2016年5月 4日
vol.114 森田フラワーガーデン様(カーネーション&ナデシコ)後編
あれ、アレレ??
今度はまた森田さんが新しい小道具を取り出しました。まるでドラえもんのポケットがどこかに付いているみたいに次々と小道具が飛び出します。
・・・こ、これは一体!?産地ウンチク探検隊の取材を通して、数々の生産者様をお邪魔させていただきましたが、初めて拝見する代物です。いや、ここは多くを伺わずに、まずは森田師匠がなさることを拝見してみましょう。(いきなり"師匠"呼び)
その1:カーネーションの葉を任意で採取してくる。
「ツボミのすぐ下の葉がいいな。ツボミがどんどん養分を吸い上げているから、そのすぐ下は栄養がいきわたらず弱くなっている可能性がある」
by森田さん
採取した葉をビニール袋に入れます。
その2:ビニール袋の上からトンカチのようなもので叩いて磨り潰す(樹液を抽出する)
トントントントンッ!
その3:ビニールを強くねじったところでハサミでチョンと穴を開ける。
(ぬぁんと、この度穴開け役という大役をウン探が仰せつかりました!)
「たのんまっせ~ッ!」
と森田さんに言われて俄然ココだけやる気が出る。
その4:穴を開けて抽出した樹液を不思議な小道具に垂らす(ほんの数滴)
アーンド、カバーをして準備完了☆
その5:不思議な小道具を覗き込む ・・・って森田さん、それは何ですか?
万華鏡とかそんな感じ!?
「これは糖度計なんだよ」
糖度計?
カーネーションに?よもやカーネーションも甘い方がいいのですか?
「植物体に十分が糖度があるというのはつまりそれだけ健康体ということでしょ。 健康診断みたいなもんじゃ」
光の屈折率で植物体の糖度を図ることができます。覗いてみるとこんな感じ。
中にはメモリがあって、下の方が緑、上の方が青色に見えます。その境目が植物体が示す糖度というわけです。
今回の検査結果はいかがでしょうか。
「まあまあだな。問題ない」 と森田さん。
一方、葉っぱの色が少しおかしいなと思って森田さんが採取してきた葉の樹液は少し数値が低く出ました。 これも、生産していて植物体に少し異変を感じたときに原因を追究するための手段の一つです。
■森田フラワーガーデンで働く従業員のみなさま
取材で圃場内をウロウロする前に、従業員のみなさまにウン探をご紹介くださいました。
ほッ(*´ο`*)!
これで変質者扱いされずにすみます。よかった~。実はこんな風に取材前に皆様にご紹介いただけるのも結構レア体験だったりするのです。
従業員様とそれぞれされている作業とを一緒にご紹介してまいります。
◇森田さんの右腕:森田さんの奥様
ちょうど収穫をしていた森田さんの奥様。
迷いなくハサミを入れているように見えますが、切り前のタイミング(開花具合で収穫していいか否か)はどのように図るのでしょうか。
「そーねー、難しいポイントではあるんだけど、1本のスプレーカーネーションのうち3輪咲いたら咲きすぎ。
2輪咲いて3輪目のツボミの花弁が十分色付いてきた頃に収穫します。」
↑今の季節ならちょうどこのくらいが理想的。
↓これではまだまだ固い。収穫には早すぎ。
プラス、季節や2-3日先の天気も確認しながら切り前を見計らいます。
森田和友さん曰く、
「切り前は一言では決められない。使う人みなが満足する切り前にするのは、とても神経質なポイントだな」
◇森田さんの左腕:小野さん
森田フラワーガーデンさんでの就労年数が長く、奥様と同様収穫や選別を担当されます。
「女房の次に"おっかない"人」
と森田さんは恐れるそぶりを見せつつも、信頼を寄せます。
取材の時は奥様と同じく、収穫を担当していました。そのほか、選別作業も含め、産地ブランドの確立で重要な作業を任されています。
◇花柄の服に包まれた等々力(とどりき)さん
日焼け対策バッチリ系!見習います!
こちらでは何をされていらっしゃるのでしょうか。
「頭取りをしています。」
頭取り?せっかく花が付いたのに、取り除いてしまうのですか?
