2016年1月29日
vol.113 JAふかや 前編■LAユリ
みなさま、新春!でございます。はなんと素晴らしい響きなのでしょう(´∀`)!
本年も産地ウンチク探検隊をどうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、素晴らしい響きの新春第一号は、東京から100km足らずのココ埼玉県深谷(ふかや)市を探検します!
うンわッ、なんだか東京駅のようなクラシックで重厚感のある駅・・・こちらはJR高崎線深谷駅。
この駅は東京駅を模して平成8年に完成しました。なぜ東京駅を模したのか、ここがポイントです。
実は、深谷はレンガ造りが盛んで、東京駅の煉瓦は深谷で作ったものだからです。深谷駅はレンガ調のパネルを使っていますが、それでもビクトリア様式の気品が青い空の下に漂います。
(あ、空、青くない??実は曇りでした^ ^;)
何を隠そうその煉瓦を作った深谷の日本煉瓦製造株式会社こそ、明治20年に近代日本経済の父と呼ばれる渋沢栄一氏が設立した会社です。そう、渋沢栄一氏の生誕の地こそ、ココ深谷なのです。ワオw(*゚o゚*)w
また、日本煉瓦製造は東京駅ばかりでなく、司法省(現法務省)や日本銀行、迎賓館、旧東京裁判所、旧警視庁など、名だたる建設物の建築材となっています。
渋沢栄一氏にばかり気を取られていてはいけません。スーパーやコンビニの冷凍庫の中でひしめき合うアイスクリーム。
今や主食にしている人もいらっしゃるかもしれませんが、そのアイスクリーム生産量は埼玉が日本一。その生産を支える企業こそ、深谷に構える昭和6年創業の赤城乳業さん。
そして、深谷といえば公認キャラクターのふっかちゃん!
到着した瞬間からあちこちでかわいいふっかちゃんがお出迎え❤
ふっかちゃんの頭から大胆にもドカンと生えている角こそ、日本一の出荷量を誇る深谷ねぎ。
平地で内陸、寒暖の差が大きい上に関東平野で日照量が多い深谷は、野菜や花の生産に適しているのです。
←深谷ネギ畑
この気候特性を生かして栽培される農産物は、もちろんネギだけではありません。
埼玉県といえば深谷も含め花き園芸の一大産地。
とりわけ切り花でいえば、生産額全国第1位のユリと第2位のチューリップ!
今回はこの2つの花をご紹介いたします。それでは深谷の花の魅力にズームイン!(古い?)
前編はユリ。
☆深谷のユリ
全国一のユリ産地としてお邪魔したのは、JAふかや深谷ゆり部会、部会長の植竹好宏(うえたけ・よしひろ)さん・・・とご紹介しようと思ったら、
「あ、これ全国ネット?」
なんて、メディア慣れした植竹さんは早速確認。
「はい、全国ネットというか世界中どこからでも閲覧できるインターネットです。」
とウン探が答えた瞬間、
「じゃあ、髭剃ってくる!」
・・・とたちまちご自宅に消えた後、さっぱりされた爽やかNHKアナウンサー系硬派なジェントルマンとして再登場されました。
改めまして、こちらがJAふかや深谷ゆり部会、部会長の植竹さんです。
そんな植竹さんに伺ったお話は、以下の順でご紹介いたします。
■ユリの球根
■土と水と太陽
■LAユリの選択
■2014年2月の雪害を乗り越えて
■ユリの球根
ウンチク探検隊をご愛読くださっている皆様なら既にご存知かと思いますが、ユリは球根から育てます。
取材当日、ちょうどオランダから届いたばかりの球根がありました!JAふかや南部営農経済センターの髙野健一朗(こうの・けんいちろう)さんが指さす先にある、黒い箱の中にその球根が入っているのです。
ブシャーとひっくり返してみるとこんな感じ。
土のように見えますが原則的に土は輸入できないので、土ではなくピートモスというミズゴケが原材料になったものに保護されて船便で日本に到着します。
球根のサイズは直径4-5cmくらい。このとき良い球根はどのように見分けるのですか?
「鱗片が締まり、球根全体にキュッと締まりがあること。大小ではないんだ。
水ぶくれで大きくてもブヨブヨしているものは良くないからね」
え?水ぶくれ??ブヨブヨ??あッ?アタクシ??どーもすみません( ´)Д(`; )
「ナニ言ってんの。球根のことだよ。水ぶくれしていると青カビが出たりいろいろ問題があるからね。
それから、下根がしっかりしていることが大事。」
↑このように、球根の下に、太い根がもしゃもしゃと生えていることが大事。
「でもオランダの球根の納入業者さんが丁寧に神経を使って良い球根を選んで送ってくれるから、そう悪い球根はないよ・・・!」
オランダの球根の輸出業者さんは長期冷蔵に耐えるよう、球根を包むピートモスの湿度調整もした上で出荷してくれます。
「水分を含み過ぎて鱗片の腐敗やフザリウム菌の繁殖を引き起こさないよう、あるいは乾きすぎて枯死しないよう、色々と工夫をされて出荷してくれているんだよ」
球根の輸送にも細かなノウハウがあるのですね。
「そうそう、ノウハウがあるし技術だし、日々進化していると思うよ」
ちなみに、こちらは収穫が終わったユリの球根を引き抜いてみると・・・
ジャジャン☆こんな感じ!
うンわッΣ(◎o◎;)!何やらさらにもしゃもしゃしてすごいことになっていますが・・・
「生長過程で上根(うわね)が生長してこうなるんだよ」
まるで、天然のドレッドヘアのようやわ~。こうなっていれば良いユリが収穫できたというわけですね。
キーワードはドレッドヘアのような根っこ。
■土と水と太陽
植竹さんのハウスがある関東平野のこの地域は、関東ローム層の粘土化した火山灰層に覆われています。
しかし、一級河川の利根川と荒川に挟まれ、水分や砂利具合など複雑な土壌のように思いますが、ユリにとってはがでしょうか。
「ユリは土質を選ばないんだよ。
だから世界中どこででも比較的作りやすい。ただ、pH値とEC値(電気伝導度、土中の肥料の総量)だけ整えるように気を付けているけど、基本的には関東ローム層の土をそのまま使っているよ。」
そのまま使うと言ってももちろんそのまま使うわけではなく、まずはこのように耕耘(こううん)機で耕して、溝を作っていきます。
フカフカの土の中に入っていくので、地下足袋は植竹さんにとって七つ道具の一つ。
「畑の中に入っていくけど、土が足の中に入らないし、滑らないし、痛くならないからいいんだ!」
うわー、きれいにできたー。
土を耕せたら、オランダから届いた球根をピートモスの中から手袋もせず一つ一つ傷つけないよう丁寧にカゴに取り出していきます。
「こうして手で定植するんだよ。」
球根どうしの間隔に決まりはあるのでしょうか。
「基本的には15センチ真四角で定植するのが部会の決まりです。」
植竹さんレベルのベテランさんになると定規は使いませんが、これで15センチ間隔になっているのです。
では深さは?
「球根の2-3倍くらいの深さに植えます。ユリ全般にそうだよ」
このように丁寧に置いたら、畝の山を崩し土をかぶせて、さらにその上にもみ殻を敷いてできあがり☆
あれ?えーっと、?c(゚.゚*)。。。もみ殻は何のため?
「乾燥防止だよ。特に夏場はこれをしないと表面がカラカラに乾いてしまうからね。
もみ殻を敷くことで土の表面から水分が蒸散するのを防ぐんだ。また栽培した後も、もみ殻や藁が肥代わりにもなるんだよ。」
マルチングシート代わりといえそうですね。
水遣りももちろん大切な農作業の一つ。どのくらいで灌水するのですか?
「決まっているわけではないんだけど、今回は一週間ぶりくらいかな~」
ユリは水遣りが比較的少ないということでしょうか。
「そうでもないよ。ユリの場合は、次の3つを見ながら水遣りをするんだ。
・土の状態
・空気の乾燥具合
・気候
だから水遣りの間隔は決まっていないんだ。
特によく見るのは、この表層土!」
表層土を見る?
「そう、特に最近は表層部分1-2cmを意識した灌水に努めております~(ニコニコッ!)
畝によって西日の当たる肩の部分がどうしても乾きやすい。 だから表層土の色を見極めながら灌水判断をするんだ。
でも水をジャブジャブやると、背丈が無駄に伸び過ぎちゃうしね。」
日照量の多い関東平野。それだけに、日々農業に勤しむ植竹さんには日照の強弱を肌で捉え、表土を見て、灌水のタイミングを計っています。
■LAユリの選択
LAユリとは、テッポウユリ(学名:Lilium longiflorum ロンギフロラム)とアジアティックハイブリッド(Asiatic Hybrid、スカシユリの系統)との交配種です。
テッポウユリ × アジアティックハイブリッド = LAユリ(写真の品種名はセラダ)
ロンギフロラム-アジアティック・ユリというところですが、あまりにも長すぎるのでそれぞれの頭文字をとって、通称LAユリと呼ばれます。
黄色やオレンジ色が多いこと、また山ユリやオニユリにあるような花弁のそばかすがない(スポットレス)ことが特徴です。
←ヤマユリ:花弁のスポット(そばかす)がある。
LAユリは1992年に日本に紹介された比較的新しいグループですが、現在日本ではユリの中では品種数最多を誇る部類です。
深谷ではこのLAユリが全体の9割を占めます。そもそもなぜLAユリを選択したのでしょうか。
「製品率が高いことが大きいかな。ロスが少ないんだ。
深谷では元々スカシユリとオリエンタルユリを作っていましたが、スカシユリよりも輪が大きく見栄えがして、且つオリエンタルユリよりロスが少ない。この中間のLAユリは営利生産に向いていたんだ。
だから深谷はLAユリの生産において全国初の部会を設立したんだよ。」
また、暑さに強いのもLAユリのイイトコロ~。周年栽培のためには、LAユリは相性の良い花なのです。
更には近年ヒートポンプを入れたことにより、クオリティもグッとアップ↑
冬は湿度を下げて病気を未然に防ぐため、また夏場は夜温を下げるために使います。
深谷で球根切り花の生産が盛んになったのはいつごろなのでしょうか。
「昭和30-40年代かな。深谷でチューリップ、スイセン、クロッカスなどの球根切り花があって、その中でユリも導入されたんだ。
そもそもは関東平野は米・麦・養蚕(べいばくようさん)が盛んでしょ。深谷でも養蚕が盛んで、お蚕(かいこ)さんのえさになる桑をたくさん作っていたんだ。
その桑の木の閑散作物として戦前から桑の木の間に球根を植えたっていうのがきっかけ。この辺りの栄養分の少ない土壌には土質を選ばない球根がちょうどあったのかもしれないね。
東京にも使いことから周年栽培の技術か早くに確立して、ユリの生産が大きく普及して根付いていったんだよ。」
LAユリの良いところはどのような点でしょうか。
「花の輪が大きすぎないところが一つ。
このことによって、他の花との調和が取れやすいし、例えばご家庭で飾っていただくにも大袈裟でなくていい。おうちの雰囲気とも合いやすいでしょ。
他には花色が豊富なところだよ。」
ごく一部ですが、JAふかや様の品種はこちら。
写真左からパーティダイヤモンド・エルディーボ・ハイドパーク
明るく鮮やかな発色と陶器のような花弁の質感に魅力がありますね。
■2014年2月の雪害を乗り越えて
まだ記憶に新しい2014年2月半ばの記録的な大雪。
諏年栽培を実現し全国シェアの20-25%を占めながら、深谷のユリは全体で7割、とりわけ植竹さんのハウスは9割以上(つまりほとんど)が潰れてしまい、甚大な被害を受けてしまいました。
「上からハウスごと雪がドサッと落ちてきたから、伸びていた芽は全て潰れてしまったよ。
まだ芽が出ていないものであったけど結局温度がかけられないから、凍害(とうがい)でダメになってしまったんだ。
花芽が上がっているものもあったけど、潰れていなくても全て凍結してしまうし、生長しなくなってしまう。ほとんどが台無しになってしまったよ」
生き残った球根を救ったとしても、栽培する施設が全て崩壊してしまったので、すぐには栽培を再開できません。
被害は収穫間際のユリ、生長中のユリ、球根を含め、植竹さんの圃場の全てのユリなど出荷物ばかりでなく、栽培施設も壊れて立て直しをしないといけないので、ダブルパンチ(*_*;
降雪から半年後の2014年9月から少しずつ出荷を開始。
「2015年11月に施設はほとんど修復されたよ」
2015年11月ってまだほんの2か月前ではありませんか!?・・・雪害から1年10か月が経過したころです。いかに雪害の被害が大きかったかを物語っています。
「耐雪式のハウスに立て直し、生産ができる状態には戻ったよ。
でも、生産体系を組み立て直す必要がある。今後の色バランスや球根の導入計画など、ハードは一応整ったけど、ソフトはまだまだこれからなんだ。
雪害のお見舞いで天皇・皇后陛下がお越しくださってね」
て、て、テッ、天皇陛下??
そう、2014年2月の記録的な大雪で雪害に見舞われた植竹さんのハウスには、ぬぁんと天皇陛下・皇后さまがお見舞いに来てくださったのです。
「そうそう、歩くパワースポットッという感じで、神々しかったね。
ハウスの入り口からまさにこのルートを歩いていらしたんだよ」
わー、天皇皇后陛下が踏まれた土と同じ土の上に立っているウン探・・・ありがたき幸せ~。
どのようなお言葉をいただいたのでしょうか?
「いろいろお話させていただきましたケド、とりわけ印象に残っているのは、育種のお話はご興味を持たれたようでございました。」
(天皇陛下の話題になると、なんだかお互い急に丁寧語のレベルが上がる^ ^;)
オランダで育種されていることをお話ししたところ、"ヤマユリを栽培したりすることもあるのですか"ということも聞かれましたので、"ヤマユリはございません。改良された営利栽培用の品種のみを作っています"と答えました。」
あ、さようでございましたか。
大雪の日は何をされていましたか?しんしんと降り積もる重い雪で気が気でなかったのでは?
「私はソチオリンピックのフィギュアスケート羽生君を応援していたんだ。それがちょうど午前3時頃。優勝が決まって表彰式があっ
たのがちょうど4時ころ。"ヤッター!羽生君、スゲーナー"って喜んでいたんだよ。
それが終わって雪でも降っているようだし、様子見ながらタバコでも買いに行こうかと外に出たんだ。
すると、"んッ?雰囲気が少し違う"って思ってハウスまで歩いたら、暗闇の中でもハウスのぼんやりとした山がないってことがわかってね。
そこからあちこちと連絡撮りあって、被害確認が始まったんだ。
雪が腰の高さまで積もったからね、もちろん車も出せないし、スキーを履いて移動したくらいだよ。」
被害を目の当たりにしたときの衝撃は?
「球根代が払えない!
ハウスの新設費どうしよう!?というのが頭をよぎったね」
球根代の支払いやハウスの新設費を何とか工面しながら、部会長植竹さんをはじめ深谷ゆり部会のみなさまはいま再びスタート地点に立ちました。
深谷のユリは周年出荷。特に4-6月は最高のクオリティです!
ボリューム感、花の大きさ、品種構成、全てにおいてお客様の満足が高くなるタイミングです。
是非、今シーズンの深谷のユリにご期待ください。
生活者のみなさま、生花店のみなさまにおかれましても、JAふかや様を応援のほどよろしくお願い申し上げます。
■JAふかや深谷ゆり部会の格言■
・農業は常に自然との対峙。
日差しを肌で感じて、土を見て灌水のタイミングを図ろう。
ときに予想をはるかに上回る自然災害に襲われるが、常に未来を見て進んでいきたい(by 植竹さん)
天皇・皇后陛下、お越しくださりありがとうございます❤
・球根はオランダからキュッとしまったものを輸入。上根がもしゃもしゃなものを定植し、下根がドレッドヘアのようにもしゃもしゃになるまで育てよ。
・JAふかやのLAユリは周年栽培、安定供給が売り。雪害から復活中で、これからも喜ばれるユリを出荷しますので、是非深谷のユリをご指名ください!
後編のJAふかやチューリップ部会に続きます。
<写真・文責>:ikuko naito@花研
2014年7月29日
vol.106 日本のユリはどこから?【後編】JAとさし高石花卉部会
この7月はFIFAワールドカップも、見事ドイツの優勝で幕を閉じ、
テニスのウィンブルドン選手権においてもチェコのクビドバとセルビアのジョコビッチがそれぞれ優勝し、ヨーロッパ勢が本領を発揮したところで、うんちく探検隊「日本のユリはどこから?」の後編に突入したいと思いますv(≧∇≦)v
オリエンタルユリの球根を供給する中村農園に引き続き、オリエンタルユリを生産し市場に出荷する生産者さんを訪問しました。
冬場のオリエンタルユリのトップブランドであるJAとさし高石花卉部です。
何を隠そう、高知県は面積に占める山地割合割合が89%で全国で最も高く(全国平均は54%)、耕地面積も全体の4%と極めて限られています。
それにもかかわらず、高知県の園芸農業(野菜、果物、花き)は大変盛んで、とりわけ花きに関しては、グロリオサが有名であるように世界でもトップクラスの品質を生み出しています。
しかし、高知県から出荷されるトップクラスの花はグロリオサだけではありません!x_(・ェ・)ノンノンノン
JAとさし高石花卉部(以下「高石」と呼ばせていただくことがあります)から出荷されるオリエンタルユリもまたトップブランド。特に冬場においては圧倒的な量と質を誇る無敵の生産地です。
周年出荷ではありますが、暖地である高石の強みは、本来の夏に開花するユリを真逆の季節である冬に高い品質でオリエンタルユリを出荷できるということ。
【平成25年度 高石オリエンタルユリ出荷実績】(大田花き)
ご案内いただいたのは、JAとさし営農指導課、山西将平(やまにし・しょうへい)さん。
お邪魔したのは、横川晴夫(よこがわ・はるお)さんの圃場です。
高石は、前編でご紹介いたしました中村農園さんのような球根卸売会社などから、毎年球根を仕入れます。以前小欄でご紹介いたしましたJA津南町のように独自でユリを養成するところもありますが、高知県のような暖地においては球根の管理に不向きであり、自己管理は高いリスクが伴うので毎年新球(※1:しんきゅう)から育てるのです。
「私たちの環境では、切り下球根(※2:きりしたきゅうこん)よりも新球を購入したほうが、コストも手間も省ける上に、品質的にも安心なんだよ」
と山西さん。
※1:新球
球根の卸売会社から仕入れた、発芽前の新しい球根のこと。口語で"しんたま"と呼ぶ場合もある。(新タマネギのことではありません。でもイメージは同じ♪)
※2:切り下球根
一度採花した2回目以降の球根のこと。
ココ高石地区においては、昔からテッポウユリの生産が盛んでした。確かに日本でも古いユリの大産地なのですが、実はさらにその前はトマトの生産が盛んでした。
食糧から花へ転作したきっかけはあるのでしょうか、横川さん。
「昭和40年代、"これから豊かになっていく日本では花が売れる時代になっていく"という気配を敏感に感じ取り、生産に携わる人たちの多くはテッポウユリに切り替えていったたんだよ」
皆がテッポウユリやスカシユリを作る中、横川さんは昭和50年代後半、大輪のオリエンタルユリを導入した第一人者です。
ハイ、ここポイントー!!
