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2015年9月25日
vol.111 北空知広域連様★カボチャをめぐる冒険 第1話
ウンチク探検隊は、北海道は深川(ふかがわ)にやってまいりました!
ここ、ここッ↓
深川といえば全国でも有数の米どころ。
ソバも全国一の生産量を誇ります。
そして、もう一つ、忘れてはならないのが、
もうすぐハッピーハロウィーーーーーン!
そう、カボチャです。
カボチャの生産は、食用でも北海道が国内で70%ほどを占めるぶっちぎりで第1位。
鑑賞用のカボチャも北海道からたっくさん出荷されているのです。
今回は、ハロウィン用のユニークなカボチャたちがどのように生産されているか、ご紹介したいと思います。
今回は「カボチャをめぐる冒険」と題し、全5話にてお届けします。
まずは共選の北空知(きたそらち)広域連様<第1-4話>、その後に第5話に個選の片桐農園様をご紹介いたします。
では、北空知広域連様から。
北空知広域連様は、深川一帯で花きを生産される方々と農協さんです。今回のコーディネーターは、北空知広域連花卉事業部の佐藤貴洋(さとう・たかひろ)さん。
カボチャ色のタオルを首にかけて、準備万端です!
第1話は、「おもちゃ南瓜研究会」代表の吉澤淳(よしざわ・じゅん)さん、真由美さんご夫婦の生産から。
カボチャの場合、タネまきから出荷まで、ほかの花ものとは異なる行程を辿ります。
ステージは主に7つ。
① 播種
② 生育
③ 収穫
④ 洗い
⑤ 磨き
⑥ 乾燥(風乾)
⑦ 選別・梱包・出荷
③くらいまでは分かるとしても、洗いとか乾燥とかなんだべな~σ(゚・゚*)
では順を追ってみていきましょう。
① 播種→定植
種苗会社を通じて購入した海外の品種をメインにタネから育てます。
最初は小さなポットに入れて育苗し、大きくなったら圃場に定植します。これが5月。
② 生育 5月―8月
こちらは吉澤さんの圃場。標高はおよそ150メートル。
圃場にいらっしゃる方は、同じく北空知広域連生産者さんの山本時雄(やまもと・ときお)さん。カボチャ生産の先生です。
既に収穫後なので、葉は若干黄味がかり、雑草も生えてきていますが、バリバリ生育中は葉も青々としてこんな感じ↓(7月撮影)
良く見ると、マルチングシートが施してあります。この目的は?
吉澤さん「苗元に施した透明のマルチング素材は地温を上げるためのもの。
一方、シルバーの蔓の下に施したマルチングは泥はね防止用。
雨が降って泥がカボチャに跳ねると、品傷みの原因になるからね。」
地温を上げる理由は?
「ウチの場合、苗を定植するのは5月20日ころ。しかし、このころは北海道ではまだまだ気温が低いんだ。」
5月20日といえば、ココ深川では最高気温がせいぜい20℃。平均気温が15-6℃ほど。
「定植した後は温かいところの方が生育が良いので、ビニールを張ることによって土の温度が高く保てるんだよ。」
その頃、地温を上げることってそんなに大切なことなのでしょうか?
「そうだよ。苗の段階での生育は根を張らせることが最も重要。
根の生長を促すためには、地面の温度を保ってあげないといけなんだ。
だから定植前にビニールを張るんだよ。そうすると初期の生育が良くなる」
そして、丈夫に生長した苗。
あれ?みなさま、よーーーくご覧ください。
北海道の大地に立ってしまったら気づきませんでしたが、ちょっと引いてみると見えてきました。
実はカボチャの苗床は、このようなしくみになっていたのです。
<略図↓>
2列に植えた苗が、お互い向かい合いで蔓が伸びていくように作ってあるのです。
(お互い向かい合って伸びていく様子↓)
そして、両脇は軽トラックや作業用の車両が入って行けるように十分な間隔を開けておく。いわば「通路」ですね。
でもなぜこのような仕立てにするのでしょうか。
「日焼け防止なんだ。」
カボチャの実が直射日光を避けるために、あえてうっそうと茂るように仕立てていくのです。カボチャにとっても紫外線は大敵でしたか。
「実が葉の下に隠れれば、葉の陰で実が焼けずに済むんだ。カボチャは日焼けすると白くなっちゃうからね。」
これは食用カボチャで使われている手法です。
どうりでカボチャの実がありそうなんだけど、上からではなんだか"見えにくいな~"と思いました。
↓チョロチョロと実がありそうな感じなのですが、う~ん、よく見えないな~。
横から見るとこんな感じ↓ 茂みに隠れるように実が成るのです。
さらにその葉をかき分けて、今度はアリの眼になってよーく見ると、ちゃんと蔓をひとつひとつピンでしっかり止めてあるではありませんか!?右と左の畝からきちんと真ん中に苗が集まるように誘引、固定しているのです。
うわ、この作業、想像するだけで大変そーーだ(*_*;
収穫後はまた一つ一つ回収までするわけですからね。
カボチャ生産は、このように3本仕立てが基本です。
写真ではわかりにくいかもしれませんが、一つの苗から3本の蔓が出ています。
「1本の蔓からは3~4個のカボチャが成ると計算すれば、一つの苗から例えば10個程度のカボチャが成るとする。
すると1反歩あたりXX個収穫できる・・・というように、収量を計算できるでしょ。
1個単価がXXX円とすると、今年は売上XXX円を目指して栽培しよう、という経営の目途が立つんだ。」
なるほど、収量試算のためでもあったわけですね。とっても効率的◎!
