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2014年7月29日
vol.106 日本のユリはどこから?【後編】JAとさし高石花卉部会
この7月はFIFAワールドカップも、見事ドイツの優勝で幕を閉じ、
テニスのウィンブルドン選手権においてもチェコのクビドバとセルビアのジョコビッチがそれぞれ優勝し、ヨーロッパ勢が本領を発揮したところで、うんちく探検隊「日本のユリはどこから?」の後編に突入したいと思いますv(≧∇≦)v
オリエンタルユリの球根を供給する中村農園に引き続き、オリエンタルユリを生産し市場に出荷する生産者さんを訪問しました。
冬場のオリエンタルユリのトップブランドであるJAとさし高石花卉部です。
何を隠そう、高知県は面積に占める山地割合割合が89%で全国で最も高く(全国平均は54%)、耕地面積も全体の4%と極めて限られています。
それにもかかわらず、高知県の園芸農業(野菜、果物、花き)は大変盛んで、とりわけ花きに関しては、グロリオサが有名であるように世界でもトップクラスの品質を生み出しています。
しかし、高知県から出荷されるトップクラスの花はグロリオサだけではありません!x_(・ェ・)ノンノンノン
JAとさし高石花卉部(以下「高石」と呼ばせていただくことがあります)から出荷されるオリエンタルユリもまたトップブランド。特に冬場においては圧倒的な量と質を誇る無敵の生産地です。
周年出荷ではありますが、暖地である高石の強みは、本来の夏に開花するユリを真逆の季節である冬に高い品質でオリエンタルユリを出荷できるということ。
【平成25年度 高石オリエンタルユリ出荷実績】(大田花き)
ご案内いただいたのは、JAとさし営農指導課、山西将平(やまにし・しょうへい)さん。
お邪魔したのは、横川晴夫(よこがわ・はるお)さんの圃場です。
高石は、前編でご紹介いたしました中村農園さんのような球根卸売会社などから、毎年球根を仕入れます。以前小欄でご紹介いたしましたJA津南町のように独自でユリを養成するところもありますが、高知県のような暖地においては球根の管理に不向きであり、自己管理は高いリスクが伴うので毎年新球(※1:しんきゅう)から育てるのです。
「私たちの環境では、切り下球根(※2:きりしたきゅうこん)よりも新球を購入したほうが、コストも手間も省ける上に、品質的にも安心なんだよ」
と山西さん。
※1:新球
球根の卸売会社から仕入れた、発芽前の新しい球根のこと。口語で"しんたま"と呼ぶ場合もある。(新タマネギのことではありません。でもイメージは同じ♪)
※2:切り下球根
一度採花した2回目以降の球根のこと。
ココ高石地区においては、昔からテッポウユリの生産が盛んでした。確かに日本でも古いユリの大産地なのですが、実はさらにその前はトマトの生産が盛んでした。
食糧から花へ転作したきっかけはあるのでしょうか、横川さん。
「昭和40年代、"これから豊かになっていく日本では花が売れる時代になっていく"という気配を敏感に感じ取り、生産に携わる人たちの多くはテッポウユリに切り替えていったたんだよ」
皆がテッポウユリやスカシユリを作る中、横川さんは昭和50年代後半、大輪のオリエンタルユリを導入した第一人者です。
ハイ、ここポイントー!!
その時に出合った花こそ、
"カサブランカッ"!
前編の復習ですが、FIFAワールドカップで活躍したロッペンの国オランダ生まれの球根品種には、世界の地名に因んで名付けられることがあります。カサブランカもその一つ。モロッコの最大都市から付けられました。
そのカサブランカとは、どのような出合いだったのでしょうか。
「知り合いの生産者さんが試作したものが高石の農協に1本だけ飾ってあったんだ。
それを見て、このユリはスゴイすごい!Σ(゚口゚;
と衝撃受けたよ。今でも鮮明にその時のことを覚えている。
それまでに見たことのない素晴らしいものだったな。
これは絶対やらにゃいかん!たとえ一人でも作ってみようと思って始めたんだ」
と当時を振り返ります。
もうその時のインスピレーションといえば、神の声に聞こえたほどだったとか。
「当時ひとつの球根が500円したよ」
うぉ~(@_@)・・・クラクラしますね。
「でも、球根に500円かけたからといって、カサブランカ1本がいくらで売れるか、皆目見当もつかない状態だった。
それでも尚、作ってみたいと思ったよ」
もう何にも邪魔されないほど熱い情熱に突き動かされたわけですね。
それ以来、横川さんはカサブランカの生命力に魅力を感じ生産に取りかかりました。その時は無我夢中で、まさにカサブランカの虜となったと言っても過言ではありません。
それから35年経った現在、横川さんの圃場におけるカサブランカ率・・・・・・
97%!!