「きれいなスプレー仕立てるためには、余計な花や脇芽を取り除く必要があるんですよ」
生産者さんによっては「芽かき」とおっしゃる方もいます。
カーネーションは次から次へと花芽が上がってきますが、スプレー仕立てとして残すのは4-6輪。そのため、1本ずつ確認し、余分な花芽を取り除いていく大変な作業です。
う~ん、でもたくさん頭が出てくる中で、どれを取り除くのでしょうか。判断はどのようにしているのですか?
「まず、最初に開花した一番大きい頭を取ります」
えぇw(゚o゚*)w??取ってしまうのですか??わー、大胆にも!
「そうです。大きいのは取ってしまわないと、他のツボミに栄養が行かなくなってしまいますので、残った花が均等サイズに咲かなくなってしまうのです。
最初の花はどうしても大きくなってしまいますが、スプレーの場合は花のサイズができるだけ揃っていた方がいいので。」
なるほど~。確かに花のサイズがチグハグよりは、このように揃っていた方がきれいですね。
できるだけ均等サイズで開花するようにここで頭取りという作業がキーになってくるのですね。
「そうやって最初に生まれた親を取ったら、その孫も取る」
ま、孫も!?気温が高くなってくる今の時期は、お孫さんの成長も早いので、早く取り除かないといけない。
写真では見えにくいのですが、残しておく花のすぐ横にある小さなツボミを取り除きます。
「残す花の脇にあとから、こういう小さいツボミができるの。これも早めに取ってあげないと、栄養を取られちゃう」
親と孫を取り除いてみると、あら不思議・・・サイズ感が同じツボミが数輪、何ともバランス残るではありませんか。!
これが開花すると、こーなります↓
品種は異なりますが、輪サイズが揃った様子をご覧ください。スプレーカーネーションの立ちの美しさを決めていらしたのも、この等々力さんの作業にかかっていたわけだ^^!
もーこれは気が遠くなるような作業です。
「この作業も午前中の早い時間にやってしまうのよ。午前中の早いうちなら茎がシャキッとして取りやすいけど、10時半を過ぎると気温が上がって湿気も吸って、小さいツボミがしんなりとしてしまうの。
そうすると、作業しにくくなって効率が下がってしまう。 この作業がパパッとできるのも、この時間帯だから。
私は圃場に来たらまずこの作業を優先して行うのよ」
作業効率を上げるために、等々力さんは頭取りの作業を朝一番の仕事にしています。
しかも、1周すれば終わりではありません。 親と孫を取っても取っても、孫が生まれてくるので何周もして最終形に仕上げていくのです。
うんわ~・・・ハウスの中でずっとこの作業はなかなか気が遠くなりますね(*_*;
でも、それだけたくさん取り除いた芽はどこに行ってしまうのですか?なんだか足元を拝見しても取った芽が落ちている様子はなく、とてもきれいです。
「このポケット^^!」
あ!ホント!気づきませんでした! カンガルーの袋のようにくくりつけたエプロンに取り除いた芽を入れて、作業効率を上げつつ、足元が散らからないようにしています。ウン探ではこれを「カンガルーバッグ」と呼ぶことにいたしました!
気が遠くなるような大変な作業も効率化するためにいたるところに生産者さんの工夫が見られるのですね。
◇就労1年の後藤さん
後藤さんは取材当日改植を担当していました。
土耕栽培が残る森田さんのところでは、1年を通して少しずつ改植をします。
「カーネーションは毎年改植が必要なんだ。だから、出荷が終わった畝は根っこごと引き抜くんだよ。」
こちらも大変な重労働です。
ところで引っこ抜いたカーネーションはゴミになってしまうのですか?
「これは山に持っていくんだよ。肥料になるんだ。」
お役目終了の苗はゴミにはせず自然に返し、再生のためのエネルギーとするのです。
◇就労3日目の福澤さん
取材日のほんの3日前から森田フラワーガーデンさんで働き始めた福澤さん。もう、この記事がアップされる今頃は随分慣れていらっしゃるかな~。
なぜ森田さんのところでお仕事しようと思われたのですか?
「花が好きだから」
福澤さんも等々力さんと同じ頭取りをしています。
お仕事はいかがですか?