その時に出合った花こそ、
"カサブランカッ"!
前編の復習ですが、FIFAワールドカップで活躍したロッペンの国オランダ生まれの球根品種には、世界の地名に因んで名付けられることがあります。カサブランカもその一つ。モロッコの最大都市から付けられました。
そのカサブランカとは、どのような出合いだったのでしょうか。
「知り合いの生産者さんが試作したものが高石の農協に1本だけ飾ってあったんだ。
それを見て、このユリはスゴイすごい!Σ(゚口゚;
と衝撃受けたよ。今でも鮮明にその時のことを覚えている。
それまでに見たことのない素晴らしいものだったな。
これは絶対やらにゃいかん!たとえ一人でも作ってみようと思って始めたんだ」
と当時を振り返ります。
もうその時のインスピレーションといえば、神の声に聞こえたほどだったとか。
「当時ひとつの球根が500円したよ」
うぉ~(@_@)・・・クラクラしますね。
「でも、球根に500円かけたからといって、カサブランカ1本がいくらで売れるか、皆目見当もつかない状態だった。
それでも尚、作ってみたいと思ったよ」
もう何にも邪魔されないほど熱い情熱に突き動かされたわけですね。
それ以来、横川さんはカサブランカの生命力に魅力を感じ生産に取りかかりました。その時は無我夢中で、まさにカサブランカの虜となったと言っても過言ではありません。
それから35年経った現在、横川さんの圃場におけるカサブランカ率・・・・・・
97%!!
殆どカサブランカです。(部会全体では60%くらい)
みなさま、ここで念のため誤解のないようにお伝えいたしますが、カサブランカとは品種名です。
ユリは、テッポウユリとかオリエンタルユリ、アジアティックユリなどいくつかの種類に分類されますが、そのオリエンタルユリの中のカサブランカという、本当にピンポイントな種類を指します。
つまり、ほぼカサブランカのみを作付するということは、バラでいえば、例えばアヴァランシェで圃場を詰め尽くすようなものです!
念のため補足させていただきますが、みなさまのお陰で今回106回を迎えたウン探も、振り返れば全国各地の花の産地さんをお邪魔いたしました。しかし、生産品目を1品種に絞り込んでいらっしゃる方はほとんどいらっしゃいません。シロギクなどでも夏用と冬用で2品種は作付しています。
多くの場合において複数品目(例:vol.98 奥隆善さん、vol.96 ワイルドプランツ吉村さんなど)を生産されたり、あるいは1品目(例:バラだけ、ダリアだけ)にしても必ず複数の品種を栽培します。
季節感を大切にする日本人の場合は、1年間の中でも短期間の間に売れる色目や品目がめまぐるしく変化していきますので、リスク分散の意味においても、また季節による販売のムラをできるだけ均一化する意味においても、単一品種を生産される方はとても少ないのです。
それだけ白のオリエンタルユリは年間を通して安定的に需要があるということなのかもしれません。
オリエンタルユリは白だけでもたくさんの種類があります。シベリア、リアルト、ユニバース、クリスタルブランカ、ザンベジなどなど。それでも尚、なぜ横川さんは、カサブランカオンリーでいくのでしょう!?
「昨年まではもう少しピンク色の品種も作っていたんだけどね、今は作りたい品種がなくなってしまった。
見続けるとカサブランカ以上のものはない。
ボリューム、日持ち、萎れ方、香り、それひとつとってもカサブランカは秀逸。瞬間的、部分的ににいいなと思うものはあっても、トータルでカサブランカを超えるものではない。
何より、カサブランカは横向きで花付きもいいし、何よりキレイでしょ。生産もしやすいから、とてもいい花だと思っているよ。
それに自分で作りたいと思わないと作れない。瞬間的に市場で評価を受けても長くは続かない。いいなと思うものであれば一生懸命作れるし、市場でも息の長い商品になる」
絶対に日本に広めると強い信念を持って、横川さんがおひとりで始めたカサブランカの生産は、現在では高石で18軒。先述の通り、高石は冬場のトップブランドと評されるようになったばかりではなく、高知県としてもユリの生産量全国第2位というユリの大産地に成長を遂げたのです。
しかし作り始めたのはいいものの、本来は夏に咲くユリの温度管理は、メロン並みと言われるほど。夏と変わらぬ品質を保つための必要な手間と技術とコストは、並大抵のものではありません。共選・共販という複数の生産者さんがひとつの産地名で出荷する形態において、どのように品質を揃えていったのでしょうか。
「私が部会長として技術指導をしていったんだ」
横川さんは高石支所全体の品質向上を図るため、自ら1軒1軒技術指導をして回ります。
高い技術が必要とされるカサブランカを栽培するということは、品質を揃えるために全員がその技術を習得するという高いハードルを越えなければならないのです。
更には、高石では平成18(2006)年以降カサブランカの秀優品だけに付ける「ユリア」という等級を設定しました。
「このブランドを立ち上げたことにより、それまで以上に厳しい選別を行い、出荷するようになったよ」
さらに部会の中で厳しい基準を設けて、ブランド確立を徹底されたわけですね。
出荷全体のうちユリア率はどのくらいですか?
「そーねー、6くらいからなぁ~」
6割?60パーセントくらいということですか?
「いやいや、6パーセントよ。年間を通してね」
え??ろッ、6パーセント??
冬場のトップ産地の高石といえども、・・・いえ、トップ産地だからこそ秀優品の選別は厳しく、全体から見ても少ないのです。みなさま、トップブランド産地の中のトップクオリティ"ユリア"は大変希少です。"ユリアを見たら買い!"ですよ!ユリアの札はこちら。
本来夏に咲くものを冬に咲かせて出荷するわけですから、その条件下で秀品を生み出すというのは、かなり高いハードルなのです。
「カサブランカがこの辺りの露地で開花するのは7月10日前後。つまり冬場でも尚、この時の環境に近付けることが大切。
ユリの中でも、とりわけカサブランカは地温最低18度を維持することが必要。他の品種では16度でもいいものもあるんだけど、カサブランカの場合は18度を死守しないといいものはできない。
カサブランカにとってこの温度帯が、根が動くかどうかの境目なんだ。
茎のしっかりしたものを作るためには、夜も根が動く環境を作ってあげないといけない」
逆に夏の暑さはどのくらいまで耐えられるものなのでしょうか。
「35度。」
あ、7月10日だからそのくらいなわけですね。
「高石では7月10日前後に35度あっても不思議ではないんだ。
同様にハウスの中でもこのくらいの温度までが限界であろうということ。それ以上になると、ユリも元気がなくなってしまう。早く成長しようとするから、開花はしても良いものはできんということなんだ。
ある程度、ゆっくりじっくり育てないといいものはできない」
となると、8月の残暑の時とかハウスの中は40度超えも珍しくないと思うのですが、そのような時はどうされるのですが。
「植えない。
そのような時期にかかるタイミングでは球根を植えないんだ。このハウスには何もなくなるよ。
品質の劣るものは持たず、作らず、出荷せず!」
球根の「非なんちゃら三原則」のようですね^_^;
トップブランドの持つポリシーは明解です。
「だから、高石でも定植をするのは8月20日過ぎ。」
お盆を過ぎてからということえすね。
「そうじゃないと、人間も倒れますよ」
と山西さん。8月の暑さは、球根にも厳しいですし、人間にも応えます。
「暑いと茎が柔らかくなってしまう。茎元を持つと、まっすぐ立たない。扇風機を回しまくるよ。1棟に4台、この4連棟で16台、24時間回し続ける。
他の産地の人とか市場の人には、ココに入った時"ここのハウスは気持ちがイイネ!"とよく言われるんだよ。
それはつまり、扇風機を回して気温と湿度をコントロールしているからなんだよね。人に気持ちいいということは、カサブランカにも気持ちがいいということなんだ」
高石は津南と並ぶオリエンタルユリの二大巨頭!
新潟の津南町が夏の産地とすれば、高石は冬の産地。この産地は、日本のオリエンタルユリの供給を支える二大巨頭なのです。
本来なら真夏の最も暑い7月10日前後に咲く花を、最も寒い12月、1-2月に夏場と同様のクオリティを目指して出荷します。とはいえ、工業製品ではありませんから、この天候や気候に左右される農産物をいかに真逆の環境で作りっこなすか。色々と栽培方法も変えなくてはなりません。
あー、真冬の日本で本格的にブラジルのサンバを踊るみたいな感じ?
どのように栽培環境を整えていくのでしょうか。
「例えばうちのハウスの場合は、1棟の幅が8メートルとすると、そこから4畝とる。
夏場の産地は同じ8メートルの間隔で5畝とる。でもうちは4畝」
それでは収穫量も減ってしまうのでは?
「ユリは太陽と温暖な気候が大好き。
このように粗植にすることによって、葉を広げてより光合成ができるようにしてあげるんだ。本来の開花期ではない時に出荷する責任産地としての工夫だよ。」
粗植にして、葉を広げてやる。十分に光合成をした高石のユリは、冬に生長したものでも最後の花まで大きく開花します。そして丈夫なカサブランカは、足元まで緑の濃い葉が密に並び、足元を持った時には開花輪の重さに耐えて凛と立つのが特徴。
「出荷に追われ、夜も寝ずに作業をすることもあるよ。
(↑繁忙期の様子。2011年撮影)
思いが強ければ強いほど、それを実行していくには様々な壁がある。
その困難を克服していくところに花生産の面白みがあるんだけどね」
という横川さんは、苦悩が多い中でもカサブランカの生産を楽しみながらやっているように見えます。
横川さん曰く、
「カサブランカとの出合いが私の人生を変えた」
ウン探もそのような出合いをしてみた~いv(≧∇≦)v いや、毎回生産者さんとの出会いがウン探の人生に大きく影響しています♪
高石の技術
「大きくて元気な球根を仕入れると、カサブランカは9-10輪付いてしまうこともあるんだ。
だけど、お花屋さんからしたら5-6輪の方が扱いやすいでしょ。
芽出しをする前にストレスをかけて、輪数が減るように調整するんだ」
そう、日頃取り引きに携わっていらっしゃらないと不思議に思うかもしれませんが、オリエンタルユリの場合、花が9輪付いたものより、5-6輪のものが評価が高く、市場でも単価が高くなるのです!
しかし、良い球根は栄養も勢いもあるので、普通に育てると9-10輪も付いてしまう場合があります。そうならないようにストレスをかけるわけですね。
芽出しとは、冷凍された球根を解凍しながら、定植前に芽と根を出すことです。英語ではrooting(根出し)といいますが、日本語では「芽」出しというのが面白いところです。
芽出しの様子↓
それにしてもストレスって、どのようにかけるのですか?o(゚~゚o)???
「定植前に、球根から7-8cm芽が伸びてくるまで待つ!」
通常は球根のまま定植するところを、芽が伸びてくるまで待ってから定植するわけですね。
でも、それがなぜストレスになるのですか?(・・∂)ワカンナイ☆オセーテクダサイ!
「普通は、球根から少し芽が出て見えるくらいで定植するのがベスト。それが自然の流れ。芽と根が同時に同じペースで生長していくから、植物体に負担がかからず、すくすく育つんだ。」
なるほど、そこを芽を先に生長させることによって・・・?
「根が芽の生長に追い付かないということだから、それが植物にとってはストレスになるんだ。定植しないと根は生長しないんだ。根の生長を遅らせることになるわけだよね。
このようにしてストレスを与えることによって、球根の充実度に変化を与え、開花輪の数を調整するんだよ」
これは、かなり高度な技術ですね。
「そうだよ。熟練の技で、かなりリスクを伴う。
芽の生長に対して、根の生長が遅いから、樹勢が弱くなる。結果、軟弱だったり、茎が弱いものができてしまうというリスクがある。安易に行うと大失敗して、球根代分も商品にならないということになりかねないから」
ではそのような球根を仕入れなければいいのでは?
高石の皆さんの好きなサイズを仕入れることはできないのですか?
「そこにカサブランカ独特の事情があってね、昔はカサブランカと言えば世界中に流通していたから、日本は日本のサイズを注文すればよかった。日本の規格に合わないサイズは、オランダやニュージーランドの種苗会社はほかの国に出荷していたわけだよね。
だけど今はカサブランカを使っているのは日本くらい。この状況においては、種苗会社が持っている色々なサイズを買わないといけないんだよ・・・」
つまり、カサブランカの球根の注文を入れる、希望しているサイズよりも大きいものから小いものまで、幅広くオールサイズの球根が届くのです。
大小様々な球根から同じクオリティのユリを生み出すために、さらに高い生産技術が必要になったというわけです。
オリエンタルユリは定植から採花まで100日。
百合だけに100日・・・かどうかはわかりませんが、この100日間に日本の生産技術の粋が集中しているのです。
高石の若人!
そんな横川さんには裕也(ゆうや)さんという頼もしいご子息がいらっしゃいます。
横川裕也さん、就農6年目。高石花卉部会では7名が若手。ますます将来有望な産地なのです。
裕也さんは就農前は、農機具メーカーの企業にお勤めでした。会社勤めと生産農家、それぞれの長所と短所を見ています。
「家を継ぐにしても、一度社会に出て勉強したいと思っていたよ。そうすることで両方を客観的に見ることができるでしょ。
会社員の良いところは、農家にはない定期的な休日や一定に保証された収入はあること。
それでもトータルで見ると、今は生産農家になった良かったと思うよ」
という裕也さん。
「自分が手をかけた分だけは返ってくる、植物が反応してくれる面白さがある。
しんどい時はもうユリ見たくない!って思うけどね。それより寝たい!とか(笑)。
それでも自分に鞭打って、仮眠程度でやり続けるしかないんだけど」
極限までご自身を追い込んでいらっしゃることもあるのでしょう。どんなに大変でも、やろうと思ったことは途中で投げ出したりしたりしない裕也さんの性格なのだといいます。
そして大変な思いをしても尚、植物を育てていくということ自体、昔から好きだったのだとか。
温かい口調からも優しい裕也さんのお人柄が伝わります。
もう一人、高石の若手ホープをご紹介いたしましょう。
徳廣真澄さん(1反=300坪、オリエンタルユリ、5品種)
一昨年から就農された徳廣さんですが、前職ではガソリンスタンドに勤務していましたが、ひょんなことから伯父様の農園を継ぐことになり、2年前からユリの生産に携わっています。
その上、花卉部会の副部長をお務めでいらっしゃいます。2年目で早くも!
「今年からね」
お話していても全く気負いを感じている様子のない徳廣さん。
農業とは無縁の世界から飛び込み、不安や抵抗感などなかったのでしょうか。
「全く分からないところから始めているけど、それをとても楽しんでいるよ。
知らないこと、新しいことを始める時は探究心が生まれるでしょ。
楽しみながらできない仕事であれば、やる価値はない!」
と言い切ります。天候に左右され、思うようにいかないなど大変なことはないのでしょうか。
「思ったようにできないから楽しい。
思った通りにやったらつまらないよ!
毎回同じようにやっても同じものはできあがらない。それが一番の楽しみかな」
えーーーー!全国の生産者のみなさまは、思うようにできないから悩んでいらっしゃるのに~??毎年同じように作っても、同じものができなくて困るっておっしゃっていますけど??