殆どカサブランカです。(部会全体では60%くらい)
みなさま、ここで念のため誤解のないようにお伝えいたしますが、カサブランカとは品種名です。
ユリは、テッポウユリとかオリエンタルユリ、アジアティックユリなどいくつかの種類に分類されますが、そのオリエンタルユリの中のカサブランカという、本当にピンポイントな種類を指します。
つまり、ほぼカサブランカのみを作付するということは、バラでいえば、例えばアヴァランシェで圃場を詰め尽くすようなものです!
念のため補足させていただきますが、みなさまのお陰で今回106回を迎えたウン探も、振り返れば全国各地の花の産地さんをお邪魔いたしました。しかし、生産品目を1品種に絞り込んでいらっしゃる方はほとんどいらっしゃいません。シロギクなどでも夏用と冬用で2品種は作付しています。
多くの場合において複数品目(例:vol.98 奥隆善さん、vol.96 ワイルドプランツ吉村さんなど)を生産されたり、あるいは1品目(例:バラだけ、ダリアだけ)にしても必ず複数の品種を栽培します。
季節感を大切にする日本人の場合は、1年間の中でも短期間の間に売れる色目や品目がめまぐるしく変化していきますので、リスク分散の意味においても、また季節による販売のムラをできるだけ均一化する意味においても、単一品種を生産される方はとても少ないのです。
それだけ白のオリエンタルユリは年間を通して安定的に需要があるということなのかもしれません。
オリエンタルユリは白だけでもたくさんの種類があります。シベリア、リアルト、ユニバース、クリスタルブランカ、ザンベジなどなど。それでも尚、なぜ横川さんは、カサブランカオンリーでいくのでしょう!?
「昨年まではもう少しピンク色の品種も作っていたんだけどね、今は作りたい品種がなくなってしまった。
見続けるとカサブランカ以上のものはない。
ボリューム、日持ち、萎れ方、香り、それひとつとってもカサブランカは秀逸。瞬間的、部分的ににいいなと思うものはあっても、トータルでカサブランカを超えるものではない。
何より、カサブランカは横向きで花付きもいいし、何よりキレイでしょ。生産もしやすいから、とてもいい花だと思っているよ。
それに自分で作りたいと思わないと作れない。瞬間的に市場で評価を受けても長くは続かない。いいなと思うものであれば一生懸命作れるし、市場でも息の長い商品になる」
絶対に日本に広めると強い信念を持って、横川さんがおひとりで始めたカサブランカの生産は、現在では高石で18軒。先述の通り、高石は冬場のトップブランドと評されるようになったばかりではなく、高知県としてもユリの生産量全国第2位というユリの大産地に成長を遂げたのです。
しかし作り始めたのはいいものの、本来は夏に咲くユリの温度管理は、メロン並みと言われるほど。夏と変わらぬ品質を保つための必要な手間と技術とコストは、並大抵のものではありません。共選・共販という複数の生産者さんがひとつの産地名で出荷する形態において、どのように品質を揃えていったのでしょうか。
「私が部会長として技術指導をしていったんだ」
横川さんは高石支所全体の品質向上を図るため、自ら1軒1軒技術指導をして回ります。
高い技術が必要とされるカサブランカを栽培するということは、品質を揃えるために全員がその技術を習得するという高いハードルを越えなければならないのです。
更には、高石では平成18(2006)年以降カサブランカの秀優品だけに付ける「ユリア」という等級を設定しました。
「このブランドを立ち上げたことにより、それまで以上に厳しい選別を行い、出荷するようになったよ」
さらに部会の中で厳しい基準を設けて、ブランド確立を徹底されたわけですね。
出荷全体のうちユリア率はどのくらいですか?