「仕事自体は楽しいわよ。
でも1日目は仕事に夢中になって水分を摂るのを忘れて、熱中症になっちゃったわよ^ ^;」
ひょえぇ~w( ▼o▼ )w!!初日からまさかの熱中症!?
4月中旬の飯田では外気は20℃も行かないくらいだと思いますが・・・
「ちゃんと"涼しいところからやってね"と言われてそうしていたんだけど、やっているうちに太陽がどんどん高くなって、水分補給を忘れちゃったのよ~。
でも2日目からはきちんと水分を摂ったから大丈夫!」
ハウスの中はカーネーション仕様の環境。おまけに作業は傍で見ているより重労働ですから、くれぐれもご自愛くださいね。
■水揚げ
収穫後はもちろん水揚げ・・・なのですが、 ここにバケツが2つあるのは何のためですか?森田さんに伺いました。
「左のバケツ【A】で茎元を洗って、右のバケツ【B】で水を飲ませるんだ。
【B】はもちろん前処理剤入り。選花場に持っていくまでの短時間ね。」
森田さんは、これらのバケツの水質チェックも定期的にされています。
こちらが森田さんが見せてくださった水質チェックの結果です。シートに丸い跡がついていたら、その水はバクテリアなどの最近が多いことを示してします。
水質検査のシートも
感覚ではなく科学と理論に基づく森田さんの生産ポリシーをここにも垣間見ることができます。
↓写真の下段中央に丸がはっきりと見えるのは、これは【A】の洗浄用バケツから採取したものです。
「だからこそ【A】は頻繁に水を取り替えるんだ」
と森田さん。
バケツ【A】の水が汚れるのは確かにその通り。なぜなら、カーネーションの汚れを洗い落とすための水ですから。
それさえも意識して常にきれいに保とうとする森田さん。ほかのバケツ【B】や選花場の水は台紙とほとんど色が変わらないほど、水がきれいですね。さすが、品質管理の意識が高い森田さんならではです。
「それから選花場でSTS剤(※)を飲ませて出荷というわけだ」
こちらがその選花場。
ちょうどSTS剤を使い水揚げをしているところです。
※STS(エスティーエス)剤とは?・・・Silver Thiosulfate(チオ硝酸銀錯塩)の略です。 エチレンによる老化作用を抑制し、切り花の寿命を長くする前処理剤。カーネーションやスイートピーなどでは標準的に使われています。
あーーーー!
見つけました。この選花場にどこかで見たことのあるものが!?
■フラワー・オブ・ザ・イヤーOTA2015 新商品奨励賞受賞☆☆☆
これはフラワーオブザイヤーOTA2015の賞状です。何を隠そう、森田さんはフラワー・オブ・ザ・イヤーOTA2015の新商品奨励賞に輝かれのたのです。
受賞品種こそ、森田さん自ら育種を手掛けた「線香花火」。
以前見つけた突然変異の品種を固定して、「線香花火」と名付け、2015年にデビューし、見事受賞と相成りました。花弁のヒゲのようなものが放射状に飛び出すその様を線香花火に喩えたとは、ネーミングもなかなか言い得て妙です。
その時の賞状やポスターを選花場に掲示して、励みにされていらっしゃるのだとか。主催する私どもとしても嬉しい限りです。
■採花日表示・・・正直であること
輸入品との差別化のために採花日表示をしています。
これは森田フラワーガーデンさまを森田フラワーガーデンさまたらしめる一つの特徴的な取り組みと言っても過言ではないでしょう。大田花きでも1日に何万ケースと全国、或いは海外から入荷がありますが、採花日表示の上出荷している生産地様は片手で足りるほどしかいらっしゃいません。
こちらがその表示です。
ここに森田さんの生産者さんとしての義務と責任感、生産ポリシーを感じることができます。
■生産で最も大切にすること
森田さんにとってカーネーションの生産上大切なことは、水・空気・太陽の三要素であることを前編でご紹介しました。
しかし、本当はそのほかに最も大切にされていることがあります。
「それはやはり人との出会いだよ。
やっぱりとてもいいカーネーションを作ることが最も気持ちのいいことだし、お客様にも喜んでもらえる。それだけに、あらゆる知恵と知識を絞るしかないんだけど、これには限界があって、一人で腕を組んでいるだけではなかなか進まないんだよ。