「そうだな~、工業製品と違って、園芸作物は完成までに1から100工程あるとすると、どの工程を一つ抜いても、あるいはタイミングを違えただけでも、完成品に大きな差が出てくる。1つ小さな工程を変えただけで、全てが変わる。
その面白さかな」
なるほど。ということは園芸生産というこの分野が、徳廣さんの前の業界とも異なり、独特なものであると見ていらっしゃるのではないかと拝察しました。今のお仕事を抵抗なく始められて楽しんでいらっしゃる所以は、徳廣さんの順応性の高さでしょうか、それとも共通性を見出していらっしゃる部分もあるのでしょうか。
「全く異なるようではあるけど、共通点も見出しているよ。
例えば、生産者は出荷物を市場に出したら終わりと思う傾向があるけど、私は一般消費の方に買ってもらうまでが仕事と思っているんだ。
市場に出荷しても、またその先の人、さらにその先の人に買ってもらわないといけない。
それを常に考えている。市場に出荷して終わりではない。
一般消費の方に"またこの花買いたい!"と思ってもらえる花を作る。自分が納得する花ではなくて、一般消費の方に納得してもらえる花を作るってこと。
この視点は、ガソリンスタンドでお客様に納得してもらえるサービスを提供することと共通すると思うんだ。
前の仕事で常にその視点で仕事を組み立ててきたから、今でもその習慣が残っている。
市場の売り方がどうかとか小売店がどうかということではなくて、最終のお客様がまた買いたいと思う花を作れるかどうか、私が考えているのはこの点です」
山西さん曰く、
「私がこの仕事に携わって7年。
徳廣さんのようなしっかりとした意見をはっきりと言える人って意外と少ない。
生産した者を農協に持ち込み、それを私たちが販売するというのが従来のスタイル。でも実際には、自分たちの商品がどのように売られているか、販売現場に足を運んで自分で見て見ないと、なかなか分からない。
それを農協が言うまでもなく、自ら率先して行動に移しているのが高石の若手なんだよ」
冬場のカサブランカ日本一産地として、流通のはるか川下を見据えて出荷する。その先を見るのも龍馬風といったところでしょうか。
異業種から農業に入ってきた徳廣さんは、1日の中で仕事の終わりの時間を作る人だと山西さんは言います。
「農業の場合って、朝も日の出と一緒か、それよりも早くから働き始めて、ルールがあってないような時間帯で働いちゃうでしょ。休みなのか休みじゃないのかわからないような働き方をしたり。
でも、徳廣さんはきちんとルールを持って働いている人だから、若手へ良い影響をもたらすと思ったんだ。だからこそ今年副部会長をお願いしたんだよ。
横川裕也さんも企業に勤務経験があるから、働く時間の始まりと終わりをしっかり作って生産している人なんだよ」
山西さんは外の世界を見てきた若手にこれからの牽引役を期待します。
徳廣さん、
「一般的には何でも段取り良く行って、効率を上げれば仕事は早く終わる。でも品質は落としちゃいけない。
例えば、私の伯父は日中の最も暑い時間帯を避けて仕事をする。
一方、私の考えは暑くても昼間できることは昼間にやってしまおうという考えなんだ。やるときは集中して行うし、休む時は休む。私はメリハリを大切にしているんだ。
農業生産は自業自得の仕事。自分がやらなかったら何も進まないし、利益を全て捨てるのと一緒だからね」
体力の差もあるかもしれませんが、自分で出来るペースを把握して仕事に段取りを付けていきます。徳廣さんの確固としたポリシーを感じます。
「例えば、今の季節であれば出荷はないから温度の管理のみで、朝はゆっくりするよ。7時に起きれば十分」
それは農業の企業経営への第一歩とも言えるかもしれませんね。
「ガソリンスタンドは潰し合いとも言うべき競争の激しい世界だったからね。そこで学んだことは多いよ。今の仕事にもその経験を十分に役立てている」
徳廣さんが就農されて最初にしたことは何でしょうか。
「1年かけて生産のサイクルを確認すること。
天候も含め与えられた環境下、限られた資材でわざと悪く作ってみる。わざとっていっても悪くしか作れないけど、その環境でどう育つかを観察するんだ」
なるほど、何もしないで普通に育てたらどうなるか、植物の性質を理解するということですね。
「今でも、圃場の一角を試験用に植えて、わざと放ったらかしにしているんだ。毎年の気候で変わるから施肥や灌水の目安にもなるしね」
そこで目指す品質に足りないものを与えていくということでしょうか。
「品質は求めるものではない。技術はこれが最高峰を決めない。」
キラーン☆☆☆
あえて自分で限界を作らない。理想を追い求めない。
完成品の行方をあえて青天井に開放しておくことで、ユリの可能性を無限大と見ている。そのようなお考えだからこそ徳廣さんは農業を楽しめるのでしょう。
高石の若手は宝ですね。
若人の力、部会の発展
横川お父さんは、若手の成長を口のように受け止めています。
「自分たち以上に若い人たちが情熱を持ってやり始めて、逆に私たちが刺激を受けることもあるよ」
おっと!
「作り関しては、まだまだ若い衆には負けんよ。
でも仕組みに関しては、若い衆に気付かされることもある。
例えば、今ウチでは水揚げの水を必ず1日に2回、取り替えるんだけど、昔は水を取り替えるタイミングは曖昧だった。"汚れたら変えよう"というのがスタンダードで、水揚げの度に新しい水を取り替えるという発想すらしなかったんだ。
でも、今はウチでは1日2回替えるのがスタンダード。若い人たちのお陰だよ」
自分たちが当たり前だと思っていたところに若い人によって疑問符を付けられ、仕事のやり方を考え直すきっかけになったという横川お父さん。
オピニオンリーダーの横川さんが実践していくことで、全国の産地にもその習慣が波及していきますね。
こちらが水揚げのプール。
家庭のお風呂のように、上から水を注ぎ、水槽の底にある栓から水を抜けるようになっています。だから水替えも人の体に負担なく実行していけるのです。
水槽には、ユリが倒れないようにバーが付いています。
↓ユリに水を飲ませる時はこんな感じ♪
夏でも冬でも1年中、水揚げの度に必ず交換!同じ水を使うことはありません。
「水の上がり方も違うし、時間が経過して起こりやすい葉の黄変現象もなくなった。
若い人の視点を取り入れることができて、私たちの品質はさらに良くなったと思うよ」
高石では、お父さん世代の技術と若い世代の発想との両輪がうまく回っているように思います。
良いユリの見分け方
①葉の付き方を見る
茎を下から上に回るように順に葉が出ているのは、生育が順調な証拠。
茎の周囲を回りながら均等な間隔で葉が付く。これが正解。
同じ高さから放射状に葉が付いたり、間隔が均等でないものは選ばないようにしましょう。
このように1か所から放射状に葉が出ると、新芽が凍ってしまった「冷凍障害」である場合が多いのです。
② 茎の固さをみる
茎元を持った場合に、ヨレっと曲がらずピンと茎が立つもの。
生産者さん達は、他の人の圃場にお邪魔した時は、まず茎を触って固さを確認します。
でも他人に商品を手で触られて、嫌ではないのでしょうか?
山西さん「それが管理です!それをしないと、ユリの管理状況や品質がわからないから。私自身もそうしています」
横川さん「自分の商品でも茎を触って植物の状況を判断するんだ。例えば茎が固くても、葉が黄味がかっていたりすると、花にボリュームがなくなってくるから液肥をやろう・・・という判断をしたりね」
③葉を見る
花の元気度は葉の元気度に比例する!
葉が肉厚、緑色が濃いものは、花弁も肉厚で立派な花が付く。
「葉が尖るとツボミも尖るんだよ」という裕也さん。
えッΣ(゚口゚;!!
ユリの場合、葉と花の形にそのような相関関係が・・・。
良く見れば、同じ圃場の中でも葉の形が異なっています。同じカサブランカでも尚です。
葉先の尖ったものと葉が良く太ったもの↓
葉の形を見れば、どのような花が付くのか予測できるといいます。
消費者の皆様へ
<横川お父さん>
オリエンタルユリの魅力の一つは、徐々に展開される開花ステージとともに表情の変化をお楽しみいただけることです。ふっくらと膨らんだツボミが花弁を開いていく一瞬には、高石のみなさまがLIFE(命、生活)をかけて育てた美の神髄が凝縮されています。
月日をかけて植物体全体に蓄積された美と生命力が解き放たれる瞬間を堪能してください。
<徳廣さんからの一言>
高石のユリは、しっかりした、ツボミも最後まで咲く美しい花です。是非高石のユリの良さを見てみてください。また、高石はユリの差を引き出した産地でもあります。
<横川裕也さんからの一言>
現在流通するユリの中でも、珍しい「横向き」、純白、香りも良好。一度、高石のユリをお試しください。
芳香剤とは違った、豊かな天然の香りとともに、目でも鼻でも、また触覚でも楽しんでいただけます!
<JAとさし山西さんから一言>
夏の津南、冬の高石というリレー販売をしております。冬の高石の品質を是非お試しください。
最後の最後にウン探読者の皆様に感謝の気持ちを込めてクイズです!え?クイズ??o(゚◇゚o)ホエ?
黒木瞳さん、武井咲さん、マツコ・デラックスさん、舘ひろしさん、綾瀬はるかさん・・・この豪華な方たちに共通することは何でしょう!?
正解はコチラ!↓↓↓
高石の皆さまに挙げてもらったカサブランカの似合う有名人です。
いずれの方々も納得のご指名です(^-^*)ノ
黒木瞳さんも武井咲さんもミス・リリー受賞者ですね。
マツコさんは、しっとり感といい、ダイナミックな雰囲気といい、オリエンタルな感じといい、オリエンタルユリな感じ満載ですね。全く以って共感です。
みなさん、マツコさんが恋しくなったら高石のカサブランカを飾って寂しさを紛らわしてくださいませ~♪
左から山西さん、裕也さん、横川お父さん、徳廣さん、JAとさしの山本さん(ギャグピカイチ!)
2014年7月 1日
vol.105 日本のユリはどこから?【前編】中村農園(高知県)
世界はサッカーで熱くなっていますが、ウン探は熱い生産者や種苗会社を求め、高知県にやってきました!
今回の特集はオリエンタルユリ!
日本でオリエンタルユリがこれほど広まり定着したのは、ひとえにオランダから球根を輸入する球根専門の商社さんと高い技術を持つ生産者さんのお・か・げ!^^
今回は、前編で全国でも屈指の球根専門の商社さんである中村農園と、後編ではとりわけ冬の供給を支えるブランド産地JAとさし高石花卉部会をご紹介します。そして、 日本はいつからユリ大国になったのか、カサブランカヒットの秘密に迫ります!
早速やってきました、中村農園。
高知市の海沿いにあります。(竜馬像のある桂浜から車で5分)
中村農園とは、主にユリなどの球根を海外から輸入し、全国の生産者に卸したり、ドライの球根を販売する業務を中心とした球根の卸売会社です。取扱品種数は400余品種にも及びます。
こちらは専務取締役の中村慶吾(なかむら・けいご)さん。
そーですねぇ、歌舞伎役者の市川染五郎さんか尾上松也さんを思わせる上品な雰囲気です。
そして、一緒にウン探と読者の皆様に球根のミステリーをご紹介してくださるのは、こちらの山本祐督(やまもと・ゆうすけ)さん。
切花および球根生産を担当され、テストハウスでの技術試験などを行う研究者です。
橋下徹大阪市長のエッセンスが20%くらい注入されましたという雰囲気でしょうか。
そしてお二人ともお若い!
中村農園の主な輸入先はオランダ、
そして近年増えているのがニュージーランドや
チリなどの南半球からの輸入です。
ユリをメインに、フリージアやチューリップなども輸入、販売します。
う~ん、でもどうやって??(・_・*)?
どのように品種を決めて、さらにはその品質が間違いないものだというのは、どのようにチェックするのでしょうか。しかも、輸入しても球根はすぐ芽が出てきてしまいそうですが、日本の生産者さんが欲しい時期に合わせて納品するにはどのように調整するのでしょうか。うーん、わからないことだらけ!!( ̄Д ̄;;
・・・なんだかとても難しいお仕事のように思いますが、どのように進めていくのでしょうか、中村専務。
「よりよい球根を日本のお客様に届けたいという気持ちが大元にある。
だから、当社の社員がきちんと現地に数回足を運んで、畑に入れてもらって、品質をチェックするよ。
オランダでも行うし、そのほかのニュージーランドやチリでは全ての農家さんを一軒一軒見て回らせてもらうんだ」
圃場を見せてもらい、事前に綿密な品質チェックをしてから仕入れを行うのですね。
「注文してからは船で日本に届くんだ。
例えばオランダからだったら所要日数は45日くらい。実際には、こちらでシッピングの指示を出してから到着まで2カ月くらいかかるよ。
その際に日本のお客様の作付計画に合った時期に、球根が最も良い状態であるように納品するんだ。これが私たちの仕事」
年間どのくらい船で到着するのですか?
「年間、(40フィート)コンテナでおよそ200本」
ぬぁんと、その数、年間200本!
毎週入荷があるので、年間50週としても1回4コンテナ分がドドーンと入港し、この中村農園に届けられるのです!
4コンテナ分でドンダケ~??o(@.@)o(←古い?)
もうこれはあとで見せていただきましょう!
「この間、暗室で"冷凍"されてくるんだよ」
れ、冷凍?
船便で冷凍されてくるのですね。冷凍されてもユリは生きていられるのですか?
「生きているよ。生きていられる温度と湿度に設定するんだ。
気持ち良くお眠りいただくためにね」
いざ、冷凍!
この先のお話を伺うために、中村農園の冷凍庫にいざ潜入です。
こちらが冷凍用の倉庫です。2009年に創設されました。
「この冷凍庫の特徴はね、ソーラーパネルが設置されていることなんだよ」
ソーラーパネル?冷凍庫に?
「そう。ソーラーパネルの特性と球根の貯蔵庫というのは、実は機能として相性がいいんだ」
ぬぁんと!?
「冷凍庫は暑い昼間に電気消費量が多くなるでしょ。ソーラーパネルも太陽が出る時により多く発電できる。
さらにはソーラーパネルを屋根に一枚配置することにより、冷凍に非効率な光や熱を遮断することができる。」
高知のこの辺りは、海沿いですし日照量も多そうですね。
冷凍庫とソーラーパネルのマッチングとはいいアイディアですね。
「ソーラーパネルを設置したことにより、冷凍コストを削減することができるので、その分生産者さんへ球根の保管料を還元しているんだ」
Wonderbaarlijk!(オランダ語で"スヴァラシィ!"v(≧∇≦)v )
こちらは、ソーラーパネルを使用することによって削減できたCO2を累計で示しています。
←CO2削減量表示パネル
ほんと、中村農園は社会に貢献していらっしゃるのですね。
冷凍のしくみがわかったところで、いざ冷凍庫へ。
「まずドアを開けてすぐのこのスペースは通路になっているんだよ。
納品時にトレーラーが入ってきて、荷を下ろす時にコールドチェーンが途切れないように、トレーラーごと冷凍庫に入ってドアを閉める。この通路で荷降ろしを行う。今ここにある球根は今日入ってきた球根と、これから産地さんに納品準備するもの。いわゆる球根の入出庫の場所で、私たちはここを"前室(ぜんしつ)"って呼ぶんだよ」
徹底したコールドチェーン!しかもオランダからの設計はさすがプロフェッショナル!
球根に気持ち良くお眠りいただくための環境って、一体どのようなものなのでしょうか?
「マイナス1.5度、湿度80%以上。
この環境が、球根に静かに、心地よーーーくお眠りいただける条件なんだ」
温度設定はこの前室から既にマイナス1.5度!ヒエ~ッ
入った瞬間は気持ちいいのですが、数分いるとすぐに寒~くなってきます。
「実際の保管庫はこの奥にあるんだよ」
ジャジャーーーン!と開いた重そうな扉の向こうにあるのは、黒いプラスチックケースに入った球根の山!
800ケースくらいが1つのコンテナに入って、オランダから送られてくるのです。
それが1週間に4コンテナ分って、やはり想像を超える量です。
「この冷凍庫の特徴は、冷凍機のユニットが部屋の中心部について、冷気が左右に振り分けられるようになっていること。冷たいけど、ゆっくりとした柔らかな風が部屋全体に流れるようになっていなっていて、冷凍庫内のどこの温度も一定になるようにしているんだ」
そしてみなさん、中村専務が重要なことをおっしゃいました。
「温度は冷凍だけど、球根自体は凍っていないんだ」
え?ナヌッΣ(゚口゚;
凍っていない?
なるほど、まるで零下のところで人が生活しても、人の体は凍らない!のと同じですね。
球根は生きている!
この設備もオランダに倣って、日本に合った形にアレンジして作りました。
それにしても、冷凍保存をされた球根から生産者さんはどうやって栽培を始めるのでしょう??
「冷凍から今の時期に急に外に出して栽培しようとすると、芽の生育スピードに変調があったり、定植後のハウス環境への適応が遅れた場合、思ってもいないようなトラブルに巻き込まれたりするリスクがあるんだ。
だから当社では、"解凍サービス"もしているんだよ。」
解凍サービス? エー?(ё_ё)ナニナニ??
「1-4週間かけて、2-13度くらいの温度帯で保管し、芽が動き出すのにちょうどよいコンディションに整えるんだよ」
社会トレーニングのようなものですね。
「そうそう。発芽して、地表から30cmくらいになるまでの花芽形成の時期、温度や環境というのは、ユリの生育にとってとても大切なんだ。」
なるほど、幼少期の経験が成人になってからも重要という点においては人と同じで、三つ子の魂百までみたいな感じでしょうか。
「それに、1-2月に植える産地さんと8-9月の夏に植える産地さんがいらっしゃるでしょ。栽培プロセスも球根を受ける季節によって全く違うんだ。だからこちらから納品するコンディションは季節や産地さんによって、カスタマイズするんだよ」
なるほど、球根品質には最後まで責任を持ちます!という姿勢。これぞ中村農園ブランド。
試験農場
お客様に販売するのに、生育特性がわからないといけませんから、自社の農場(ハウス)を持ち、ここで取扱品種を試験栽培しています。
オリエンタル、アジアティック、テッポウなどユリの大分類において栽培環境を調整しますが、同じ種類の中では温度、同じ分類の中では温度、灌水、肥料管理など、同条件においてどのような生育特性があるのかを観察します。
もちろん、管理履歴もすべて記録。
「夜間は15度から20度、日中の湿度は50%以上、理想的には60%で管理しているんだ」
と栽培管理エキスパートの山本さん。
訪問時に満開だったのは、6月4-8日に開催されたゆりフェスタに合わせて開花させたため。早生、中生、晩生と品種によってそれぞれの性質があり、本来はその生育期間を見るためにも同時定植します。
しかし、ゆりフェスタのときばかりは一斉に開花するよう先読みして植え付けてあるので、これほど一度に開花輪を拝見できるのは、本当に貴重な機会なのです。
「1年のうち、最初に行う試験栽培がゆりフェスタに合わせた開花試験、その次に真夏に行う酷暑試験、夏の終わりに植える抑制試験、それから最後に南半球産の球根を使って真冬の栽培試験と、年間4回季節に合わせて試験栽培するんだよ。
だから、この圃場は1年中フル回転!常に栽培していて、観察を続けているんだ」
球根大解剖!