「そーねー、6くらいからなぁ~」
6割?60パーセントくらいということですか?
「いやいや、6パーセントよ。年間を通してね」
え??ろッ、6パーセント??
冬場のトップ産地の高石といえども、・・・いえ、トップ産地だからこそ秀優品の選別は厳しく、全体から見ても少ないのです。みなさま、トップブランド産地の中のトップクオリティ"ユリア"は大変希少です。"ユリアを見たら買い!"ですよ!ユリアの札はこちら。
本来夏に咲くものを冬に咲かせて出荷するわけですから、その条件下で秀品を生み出すというのは、かなり高いハードルなのです。
「カサブランカがこの辺りの露地で開花するのは7月10日前後。つまり冬場でも尚、この時の環境に近付けることが大切。
ユリの中でも、とりわけカサブランカは地温最低18度を維持することが必要。他の品種では16度でもいいものもあるんだけど、カサブランカの場合は18度を死守しないといいものはできない。
カサブランカにとってこの温度帯が、根が動くかどうかの境目なんだ。
茎のしっかりしたものを作るためには、夜も根が動く環境を作ってあげないといけない」
逆に夏の暑さはどのくらいまで耐えられるものなのでしょうか。
「35度。」
あ、7月10日だからそのくらいなわけですね。
「高石では7月10日前後に35度あっても不思議ではないんだ。
同様にハウスの中でもこのくらいの温度までが限界であろうということ。それ以上になると、ユリも元気がなくなってしまう。早く成長しようとするから、開花はしても良いものはできんということなんだ。
ある程度、ゆっくりじっくり育てないといいものはできない」
となると、8月の残暑の時とかハウスの中は40度超えも珍しくないと思うのですが、そのような時はどうされるのですが。
「植えない。
そのような時期にかかるタイミングでは球根を植えないんだ。このハウスには何もなくなるよ。
品質の劣るものは持たず、作らず、出荷せず!」
球根の「非なんちゃら三原則」のようですね^_^;
トップブランドの持つポリシーは明解です。
「だから、高石でも定植をするのは8月20日過ぎ。」
お盆を過ぎてからということえすね。
「そうじゃないと、人間も倒れますよ」
と山西さん。8月の暑さは、球根にも厳しいですし、人間にも応えます。
「暑いと茎が柔らかくなってしまう。茎元を持つと、まっすぐ立たない。扇風機を回しまくるよ。1棟に4台、この4連棟で16台、24時間回し続ける。
他の産地の人とか市場の人には、ココに入った時"ここのハウスは気持ちがイイネ!"とよく言われるんだよ。
それはつまり、扇風機を回して気温と湿度をコントロールしているからなんだよね。人に気持ちいいということは、カサブランカにも気持ちがいいということなんだ」
高石は津南と並ぶオリエンタルユリの二大巨頭!
新潟の津南町が夏の産地とすれば、高石は冬の産地。この産地は、日本のオリエンタルユリの供給を支える二大巨頭なのです。
本来なら真夏の最も暑い7月10日前後に咲く花を、最も寒い12月、1-2月に夏場と同様のクオリティを目指して出荷します。とはいえ、工業製品ではありませんから、この天候や気候に左右される農産物をいかに真逆の環境で作りっこなすか。色々と栽培方法も変えなくてはなりません。
あー、真冬の日本で本格的にブラジルのサンバを踊るみたいな感じ?
どのように栽培環境を整えていくのでしょうか。
「例えばうちのハウスの場合は、1棟の幅が8メートルとすると、そこから4畝とる。
夏場の産地は同じ8メートルの間隔で5畝とる。でもうちは4畝」
それでは収穫量も減ってしまうのでは?
