて、
狭い道にはガードレールもなくハンドル操作を誤れば一瞬で崖に転落するような緊張感(ほんまにあの先、道があるんか・・・?)、
極端なU字・・・っていうかV字かこれ?と思わせるかのような道をぐんぐんと突き進む。
(もうこの道は東京やったら危険で閉鎖されているやろな)
「海のち崖」のような道の運転は、まさに命ガケ!
車が揺れすぎて、道路の様子をうまく写真に撮ることもできない・・・アワワ(◎日◎;)
←ブレすぎ
どこまで行くのかわかりませんが、このようなところに花の圃場があるようには思えないのですが・・・。
と思いきや、突然眼前に現れました、農業ハウス。まさかこんな所に。
ていうか、これはどうやって帰る時に車を向きを変えるのかと思うほどのスモールスペース(◎_◎) ン?
車を降りて、自足で歩けばアキレス腱がプチッといってまいそうな傾斜・・・^^;
だがねーー、伝わらんのよねー、ウン探のローテクな写真撮影では・・・スミマセン(;・ェ・)トホホ
このような地形条件で本当にアカギクを作っているのでしょうか。
作っとった・・・(・0・。)Ahaaa!!
しかも上から見たらL字スタイルのハウス。
「限られた山間地の傾斜スペースを有効に使っとるんよ」
と林部会長。
ここ灘地区は、元々オレンジなどの柑橘類やビワの生産が盛んでした。その面影は今でも至る所に見て取ることができます。
ところが1991年にGATTウルグアイラウンドの交渉結果によりオレンジと牛肉が自由化されて以降、オレンジの木を1本伐り倒すごとに国から補助金が支給されるようになると、ココ淡路でも柑橘類の生産量が減少していきました。
それに代わって生産し始めたのがアカギクなのです。
一見したら、なかなか施設園芸をするような場所ではないかもしれません。
全国でも、このような地形条件の元でキクを生産するのは大変珍しいケースと言えます。
灘花卉部会は全部で11人ですが、もう圃場はみんなこんな感じ。
こちらは山崎光宣(やまざき・みつのぶ)さん、通称"みっちゃん"のハウス。
「まあ、遠くから見たら斜面にハウスが張り付いているようなもんですわ」と山崎さん。
スゴイ傾斜の角度でしょー。
だがねー、伝わらんのよね~、このアタシのローテクな写真撮影では。
っていうか、傾斜が普通じゃないから!(;´Д`A ```
足首が普通に休まることがない!下るときも一歩一歩確認せな、転びそうやもん。この傾斜ハンパないでぇ。
ほんで、こちらがちゃんと(ズームで撮影)した山崎さん・・・と山崎さんの軽トラ。
おっと、ちょっぴりアーティスティックな山崎さんは、ネコのひげが描かれた軽トラがトレードマーク。
軽トラだけど、トラではなくネコに変身か?略してネコトラ。
Best Chrysanthemum!(=ベストなキク!)と書いてあります。
御意!
これは山崎さんの圃場から臨む瀬戸内海ですが、天気の良い日は対岸に和歌山県が見えるそうです。夜には和歌山市の夜景も見えるのだとか。
今日は天気が悪いので、あちらに和歌山県が見えるものとして、写真をご覧くださいませ。
生産
このようなところでどのようにアカギクを生産しているか見てまいりたいと思います。
JAあわじ島でアカギクの部会がこの灘地区で発足したのは今から32年前。
そのポリシーこそ・・・!
「小さくても大きな産地!」
その心は?
「大品目に比べれば出荷量が少ないとしても、その品目の中で大きなシェアを取る!」
ということです。
さて、そのポリシー実現のために、淡路が取り組む生産のこだわりは何でしょうか。
まずは山崎さんの圃場で教えていただきましょう。
山崎さんの場合、この急斜面の土地はお祖父さまがツルハシで開墾しました。
最初はこんな感じの↓土地でした。
なぬッ?ツルハシ?