みなさん、ユリの球根の鱗片(りんぺん)をはがしてはがして、中身がどのようになっているか、見たことありますか?!ぬぁんと、この度中村専務と山本さんが、ウン探とその読者である皆さんのために、貴重な球根を大解剖してくださいました!!
イチドウ、チューモーク!(☆。☆) キラーン!!
まず、球根の外観はこのようになっています。
肉厚の鱗のようなもので形成されているため、鱗片と呼ばれます。
球根の鱗片には、次のような役割があります。
① 球根の中心奥深くにある芽を守る
② 栄養分を蓄える
と解説しながら、次々と手際よく鱗片をむいていく山本さん。
こんなにむけるものなのですね。むいてもむいても次の鱗片が出てくる。なんだかまるで天然のマトリョーシカのようなわぁ~。
「鱗片も外鱗片(がいりんぺん)と内鱗片(ないりんぺん)とがあるんだよ」
え∑(・o・;)!そうなんですか?その境は?
「これが去年出た芽なんだけど、
その外側にあるのが外鱗片(ここに辿り着くまでにむいたのが外鱗片)、内側にあるのが内鱗片(これより内側にあるのが内鱗片)というわけなんだ」
と言いながら、スルスルと内鱗片をむいていく山本さん。
何枚くらいあるものなのでしょうか。
「オリエンタルで30-40枚くらいかな。
スカシやテッポウなど種類によっても数は違うよ」
それにしても、それ以上むいて大丈夫なんですかぁ??
むいてむいて、"何もありませんでしたッ"とかナシですよ!
さて、この鱗片の奥にあるものは・・・・?
あ!ナンカ違うものが出てきた!!
「この部分は葉なんだよ。
既に球根の中で葉はでき上がっている」
Ohhh!これは葉なんですね。
さらにむいていくと・・・
ナンカまた別のモノが出でぎだーーーーッ!
「コレコレ。この頭頂部にチョコンとある柔らかいゼリー状のもの、これがユリの芽(生長点)だよ!」
わ~、みなさん、ご覧ください!
ウン探史上初公開!球根の中に眠るユリの芽!少し透き通ったように見える頭頂部がユリの芽なのです。
こんなに小さいんだ!っていうか、うまく撮れない_;
おまけに肉眼でもよく見えない・・・自分の目でさえも焦点定まらず。目が見えないのか、芽が見えないのか・・・あ、両方か。
とにかく頭頂部にチョンとあるのが芽です!
「これほど小さくてデリケートなユリの芽だからこそ、急に暑いところに持って行って生長していくと、芽に障害が出てくる。
だからこそ、解凍処理というひと工程が必要なんだよ。このひと工程のお陰で、球根が環境に順化し、良い品質のものができるんだ」
と中村専務。
球根そのものよりも、なによりこの"芽"が大事とおっしゃいます。
「私たちが海外に行って球根をチェックする時は、こうやって球根を中まで見せてもらって、茎の太さや長さ、あるいは葉の枚数を数えさせてもらうんだ。
その上で過去のデータと比較して、"今年はより多くの輪がつくでしょう"などと予測して、取り扱いを決めるんだよ」
かなり綿密な品質チェックをされるのですね。
「そう、ユリ球根の品質は
① 形
② 傷がないか
③ 重さ
④ そして、花になる芽の部分の品質
をチェックすることで測るんだ」
中村農園の信頼は、このようなこまやかな作業一つ一つの上に築き上げられたものなのですね。
球根を解体して品質を確認した球根の分とか料金を請求されたりしないのですか?
「実際にはされないんだけど、冗談で"インボイスに付けとくから!"とオランダの取り引き先には言われたりするよ(笑)」
↑これ本当にあった裏話。本当にこのようなやりとりがあるのだとか。それでも尚、生産者さんに保証された品質の球根をご提供するために、キッチリ品質チェックをします。
・・・ということは?今回ウン探で解体した球根代、もしかして送り状に付けられたりするのかな??_;
中村農園の取り組み
★国内での球根生産でユリを知る
オランダ産の隔離免除球根を輸入する以前、国産球根のみを扱っていた時には、自社でも多くの球根を生産していました。
しかしその後、輸入球根の取扱量が増えるにつれ、国産球根は減少。効率化を図るために高知県内の農家さんに生産を委託していましたが、球根養成(植付、消毒、管理まですべての工程)を今年から自社で行う、つまり原点回帰することにしました。
これはつまり、完成品の取り扱いにシフトしてきた従来よりも、さらに生産のプロセスに社員全員が参加して球根そのものを見つめ直すという中村農園のポリシーの表れです。
規模は決して大きくありませんが、球根の生理や日本の気候への適応性、収穫後の冷蔵など国内
での生産を利用して研究をしていくことにより、取り扱い商品全体に対するノウハウを確かなものにしていきたいと思っております。
国内産球根はドライセール向けとしても需要が多く、消費者に販売する球根としては、オランダから入ってきた小さい
球根を大きく育てること。
大きい球根の方が花付きがいいので、小さく仕入れて大きく育てる!でも締まっている、見た目以上に重みがあるものというのも大切なポイントです。
★中村農園の重要な役割
オランダで良い品種が開発されたからといって、日本の気候で上手く栽培できるかどうかは別問題。
そこで、中村農園では自社圃場で試験栽培をします。その上で、日本の生産者さんでも負荷が少なく栽培できるものかどうかを判断するのです。
また、開花したものはゆりフェスタなどで、消費者も含め多くの花関係者に見てもらい、アンケートを取るなどして、反応を見ます。その結果をオランダの種苗会社にフィードバックし、日本のマーケットが求めているものを伝え、今後の育種の方針にも役に立てもらうのです。
つまり、中村農園の重要な役割は「つなぐ」ということ。
オランダの品種が日本の環境に適合しているかを確認し、良いものを日本のマーケットに紹介する。
また、多くの品種を開示しマーケット調査を行った上で、オランダにフィードバックする。
日本の要求レベルはとても高く、オランダの球根会社からは、
「日本人、キビチーッ!」っと思われているようです。生産者の技術も高く、消費者の要求も高い。
中村農園のような日本の球根卸売会社が、そのような実情を伝えているからこそ、日本には品質的なプライオリティを置いて選別した球根を納品してくれます。
中村農園は、ユリの生みの親であるオランダと日本のマーケットとをつないでいるのです。
※ゆりフェスタとは?
2007年から中村農園が始めた国内最大級のユリの展示会。数百にも及ぶユリの咲き姿を一斉に見ることができる貴重な機会でもある。
この時期に合わせ、中村農園が取り扱う品種を全て開花させ多くの人にユリを見てもらうことができる。フラワーデザイナーによるデモンストレーションやユリ販売に携わる人たちからのプレゼンテーションなども企画され、多くの人で賑わう。また、花の生産者や取り引き企業などの花業界ばかりではなく、地元の一般生活者にも来場を促し、ユリのマーケット調査も行う良い機会となっている。
で!今年は、なんと山本さんが実行委員長という大役を見事に完遂されたのです。
このようなマーケティング活動に基づき、1年間にオランダから入ってくる新品種はおよそ2割!
結構多いもんやな~。
しかし、全ての新品種がマーケットに定着するわけではありません。
「新品種が全国から出荷されるようになり、ある程度マーケットで知られるようになるまでは6年くらいかかるものなのです」
と中村専務。
「だから2割が新品種といっても、品種構成としてはコロコロ変わるわけではないよ」
「現在、当社が取り扱っているユリの品種は、オリエンタル、スカシ、テッポウを合わせて470品種ほどあるよ」
と山本さん。
えーΣ(゚口゚;! ユリだけでそんなにあるなんて!
ザンベジ
・・・ん?と思われた皆様へ。
ザンベジとは、中村農園様が取り扱う品種のひとつで、白いオリエンタルユリです。
6月上旬に大田市場の中央通路で行われた大田花きリリーセレクションでは、日々花販売に携わる私どもでさえ圧巻なユリの展示でしたが、その中でも威光を放っていたのが、このザンベジ。
その質感や花姿が女優の綾瀬はるかさんのイメージでした。←あくまでも個人的意見です_;
何という品種名かと興味を持って名札を見ると、なんと「ザンベジ」・・・(-_-)
何かの間違いではないかと思うほどのネーミング。しかし、ザンベジに間違いありません。
そのネーミングの心は?山本さんに伺ってみました。
「名前は基本的には品種を開発したオランダの育種会社が付けるんだよ。
英語名の場合は、どのようにカタカナに変換するかというのは私たちが考えたりする。例えば、Lincolnという新品種があったとすると、"リンコルン"か"リンカーン"か。
もちろん日本人にとっては"リンカーン"だよね。
私たちの会社ではこのような判断をするけど、基本的な名前は変えないで日本のマーケットに販売していくんだ。
オランダの育種会社は都市名とか川の名前とか、固有名詞をユリの名前に付ける傾向があるんだよ。
ザンベジは川の名前とかって聞いたよ」
あー、なるほど、アフリカとか流れてそーですねぇ・・・と思って調べてみたら、ありました。
ザンベジ川。
う~ん、でも日本人には何とも馴染みの薄い川。略して"ウスカワ"←略す必要ないケド!
しかもイメージしにくーーーいッ!もう少し、私日本人にとって、わかりやすい名前って付けてもらえないのでしょうか(゚ー゚;A
「今はオランダの種苗会社もそのようなことを考慮してくれるようになって、"いい名前があったら教えてね"と尋ねられることはあります。
しかし、オリエンタルユリ自体が海外のイメージがあるので、和名が付けられることは少ないかな。過去には"サッポロ"とか"キョウト"とか付けられたことはあるけどね。
ただ、こちらからお願いすることは、あまり長い名前は付けないでねってことなんだ。以前、ウィルケ・アルベルティとかアンニ・フリージンガーとか付けられたことがあってね。これはさすがに日本人に馴染みがないし、覚えにくいでしょ(笑)」
もしくは、中村農園さんで日本のマーケット用に名前を変えて販売することは難しいのでしょうか?
「オランダの種苗会社から日本の複数の球根卸売会社が仕入れて販売しているからね、同じ品種を別の名前で販売したら、市場が混乱するでしょ」
そうですねーー。そうなるとやはりオランダの育種会社が良い名前を付けてくれるのが一番というわけですね。
そして都市名をユリに付ける傾向がある・・・でピンときました!キタ━!(゚∀゚)
オリエンタルユリの代名詞とも言えるほど有名な品種、"カサブランカ"!
「白い家」という意味ではありますが、モロッコの最大都市でもあります。
1970年代にオランダで開発され、皆様にもお馴染みのように世界的な大ヒット商品となりました。
そのほかソルボンヌもそうですし、なるほど、ユリの名前には世界の都市名、河川名が多いわけですね!
中村農園の誕生
中村農園の発祥を辿れば、中村専務のお祖父さまがこの地でスカシユリやテッポウユリの花生産をしていたことに始まります。
当時は、海外から輸入される球根もなく、国内で切り花用の球根を仕入れていたのが、今では海外から仕入れて日本の生産者に球根を卸す仕事がメインになりました。創業1955(昭和33)年、来年で創業60周年記念です!
地元の人たちに販売することが主でしたが、現在では全国の生産者さんに卸しています。
海外の球根を取り扱う大きなきっかけは、1990年の「オランダ産隔離免除球根」を中村農園が国内で初めて輸入したこと。その数およそ50万球 Σ(゚口゚;
「オランダ産球根」は、これまでずっと植物検疫の関係で海外からの球根を輸入販売してはいけないという法律だったのが、条件付きで「オランダ産だけはいいよ」と許可が出て、中村農園が国内に先駆けて取り組んだというわけなのです。
いま、私たちが立派なオリエンタルユリを楽しめるのも、この中村農園さんの第1歩があったからこそ。
オランダ産の球根が国内に流通するようになってから、国内のユリの生産額、消費額もウナギ登り。ユリは本来春夏に開花するものですが、周年入手できるようになったのも、オランダの球根のお陰。
現在の日本のオリエンタルユリ文化の創造に深く寄与されているのですね。
こちらがその創始者、中村利道 前社長。
一同、最敬礼!(`・д・´)ゝ
そして、今の中村農園を支える従業員さんたちは、平均年齢35歳。上向きで若い会社なのです。
将来の有望品種!
最後までうんちく探検隊を読んでくださった皆様へ、感謝の気持ちを込めて、超とってもココだけの話!をお知らせしちゃいます。
5-6年後にマーケットに登場すると思われるユリ・・・
「もうアレしかないでしょ」
と中村専務と山本さんが目を合わせて頷いたその品種こそ・・・
念押しですが、本当に誰にも言ったらいけませんよ!皆様とウン探だけのナイショにしておいてください!( ̄X ̄)
先日の中村農園で開催された「ユリフェスタ」の人気投票で、数百品種の中から第1位に輝いた品種が、これから5-6年後・・・う~む、ちょうど東京オリンピック開催のころでしょうか・・・に、マーケットにデビューするのです!
その堂々1位に輝いた人気のユリこそ・・・・!
"スノーボード"!!
珍しい白のキレイな八重品種!
花の向きも上向き!
花付き良好!しかも輪サイズが大きい!
名前も日本人にはとても馴染みのある響き!
これこそまさにヒットのよ・か・んウフ
皆様、くれぐれもナイショではありますが、どうぞお忘れなく、是非デビューを楽しみにしてください!
そして、ゆりフェスタのテストマーケティングでアジアティックの八重も人気という結果が出ています。
「当社としては、オリエンタルの大輪は業務用としてさらに改善を重ね、皆様に使っていただきやすい品種として育てていくと同時に、新たなマーケットの開発としてパーソナルユースに対応できるアジアティックなど小輪系にも力を入れていきたいと思います。あらゆるシーンで使われる用途に合わせ、より広く皆様に身近な花として楽しんでいただけるよう、新しい品種の流通を目指していきます。」
高知の偉人
ご存知の通り、高知県からは偉人がたくさん誕生しています。
高知が輩出した偉人といえば・・・
坂本龍馬
ジョン万次郎
中江兆民
板垣退助
すごいな、ちょっと挙げるだけでも国の歴史に大きな影響を及ぼした人がたっくさん!まだまだいらっしゃいますよ~。
吉田茂 wow!
山内一豊
長宗我部元親(中村農園のすぐ近くに墓地が!歴女がよく来訪するのだとか)
岩崎弥太郎
寺田寅彦・・・「天災は忘れたころにやってくる」の人
牧野富太郎(日本が誇る植物学者)
そして、
中村農園。URL http://www.nfb.co.jp/
どうぞみなさま、よろしくお願いいたします。
・・・後編に続く・・・
2010年8月13日
vol.77 JA兵庫六甲農協 淡河支店 テッポウユリ
淡河←みなさん読めますか?
「オオゴ」と読みます。
神戸市北区にある淡河町のことですが、大田花きには「プリンセスオーゴ」というテッポウユリがあり、大変高い評価を得て、フラオタ2009で優秀賞を受賞しました。
大田花き球根担当はプリンセスオーゴを出荷するJA兵庫六甲淡河支店を「間違いなく全国でトップレベルの産地です」と高く評価。
またフラワー・オブ・ザ・イヤーOTA2009での審査員である買参人さんから頂いたコメントも、
「リピート率が非常に高く、品質による評価された花というイメージが強い。産地を評価します!」
と、この上なく素晴らしいものでした。
なぜ、神戸市の北区の中のひとつの町の名前がテッポウユリの品種名にまで取り入れられ、しかも全国レベルの高い評価を得ているのでしょう。
理由を探りに神戸に行ってきました。
品川から新幹線に飛び乗っておよそ2時間45分、新神戸駅に到着。
前川清の「こうぉぉ~べぇ~♪」という歌が聞こえてきそうです・・・って年齢(とし)がばれるな^_^;
そんなことは置いといて、・・・ん?神戸って意外にも山がちなんですね。
新神戸駅構内からすぐ外を覗くとこんな感じ↑
港のイメージがありましたが、新神戸のすぐ裏は山に囲まれています。
神戸市の面積のうち北区が45%を占め(広い!!)、淡河町はこの北区の一角にあります。
北神電車の谷上(たにがみ)という駅で降りてから、車でひと山超えて淡河に到着。
早速JA兵庫六甲淡河支店の大石さんが案内して下さいました。
大石さんは、森本レオとNHK教育テレビの「できるかな」に登場するのっぽさんを足して、年齢を20歳くらい若く、且つ男前にした感じです。良く伝わったかと存じますので、ご本人のご希望により撮影禁止。どうもすみません。
早速大石さんに圃場に連れて行っていただきました。
う~~~~ん、緑に囲まれて風が気持ちうぃ~~!^~^!
「ユリ」の名は「風に揺る」の「ゆる」から来ています。その名の通り、優しく快適な風が淡河の里と吹き抜けます。東京は毎日猛暑日続きやのにな~(ちょっとした優越感♪)。
その心地良い風を受け、淡河のテッポウユリは意外にも全て露地栽培です。
淡河のテッポウユリを作るのはその風ともうひとつ・・・「土」です。
なんだか見てみるとねっとりと粘土のような感じ。
大石さん、この土はなにかポイントがあるんですか?
大石さん「良い質問だね~。」(森本レオ風)
「テッポウユリのための良い土は、粘土質で土の粒子が細かいこと。条件が良いと丈が良く伸びるんだよ。そのためのポイントは、収穫が終わった秋のよく晴れた日に、土をよく耕し、いかに粒子を細かくするかなんだよ。」
なるほど、農業は無休。収穫後も次の生産に向けてすぐに仕込みを始めるのです。この時期にいかに土に手をかけるかが、翌年の生産の出来具合に反映されるというわけですね。
・・・んッ?何これ??
ジャガイモぉ???なんでこんなところに?
ユリの圃場の足元に土に埋もれたジャガイモが・・・!?