「ユリは太陽と温暖な気候が大好き。
このように粗植にすることによって、葉を広げてより光合成ができるようにしてあげるんだ。本来の開花期ではない時に出荷する責任産地としての工夫だよ。」
粗植にして、葉を広げてやる。十分に光合成をした高石のユリは、冬に生長したものでも最後の花まで大きく開花します。そして丈夫なカサブランカは、足元まで緑の濃い葉が密に並び、足元を持った時には開花輪の重さに耐えて凛と立つのが特徴。
「出荷に追われ、夜も寝ずに作業をすることもあるよ。
(↑繁忙期の様子。2011年撮影)
思いが強ければ強いほど、それを実行していくには様々な壁がある。
その困難を克服していくところに花生産の面白みがあるんだけどね」
という横川さんは、苦悩が多い中でもカサブランカの生産を楽しみながらやっているように見えます。
横川さん曰く、
「カサブランカとの出合いが私の人生を変えた」
ウン探もそのような出合いをしてみた~いv(≧∇≦)v いや、毎回生産者さんとの出会いがウン探の人生に大きく影響しています♪
高石の技術
「大きくて元気な球根を仕入れると、カサブランカは9-10輪付いてしまうこともあるんだ。
だけど、お花屋さんからしたら5-6輪の方が扱いやすいでしょ。
芽出しをする前にストレスをかけて、輪数が減るように調整するんだ」
そう、日頃取り引きに携わっていらっしゃらないと不思議に思うかもしれませんが、オリエンタルユリの場合、花が9輪付いたものより、5-6輪のものが評価が高く、市場でも単価が高くなるのです!
しかし、良い球根は栄養も勢いもあるので、普通に育てると9-10輪も付いてしまう場合があります。そうならないようにストレスをかけるわけですね。
芽出しとは、冷凍された球根を解凍しながら、定植前に芽と根を出すことです。英語ではrooting(根出し)といいますが、日本語では「芽」出しというのが面白いところです。
芽出しの様子↓
それにしてもストレスって、どのようにかけるのですか?o(゚~゚o)???
「定植前に、球根から7-8cm芽が伸びてくるまで待つ!」
通常は球根のまま定植するところを、芽が伸びてくるまで待ってから定植するわけですね。
でも、それがなぜストレスになるのですか?(・・∂)ワカンナイ☆オセーテクダサイ!
「普通は、球根から少し芽が出て見えるくらいで定植するのがベスト。それが自然の流れ。芽と根が同時に同じペースで生長していくから、植物体に負担がかからず、すくすく育つんだ。」
なるほど、そこを芽を先に生長させることによって・・・?
「根が芽の生長に追い付かないということだから、それが植物にとってはストレスになるんだ。定植しないと根は生長しないんだ。根の生長を遅らせることになるわけだよね。
このようにしてストレスを与えることによって、球根の充実度に変化を与え、開花輪の数を調整するんだよ」
これは、かなり高度な技術ですね。
「そうだよ。熟練の技で、かなりリスクを伴う。
芽の生長に対して、根の生長が遅いから、樹勢が弱くなる。結果、軟弱だったり、茎が弱いものができてしまうというリスクがある。安易に行うと大失敗して、球根代分も商品にならないということになりかねないから」
ではそのような球根を仕入れなければいいのでは?
高石の皆さんの好きなサイズを仕入れることはできないのですか?
「そこにカサブランカ独特の事情があってね、昔はカサブランカと言えば世界中に流通していたから、日本は日本のサイズを注文すればよかった。日本の規格に合わないサイズは、オランダやニュージーランドの種苗会社はほかの国に出荷していたわけだよね。
だけど今はカサブランカを使っているのは日本くらい。この状況においては、種苗会社が持っている色々なサイズを買わないといけないんだよ・・・」
つまり、カサブランカの球根の注文を入れる、希望しているサイズよりも大きいものから小いものまで、幅広くオールサイズの球根が届くのです。
大小様々な球根から同じクオリティのユリを生み出すために、さらに高い生産技術が必要になったというわけです。
オリエンタルユリは定植から採花まで100日。
百合だけに100日・・・かどうかはわかりませんが、この100日間に日本の生産技術の粋が集中しているのです。
高石の若人!