ブルドーザーとかじゃなくて?
「ツルハシだよ。1日中ずっとツルハシで開墾していたみたい。昔はそれくらいしか仕事なかったしね」
「何年もかかんねんよ」という林部会長。うわ~、これはしんどい作業ですね。
山崎さんは(もちろん他の部会員の皆さまも)、お祖父さまや先代の方々が人生をかけて開墾した土地を大切にして、丹念にアカギクを作っていらっしゃいます。先代の方々は本当に素晴らしいものを残してくださいました。
さて、圃場の中。
一見アカギクが咲いているようには見えませんが、山崎さんは出荷用に収穫していました。
あの~、咲いていないのに収穫して大丈夫なのでしょうか。
「アカギクの場合は、この状態になれば収穫適期!」
こちらの専用の鎌でシャカシャカと手際良く切っていきます。
何か切り前を判断するコツはあるのでしょうか。
「蕾をひとつの球と喩えたときに、上半球と下半球が等しく半分くらいずつがベスト。
これだとちょっと早い↓ 上半球がまだ少し小さいでしょ。」
「ところが、、関西用はこれでも大丈夫と言われるのが面白いところやねん。
大田花きなど東京用は少し緩めのタイミングで切んねん。キクとの対話の中であ・うんの呼吸が重要やな。」
関西市場では"固すぎて怒られることはない"という山崎さん。大田花きにはふっくらと色づいたものを出荷してくれています。他の花でも切り前の要望が関東と関西で異なるというのはよく聞く話ですが、アカギクでも同じようです。
生産のステージで、なんといっても手を煩わせるのが、「芽かき」。
目かきでも耳かきでもありません!
「芽かき」です。
キクの性質として、葉が分化した根元から花芽が出てきます。
このようにあっちにもこっちにも!
脇芽ともいいますが、これを逐一取り除いていかないと、なんとそのキクは「スプレーギク!」になってしまうのです。w(゚o゚*)wコリャタイヘン!
「アカギク」の定義は、冒頭に示しましたように「赤い輪菊」であることですから、スプレーギクでは出荷できません。
1本1輪の輪菊に仕立てるためには、全ての節間から出てくる花芽をことごとくキレイに取り除かなければならない!
ひょえ~Σ(゚口゚;オソロシ
「1本で10個くらい付くねん」
年間50万本ほど出荷される生産者さんもいらっしゃるようですから、
50万本×10個・・・ということは?? 500万回!!!Σ(゚口゚;
考えるだけでも手の母指球がツリそうやわ・・・
全国からアカギクの芽かきボランティアを募集します!!
(食べ物もおいしく、景色もいいし、とても良いところですから観光がてら是非!)
「シロギクやキギクの中には、品種改良されて3個くらいしか花芽が付かないものもあるのですが、アカギクは品種改良が追い付いていなくて・・・」
ふむ、これが生産者さんを悩ませる最大の理由であったか。
しかも、芽かきが遅れると、その分脇芽に栄養分を取られてしまいますので、本来咲かせたい花の栄養分が減少してしまうぅ~~~!!→輪が小さくなってしまうということなのです。
脇芽を取って、取って、取って、取りまくって・・・
生長点の周り3輪くらい余分に付いているツボミを全て取り除くことが最終工程。
中心の1つを残して、あと20日間温かく見守れば出荷まで漕ぎ着けます。
「まあこの花秀芳(はなしゅうほう)がよく脇芽が出てくんねん。」
冬季の出荷用には、淡路のアカギクは「花秀芳」という品種を使います。
「だから、花秀芳を作っとったら手が黒くなるんよ。アクでな。女性にはかわいそうなくらいやわ。」
ドレドレ( ・_・)・・・(右の写真は、淡路のもう一人の重鎮、林均(はやし・ひとし)さんの手です。後ほどご紹介いたします)
いやいや、何をおっしゃいますか、これぞザ・ハンズ・オブ・ハンズ☆仕事師の手です!