作業中にお腹が空いた時に食べる?まさかね。もしくは何かのトラップか。
大石さん「除草剤をまいた印だよ。」
あ、なるほど。除草剤をまいた所にはジャガイモを置いて、これからの所と区別しているわけですね。
「でもどうしてじゃがいもなのですか?」
大石さん「あまり意味はないんだよね」
あ、そうでしたか^_^;・・・ま、確かに、ナスやピーマンではふやけてしまうし、カボチャは高級野菜やし、季節指数高いし、キノコでも置こうものなら、干からびるか、テッポウユリ畑を占領されるかでしょうから、やはりジャガイモさんが最も適任なのかもしれません。
なるほど、なかなかグッドアイディアです( ^ー゜)b
淡河町を含めたこの神戸市北区一帯は、大正時代トマトなどの野菜、また戦後はセロリなどの西洋野菜を作っていたそうです。それを山を越えて神戸に駐留している軍に届けに行ったりしていたのだとか。
う~ん、この「西洋野菜」とかいうあたりがさすが「こうぉべぇ~」(前川清風)←しつこい。
昼夜の寒暖差、日照量の多さを武器に農業が根付いたこの北区で、スイセンやアイリスなどの花から始め、今はテッポウユリの一流産地に成長したというわけです
圃場を拝見している間に、ちょうどユリの搬出のタイミングを迎えました。
「大石さん、検品やら伝票作成やらでなどで忙しくなりますね。私は傍で拝見していますから、どうぞ私に構わず・・・」
大石さん「ううん、いいんだよ。僕は検品しないから。見ててごらん。この淡河では、部会員が集荷から検品、積み込みまですべて自分たちでやるんだよ。2班に分かれてね、日々交替で担当。昼と夜と2回来て、出荷するんだよ。」
「あの若い彼らはアルバイトなんだけど、彼らも農協ではなく、部会が雇って手伝ってもらっているんだよ」と大石さん。
もちろん農協の職員さんもお手伝いされますが、基本的には全て部会員が自らの手で最後まで責任を持って遂行するのです。
部会員さんたちが箱の周りに集まり、指を差したり、上から見たり、下から見たり、眉を細めてみたり・・・随分長い間、商品を止めて見ていらっしゃいます。検品していらっしゃるのでしょう。
いや、それにしても1箱の検品にかける時間が長い!!
一体何分かけてチェックしているのでしょう・・・と思い測ってみたところ
・・・・・チチチチチチチチチチチチチチチッ(←秒針の音)
およそ2分30秒。ぬぁがぁ~~~い!!
何を話しているのかと思えば、「重箱の隅を突っつくようやけどな~」なんて言いながら、あーでもないこーでもないと議論に議論を重ねていらっしゃるのです。葉や蕾の色、形、サイズ、変色や変形はないか、虫は付いていないか、病気になっていないか、切り前のタイミングは合っているかなど、あらゆる所をチェックします。
こんなにじっくり見られたら、品質を満たしていないユリちゃんは恥ずかしくなっちゃうわ~ん。不合格品は出荷した部会員が持ち帰る。だからこそ、淡河のユリは1本1本が高品質を保っていられるのです。
何本もの手が商品に集まり、いくつもの厳しい目が1本に集中し、出荷者はその瞬間緊張した空気に包まれます。
「そやからヘッタなもん(ヘタなもの)、入れられへん」(部会員さん)
ブランド確立に必要なものはこの日々の緊張感なのでしょう。
各市場への仕分け作業やパソコン入力も全て部会員さんが行います。だからこそ何があっても農協さんのせいにするわけにはいきません。ここに淡河のユリの高品質の一因がありました!
大石さん「農協はあえて手も口も出しません。いや、手が足りん時は手伝いはするよ。でも最高意思決定はあくまでも部会にあるんです。」
ここまで部会主導体制が徹底している共選産地も珍しいでしょう。だからこそ、羨ましいほどチームワークが結成されていて、自分のことばかり考える人はいないわけです。
あ!OTA行きの商品を発見しました~。いってらっしゃ~い!
おっとそこへ淡河の重鎮こと部会長登場!
こちらはJA兵庫六甲淡河ゆり部会部会長の森井康夫さんです。淡河の美しいユリの写真があしらわれた素敵なお名刺をいただきました!
森井部会長曰く、淡河のブランドの源は「みんなの力」。
この「みんなの力」について伺ってみました。
「この議論の習慣とかチームワークは、昔からわしらに根付いているものやわ。
一昔前まではみんなでお酒を交わしながら、失敗談を言い合って、そこからみんなで勉強したり、よく研修旅行もやったな」
ただの酒飲みという方もいらっしゃるかもしれませんが、このノミニュケーションこそが淡河の組織力の原点です
組織で何かを実践していくには、“コミュニケーション第一”という鉄則を大切にしているのです。
「わしが今は部会長をやっとるけど、これは持ち回りや。みんなでやってんねんから、わしばっかり(ウンチク探検隊の取材で)取り上げんといてな。」
どこまでも自分ばかりが目立つことを控えて、部会全体の力を尊重します。
おっと、そこへ2人目の淡河の重鎮が登場。
大石さんが「マスターを紹介するから」といらしたのが、育種部長の“マスター”こと常深(つねみ)輝夫さん。
お名刺をいただくと「神戸マイスター」と書いてある。
「マスターじゃなくて、マイスターじゃないですか。
どうしてマスターと呼ばれているのですか。たしかにマスターなんでしょうけど」
大石さん「マスターは、“師匠”とか“主人”のあのマスターではなくて、スターウォーズのマスターに似ているから、僕はマスターって呼んでいるんだよ。」(やはりここでも森本レオ風)
な、なんと∑(゜◇゜;) !
スターウォーズのジェダイ・マスターだったとは!おそるべし。
確かに、似ていらっしゃる・・・かどうかはさておき、ここは常深さんへの敬意を込めて、マイスターと呼ばせていただくことにします。
マイスター、すみません。
マイスターとは神戸市に認定されるもので、現在は全部で50人ほどいるそうです。その中で農業マイスターは6人、中でも花は常深マイスターおひとりだそうです。
↓神戸市マイスター詳細
http://www.city.kobe.lg.jp/information/project/industry/agriculture/index.html
こちらのサイトには、ちゃんと神戸アグリマイスターとして常深さんのお名前が掲載されています!
こりゃ、正真正銘の本物です。
なんでもテッポウユリの育種生産に携わり53年・・・、ごッ、53年?
「マイスター、53歳くらいかと思っていました(*_*;)」
マイスター「また、うまいね~」(とのけぞる)
いや、本当です。
53年て半世紀以上ではありませんか。
マイスターは高校生の時からユリ生産に携わっていらっしゃるそうです。
もしかしたらマイスターの力が淡河のブランド確立に一役かっているかも???と思い、マイスターのお宅へ潜入!
マイスターのご自宅では、私たち取材班のために、プリンセスオーゴの開花調整をして、咲かせておいてくださいました。ありがとうございますm(_ _)m
マイスターが何か持ってきてくださいました。
一体何でしょう、オレンジ色のネットに入っていますが。
「テッポウユリのタネだよ」
?よもや・・・これ全部タネです!
じゃじゃ~ん!
テッポウユリのタネってこんな形をしているんですね~。
おせんべいみたい。
普通は部会外の人には見せない門外不出のオーゴのタネを、ウン探取材班に見せてくださったのです(泣)。うれしーーーー(≧∇≦)!ウン探やっててよかった。・゚゚・(>_<;)・゚゚・。(泣)
更に、ユリの交配の仕方までデモンストレーションをしてくださいました。
【準備するもの】花粉、ハケ、アルミ箔、その他
良い品種に出合ったら、あっちの花粉をハケでとって、こっちのおしべにこうやって付ける(交配)
(↑写真は、指がハケだと思ってください)
アルミ箔で巻く
タネができたら、確保!
その種を12月から1月にかけて撒く
3月下旬に定植
7月下旬から11月にかけて開花
というサイクルになるわけです。
種の採取からなんと1年サイクルでどんどん回していきます。早いですね~。
しかし、その代わりというわけではありませんが、品種の固定には30年!かかるということを忘れてはいけません。このようにして交配に交配を重ね、良い品種を選抜していくのです。
マイスター「“良い品種”とは、自分の好みではなく、作り易く、生育も良い、上向きで大輪であるという条件が揃っているものやで。良いモノが出たら、それを固定する。それには30年かかんねん。」
ぎょえ~~!(@_@;)
30年て、気が遠くなるようなお話です。1世代=ワンジェネレーションではありませんか!
例えば今から30年前は1980年ですから、そこのころに流行ったものはというと、原宿にたむろした「竹の子族」とか、TV番組では「3年B組金八先生」など。ヒット曲は「ダンシングオールナイト」とか、聖子ちゃんの「青い珊瑚礁」、百恵ちゃんの「さよならの向こう側」とか・・・う~ん、一昔以上前というか、私の記憶には残っていないものばかり(ウソ)。
ひとつの品種が固定するまで、こんなにも長い間、我慢に我慢を重ねて地道な努力をしていかなければならないんですね。あ~、30年間ずーーーーーーっと一つの事を追い続けるというのは、なんとも私たちの想像を超えた神業の領域です。
OH, MY GOD!
「神業の領域」・・・そう、淡河のユリはテッポウユリという名前でありながら、カサブランカと見間違うほどの大きさ、テッポウユリであることを疑うほどの花の展開、しかしオリエンタルにはない品格、この大きさでありながら驚異的なまでに維持された上向き角度45度+、そしてキリスト教の受胎告知に描かれているマドンナリリーさえ思わせるほどの清楚感としなやかさ。まさにテッポウユリの領域を超えて、新しいユリのカテゴリーを創出してしまったと言えるでしょう。
その白さは少しグリーンがかり、輪の大きさも他のオーゴシリーズであるオリジナルオーゴやミスオーゴより一回り大きくなっています。
↑ご覧ください。テッポウユリとは思えない大きさと展開ぶり。
テッポウユリの定義を超えて、新しい品目カテゴリーを作ってしまっていることがお分かり頂けるかと存じます。
ちなみにプリンセスオーゴが誕生したのは、1997年。まだ13年ですから、品種の固定には比較的時間がかからなかったのですね。品種の固定が早く、栽培しやすい、美しく輪が大きい、芳香があり、花持ちが良い、市場評価も高い、などなど、プリンセスオーゴは、淡河の組織力によって生み出されたこの上ない傑作だといえるでしょう。
しかし、プリンセスオーゴはまだまだ品質安定のための努力の日々が続きます。
ウン探取材班がすごいすごいと連発していると、ここでマイスターも、
「わしはなんもすごくないで。みんなでやってんねん。ただ年齢(とし)がいっているから、育種のリーダーをやっているだけやわ」とどこまでも謙虚なコメント。
この部会内で徹底したチームワークを重んじるスピリットは、全国の部会所属の方なら誰でも見習うところがあるのではないでしょうか。本当に謙虚でありながら協調的です。
そして賢明な読者の皆さんなら、既にここまでのお話でお気づきのことと思います。
生産サイクルの中で「タネを撒く」とご説明申し上げました。
そうです!淡河のユリは全て実生(みしょう:タネから育てること)なのです。一般的には組織培養や挿し木で苗を作り、生産者のところでは苗から育てたり、ユリであれば鱗片繁殖させたり、球根から栽培したりします。その方が規格が一定になり安定するからです。
しかし、淡河ではそこをあえて100%実生栽培にしています(=実生栽培のテッポウユリのことを新テッポウユリといいます)。
実生栽培の方がウィルスが入りにくいという利点がありますが、一つ一つの個性が出て、規格が揃いにくいという弱点があります。
規格不揃いというこのポイントを補うのが、淡河の組織力!揃いにくい規格を揃えるところに部会の力があるのです。
そのためのご努力をご紹介いたしましょう。農協の2階を拝見いたしました。
↓ご覧ください。
筒に番号が書いてありますが、これは淡河のユリ部会の生産者さん17人の番号です。
全て同じ品種にも関わらず、良く見ると生産者さんによって微妙に規格に差があるのが分かります。
これをチェックして、生産者さんがアドバイスをしあい、部会全体の規格統一力を底上げしていくのです。
最後に取材班はマイスターに聞いてみました。
「マイスター、テッポウユリが喋れたら、何を聞いてみたいですか?」
大石さんが間髪入れずに、
「もう、マスターはユリと喋ってるんですよ。
なにせ、テッポウユリをいつまでも“じーーーーーーーーーーっ”と見てるんですから!」
え??なんと!
2時間でも3時間でも時間さえあれば動かないユリを見つめるそうです。
「マイスター、何を見ていらっしゃるんですか?」
「そうやな~、色とか、形とか、艶とか・・・でも、ちっとも言うこと聞いてくれんよ」
53年もの間ユリと真剣勝負で見つめ合うマイスターには、私たちには見えないものが見えて、聞こえないユリの声が聞こえるのかもしれません。これぞ本物のマイスター(巨匠)の技です。
マスターが目指す理想のテッポウユリは、丈夫で作り易く、形が良く、日持ちも良い、花(顔)がきれいで女性心をくすぐるような香りを持つものだそうです。(これはやはりマイスターの女性の好みと一致するのか?)
「周り道で失敗ばかり。この理想に辿り着くにはなかなか長い道のりやけど、もう一度生まれ変わったらこんなユリが作れるかも。生まれ変わったらユリの育種を究めたい。それくらい面白い。でも報われることはないんやけどね。」
理想のユリを作るには、人の一生は短すぎるのでしょうか。
「何事も一生懸命やること。目標を大きいところにおいて、それに向けて一つのことを地道に続けて積み重ねていく。」
これぞ匠の格言です。マイスターは生まれ変わらなくても、きっと近い将来理想のテッポウユリを生み出すことでしょう。
こちらがマイスターをはじめ、淡河の皆さんが品種改良して生まれたプリンセスオーゴです。
近くで見ても、肉厚で艶があり、吸い込まれてしまいそうです
そもそも13年前に「新テッポウで大きく展開する品種を作ろう」と一念発起。
「100粒種をまいたとしても、そのうちええのが1本か、せいぜい10本くらいやろ。これを固定するのにまた30年かかんねん。でも淡河の部会全体で“開くものを改良せなあかん”ていう一心でずっとやってきて、プリンセスオーゴが生まれたんよ。」とマイスター。
なるほど、気の遠くなるようなお話ですが、そもそもテッポウユリはそれほどまでに展開しないものというのが常識。その中で展開するテッポウを作ろうと思ったきっかけは何ですか?
「通りすがりの絵描きさんが“開く花が欲しい”って言ってったんよぉ。」
え?(@_@;)!! と、通りすがりの絵描きさんの助言ですか?
まるで「ある晩、神様がささやいた」的な出来事ですね。
その一言にインスピレーションを感じて十数年を費やすとは、やはり淡河の皆さんのセンスと組織力、そしてあくなき探究心があったからでしょうね。
「プリンセスオーゴ」の命名は?
「公募したんよ。賞金10万円で。結局部会員さんのアイディアが採用されたんやけど、その方が愛着が湧くやろ。ええことやわ。」
なるほど、素晴らしい。
プリンセスオーゴは、淡河の皆様の地道なご努力の結晶です。それはまさにテッポウユリの領域を超えています。知らない人が見たら、カサブランカとすら思うかもしれません。
普通、一般的にテンポウユリといったらこんな感じですから、これはちょっとテッポウユリって分類してはいけないような気がしてきました。
おまけにプリンセスオオゴはシトラスグリーンのほのかな芳香があります。なんとも「夏の花」を代表するユリにぴったりの香りです♪
ホントに画竜点睛的付加価値ですね、淡河の皆様(゚ー゚)(。_。)(゚-゚)(。_。)ウンウン
森井部会長に伺いました。
「良いテッポウユリの見分け方は?」
「産地で見分けてください。淡河のユリなら良いユリです。」
おっしゃる通り!それが一番間違いないでしょう(゚▽゚)(。_。)(゚▽゚)(。_。)ウンウン
上向きで大輪か中輪、花保ちも間違いありません。
ちなみに、淡河ブランドを支える主力のオーゴユリはオリジナルオーゴ、ミスオーゴ、プリンセスオーゴの3種類。出荷時期はそれぞれ順番に、8月上旬から、8月5-10日ころから、8月10日頃からとなります。
そんな視界良好に見える手本産地淡河の課題は、生産者の高齢化だそうです。農業従事者の高齢化が深刻視される中、ここでも例外ではありません。大敵は自然災害。トップ産地を守るためには体力も必要です。災害がなくて、価格が高ければよかったと思うが、面白半分にできる仕事ではない。
部会長は若い部会員を「皆まじめです」と評価します。淡河の組織力を維持しつつ、淡河ブランドを守るためにも、後継者の育成に期待したいところです。
・ 生産力は組織力!議論に議論を重ねて、規格を見直し、常に現状を疑い、向上を目指すべし!
・ 育種、生産から、検品、出荷まで、何事も自らの責任の下で行い、反省を糧に品質向上に努めるべし!(ははぁ~!頭が下がります)
・ 淡河のユリは、ユリの新しいカテゴリーと捉えるべし!
・ 地域のオリジナルブランドの品種を生み出すためには、ユリととことん向き合うべし!(動かないユリを2時間でも3時間でも見つめ続ける淡河の花への愛情を見習うべし!)
・ ユリは夏の花です。夏場はバクテリアが繁殖しやすいので、水の交換をこまめに行いましょう。
・ 是非家庭で飾って、楽しんでください。一本でも凄いボリュームです。すごく豊かな気持ちになるでしょう。
「淡河の花」ウェブサイトはこちら。
http://www.ogo-flower.com/index.php
ブログは、大石さんの鋭い観察力と冴える文章力、垢ぬけたサイト構成が洗練された印象を与えます。
<お・ま・け>
駅のエスカレーターに乗っていると、なぜか違和感が・・・。
なぜ??
・・・みんな右側に立っている∑(゜◇゜;) 。。。
関西では立ち位置右側、追い越し左側が鉄則で、その現場を撮影してしまいました('∇^d) ナイス☆!!