そんな横川さんには裕也(ゆうや)さんという頼もしいご子息がいらっしゃいます。
横川裕也さん、就農6年目。高石花卉部会では7名が若手。ますます将来有望な産地なのです。
裕也さんは就農前は、農機具メーカーの企業にお勤めでした。会社勤めと生産農家、それぞれの長所と短所を見ています。
「家を継ぐにしても、一度社会に出て勉強したいと思っていたよ。そうすることで両方を客観的に見ることができるでしょ。
会社員の良いところは、農家にはない定期的な休日や一定に保証された収入はあること。
それでもトータルで見ると、今は生産農家になった良かったと思うよ」
という裕也さん。
「自分が手をかけた分だけは返ってくる、植物が反応してくれる面白さがある。
しんどい時はもうユリ見たくない!って思うけどね。それより寝たい!とか(笑)。
それでも自分に鞭打って、仮眠程度でやり続けるしかないんだけど」
極限までご自身を追い込んでいらっしゃることもあるのでしょう。どんなに大変でも、やろうと思ったことは途中で投げ出したりしたりしない裕也さんの性格なのだといいます。
そして大変な思いをしても尚、植物を育てていくということ自体、昔から好きだったのだとか。
温かい口調からも優しい裕也さんのお人柄が伝わります。
もう一人、高石の若手ホープをご紹介いたしましょう。
徳廣真澄さん(1反=300坪、オリエンタルユリ、5品種)
一昨年から就農された徳廣さんですが、前職ではガソリンスタンドに勤務していましたが、ひょんなことから伯父様の農園を継ぐことになり、2年前からユリの生産に携わっています。
その上、花卉部会の副部長をお務めでいらっしゃいます。2年目で早くも!
「今年からね」
お話していても全く気負いを感じている様子のない徳廣さん。
農業とは無縁の世界から飛び込み、不安や抵抗感などなかったのでしょうか。
「全く分からないところから始めているけど、それをとても楽しんでいるよ。
知らないこと、新しいことを始める時は探究心が生まれるでしょ。
楽しみながらできない仕事であれば、やる価値はない!」
と言い切ります。天候に左右され、思うようにいかないなど大変なことはないのでしょうか。
「思ったようにできないから楽しい。
思った通りにやったらつまらないよ!
毎回同じようにやっても同じものはできあがらない。それが一番の楽しみかな」
えーーーー!全国の生産者のみなさまは、思うようにできないから悩んでいらっしゃるのに~??毎年同じように作っても、同じものができなくて困るっておっしゃっていますけど??
「そうだな~、工業製品と違って、園芸作物は完成までに1から100工程あるとすると、どの工程を一つ抜いても、あるいはタイミングを違えただけでも、完成品に大きな差が出てくる。1つ小さな工程を変えただけで、全てが変わる。
その面白さかな」
なるほど。ということは園芸生産というこの分野が、徳廣さんの前の業界とも異なり、独特なものであると見ていらっしゃるのではないかと拝察しました。今のお仕事を抵抗なく始められて楽しんでいらっしゃる所以は、徳廣さんの順応性の高さでしょうか、それとも共通性を見出していらっしゃる部分もあるのでしょうか。
「全く異なるようではあるけど、共通点も見出しているよ。
例えば、生産者は出荷物を市場に出したら終わりと思う傾向があるけど、私は一般消費の方に買ってもらうまでが仕事と思っているんだ。
市場に出荷しても、またその先の人、さらにその先の人に買ってもらわないといけない。
それを常に考えている。市場に出荷して終わりではない。
一般消費の方に"またこの花買いたい!"と思ってもらえる花を作る。自分が納得する花ではなくて、一般消費の方に納得してもらえる花を作るってこと。
この視点は、ガソリンスタンドでお客様に納得してもらえるサービスを提供することと共通すると思うんだ。