取材日のような嵐の日はあちこち圃場の間も移動もできないので、"芽かき日和"なんだとか。
逆に太陽が出ている日は、1列芽かきに集中している間に汗をかいて体力も消耗して熱中症の危険大!
←1列の終わりは遥か遠く・・・
アカギク生産にとって、この芽かきは生産工程の中で最も大きな問題なのです。コスト的にも労働負荷的にも重くのしかかります。
次に仕立てについて。
淡路のアカギクは、ノーピンで作ります。
"ノーピン"と聞いて、よからぬことをイメージしたお父さんたち!コラコラ(´ー`)そっちじゃありませんから!
ノーピンとは、ノーピンチ(摘芯ナシ)の略語です。
アカギクは、一度もピンチすることなく収穫を迎えます。
だからこそ、スッとした立ち姿。
比較として、ダリアなどはピンチを重ねて1株から何本も枝を取るようにしていました。(小欄vol.100JAみなみ信州の回をご参照ください)
淡路のアカギクはそれだけ1本に栄養を集中させて、エネルギーのこもった「渾身の1本」を作っているのです。
ひとつの苗からこのサイクルを基本的には2回行います。これを「2度切り」といいます。(1回目であっても2回目であっても、花のクオリティは、全く以って遜色ございませんのでご安心を。)
あ、ホントだ。収穫した後にもう一度生長点が出てきています。
・・・と思いきや?(*゚・゚)ンッ?
「摘芯するかノーピンでいくかは品種特性にもよんねん」
という山崎さん。
淡路でもアカギク以外でピンチをする場合があります。
こちらは山崎さんが作るシロギク。芽が出てきたところでピンチをすると、このように2-3本に枝分かれ、同時に2-3本を収穫することができます。
「摘芯する場合は、ノーピンより収穫までに時間がかかんねんで。
ノーピンでいっても、ピンチしても時間と収量は一緒やねん。
それから、ピンチする場合は樹勢が強い品種であることが条件やな。」
そうそう、この点が重要。品種特性。花秀芳はピンチに向いていないので、ノーピンでいきます。その代わり2周するというわけです。
「花秀芳はまっすぐ素直に育つ品種やねん。キレイにスッとな。
うちらは花秀芳を貴婦人のように思てんねん。坪単価や生育特性からしてももっと収穫できる品種はほかにあるけどカントリー娘はあかん。手間がかかっても貴婦人を選ぶ。」
きれいな花色と立ち姿が特長の花秀芳。
うぉ~w( ▼o▼ )w オオォォ!
これぞまさしくレッドダイヤモンドキラキラ☆・・・
買参人の中でもとりわけ淡路のアカギクファンの間で、この美しさと淡路のブランドに敬意を込め、いつのころからかレッドダイヤモンドと呼ばれるようになりました。~崇!!
次に、こちらは福田昌宏(ふくだ・まさひろ)さんの圃場です。
JAあわじ島の灘花卉部会の中でも、最も栽培面積が大きく収量も多い福田さんです。
「まあ、借金も一番多いけどな(爆)!」
と明るく笑い飛ばす福田さん。
福田さんには増殖についてお伺いいたしました。
増殖
淡路のキクは基本的には挿し芽で増やします。花秀芳はパテント(苗を購入する時に種苗会社に払うもの。パテントのあるものは生産者が勝手に増殖してはいけない)が既に切れていて、ロイヤリティ(出荷数量に応じて種苗会社に支払うもの)も必要ないので増殖自由の品種です。
ですから、淡路では自分たちで苗を作ります。このように、生長点を確保した挿し穂を作り、湿度を高めにした別のハウスで専用のポットに挿し、発根を促します。
苗を育てることから、これを育苗(いくびょう)といいます。
苗がしっかり大きくなったら、この圃場に植え替えます。(定植)
一方、直挿し(じかざし)という方法があります。
それは、このように↓挿し穂を直接地面に挿して、そのまま収穫に至るまで栽培するという方法。これは定植の手間を省くことができるのですが、育苗ハウスで根が張ってから定植するのと異なり、技術が必要です。
「特に夏季は根が腐りやすいから、育苗ステージが必要。冬は直挿しやけどな。
この花秀芳が水に弱くて腐りやすい品種やねん。
以前もまだ苗が小さい時に湿度が上がってベチャーーーーーッ!とハウス丸ごと腐ってもうた時があってな。
もうたまらん!」
直挿しの方が定植の手間が省けるのでその方がいいのですが、技術の習得とタイミングの見極めが必要です。
淡路にしかできないこと
アカギク生産において、この「海のち崖」の淡路の地形の恩恵にあやかっていることは、なんといっても、水はけがええこと!