但し例外として、関西でも大阪のJR京橋駅だけは東京と同じで「立ち位置左側、追い越し右側」が原則になっています。
ちょっとした東西文化の相違に触れ、その新鮮さが嬉しいウン探取材班でした!
取材「班」て言うても、一人しかおれへんけどね。
はい、どうもありがとうございました♪(#^ー゚)v
<写真・文責:ikuko naito@花研>
2009年7月31日
vol.73 JA津南町ユリ切花組合(ユリオリエンタル)
2009年のMs.リリーも黒木メイサさんに決まり、夏場のユリの出荷も最盛期!
(Ms.リリーについてはこちら→http://www.otakaki.co.jp/topics/2009/200918.html)
ならば、日本最高峰のユリ生産地に行って、ユリのうんちくを探ってこようではないか!
ユリといえばカサブランカ、カサブランカといえば雪美人、雪美人といえば・・・
津南です!
と向かったのが新潟県津南町。
新潟ではNHK大河ドラマ天地人で、大フィーバー!
どこへ行っても「天地人」だらけ!
上越新幹線は越後湯沢で下車して、西へ車を走らせることおよそ40分。
↓こんな標識を見ながら、着いたところは・・・
"出会い"はいつも新鮮で素敵なものかと思っとったけど、注意せなあかん出会いもあるもんやねんな~。
「熊との遭遇に注意」とちゃうか?敢えてロマンチックに書いとるんか。
ユリの里、新潟県津南町。
JA津南町ユリ切花組合の青年部会の皆様が迎えてくださいました。
最初に案内して下さったのは、津南の秘密兵器「雪室」です。
突然雪室(ゆきむろ)
な、なんと?(゜◇゜;)
集出荷所の室内にあった「普通の扉」を開けるともうそこは冷蔵庫。
冷蔵庫の中にあったカーテンを開ければ、すぐそこにドドンと広がる雪の山!
カメラのフレームに入りきらなーーーいっ!
なぜこんなところに?!
「これは球根を冷やす保冷庫なんだよ。これは今年の3月に雪をブルドーザーで入れるんだよ。」
と説明してくださったのは、JA津南町ユリ切花組合広報部長の江口裕さん。
なるほど。雪の冷気で冷蔵庫を作っているわけです
これを雪室といいます。
雪は徐々に溶けていきますが、ひと夏通り越して、秋まではばっちり使えます。津南に冷房は必要ありません。
中はヒンヤリ・・・どころか、寒すぎて、半袖ではプルプル凍えてしまうくらい。
冷え切った体で雪室から外に出てると、真夏のうだるような暑ささえも心地良く、ふんわりと優しく体を温めてくれます。
雪室の中はカーテンでいくつかに間仕切りされ、それぞれ温度管理されています。
雪のある部屋は常に2?5度!そりゃ半袖では震えるわけだ。
カーテン越しの倉庫では3?4度。出入り口付近では7?10度。
なんといってもこの雪室の利点は、適度な湿度を保てること。
この湿度は球根の貯蔵に最適なのです。
球根の芽が乾くことなく保管できるからです。
これを冷房を使った冷蔵庫で行うとどうなるか。2?3日に1度は球根に水を遣る必要があるのです。
しかし、こうすると球根にストレスをかけることになり、開花輪数を調整できなくなってしまうなどの品質に問題が出てきます。
ですから、極力ストレスを与えないよう、空気中の湿度で自然に湿らせておくのが最善の方法なのです。
通常、オランダから球根を輸入して定植、栽培しますが、津南町はオランダから若い球根を輸入して、1年間自らの手で球根を育ててから定植します。
このことを球根の「養成」といいますが、このことにより、開花輪数を調整することができる。
→つまり、マーケットのニーズに合わせ、大きい球根にも小さい球根にも自分たちで調整できるのです。
この養成を自分たちの手で行うからこそ、雪室が必要なのです。
<まとめ>「雪室」を使う利点
? 湿度が85?90%に保たれる。⇒花や球根の保管に適している。球根の養成には必需品!
? 二酸化炭素排出量を削減できる。⇒結果的にエコ生産をしている。
? つぼみのまま出荷されるユリは開花が進まない。⇒新鮮なまま消費者の手元に届く!
もちろん保冷車を使って大田花きまで完全コールドチェーン出荷!
そもそも導入のきっかけは、北海道の野菜の産地を倣って導入を決めたのだそうです。
球根の養成について
「品種によっては、1本で14輪から15輪も付く品種があるからね。輪数を調整することが重要なんだよね。」
・・・確かに、1本から15輪も付いているユリは怖い(-.-;)
それほど輪が付いたら、使うときに困ってしまう方もいらっしゃるはず。
オランダから直径2?3センチくらいの小さいうちに球根を輸入して、春に植えて養成。秋に掘り起こして定植に備える。
この養成畑に植えられた球根数は20万球!
「球根を持ってそのままグイッと手を土にねじ込んで、手首くらいの深さまで一つ一つ手で植えていくんだよ。」
とデモンストレーションをしてくださった江口さん(1回)X20万回!!!と思うと・・・ふ?、気が遠くなるような作業です(+_+)
球根を植える間隔も品種の特性によって違います。
【球根を養成する「養成畑」】
例えばカサブランカは22?23センチ間隔で植えますが、色ものの球根は20?21cmくらい。
球根が大きくなると輪がたくさん付いてしまう場合があるため、その輪数をマーケットニーズに合わせ調整するために、間隔を狭めてあまり大きくならないようにします。もちろん、色物全てをそうするわけではなく、品種による特性を見極めてそれぞれに間隔を決めていくという大変地道で繊細な作業なのです。
養成した球根を選抜して養成畑に植え、またこの段階でも成長に異変が見られるものなどを廃棄、養成が終わった時点で球根をチェックし、異変のあるものはまたそこで廃棄を行い、選抜を繰り返します。
「養成した後は、球周(球根の円周)が20?26cmになるんだよ。
もちろん、この養成畑でも成長して開花してしまうので、ツボミが付いて2cmくらいになったら花に養分を取られないよう、これまた一つ一つ手で切っていく。そうすると球根部分に養分が溜まって、いい球根ができるんだ。」
「あら?この葉についた白いものは何ですか?」
「牛乳!」
「え?冗談??確かに牛乳っぽい白さですが・・・」
「ほんとに。消毒に牛乳を混ぜているんだよ。アブラムシ除けにね。その分消毒の濃度も少なくて済む。」
なるほど。いろいろと研究されていらっしゃるんですね。
多くのユリ産地はオランダから若い球根を輸入して、他産地に養成を委託するか、そのまま定植します。津南がそこまで手間をかけて自分たちで球根を養成する理由はなんでしょうか。
「他産地との差別化だよ。オランダから輸入してすぐ植えるのではなく、自分たちで手をかけて1年越しで定植を行うのが津南流。葉とツボミを大きくすることは簡単。肥料をやればいいことだからね。でも津南のユリはスッとしたスタイリッシュなユリでなければならない。」
このように時間と手間をかけて自分たちの品質を保とうとしているからこそ、日本最高峰のユリの産地として名高いわけですね。
脱線しますが、養成畑の向こうに見える淡い緑の畑は何ですか?
「タバコだよ」
なんと。タバコ・・・。
お恥しながら、初めて見ました、タバコの葉。涼しいところで生産されるんですね。
それにしても、大きい葉ですこと!?(゜◇゜;)
でろ?んと大きく、ペンを載せると葉の大きさがよくわかります。
養成球の人生
さてさて、栽培圃場をご案内いただき、お会いしたのは広報部長の江口さんのお父上でいらっしゃる江口一衛さんがいろいろ教えてくださいました。
養成した球根は、地上部分の茎を切っておがくずに入れます。(これをパッキングといいます)
1度冷凍して保存
雪室で解凍
定植
採花
おしまい。本分全う!
津南の球根は一度切ったら終わりです。
「その球根を畑に入れたまま、もう一度切ることはないんだよ。2回切ろうとすると、雪美人としては品質にも問題があるし、結果的に一時期に集中して大量に出荷されることになってしまう。それじゃ、市場を混乱させちゃうでしょ。これは禁止だよね。」と教えて下さったのは江口さんのお父上の江口一衛さん。
定植後発芽したら
小さい時は十分な湿度を与えるために、毎日湿らせます。
大きくなったら根を張らせるために少し水を切ったりしますが、小さいうちは十分な水分が必要なのです。
まだ命が若いうちは、ちょっとした水切れも致命的になってしまうのは人間と同じですね。
「また、津南の品質のこだわりは茎の堅さにある。これは太陽にあてることが重要なんだよ。でも当たりすぎると背が低くなってしまうし、このあたりが経験則に基づいた勘によるところが大きく、手間の掛けどころなんだよね。遮光をコマメにしないと。」
茎の堅さは、持ってぴんと立つもの。
←JA津南町 石澤雄太さん(24歳)
市場に出荷されるときは大きなつぼみがたくさん付いていますし、花屋さんでは少し咲いているものもありますが、それでも手で持った時に花の重さで頭が下がってこないものが◎です。
栽培のときに細心の注意を払うことは?
栽培のときに気を付けることはなんでしょうか。
「温度と湿度だね。」と江口お父さん。
温度が高いと丈が伸びないし、日射量が多すぎたり、雨が多すぎたりしても、根の張りが悪くなり、地上部のボリュームがなくなってしまいます。従って、露地といえども遮光も行い、水をやりすぎることのないよう、特に梅雨時期は注意が必要なので、ビニールシートをかぶせて潅水をコントロールします。
「こうしておけば葉の日焼けや雨による傷も防ぐことができるからね。葉に一度傷がついたら、もう修復されないんだ。」
このコントロールには細心の注意を払います。
みなさん、津南のユリをご覧いただければ、葉のツヤなど商品の細部にもこのような津南スピリットが宿っていることがお分かり頂けると思います。
これも「できたものだけが雪美人なのではなく、生産過程から雪美人」というポリシー故。
花が良ければいいのではなく、圃場が汚れていたり、葉に問題があったりすれば、巡回のときに注意されるという徹底ぶり!
ユリ栽培の環境は?
津南の場合は殆どが露地で栽培されます。
ユリに必要な条件は、コントロールされた潅水と日照量、そして風です。
優しい風に当たり、ある程度「揺れ」ないと、茎がしっかりと堅くならないのです。(←後で出てくるキーワードです!この「揺れ」を覚えておいてください!)
日中の温度も26度くらいまでが生育の適温で、夜温が下がることも重要です。
このシルバーの敷物は何ですか?
「"ワラ要らず"という商品名のシートです。」
そのまま・・・わかりやすい商品名ですね^_^;
以前はワラを使っていましたが、徐々にワラも減り、代わりにこのような商品を使うようになりました。
栽培過程でこれは必需品なのです。そのお役目は?
? 地温を上げない。⇒地温を下げないと丈が伸びなくなってしまうため。
? 土の跳ね返りを少なくするため(泥が葉に跳ね返り、商品が汚れてしまうのを防ぐ)
? 雑草の生長抑制のため
むむ、やはり雪美人を育て上げるには無くてはならないツールのようです。
津南町の土壌
津南では連作障害を防ぐために、毎年必ず新しい土地に定植します。養成畑についても同様です。
「こうすることによって、病気が出たときに消毒をしなくて済むから、花にも消費者にも、延いては環境にもいいことなんだよね。」
「来年はあっちに圃場を作るんだよ。」と隣の土地を指差した江口お父さん。
毎年、1から始めているからこそ、毎年良品質に揃えたものが出来上がるのですね。
新しい養成畑を選ぶ時は、牧草をまいて一度その土を作ってから研究所に土を送って成分を分析してもらいます。
その結果によってユリの作り方が変わってきます。このあたりの徹底ぶりが素晴らしいですね。
理想的にはPH5.5?6.6がベストです。PHが高すぎると葉の色がのりづらいし、低すぎると葉先がおかしくなります。
これも津南の土地を有効に活かせるからこそ消毒を使わずに、新しい土壌でユリを栽培できるというもの。
ご覧ください、津南の土壌は火山灰土が多く含まれているため、赤土です。この火山灰土も球根には適しています。
←土が赤い。
そもそもどうして津南でユリ?
「津南には、もともと球根を作る文化的な土壌があったんだよね。作っているうちに開花した美しいカサブランカに惚れこんで、ユリの栽培を始めたことが発端です。」
と江口さん@広報部長。
当時は1球300円でオランダから輸入したそうです。
(高ッ!?(゜◇゜;) そんな時代の店頭販売価格ってどんだけ?!??)
「5,000円前後はしたらしいよ。」(大田花き営業本部藤田章治)
どッ!!!目玉が飛び出ます。。。(◎_◎;) !!
「だいたい、カサブランカの花そのものがオランダから初めて日本に入ってきたときは、卸値で6,000?7,000円くらいしていたこともあったらしいよ。」
以前はそれほどの高級品が、私たちのような一般家庭でも気軽に楽しめるようになったことは、嬉しいことですね。
「津南は土地が広かったから、通常一棟に4,000球植えるところ、3,000球を植えて茎が堅くて良いものができたんだよね。そしたら市場評価が高かった。それが20年前。」と江口さん。
津南は標高400?450メートル。夜温が落ちることが栽培の強みに生かされています。8月のお盆過ぎには涼しすぎて窓を開けて寝られないほど夜温が下がるのだとか。夜温が下がると、夜休めるので、ユリが育ちやすい環境になります。「夜温が下がる」、これはユリ生産には欠かせない条件なのです。
また、標高が100メートル違うと気温が1度違うと言われますが、津南では標高200メートル、450メートル、600メートルとおよそ3段階に分けて栽培しています。このことによって、標高の低いところから徐々に出荷し始め、組合全体での出荷期間を長くすることができるのです。
どれをとっても津南はユリ生産のためにあるようなお土地柄ですね。充実したハード面はあるようですが、生産される方々のこだわりなど、ソフト面はどうでしょうか。
JA津南町ユリ切花組合について
「"うちがよければ良い"という私利私欲よりも、"みんなで産地を作る"という意識の下に団結している組合です。
また、JA津南町ユリ切花組合は20代、30代を中心とした青年部の活躍によって成り立っています。」
取材の日に忙しい合間を縫って駆けつけてきてくれた青年部会の方々です。
普段は一緒に仕事をしているわけではありませんが、巡回のときや栽培過程でわからないことがあるときなど、チームワークを発揮し、助け合います。同世代の皆さんだけに、とても仲が良く、それぞれ本当に働き者なのです。
"雪美人"は津南のブランド名です。
JA津南町が商標と取得したので、ユリ以外でも日本酒などの商品名としても使われています。
冬季は積雪4メートルにもなる豪雪地帯津南に合った良い名前ですね。
厚くキラキラと積雪した表面と、津南のユリたちの花弁の質感を思わず重ねてしまいます。
その津南から良いものを作って出荷する
高品質を安定的に出荷するからこそブランドが成立する
それができるからこそ、まさしく"雪美人"の名に恥じない産地であり続けることができる!
・・・というわけです。
津南での栽培品種は、カサブランカを中心に60品種にも上ります。これも需要の多様化に伴い、部会で品種を揃え、これに対応していこうという姿勢があってのことです。
津南の熱い若手による品質維持の秘訣
品質維持はチームワークによるところが大きいようです。
毎月、技術部でメンバーの圃場を巡回し品質を揃えます。
また、別に企画部が行う目合わせ会というのがあり、アドバイスしながら、品質向上を目指しています。
このようになんとも機能的に組織された組合なのです。
実は探検隊がお邪魔した時に対応して下さったのは、青年部の若手の方々。
この若い力が津南のパワーになっているのです。
皆さん、本当に仲良し!
先達と若い世代とのジャンクション
現在(第5代)のJA津南町ユリ切花組合長をされているのはこちらの藤木孝嗣(ふじきたかし)さん。
青年部会の若手でも、先輩組合員が更に若手の新人組合員に教えられるように取り組んでいます。
「ひとつの世代が結成されているわけだからね。ここを大切にしなければいけない。
私の役割は世代と世代をつなぐジャンクションのようなもの。
日本一の雪美人のブランドを継承するために、昔気質の先代たちから叩き込まれたことを、そのまま若手に引き継ぐのではなく、自分なりに噛み砕いてギャップやショックを少なく引き継いでいくことが私の仕事。"雪美人の何たるか"を若い人に理解してもらわなくてはならない。」
このような役割を担う人がいるからこそ、津南のブランドは脈々と引き継がれているわけですね。
津南の将来は安泰です。
津南町独自の取り組み
オランダの球根会社が新しい品種の日本導入を検討する際に、試験栽培をする圃場として津南町を選ぶ・・・これ、本当です。
つまり、津南にできなければ日本中どこでもできないというお手本産地として海外からお墨付きをもらっているということです。
そこまで信頼を得る津南は、与えられた環境に甘んじることなく、自ら積極的に産地ブランドに磨きをかけます。
ではどのようにブランド維持を確実なものにしているのか。それはTYSに秘密があったのです。
「津南の球根は全てTYS!」
TYSとは"津南(Tsunan) 雪美人(Yukibijin) セレクト(Select)"の略ですが、一体何のことでしょうか。
そもそもこのような細いツボミが発生したことから、「これはおかしい!」ということで球根にこだわりを持ち始めたことからTYSは生まれました。
←通常より細いツボミ。
「これはおかしい」に端を発し、津南の方々は、5年前から自ら年2回オランダに足を運んで、球根輸出会社とオーナー農家さんを訪問しています。
オランダではその両者と会って話をして、圃場を見て、津南の方々の判断で信頼に値する優秀な輸出会社とオーナー農家さんを決め、そこからのみ出荷される2年の若い球根を選定し、輸入する業務提携をしているのです。
つまり、津南に供給できる球根のオーナー農家を限定しているわけです。ビジネスパートナーは自ら選ぶ!