こちらは奥様の真由美さま♪ ご主人様は「ウチの事実主任です。」と誇らしげ♪
北空知のカボチャ生産を支えていらっしゃるのは真由美さんと言っても(恐らく)過言ではない名物奥様です。
どのようにすれば3本仕立てにできるのでしょうか。
「カボチャの性質をうまく使うのよ。
そのまま何もしなければ、カボチャは親蔓(オヤヅル)一本で生長していくところ、親蔓をピンチすることで脇から子蔓(コヅル)が出てくる。
子蔓は1枚の葉の脇から1本ずつ出てくるので、3本出したいときは葉を3枚残して、4枚目の葉が出たらそれをピンチするのよ。」
なーるほどー。収量計算をしつつ、苗の生長準備ができたら、開花を待ちます。
みなさん、カボチャの花はどんな様子か、すぐイメージすることはできますか?
しおれかけていますがこんな感じ。
吉澤さん 「カボチャの花には、雄花と雌花とがあって、このうち実を着けるのは雌花のみなんだ。」
雄花の花粉が雌花に付いて受粉し、雌花が結実するというワケ。
雄花と雌花の見分け方は、花の根元に小さな丸いふくらみがあるかどうか。
↑これは花の下に膨らみがあるので、雌花。
これがどんどん大きくなって↓↓↓
カボチャの実となるのです。↓カボチャのお尻ショット。
中央からデレデレーッと垂れているのが、昔は美しく咲いていた花。実が大きくなると、こんな感じでしぼんでいくのです。
この結実がなんといっても楽しみの一つ。
一つの苗からどのくらい収穫できるものでしょうか。
「品種にもよるけど、ミニ品種は20個採れたら万々歳ね!」と真由美さん。
では、収量が落ちるようなカボチャが苦手な環境とは?
「雨ね。
雨が降ると、泥しぶきがカボチャに跳ね返り、そこから黒い斑点になったり、腐れの原因になったりするの。
だから、水はねを防止すること、また病気が入らないよう、雨が降る前に防除することが大切なんだよ。」
カボチャにとって最大の敵は多湿。
栽培中もできるだけ水を切っていくことが要。人工的に灌水することはまずありません。むしろ干ばつに強いくらい。
しかし、露地栽培している限りは、落ちてくる雨を防ぐことはできません。カボチャの出来高は、その年の雨量に大きく左右されるのです。
佐藤さん曰く、
「ここ深川は、水田からの転作が多いから、水が溜まらないようカボチャ畑を作るのはひとつの課題なんだ。
深川の土地がカボチャ生産に向いているかどうかではなく、あるものを生かしてカボチャの生産に適合させていく。
そして深川に適したカボチャの品種を選ぶコトが重要だよ。」
アラ??これ、なんですか?
座布団のようなものがそれぞれのカボ様のお尻の下に敷いてあります!?ナニナニ??
「フルーツ皿だよ。
これがないと、地面に接したカボチャの表面がガタガタ・ザラザラになっちゃう」
へー、ガタガタ・ザラザラに?c(゚.゚*)。。。
「土に長い間接していると、土の水分を吸って、表面がぼこぼこしちゃうんだ」
この白いデコボコのあるトレーはフルーツ皿といって、カボチャやメロンなど露地生産で、実が地面に接して生育する品目を栽培するときによく使います。地に付いた面に傷みが出ないよう表面を保護するものなのです。
「これがあると土に付かないようにするばかりではなく、この凹凸に空気が含まれるので、腐りにくくなるの。
だから、"売り物になってね❤"と、一つ一つ願いを込めて敷いていく。
そうするとカボチャのどの面を向けてもきれいな肌になるのよ。」
と真由美さん。中型、大型は特に注意してフルーツ皿を敷きます。
なぜなら、大型になればなるほど、その重みで地面にググッと沈んでいくから。
その分、傷みやすくなってしまうということですね。
フルーツ皿をカボさまのお尻の下にひとつひとつ敷いていく。一つ一つの作業に大きな意味と目的があるんですね。
その労働の大変さを思うと、カボチャ生産とは何たることかと思います。
真由美さんにとってカボチャとはなんですか?