ご覧の通りの岩肌に急斜面。
「岩肌×傾斜の環境で作るのがちょうどいい」という林部会長。
一般的にキクの根は水に浸けると根腐れを起こしやすいのです。アカギクの根も意外にこじんまり・・・ですから水田だった土地でキクを作るのは、実はあまり向いていないのです。
淡路のこの環境だからこそ素直に育つのだとか。
一見デメリットに見えることをメリットに変え、利益を生み出す農業を営んでいます。
この独特な地形から強みを享受するからこそ淡路が"大きな産地!"になれるのです。
他の産地にはマネできませんし、灘花卉部会のみなさんがその地形に合った花秀芳という品種を上手に選んだところに商機があったのです。
しかし、まだまだこれでおしまいではありません。
「同じ品種を作っとると、毎年同じように作っとっても連作障害で作柄が悪くなってしまうねんな」
そうなる前の方策として、このように圃場の一角で試験栽培を行っています。良い品種を見つけたとしても、その土地に合うように作りこなすまで、またそこから数年を要します。次世代品種のデビューを待ち望むところです。
(↑写真の中心の一角だけ、葉の形が少し異なるのがお分かり頂けるでしょうか。ここ一帯が試作品種となります。)
選別
選別のシーンは山崎さんの選花場で見せていただきました。
"良いものを作る"のはブランド確立のためのひとつの必要条件ですが、"良いもの"の出来具合もそれぞれ。それをいかに階級ごとに画一的な品質に揃えていくかがブランド化にとっても命です。
こちらは当日収穫されたアカギクの山!
ワオッ!ヽ(´∀`*)ノ このひと山で1,000本くらいあります。
「キクは重量で選別するんだよ。」
へー、重量ですか。長さは?
「長さはほぼ90cmで統一する。その上で重量によって4段階に分けるんだ。2L、L、M、Sとね。」
キクの場合は、長さだけではなくもう一つ重さで選別するのがほかの花とは違うところです。
どれどれ、ほんとだ!キクはできによってこんなにも太さが違う!
この重さは、よもや秤で1本1本数えていくわけではないと思いますが、まさか・・・秤が見え隠れしていますが?
「機械で自動的に選別するんだよ!」
自動選別機はコチラ!ジャジャン☆
この機械に1本1本キクを置いていくと自動的に左から右に流れていきます。
その途中で機械のあっち側に分銅が付いていて、その分銅より重いところでパラリと下に落ちる仕組みになっています。
細いアームに載って、右奥の分銅によって重さを測ります。
こちらがその分銅。
その分銅より重いところで、アームが下がり、重量別に仕分けされます。
ぬぁんとこの機械、100万円ほどするのだとか・・高いなー、軽自動車買えちゃう?
「もう20年使ってんねん。」
山崎さん、お仕事のパートナーとして大切に使われているんですね。
その重量以外にも選別の際に、見るところがあります。
重量で分けて10本束にするときに、主に・・・
① 曲がり
② 虫付き ⇒ 特に葉の裏をチェック!