球根が日本に到着してからではなく、オランダでの球根作りの段階からのこだわり――これがあるからこそ、津南の高品質、安定供給、雪美人のブランドがあるのです。
それだけではありません。ここからが津南のすごいところ。
普通は、このようにして信頼関係を築き、供給してもらった球根は独自のブランド品として独占しがちなものですが、なんと津南ではこのTYSを日本の他の産地に供給してもいいことにしているのです!
それは「日本のカサブランカの品質向上、日本のユリの品質底上げのため」なのだそうです。
何と懐の広い(T_T)(目の幅涙)
これこそJA津南町ユリ切花組合のポリシーなのです。
そして、みなさん津南町の心配りはそれだけに留まりません。
雪美人のパッケージをご覧になったことはありますか?雪美人のイメージ通りの白い箱、そして花を包むラップもつぼみが良く見えるように、材質や形状にこだわって素材を選択しているのです。
津南町のポリシー
津南町のすごいところは全てオープンであるということです。
また、暖地の他産地と連携をとって、「日本中に素晴らしいユリを供給しよう」という信念の下、毎年津南が主催で情報交流会を開催しているのです。
今年も、ついこの7月に開催したばかりなのだとか。また、近年では、一定の産地のみならず、ライバル産地なども線引きをせずに招いて交流会を開いているのだそう。
広報部長の江口さん曰く、「人に教えてもらうには、まず自分たちの情報をオープンにしなければならないからね。」
津南町のオープンマインドで日本の花の文化レベル向上を目指した高い志を感じます。
雪美人の特長
? 最初の一輪から最後の7輪目まできちんと咲くこと。これは自分家でも飾って実証済み!
? 茎がしっかりしているため、花の重みで茎がしならない!店頭ではではこれが良いユリの見分け方にもなります。
農協では、ユリの品質を統一するために、茎の端を持った時にどこまで頭が下がってくるか、その角度によって等級を決めるようになっています。
↑こちらの写真のように、30度以上に立てば「秀品」、15度から30度未満は「優品」、15度に満たない場合は「良品」としましょうという決まりがあります。
通常はそれに沿って出荷しているのですが、津南の規格はそれより更に厳しいものなのです。
30?45度→「秀品」 ふむふむ、これは同じ。
20?30度→「優品」 なんと、優品の下限は20度から。この時点で農協の規格と5度違っている。
10?20度→「良品」 農協が15度以下全てを良品と規格しているのに対し、この許容範囲の狭さ。
あら?それで終わり?その下は?
10度に満たないものはどうするんですか?
「出荷しません。」
あ?、なるほどぉ・・・さすがです。雪美人ポリシーは一貫しています。
? 一番花の付け根の茎と、根茎付近の太さがほぼ同じ!
普通、頂花(一番上の花)に行けばいくほど、細くなるものですが・・・
津南のユリの場合は、第一花の付け根の茎の太さと根本の吹きの太さがほぼ同じなのです。
むしろ一番花の付け根の茎の方が太いかもと思わせるほどしっかりしています。
津南のユリの至る所にブランドたる所以を見てとることができます。
まさに「神は細部に宿る!」
津南のブランドは細部にも宿っているのです!
雪美人を作る青年部会の津南の男性陣。
青年部会は平均年齢30歳。23歳から36歳までの9名で構成されています。
そのメンバーの中には、2代目さんばかりではなく、新規就農者もいらっしゃるほど、津南のユリ組合は魅力的なものなのです。
それでは取材当日にお集まりいただいた方にお伺いいたします。
"皆さんにとってユリとはなんですか?"
江口一衛さん(江口お父さん)
「ご飯の種です。」
河田太郎さん(広報部)
「これからもユリで生計を立てていきたい。消費者に捨てられないように、しっかりとユリを作っていく。ユリの生産は思い通りにならないところが面白い。また、うまく行った時の喜びが醍醐味だね。」
大口浩太さん(広報部・今年から入った切り花組合の最年少ホープ★)
「人との付き合いが面白いですね。他の部会の方とか、市場の人や花屋さんと会うといつも勉強になります。」
藤木成和さん(広報部)
「ユリ生産は家業です。親の仕事を継いで3年目になりますが、抵抗なく自然に始めましたね。部会には同世代の人がいるから刺激になります。」
江口裕さん(広報部長)
「ユリはズバリ第2夫人でしょう。個人的にはカサブランカやラベンナがお気に入りです。僕の葬式のときは、カサブランカでいっぱいにしてほしい。」
さすが広報部長。おっしゃることが違いますね。
大口貴裕さん(販売部副部長)
「ユリは仕事。親の仕事を後継して6年目。東京のお花屋さんでアルバイトをしていたこともあるんですよ。」なんと大口さんはスキーで全日本技術選手権に出場した経験を持つプロ並のスキーヤーなのです。
大口善弘さん(青年部長)
「雪美人という名の通り、まさに女性です。言うこと利かないし、管理も難しいし・・・(笑)」
うまい ^?^!
津南のうんちく探検隊を見てくれた人だけに教えちゃう★ユリの秘密
みなさん、ご存知でしたか。このユリの秘密を知れば、皆さんも今日から"ユリ通"です。
ユリの球根部分にある鱗片は養分を蓄えるためにあり、この太り具合で、球根の力がわかるものですが、実はのこ鱗片を向くとユリの芽が出てきます。
このユリの芽は既に小さな葉が重なってできているのですが、このとき既に地上部での葉の枚数は決まっているのです!
つまり、鱗片に包まれたユリの小さな芽の葉の枚数は、大きくなってからの葉の枚数と同じなのです!
球根を養成して畑から取り出した時点で、鱗片の数をボリュームを見ればその質はわかりますが、
いくら成長しても葉の枚数は増えることはありません。ですから、背が伸びすぎてしまうと葉と葉の間隔が間延びした締まりのないものになってしまいますし、茎も弱くなってしまいます。節間が縮まれば、堅く丈夫な茎になるというわけです。
養成が終わった段階で、どのくらい球根が太っているか=鱗片に栄養が溜まっているかをみれば、その球根が持つパワーがわかります。育てる前に、どの程度の花が咲くのか、わかってしまうわけです!
う?ん、ユリは永遠の学問!by江口さん@広報部長
なぜ「ユリ」というのか
前半部分で覚えていたきましたキーワードに語源があります。
ユリの語源は、「揺る」といわれています。「揺れる」の古い言葉です。風に揺れるその姿からその命名に至ったのでしょう。
また、よくご存じのとおり、「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という美しい女性を例えた表現がありますが、なぜユリは「歩く姿」に例えられるのか。
これは私の勝手な想像ですが、これもやはり「揺れる」ことに起因しているのではないかと思います。
ユリが揺れる様子を女性がしとやかに歩く姿と重ね合わせての例えでしょう。
また、漢字で「百合」と書くのは、葉や鱗茎が多数重なり合うことに由来しています( ^ー゜)b
■ユリの栽培は養成からが基本!赤ちゃんの時から自分たちの手で育てて、その品質に責任を持つべし!
■赤ちゃん(球根)は生まれ(出所)がしっかりしたものに限る!そのためには自らオランダに足を運び、契約農家を自らの目で見つけるべし!
■球根養成から製品完成までは度重なるチェックと選別を繰り返す!
津南の雪美人は、ユリの BEST OF THE BEST也!
■ユリに必要なのは湿度と温度と適切な日照量、そして適度な風。
■冷蔵には自然の力を利用した雪室を利用。
冷房を使わないから、湿度も保て、球根への負荷が少ない。
二酸化炭素排出量も削減でき、結果的にコ栽培。
■できたものだけが雪美人なのではなく、生産過程から雪美人。
■ユリ生産は自分の産地のためではなく、日本全国のユリの品質の底上げのためであることを忘るべからず。
消費者の皆様にユリの花を楽しんで頂くために、日本の産地が頑張って少しでも良いものを提供する。
是、津南之指針也!
■ブランド確立に成功したら、生産過程やノウハウはオープンにすべし。
■自らの品質には責任を持つからこそ出荷規格を厳しく設定!雪美人のブランド維持はストイックに行うべし!
消費者の皆さんへ一言
津南のユリは最後まで咲くことと姿がきれいなことが特長です。
値段は他産地より高いかもしれませんが、咲いているところを見れば高いと思わせないほどの品質ですので、是非使ってみてください。
満足感は高いはず。花瓶に挿せば必ず差が出ますので、納得していただけると思います。
一度雪美人を買ったら、病みつきになるかも?O(≧▽≦)O ♪
津南のユリオリエンタル出荷実績
今年も高品質のものをじゃんじゃん出荷してまいります!
URL http://www17.ocn.ne.jp/~yukibi/
品種一覧 http://www17.ocn.ne.jp/~yukibi/index2.html
津南の町興し
津南の町興しの一環として作ったこのヒマワリ畑には何と50万本のヒマワリが植えてあります。
このあたりは「龍ヶ窪」とよばれ、ちょっとした観光スポットになっています。
ヒマワリが満開の頃には、ここで結婚式を挙げる方もいらっしゃるそうです。
ここにはその名に因んで、このヒマワリ畑にも龍のオブジェが置いてあるのですが、この龍に願い事を書くとその願いがかなうのだとか。龍の鼻先に隙間を見つけ、真剣に願いを書き込む江口さん。
その願いはお子様が大きく丈夫に育つことでした。
きっと江口さんのお子様もJA津南町ユリ切花組合も大きく育つことでしょう!
<写真・文責:ikuko naito@花研>
2008年9月19日
vol.66 埼玉県 フカヤスリーエフクラブ
ネギ畑が一面に広がる、埼玉県深谷市。
ここは深谷ネギの産地としても有名な地ですが、深谷を代表する花といえば冬から春にかけて栽培されているチューリップ、そして年間出荷のあるユリ類です。県内のユリ生産地は県北部と南部の十五市町。深谷市の生産量は県内のなんと九割を占めています!深谷市では主にスカシユリ、オリエンタルユリ、LAユリを栽培しているそうです。
9月、ウンチク探検隊はユリひとすじに取り組むフカヤスリーエフクラブを訪ねました。
詳細はこちらからご覧ください♪
この日、深谷市は午後からゲリラ豪雨でした。
どしゃぶりの中ハウスを次々と案内してくださったフカヤスリーエフクラブ代表を務める島田さん。
どうもありがとうございました。
?ユリ作りに適した土地?
「深谷市はもともと養蚕をやってたんですよ。そこからチューリップ栽培が始まって、今はユリがほとんど。」と島田さん。なんと、島田さんのお父さんもチューリップを栽培していたそうです!
深谷市の地質は関東ロームで出来ています。
関東ロームは火山灰が風に乗ったり、火砕流や土石流となって運ばれ堆積した火山生まれの土。
これらの土は水はけが良いという特徴があります。そのため、水はけが良い土地を好む農作物・・・ネギやダイコン、さつまいも、キャベツ、そして球根植物にとっては絶好の栽培地だったのかもしれませんね。
深谷のユリとチューリップ栽培にはこうした背景があったのでした。
?スリーエフクラブのLAユリ?
全体ではLAユリ7割、OHユリ3割の出荷割合。LAユリとはテッポウユリとスカシユリの交配種でテッポウユリの大輪性と、スカシユリの多彩な花色を兼ね備えた品種です。島田さんに、LAユリについてもう少し詳しく教えていただきました。
?LAユリの特徴?
?くっきりした黄色やオレンジ・・・鮮やかな発色は人気要素のひとつ。スカシユリにある黒ゴマ模様(斑点)が無いから、花色がよりいっそうクリアに見えます。
?ユリ特有の「香り」がほとんどありません。これはスカシユリの特徴を受け継いでいるため。
オリエンタルユリは立派ですが、香りも強いもの。LAユリはレストランの装飾、お見舞い用など
香りにデリケートなシーンに使ってみてはいかがでしょうか?
スリーエフクラブのLAユリは主力のオレンジ、黄色品種が8?9割を占め、白は1割程度、ピンクはほとんどありません。主には、お盆やお彼岸に使われる仏花(お供え花)に入れる花として欠かせません。
もともと仏花には黄色のスカシユリが多く使われてきましたが、今では球根単価が上がったことから
生産量が減り花の単価も値上がりしています。そのため、スカシユリのニーズに代わる選手として
黄色、オレンジのLAユリが使われるようになりました。
もちろんこれらは仏花だけではなく、イベントや舞台の生け込み、お祝い用のスタンド花など業務用ではメインに使われる実力派たち。
お客さんから引き合いが強くなる、お盆、お彼岸、年末、母の日…など需要期はフル回転で採花、出荷作業が続きます。
島田さんをはじめ、フカヤスリーエフクラブのスピリットを教えていただき、お客様が本当に欲しいユリは何なのか?を日々追求して、使い手の気持ちとお客様中心に考えた花作りを志す徹底した意志の強さを感じました。
フカヤスリーエフクラブの格言
オンディマンドを目指したユリ作り。欲しいときに必ずある!安心産地。
メンバー5人だからこそ出来る、高位平準化した商品品質。
2007年3月17日
vol.35 千葉県 湯浅花園(後編)
今回も引き続き湯浅花園さん訪問レポート!
前回は、インパクトの強いユリを沢山導入している事についてクローズアップしましたが、ただ単に“変わったモノ”というだけではないんです!
?ツボミまで全部咲きます!?
品物の良さは、作業場の壁にずらっと並んだこの賞状が物語っています。
これらは 『関東東海 花の展覧会』において、チューリップ、鉄砲ユリ、スカシユリなどの球根植物で評価された証。
『5年くらい金賞を総なめしてしまって、主催者側から「もう出さないで」とお願いされてしまった』というほど確かな腕をお持ちなのです!
そんな湯浅さんの栽培に対するコダワリは、締めて作る!という事のようですが…(?_?)
つまり…、水揚げは毛管現象と一緒!細胞ひとつひとつを小さくすればストローの原理と同じで水揚げはよくなる=だから、肥料や水をボンボンやって作る事は細胞を大きくしてしまうので、水揚げも悪くなる、という事のようです。
「ウチのハウスはカサカサに乾いてたでしょ!だからツボミも全部咲くんだよ! それに、花色や葉艶にも差が出てくるんです。
直販でも全部花が咲くといって、また買いに来るお客さんがいるわけですよ!」と湯浅さん。
直販所については、後ほどご案内するとして…、
「ところで、きちんと咲くカサブランカってどんなのか知ってる?」と湯浅さん。
えぇっ!ツボミを見ただけで分かるんですか?と素人な私に、
「花のツボミの根元が少し赤くなってると きちんと咲き切るんだよ。」と教えてくださいました。
お花屋さんはぜひ参考にしてみてくださいね!
?ココは観光農園!??
「ここ全部ウチの土地ですよ。」広大な敷地内にあるハウスを案内していただいている途中にも沢山の植物を見ることができました。
ハンカチを結んだ様に見えるハンカチの木
苗木から育てて15年、昨年は300輪もの花を付けたのだとか。
もはや根元がどこだか分からないほど立派に育った白のモッコウバラ
「秋篠宮と紀子さまの第一子 眞子さまの御印だから注文がくるんだよ」と湯浅さん。
さらに、「天皇陛下さまはボタンが好きだから、誕生日には毎年納めているよ。」
「昭和天皇は白玉椿が、美智子皇后さまは乙女ユリが好きなんですよ!」
「あっ、今の皇太子の結婚式にはウチのマルコポーロを使ったんです。咲かせて出荷したんだけど、傷もついちゃいけないっていうんで大変だったんですよ。」と次から次へと…。
ここで新たな発見! 『湯浅花園は皇室御用達』だったのです。
そして 足元にはカモミール、クリスマスローズ、ちょっとしたガーデンスペースまでも!
「今は草に見えるけど、これ全部花畑になります。6月?7月に来たらビックリしますよ!」 写真の写真しかお見せできないのが残念ですが、こんな風になるんです⇒⇒⇒
「お金取りませんから皆 自由に見ていきますから。置いてあるベンチでお弁当を食べていく人もいるんですよ。」。
「特別に手は加えません!僕は人間変わってますから(?)、見せて直販にもお客様を呼ぶわけですよ。」と湯浅さん。
花が盛りの時期にもう一度訪れたい!!と思いました
さらに、さらに…
フレンチカンカンのスカートのように、フリルが詰まった可愛い“朴伴椿”と“白玉椿”が並ぶ、椿並木を抜けると…、
ミッキーマウスの木のジャングルハウスがありました。
この花は、毎年ご出荷いただいていますけど、ホントに可愛らしいですよね。
黄色い花が散ると実がなって、赤くなったガクが反り返る。
この姿がその名前に由来しているのですね。
でも、切り花として出荷されているのは珍しいんです。
そうして、やっとたどり着いたのが直販所です。
でも、直販所のイメージとは異なるオシャレな外観。
「園内の花を見に来た人がついでに買って帰ってくれればいいと思って。でも、こんなキレイだなんて思わないでしょ!」
ニコニコと自慢げに紹介してくださる湯浅さんでした。
そこで、ちょうど出荷が終了してしまったボタンも発見しました。
以前から疑問に思っていたんですが、なぜ 切花として出荷されるのに鉢ごと出荷されているのか?聞いてみました。
すると、「株ごと土をキレイに洗って水盤に根を見せて飾る料亭もあるらしいんですよ。」と湯浅さん。
さらに、ボタンの出荷に際して気をつけている事を聞いてみると、
「お茶室に飾る際には咲いていてはダメなんです。
お茶室はお茶を楽しむところで、ボタンの香りが香ってしまっては邪魔になってしまう。
だから、若いもの(ツボミ)を出荷しています。」
店内には先ほど見た朴伴椿も とっても素敵に飾られていて、訪れるお客様の目を引いていました。
日の光りが降り注いで明るく、自慢の直販所では奥様が作業をされていました。
「都心の花屋さんは土地がないからできないんです。だから、森の中にあるような直販所にしたかったので、大きな木も切っていないわけです。
これは、田舎の生産者がやろうとしたってできません。だってお客さんも来ないでしょうから。
ですから、ココがちょうどいい立地なんです。」
千葉県 市川市は東京と千葉の県境に位置するのです。
さらには、「直販によって、消費者がどういうものを求めているかが分かるんです。
多くの花屋さんが扱うスカシユリは黄色やオレンジが一般的ですが、消費者は変わったモノが欲しいわけですよ!だから、ウチへ買いに来る。一番遠い人では、横浜から来る常連さんもいらっしゃるんですよ。」
湯浅さんの作る個性的なユリには、一般消費者のファンも多いのです!