前の仕事で常にその視点で仕事を組み立ててきたから、今でもその習慣が残っている。
市場の売り方がどうかとか小売店がどうかということではなくて、最終のお客様がまた買いたいと思う花を作れるかどうか、私が考えているのはこの点です」
山西さん曰く、
「私がこの仕事に携わって7年。
徳廣さんのようなしっかりとした意見をはっきりと言える人って意外と少ない。
生産した者を農協に持ち込み、それを私たちが販売するというのが従来のスタイル。でも実際には、自分たちの商品がどのように売られているか、販売現場に足を運んで自分で見て見ないと、なかなか分からない。
それを農協が言うまでもなく、自ら率先して行動に移しているのが高石の若手なんだよ」
冬場のカサブランカ日本一産地として、流通のはるか川下を見据えて出荷する。その先を見るのも龍馬風といったところでしょうか。
異業種から農業に入ってきた徳廣さんは、1日の中で仕事の終わりの時間を作る人だと山西さんは言います。
「農業の場合って、朝も日の出と一緒か、それよりも早くから働き始めて、ルールがあってないような時間帯で働いちゃうでしょ。休みなのか休みじゃないのかわからないような働き方をしたり。
でも、徳廣さんはきちんとルールを持って働いている人だから、若手へ良い影響をもたらすと思ったんだ。だからこそ今年副部会長をお願いしたんだよ。
横川裕也さんも企業に勤務経験があるから、働く時間の始まりと終わりをしっかり作って生産している人なんだよ」
山西さんは外の世界を見てきた若手にこれからの牽引役を期待します。
徳廣さん、
「一般的には何でも段取り良く行って、効率を上げれば仕事は早く終わる。でも品質は落としちゃいけない。
例えば、私の伯父は日中の最も暑い時間帯を避けて仕事をする。
一方、私の考えは暑くても昼間できることは昼間にやってしまおうという考えなんだ。やるときは集中して行うし、休む時は休む。私はメリハリを大切にしているんだ。
農業生産は自業自得の仕事。自分がやらなかったら何も進まないし、利益を全て捨てるのと一緒だからね」
体力の差もあるかもしれませんが、自分で出来るペースを把握して仕事に段取りを付けていきます。徳廣さんの確固としたポリシーを感じます。
「例えば、今の季節であれば出荷はないから温度の管理のみで、朝はゆっくりするよ。7時に起きれば十分」
それは農業の企業経営への第一歩とも言えるかもしれませんね。
「ガソリンスタンドは潰し合いとも言うべき競争の激しい世界だったからね。そこで学んだことは多いよ。今の仕事にもその経験を十分に役立てている」
徳廣さんが就農されて最初にしたことは何でしょうか。
「1年かけて生産のサイクルを確認すること。
天候も含め与えられた環境下、限られた資材でわざと悪く作ってみる。わざとっていっても悪くしか作れないけど、その環境でどう育つかを観察するんだ」
なるほど、何もしないで普通に育てたらどうなるか、植物の性質を理解するということですね。
「今でも、圃場の一角を試験用に植えて、わざと放ったらかしにしているんだ。毎年の気候で変わるから施肥や灌水の目安にもなるしね」
そこで目指す品質に足りないものを与えていくということでしょうか。
「品質は求めるものではない。技術はこれが最高峰を決めない。」
キラーン☆☆☆
あえて自分で限界を作らない。理想を追い求めない。
完成品の行方をあえて青天井に開放しておくことで、ユリの可能性を無限大と見ている。そのようなお考えだからこそ徳廣さんは農業を楽しめるのでしょう。
高石の若手は宝ですね。
若人の力、部会の発展
横川お父さんは、若手の成長を口のように受け止めています。
「自分たち以上に若い人たちが情熱を持ってやり始めて、逆に私たちが刺激を受けることもあるよ」
おっと!