これを10本ずつに束ねて、ここで90cmきっかりに合わせ、一晩水揚げをして集荷所に持ち込み淡路を出発するというわけです。
あら?こ、これは?!(゚ペ?)???
なにやら冷蔵庫に貼り付けられた大きな発泡スチロール板に、詩のようなものが書かれています。
「これは人生についていろいろ考えてん。」
選別場で日々キクと対峙しながら、人生について考えていらしたのですね。
「この詩はな、"散る"っていうのがテーマやねん。」
硫黄島の戦いを指揮した栗林忠道氏の辞世の句だそうです。
「精魂込めて戦い人 ~(中略)~ 散るぞ悲しき」
ココに共感を得て山崎さんはこの詩を転写しました。
硫黄島ではありませんが、ここ淡路島でキクに人生を捧げようと心に誓った山崎さんの情熱と、1回1回の出荷にかける強い思いを反映したかのような引用ですね。
深いッ!深いなー(´▽`)
そして看板の最上部には
"Your life is only one!"
まるで崖の上でアカギクを作る淡路の部会のあり方を象徴したようなフレーズです。
集荷所
海を臨む集荷所にやってまいりました。選別されたアカギクが淡路を発つときです。
ちょうど、続々と部会員さんによって出荷用のアカギクが持ち込まれます。
それから福田さんほか、山崎さんもネコトラにて。
福田さんのトラックは、個人所有なのになんだかとてもプロ仕様です。
荷が降ろされたら、農協職員さんのディレクションにより、出荷市場別に分けられていきます。
よいしょよいしょと運ばれて、最初に仕分けてくださった大田花き行きの山。
「(大田花きには)いっちゃんええのを送んねん!」
とダミ声でおしえてくださったのは、山中一男(やまなか・かずお)さん。
ありがとうございますv(≧∇≦)v イェイ!
山中さんが「大田花き」の大きなスタンプを片手にテイクバックをしながら待ち構えていて、ここに置かれた箱に片っ端から、反復横跳び級の軽いフットワークで「大田花き」スタンプを押していきます。
あっと言う間に仕分け終了。
トラックの運転手さんが来て、各市場に向けて出発します。
っていうか、なんでアカギク?
先にも少し触れましたが、灘地区の農業の主流は、柑橘類・ビワ・日本水仙、そして少量のキク栽培。
しかし柑橘類やビワの場合、収穫期は1年に1回、さらに「海のち崖」のような地形においてはいくら天候穏やかな瀬戸内海といえども、台風がくれば1年の努力も水の泡というような高いリスクの中、柑橘類から安定性の高い施設園芸のキクに変更していきました。
「最初はシロもキイロも作っとってん。」
とおっしゃるのは、歯並びがきれいで笑顔が素敵な林均(はやし・ひとし)さん。あー、きれいな歯がマスクで見えへん・・・(-ε-)
「そやけどアカギクを花秀芳で作り始めたら評判が良くて。ほな、"これでイコカ"と徐々に増えていって、最後はアカギク1本になった。それが小さい産地であるウチの戦略やねん。
そのきっかけをくれたのは大田花きやで。大田市場が開場して、大田花きが機械ゼリを取り入れた頃に、たまたまウチら見学に行ってん。
ほんで"アカギク作ってます"言うたら、今の磯村社長に"隙間産業でチャンスがあるから、いい戦略ですね。アカギクでしたら、淡路の出荷数量で十分産地としてやっていけます。しかも周年ですからこれは嬉しい"と言われてん。」
そこで試しに出荷してみたら
「品質的にもOKだから、今後とも出荷をお願いします」と。
東京という大消費地で評価してもらえる面白さもあり、自信を持ってアカギク生産に特化したというわけです。
なるほど。このようなところから海と崖の狭間で作ったアカギクが、大量に東京に出荷される経緯は、こういうことだったのですね。
そう、淡路のアカギクは大田市場の設立がきっかけで産地として生まれたようなもの。淡路のアカギクは大田花きの誕生とともにあるのですね!