「子どもです。嫁に出すまでが私の大切な子どもたちです」
と、その労を厭う様子もなく、優しい表情で語ってくださいました。
③ 収穫 8月下旬から9月上旬
北空知では迎える収穫期は8月下旬。収穫は手作業。
このようなカボチャ専用のハサミを使ってヘタを切っていきます。
このハサミの違うところは、刃がカーブになっていること。床に置いてみるとカーブしていることが良くわかります。
(↓上のハサミ。下はミニパンプキン用)
このカーブしたハサミは元々は生食用に作られたもの。確かに、生食用のカボチャを思い浮かべると、ヘタが付いていないか、すこぶる短いか。
カボチャはヘタの部分がくぼみ、回りが高くなっているので、直線的な刃ではヘタを切りにくいのです。
まっすぐなハサミで切ると、ヘタが残ってしまう。すると乾きにくくなる → 腐りやすくなる・・・という悪循環が起こります。
ですから、器型に丸くなったこのハサミを使い、実の形に添って切り取る。
全てのモノには理由があるのです。
しかーし!みなさま♪
カボチャは収穫してすぐ出荷ではないんですよ!これがほかの花きと異なる大きなポイント。
まだまだ続く出荷前の作業。
④ 洗い (収穫直後)
収穫したものはこの作業場に持ち込みます。そしてまず洗いから。
露地なので泥で汚れていることもあるからです。バケツ二つと水切り用のカゴを用意。1つ目のバケツの中で洗い、2つ目のバケツですすいでいきます。
タワシでやさーしく、やさーしく。
そのタワシも3種類を使い分け。
タイプA:ゴシゴシタワシ→凹凸の大きなカボチャ用
タイプB:スポンジ→表面がつるんとしたカボチャ用
タイプC:歯ブラシ→細部用。凹んだヘタの部分など。
タワシ、スポンジ、歯ブラシがカボチャ洗いの三種の神器。
なんといっても大きいのも小さいのも、全て手作業ですからね、コレ。ご自分の手で丹精込めて育てたカボチャを、"キレイになーれー!"とおまじないをかけながら最後の仕上げをしていくのでしょうね。
⑤ 磨き
この作業工程があるのもカボチャならでは。最後に魔法の薬をシャシャシャとかけて(カビ防止)出来上がり。
⑥ 乾燥 9月・10月
わーーーーー!洗いと磨きを終えて、なんともきれいに陳列されたカボチャたち。
この光景は吉澤さんのご苦労の賜物ですな。
ウン探取材班は、もうこの光景を一目見た瞬間に、吉澤さんのお仕事に対する丁寧さとカボチャへの愛情を理解することができました。
これを一つ一つ手で並べていくのです。
アタシだったら、ごろんごろんと放り投げておきますよ、きっと、ええ、ええ。
それを膝を床について、一つ一つ同じ向きに何百個(何千個かも)と並べるのですから、なんと気の長い作業でしょう。
この仕事の緻密さったら。神は細部に宿る!もうこれは吉澤さんの仕事の質の高さを象徴しているというものでしょう。
一度これを目にしたら、なかなか感動冷めやらないわけですが、先に進まないといけないので続けます。
カボチャの場合、収穫後に乾燥させる必要があります。これを風乾(ふうかん)といいます。こうしてきれいに並べた上で、2週間から1か月風乾させます。
「風乾」なんて行程があったんですねー、カボチャには。
知りませんでしたよ、全然。ほかの花や野菜と同様に、収穫したらすぐトラックに運ばれて市場に届くものとばかり思っていました。
ウン探も111回目にして、「風乾」なんていう行程に初めて出合いましたよ!