湯浅さんからお花屋さんへのメッセージ
「良いモノをそれなりの価値を出して、お金出して買っていただきたい。
ウチのはボリュームだけでなく、締めて作っているので花保ちします!」
「都市近郊産地だから、鮮度には自身を持ってます!」
お花屋さんからのメッセージ
湯浅さんの花を購入しているお花屋さんにお話を聞きました。
よく湯浅さんのボタンを購入されているようですが…?
━「湯浅さんのボタンは量販体制で栽培している産地とは違って、株がいい!
葉がピンとしていて、生命力があります。
ボタンはお茶の世界では格が高い花とされているんですよ。」
そして、
ハウスではこのような状態の黒ユリですが、どのような用途で使われているのでしょうか?
━「おけいこで使われています。こんな風に使うのですよ。」
と実際に見せてくださいました。 ⇒⇒⇒
「花の価値基準は、一般に言われているような太さや 大きさ、花付きではないんです。
ウチではボタンも、乙女ユリも敢えて1輪付きのものをお願いしているんです。
オリエンタルは7輪付きが値段は一番高いですが、実は 5輪や3輪が一番使いやすかったりするんですよ。」
こんなお話をしてくださいました。
たくさん花があれば見ごたえがありますが、1輪の花に込められた想いや、その表情には訴えかける何かがある?ということでしょうか…。
後編・湯浅花園さんの格言
・湯浅花園のユリは締めて作っているので花保ちします!
さらに 水揚げもいいので、ツボミまできちんと咲きます!
・都市近郊産地だから、鮮度はバツグン!
さらに農園全体を綺麗に整えて、見る人の目を楽しませています!
おまけ
愛犬 チャチャマル
私に吠えることもなく、おとなしい印象でしたが、夜は温室で寝て、頼れる番犬として活躍しています。
2007年2月28日
vol.34 千葉県 湯浅花園(前編)
今回は珍しいユリばかりを出荷されている湯浅花園さんを訪れました。
?品種選びはインスピレーション!??
湯浅さんといえば、『珍しくて、変わったユリを作る産地』というイメージをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?そこで、いきなりですが湯浅さん自慢の商品ラインナップをほんの一部ですがご紹介します。
グルーワイン(OH) カプチーノ(AH) オリーナ(AH)
オレンジアート(AH) センターフォールド(AH) ドットコム(AH)
どうですか?
アジアンティックでも、一般的なオレンジや黄色ではなく、濃い赤や白、複色など珍しい品種ばかりですよね!
そんな品種選定には、どんな意図があるのでしょうか?
さっそく伺ってみました。
「種苗会社が勧める新しい品種画像の中からピンとくるものを導入しています。
例えば、ランディーニなんて最初に『わっ、スゴイ!いいな!』って言ったのは僕なんですよ。」
「写真見てコレ売れる!と思うけど球根が高いからみんな手を出さない、でも僕は手を出すから種苗会社も新しい品種を毎回いち早く紹介してくれるわけですよ。」
個性的な黒いユリ「ランディーニ」も、湯浅さんの心にピーンと響いたわけですね。
「みんな綺麗な花だったら、何のインパクトもないから『普通だね』で終わってしまいますけど、
そこへポコっと汚らしい色を置くと浮くんですよね、それをイメージしたんです。
だから10本の中に、ランディーニみたいのが1本あるとインパクトが出るわけですよ。」
アジアンティックユリの魅力については…
「オリエンタルは作る人が沢山いるけど、アジアンティックやLAは作る人が少ないですよね。
オリエンタルと比べたら豪華さには欠けるけど、インパクトのあるものや、色幅はあるでしょ。
そこが求められているところであり、魅力だと思います。」
また、なんと『ルレーブ』、『スターガザール』といった今では定番のオリエンタルユリも、日本で一番初めに購入したのは湯浅さんなのです!
「昔のスターガザールはもっとドキュンとくるような赤だったんですよ、交配していくうちに元に
戻っちゃたんですね。
当時 球根が1球500円もして、種苗会社の人が日本全国売り歩いたけど売れなくて、結局うちへ戻ってきちゃったんですよ。
そして、『売れないよ!』なんていって市場に出荷したら、1本 1800円で売れちゃったんだよね。」
と当時を思い出しながらニコニコしながらお話してくださいました。
さらに、「今、皆さんが沢山作っているもので私が初めに手をつけたものも多いんですよ。
サンダーソニア、ソリダスター、デルフィニウム、ギガンジュームもウチが最初です!
で、皆さんが作り始めたからとズバッと辞めちゃったんですよ。」
変わった品種、それもインスピレーションで売れると思う品種ををいち早く導入し、出回ってきたらスパッと手を引く!コレが湯浅流のようです。
?“ユリの湯浅”誕生秘話!?
でも、なぜユリ栽培を始められたのですか?
「そもそもうちは梨、田んぼ、野菜農家だったんです。でも、親がお前の人生なんだから好きな事をやれ、と言ったんです。
逆にそう言われると親が可愛そうになってきちゃって継がなきゃいけないな、と思って…。
で、どうせ作るんなら、もともと好きだった花がいいな!と思ったんです。」
ココからが湯浅さんのスゴイところ!!
当時 高校生だった湯浅さんは、何の花を作ったらいいか(?_?)と思い、まず初めにした事が
新聞で花の市況を日々チェックすることでした。
そうしたところ、ユリの価格が一番安定している事を知ったのです。
でも、まだ高校生。その時、“球根代が高い”とか、“温室の資本がかかる”等の諸事情は一切分かるはずもなく…(^。 ^;)
ただ『庭に咲いてるユリも綺麗!コレだ!』と湯浅青年はひらめいたのです。
そこで 高校の先生に相談した結果、日本のユリ、チューリップの先駆者でいらっしゃる鴨下先生のところへ住み込みで栽培技術を習いに行くのが近道だと教えられました。
そして、黒ユリ、竹島ユリと出会うことになるのです。
「皆さんが手に入らないようなものを作って、今やっているわけですが、変わったものを作りたがるという血は師匠から受け継いでいるのでしょうね。」とおっしゃる湯浅さんでした。
?作業効率も重視しています!?
ハウスを見せていただいていると…足元にコロコロと球根が転がっています。
どうしてか訊ねてみると…
「あっ、コレ?うちのやり方で、出荷作業って腰が痛くなるでしょ、だから抜いてから切るんです。それに、後で球根を掘りおこす手間も省けますから。」
なるほど!!!
腰痛くない + 花切るの早い + 掃除が楽 と良い事づくしなわけですね。
これを見て真似をする生産者もいるというのも納得です。
そして、ハウスの中では、現在出荷中の品種を見ることができました。
もちろん蕾ですけど…。
⇒
ゲリットザルム(LA)…グリーンから開花し、クリーム色へ変化します。
ちなみに、グリーンのLAとして扱われているところが多いです。
⇒
ストロベリー&クリーム(AH)…開花状態を知る人が少ない為、評価がされにくい品種ですが、
特徴的な色と可愛らしい名前が魅力です。
⇒
パーティーダイヤモンド(LA)…近年、増加するLAで唯一淡いピンク色の
代表作として今後に期待される品種です。
独特な色目のユリが目立ちますが、こんな可愛らしい雰囲気の品種も作っています。
ユリは咲いた状態を見ることができないのが残念(-o-;)と思っていたら、
「7月に来ればカサブランカが露地で咲いているよ!」と湯浅さん。
そのわけは後編で。
さらに、都市近郊産地としての魅力に迫ります。
?後編へ続く?
前編・湯浅花園さんの格言
・変わった品種をいち早く導入しています!
・品種選びはインパクトと、インスピレーション!
ブーケに1本入っただけでもグッと目を引くものになる品種です!
2005年8月30日
Vol 7.北海道真狩(まっかり)村 大西ユリ園・藤本農園 編
なんと今回は北海道へ上陸!羊蹄山のふもと真狩村へ突撃です。
出発前さんざん球根チームのホーダイ部員から「オレだって北海道に行かせてもらえねーのによー」と、うらやましい目で見られながら出発です。(いやいや仕事ですから?仕事!ホホホ?。)
灼熱のトーキョーから飛行機でひとっとび。無事千歳空港に到着!しかーし!涼しい・・・?い、いや、この感触は・・・・・・寒い?!!!
7月のこの日気温なんと12℃!(ちなみに東京はこの日30℃以上だったらしいです)
ちょっと大げさかなぁと思って薄手のセーターを着てきたのですがそれでも寒いぃ!
「オレ、長袖1枚しか持ってこなかった・・・」と桐生隊員。
二人とも出発早々人生につまずいた感じです。
ささ、気を取り直して札幌駅から洞爺湖温泉方面行きのバスに乗って出発です!
大西ゆり園へ到着
バスで2時間、ルスツから大西さんにお迎えに来てもらい、真狩(まっかり)村に到着! 個人的に「まっかり」の発音が北海道らしくて大好きです。 ちなみにアイヌ語「マクカリペッ」(意味:「羊蹄山を取り巻く川」)から来ているそう。(真狩村HPより)さっそく大西ゆり園の圃場を見せていただきました。
大西さんはオリエンタル系のユリを専門に作られています。
広っ!!さすが北海道っ!圃場の終わりが見えません。
ハウスの数なんと50棟以上!規模が大陸並です。(大陸の圃場を見たことないけど)
「畑はここだけじゃないからね。これで三分の一。あとちょっと離れた所に2ヵ所あるよ。」
全部で広さはどのくらいなんですか?
「えーと、7町歩くらいかなぁ。」
す、スイマセン・・・町とか歩の単位がワカリマセン。
というわけで、明日使える単位のウンチク↓ご用意いたしました。
1歩(ぶ):約3.3?
1畝(せ):約99.2?≒1アール(100?)
1反(たん):約992?
1町(ちょう):約9920?≒1ヘクタール(1万?)
上記の単位表によりますと・・・えーと、7ヘクタール(7万?)ですか!!
現代人にも分かりやすいベタな例でいきますと、東京ドーム(46,755?)の約1.5倍ですね。
個人でこんな広さの土地持ってるってさすが北海道?!
北海道のユリは、当たり前ですが出回る季節が一番遅いです。
その中でも2番目くらいに遅いのがここ真狩なのです。
季咲きでズレを狙っていますので、基本的には露地栽培です。
でも圃場をよく見ると、ビニールをかけていたり、寒冷紗をかけていたりしてますね。
どんな違いなんですか?
「寒冷紗は葉やけしやすい品種に使うんだよ。
ただマルコポーロみたいに黒の寒冷紗では色がきれいに出ない品種にはうちは白を使うよ。
黒の寒冷紗は丈が伸びるから、地域によっては全部黒の寒冷紗を使っているみたいだね。」
ゆり園だからユリだらけなのは当たり前なのでしょうが、一体どれだけの量があるんですか?
「1ベット6000?6500球植えるよ。何クールかに分けて出荷する。年間25?30万個植えるよ。
抑制(栽培)の分も考えて植えるんだけど、今年うちは30万個植えたね。」
・・・えーと、数が多すぎてあまりピンとこないんですが・・・。
こんなに多くちゃ切るのも選別するのも本当にタイヘンそうですねー。
「常時7人、8月のピーク時は30人くらいになるね。」
あらっ、案外少ないんですね(と思ったのは私だけ?)。
ヒトの調達は人材派遣会社に頼むんだそうです。
作業に向く人向かない人がいて、けっこう大変なんだそう。
こちらは2年目以降の畑。
ユリって一回切ったら終わりじゃないんですね。
「うちは量を多く、単価が下がる時期に出荷するからね、
2年目もきちんと切れる品種じゃないとやれない。
2回切れば基本的に終わりだけど、3回切ろうとしてるから。
うちは欲たけてるからねー(笑)」
2回目以降もしっかりしたものが切れるんですね。
「ここらへんは北海道の中でも3本指に入るくらいの豪雪地帯で180センチは積もる。
こうやって球根を据え置きできるのは雪のおかげだね。北海道でもこの産地だけ。」
気候的に恵まれているんですね。
「ユリの姿は産地によって全然違う。
北海道のは固くてゴツイ。本州のプロが見ても品種が特定できないっていうね。
周りが全部山で盆地だし、昼と夜の温度差がすごいからかな。
ここら辺じゃ昼が26℃、夜は10℃まで下がるからね。
色モノを作らせたらここだ、色が良く出る。」
ユリを育てるにあたって
ユリを育てていて大変なことはなんですか? 「ユリは8割方球根の良し悪しで決まるんだよ。あとの2割は肥培管理。 ユリは上にも根、下にも根っこがついてるから養分を吸うんだよ。」球根はオランダから仕入れているそうです。
「育種って昔ちょっとやったことがあるけど非常に手間がかかるんだよ。
人一人雇わないといけないくらい。
オランダに比べたら日本の育種技術はちょっと遅れているしね・・・。
早くニーズにあったものを出すには、向こうから買ったほうがコスト的にもいいんだよ。」
外国から、しかもこんなに大量に取り寄せるのはいろいろ大変でしょうね。
「バクチみたいなもんですよ。球根の質で左右される、オランダの気温に左右される。
でも負けずにいい球根を要求するんだ。そうすると翌年に差が出るからね。」
品種はどんな基準で選ぶんですか?
「扱いやすく、手間がかからない品種が一番!あとは丈!そのあとが柄、輪数。
本州は量がないから、うちとは考え方が全部違うかも。
おかげさまでこちらは面積持っているからそういう発想でいかないとね。」
確かに、これだけ割り切った考えは他の産地にはあまり見られないような気がしますね。
「でもこれでもうちはかなり新しい品種を入れている方だよ。
半分は毎年入れている定番で、試験的に導入しているのも入れて30品種入れているよ。」
でもロットが多いから飽きられちゃうのかな?新品種の割に値段が出ないねー。」
あぁ?そうでございますか・・・。買参人の皆様、よろしくお願いします・・・
大西さんが一番好きな品種はなんですか?
「おれは昔のマルコ(ポーロ)が好きなんだよね。これに勝るものはない。
きれいに出たのはなんともいえないよ。」
ええ?昔のマルコと今のマルコは違うんですか??
「今のマルコは退化している感じがする。オレ元々球根農家だから分かるんだけど、
実際、色と形がおかしくなっている気がするね。大量増殖のひずみだろうと思っている。
球根屋にも言っているんだけど。」
・・・ちょっと心配ですね。オランダの球根屋さん、よろしく頼みますよ・・・。
作業場について
大西ゆり園を遠くから見ますと(といっても大西家の敷地内ですが)、
北海道農業シンボル(?)のサイロがあるようですが。
「うちは20年前までウシ屋だからね、うち。乳牛飼ってたんだよ。
切花のユリを始めたのは15年くらい。大きくなりだしたのはここ10年位かな。
量を多く出し始めたのが5年くらいだね。」
牛乳屋さんからユリ生産ですか!ずいぶん大きな方向転換ですね。
「真狩はもともと食用ユリの産地なんだよ。うちは食用ユリの球根を作っていたんだ。
うち自体が球根農家でノウハウがあったし、ユリしかできないから。
毎年勉強ですからね。これでいっぱいいっぱい。いろんな品目は作れないよ。」
下の写真は保冷庫です。デカい!エアーカーテンつきです。
「これ、農協にあったのを見ていいなーって思って入れたんだよね!」
思考の規模が違いますなぁ。(タメ息)
大西さんちではジュースを冷やすのに使っていました・・・(ごちそうさまでした)※写真一番下)
藤本農園へ
次はすぐご近所の(といっても車で5分以上かかりました) 藤本農園さんへおジャマしました。「うちは品種を絞っているよ。カサブランカ、ソルボンヌ、マルコポーロ。
今年からコンカドール、メデューサ、アクティバを出すよ。」
おお!圃場内にため池が!これは便利ですな。
「畑を作るのにたまたま水が出てきたんだよ。でもピークになるとこの水では全く足りないから近くの川からも水を引いているよ。」
今年の春は雨が少なく、苦労したそう。
「水かけると一日中かけっぱなし。 植えはじめだと3日に一度は水かけだよ。もちろん、状態を見ながらだけど。」
藤本農園の横を通る真狩村「フラワーロード」。観光客を楽しませるために道路脇にはユリが植えられています。
道路脇の土地も球根も村へ無償提供だそう。太っ腹?!
(ホント、ベタすぎてすいません)ってな感じの写真が撮れました。
今回は北海道の大きさに圧倒されまくりでした。
取材時は花は全く咲いていませんでしたが、現在、市場にはまさに最盛期のユリが続々到着しています!
みなさん、ぜひ真狩のユリで北海道を感じてくださいね!
大西ゆり園・藤本農園の格言
・真狩の気候がいい品質のユリを育てています。
お花屋さんへ一言・・・
・意見を積極的に聞かせてください。今後の参考にします。
おまけ
「羊蹄山は単山。日本で単山は富士山とこの山だけなんだよ。」と大西氏談。この日は待っても待っても頂上を拝むことはできませんでした・・・残念。)日本で三番目に大きなカルデラ湖、洞爺湖です。向こう岸では噴煙がっ!有珠山は今でも活発に火山活動中って知ってました?
昭和新山。地元の郵便局長さんが地震の回数を豆で数え、平らな畑から山になる様子を細かく記録したという話を、国語か道徳の本に載っていたのを小学校の頃読んだような気がします。
ちなみにこの山「天然記念物」なんだそうですよ。へぇ?。
北海道らしい花の名前がついた列車。本州にもあるといいですよね。北海道内の移動はまっすぐな道をレンタカーで飛ばすのもいいですが、電車・バスの旅もゆったりできておすすめですよ。