「そう、私は死ぬまで花を作る!」
とダイナミック宣言をされたのは山中さん・・・ですが、2カ月で70万の重油の請求書が届いたのだとか!
ひょぇーーーーーーッ(; ̄Д ̄)<愕!!>
思わず悲鳴をあげてしまします。東京でも1カ月35万円あったら相当良いマンションに住めますね^_^;
重く乗りかかる生産コストはここでも深刻な問題でした。
私のものもみんなのもの・・・共選共販
淡路の花き部会員11人全員が、いかに品質を画一化し、気持ちの上でも足並みを揃えるか。淡路の皆さまは、個性豊かな印象を受けましたが、どのように共同の意識を持つのでしょうか。
ひとつは、毎月全員が集まり全員の圃場を巡回し、勉強し合います。基本的には皆同じ品種を作っていますから、お互いに気いたことを意見しあい、部会員のみなさんから学び合うという姿勢。
もうひとつは
「"自分のキクであってみんなのキクである"というの共選共販の意識を持つことだよ」
とおっしゃる林均さん。
蓋し、名言v(≧∇≦)v !!
「自分の品質だけ良くても、部会の誰かの品質が悪かったら部会全体の評価が下がるから」
コラッ、ジャイアン!聞いとるか!
「オマエのものはオレのもの」と言っとる場合ちゃうで!淡路のみなさんを見習うように!
虹色のイルカ集団
個性豊かでありつつも、お互いを尊重し合い、同じ方向に進んでいく灘花卉部会の姿は、灘を回遊する虹色のイルカ集団のようにも見えます。
そもそも灘地区の「灘」って「さんずいに難しい」って書くねんで!
波が荒く潮流の速い難所やいうことやわ。
※瀬戸内海の灘については、島が少ない地域を指して灘と言うこともあるらしく、必ずしも波が荒いとは限らないようです。
いずれにしてもこのような難所で「小さくても大きな産地」を目指して、力を合わせてアカギクを生産する方たちを、全国の皆さまに知っていただきたかったわけです。
消費者のみなさまにメッセージ
キクは国花なり!
今は洋花ブームではありますが、日本を象徴する花はキクが一番!どのような儀式にもキクが欠かせないのです。是非、これからもキクを見直してください。
淡路のアカギクは大変持ちの良いものが出来上がっています。
おまけ その①
この灘地区は、全国でも有数のスイセン郷。あちこちに日本水仙が自生しているばかりではなく、灘黒岩水仙郷という日本水仙で埋め尽くされた市営の公園があるのです。
瀬戸内海を望み、海のち崖のこの急斜面一面に日本水仙が植えられています。
←こちらもすごい角度!
写真は2013年1月のもので、まだ開花期には少し早いときのものですが、満開を迎える頃のシーンは圧巻です。
おまけ その②
★猪狩り
淡路のみなさんな晴耕雨読で穏やかな人たちとお見受けしました。
晴れた日には畑を耕し、海で漁をして、山で狩猟をする。
灘花卉部会のみなさんも、アカギクを作る傍ら、海に出たり、山に入ったりしています。
狩猟は獣害を防ぐためです。林均さんは狩猟免許を持っていて、訪問したこの日、イノシシを仕留めて(檻に誘導する方法)さばいてくださいました。
その猪肉がコチラ!ジャジャーン。
この日は、味噌だれの鍋でいただきます。
イノシシの肉は、豚や牛肉よりもカロリーやコレステロールが低く、ビタミンBは圧倒的に含有量が多いのです☆
猪肉の場合は脂身が美味。
これほどまでに分厚い脂身の猪肉が獲れたのは今年初めてなんだそうです。
人生に1度あるかないかの機会に恵まれ、有難くご相伴に預かりましたm(_ _)mアリガトウゴザイマシタ☆☆☆