風乾の時の2大ポイントは、
・ 遮光・・・直射日光は厳禁です。せっかくここまで育てて収穫したのに、日焼けして白っぽくなってしまいます。
・ 風通し
吉澤さんが下に敷く毛布はマストではありませんが、緩衝剤(傷防止)、兼、下からの湿気吸収を目的としています。
風乾させて、ヘタの断面から出ていた樹液が乾き、右側のようになったら、出荷OK。
⇒
「何よりまずは、ヘタを乾かすことが重要。
湿度の低い北海道ならまだしも、ヘタが渇く前に内地に送れば、すぐさま"カビ発生"となりかねないからね。
ここで2週間乾かすことにより、商品が届いてからも長い間、品質を保つことができるんだ。
また、風乾というステージで重要なのは、カボチャを乾かすだけではなく、商品の傷みをチェックするということもあるんだよ。小さくて見落としがちな傷みは、ここで時間が経過することで大きくなり、出荷までに発見することができる。」
つまり、検品の役割も果たしているのです。
風乾の役割は品質向上(日持ち向上)と検品ですね。
それは、食べるカボチャもそうしていらっしゃるのですか?
「食用のカボチャも7-10日程度風乾するよ。
あのかぼちゃたちがそうだ。だけど風乾の役割は少し違ってくる」
(食用カボチャの風乾)
と吉澤さんが指さした先には、食用カボチャがズラリと陳列されていました。
風乾の役割が違う??
「生食用カボチャの場合は、食味を上げるという役割があるんだよ。
収穫したてはデンプン質が多いんだけど、風乾することでそのデンプンが分解されて糖になる。
そのことによってカボチャに甘味が出て、ようやく出荷となるんだ」
d品質保持と食味を上げるのが生食用カボチャにおける風乾の意義です。
観賞用と食用の違いのひとつはこの点にあるのですね。
⑦ 選別・梱包・出荷 9月・10月
サイズの選別にはこのような手作り治具を使います。段ボールでできた北空知さまお手製の秘密道具でう。
カボチャの選別は重さではなく直径なので、これが必要なのです。この点も生食用と観賞用と異なるポイントかもしれません。
なんだか、こどものシャンプーハットみたいですね!
簡易的なものではありますが、作業をされる方々のお知恵の賜物ですね。便利、便利!
選別後は箱詰めへ。緩衝材をしっかり敷いて、傷がつかないように。
長い道のりを経て、やっと出発の準備です。
【プッチーニは特別共選】
北空知広域連様では数ある品種の中でも、プッチーニだけは農協の集荷場で共同選別(共選=数多くいらっしゃる生産者さんそれぞれの基準ではなく、北空知広域連様として共通の一つの基準で選別をすること)をしています。
このように収穫したまま、サイズもランダムに箱に入れて持ち寄られ、
第三者の眼によりフェアに評価され、サイズ別に選別された後、
箱詰めされます。
相変わらずカボチャ色のタオルを首にかけた佐藤さんに伺いました。
プッチーニだけ共選である理由は何でしょうか。
「北空知のカボチャの中で、シェアが最も大きいのがプッチーニなんだ。
つまり、北空知の4番バッター。
4番バッターがコケルと信用問題にかかわるでしょ。絶対傷物だったり、選別が甘かったりしてはいけないんだ。
だけど、虫に刺されたようなちょっとした点があると、農家さん1軒1軒では見つけにくいんだよ。特にプッチーニはね。」
どれどれ??はじかれたプッチーニを拝見しました。
人差し指で指した右側の写真の小さな点・・・うンわ、チッチャ。色も薄いし、これは分かりにくい!
「カボチャは最低でも花屋さんで1か月は持たないと商品にならないよね。この虫に刺されたような点が後で致命的なダメージに広がることがある。
これを見逃さないためにも選別の専門家を配置して、共選にしているんだ。
この仕組みにしたのが2006年。それ以降、クレームはほとんどない。」
なるほど、カボチャそのものを作るばかりでなく、このような仕組みを作ったことが、カボチャビジネスを大きくしてきたわけですね。
「もうひとつ、大きくなった理由があるよ」
なんですか?
「これ、コレ」
「こうしてできるだけ箱に入れるて出荷すること。
すると、トラックの天辺までぎっしり積載することができるでしょ。その分、多くのカボチャをトラックに載せることができるってワケ。
それまでは、こういう感じで↓くるんでいたんだけどね。」
今でも箱に入らないほど大きいものはこのように"くるんで"出荷されています。
しかし、できるだけ箱に入れて出荷することで、物流効率を改善してきました。
トラックのキャパが増えるばかりでなく、生産者さんにとっては梱包作業が平易化するので、生産のキャパも上がるというわけです。
なるほど、これで北空知さんはカボチャの産地としても伸びていったのですね。
では、北空知のカボチャさんたち、大田市場で会いましょう!
大田花きからのお知らせ
来る9月28日(月)、年に1度のお楽しみイベント「カボチャ大市」が開催されます。
今年で19回を迎えるカボチャ大市は進化を遂げ、仮装ばかりではなく、その年の流行ものキャラクターによる寸劇も披露いたします。生花店・買参人・仲卸の皆様は、ぜひお見逃しなく!