「作り関しては、まだまだ若い衆には負けんよ。
でも仕組みに関しては、若い衆に気付かされることもある。
例えば、今ウチでは水揚げの水を必ず1日に2回、取り替えるんだけど、昔は水を取り替えるタイミングは曖昧だった。"汚れたら変えよう"というのがスタンダードで、水揚げの度に新しい水を取り替えるという発想すらしなかったんだ。
でも、今はウチでは1日2回替えるのがスタンダード。若い人たちのお陰だよ」
自分たちが当たり前だと思っていたところに若い人によって疑問符を付けられ、仕事のやり方を考え直すきっかけになったという横川お父さん。
オピニオンリーダーの横川さんが実践していくことで、全国の産地にもその習慣が波及していきますね。
こちらが水揚げのプール。
家庭のお風呂のように、上から水を注ぎ、水槽の底にある栓から水を抜けるようになっています。だから水替えも人の体に負担なく実行していけるのです。
水槽には、ユリが倒れないようにバーが付いています。
↓ユリに水を飲ませる時はこんな感じ♪
夏でも冬でも1年中、水揚げの度に必ず交換!同じ水を使うことはありません。
「水の上がり方も違うし、時間が経過して起こりやすい葉の黄変現象もなくなった。
若い人の視点を取り入れることができて、私たちの品質はさらに良くなったと思うよ」
高石では、お父さん世代の技術と若い世代の発想との両輪がうまく回っているように思います。
良いユリの見分け方
①葉の付き方を見る
茎を下から上に回るように順に葉が出ているのは、生育が順調な証拠。
茎の周囲を回りながら均等な間隔で葉が付く。これが正解。
同じ高さから放射状に葉が付いたり、間隔が均等でないものは選ばないようにしましょう。
このように1か所から放射状に葉が出ると、新芽が凍ってしまった「冷凍障害」である場合が多いのです。
② 茎の固さをみる
茎元を持った場合に、ヨレっと曲がらずピンと茎が立つもの。
生産者さん達は、他の人の圃場にお邪魔した時は、まず茎を触って固さを確認します。
でも他人に商品を手で触られて、嫌ではないのでしょうか?
山西さん「それが管理です!それをしないと、ユリの管理状況や品質がわからないから。私自身もそうしています」
横川さん「自分の商品でも茎を触って植物の状況を判断するんだ。例えば茎が固くても、葉が黄味がかっていたりすると、花にボリュームがなくなってくるから液肥をやろう・・・という判断をしたりね」
③葉を見る
花の元気度は葉の元気度に比例する!
葉が肉厚、緑色が濃いものは、花弁も肉厚で立派な花が付く。
「葉が尖るとツボミも尖るんだよ」という裕也さん。
えッΣ(゚口゚;!!
ユリの場合、葉と花の形にそのような相関関係が・・・。
良く見れば、同じ圃場の中でも葉の形が異なっています。同じカサブランカでも尚です。
葉先の尖ったものと葉が良く太ったもの↓
葉の形を見れば、どのような花が付くのか予測できるといいます。
消費者の皆様へ
<横川お父さん>
オリエンタルユリの魅力の一つは、徐々に展開される開花ステージとともに表情の変化をお楽しみいただけることです。ふっくらと膨らんだツボミが花弁を開いていく一瞬には、高石のみなさまがLIFE(命、生活)をかけて育てた美の神髄が凝縮されています。
月日をかけて植物体全体に蓄積された美と生命力が解き放たれる瞬間を堪能してください。
<徳廣さんからの一言>
高石のユリは、しっかりした、ツボミも最後まで咲く美しい花です。是非高石のユリの良さを見てみてください。また、高石はユリの差を引き出した産地でもあります。
<横川裕也さんからの一言>
現在流通するユリの中でも、珍しい「横向き」、純白、香りも良好。一度、高石のユリをお試しください。
芳香剤とは違った、豊かな天然の香りとともに、目でも鼻でも、また触覚でも楽しんでいただけます!
<JAとさし山西さんから一言>
夏の津南、冬の高石というリレー販売をしております。冬の高石の品質を是非お試しください。
最後の最後にウン探読者の皆様に感謝の気持ちを込めてクイズです!え?クイズ??o(゚◇゚o)ホエ?
黒木瞳さん、武井咲さん、マツコ・デラックスさん、舘ひろしさん、綾瀬はるかさん・・・この豪華な方たちに共通することは何でしょう!?
正解はコチラ!↓↓↓
高石の皆さまに挙げてもらったカサブランカの似合う有名人です。
いずれの方々も納得のご指名です(^-^*)ノ
黒木瞳さんも武井咲さんもミス・リリー受賞者ですね。
マツコさんは、しっとり感といい、ダイナミックな雰囲気といい、オリエンタルな感じといい、オリエンタルユリな感じ満載ですね。全く以って共感です。
みなさん、マツコさんが恋しくなったら高石のカサブランカを飾って寂しさを紛らわしてくださいませ~♪
左から山西さん、裕也さん、横川お父さん、徳廣さん、JAとさしの山本さん(ギャグピカイチ!)