人に教えてもらったり協力してもらったりして生産は前に進むんだ。」
なにによりこれが森田さんの哲学"モリタイズム"です。
だからこそ森田さんが市場や小売店に求めるものは 「こだま」 です。
☆ここで森田さんよりお取引先のみなさまへ一言
「こだまをください。」
森田さん曰く、
「私の花に対する皆さんの意見を聞かせてください。良いことでも改善すべき点でも結構です。
さもないと、何が正解なのか、何が喜んでいただける商品なのかわかりません。
みなさまに評価していただいた品種も、気付かずに生産を止めてしまう可能性もあります。 是非、皆さんからの声をお返しください。
つまり"こだま"をください」
こだまがなく一方通行では、需要と生産のミスマッチが起こってしまいます。
作る側と販売、使う側のコミュニケーションがなければ、花を通じて生活者のみなさまに幸せを届けることはできません。 これこそ「人との出会い」を大切にする森田さんの信念です。
「市況に見る数字だけではお客様の満足度は分からない。
私たちの業界の目的は、立場こそ違えど、みな"花を通じて生活者の幸せを提案する"というもの。 たとえば私であれば、カーネーションの生産を通じて生活者のみなさまに幸せを届けるというもの。 でも、私がここで花を作って待っているだけでは、本当の満足度は見えないんだよ。
ここに情報の相互性が生まれることで業界のレベルの底上げができるようになるはずだよ」
「こだま」とは本来「木霊」と書きますが、森田さんのおっしゃるこだまは、どのような小さい声でも聞かせてほしいという意味から、あえて「小さい魂(たましい)」と書いて「小魂(こだま)」とさせていただきます。
ぜひ 花に対する気持ちや魂を森田さんにフィードバックしてくださいませ!森田さんは人の心や花に対する魂を大切にする人なのです。
■そもそもなんでカーネーション&ナデシコ??
森田さんはなぜこの飯田という地での生産にカーネーションを選んだのでしょうか。
ここはきっとウン探しか知らない話↓・・・うふ^^❤
「小学校の頃に種苗会社の愛好会に入っていてね。よく"なんとかの会"ってあるでしょ、アレ。
そこに入会してカーネーションのタネを注文しては育てて咲かせていたんだ。」
お~!森田さんの花栽培の才はランドセルを背負っていた小学生の時に芽生えていたのですね。
「なぜそんなことをしていたのか、30-40年経ってから分かったんだけど、小学校の担任の先生が花が好きだったんだな。
その先生の影響があったのかなと思うけど、確かなことは分からない。可能性というくらいだな」
もしかすると、森田さんは生まれながらに何か花と通じ合うものを持っていらしたのかもしれません。
☆森田フラワーガーデン 森田和友さんの哲学(格言)☆
・ 最新が最善とは限らない。生産設備一つにしても理論を吟味し導入せよ。
・ 花生産に必要なのは、太陽・空気・水!
それらの環境を「数値化」して、常に裏付けと理論を以って生産に臨むべし!
・ しかーし!その数値化生産を裏付けるのは「人との出会い」と「心」。
周りの人に教え、教えられ、生活者のみなさまに良い花を届けようという心が森田さんの花を生み出す。
これぞモリタイズム!
・ 情報の双方向性があるからこそ、花を通して生活者へ幸せを届けることができる!
だから「小魂(こだま)をください」。
・ 道を見失ったときは森田さんの花を手に取ってみよ。
森田さんの花から魂を感じれば、何かヒントを得られるかもしれません。
☆番外編 ~竹林探検隊 with森田さん~
森田さんと飯田の山を竹林探検(チクリン タンケン)をさせていただきました!
これこそ「産地ウンチク探検隊」の醍醐味。そろそろ「山地ウン竹(チク)探検隊」に名前を変えようかな??
道なき山の急斜面を竹につかまりながら大股で登ると・・・(森田さんは忍者の如く、すいすいとあっという間に登って行ってしまいますが、お尻の重いアタクシにはひと苦労です^ ^;)
落ち葉が敷き詰められたフカフカの地表と急斜面に足元を取られ、どちらが空でどちらが地面かわからくなるようなめまいに襲われながら、森田師匠を見失わぬよう登りつめると、そこにはなんと・・・ッ!!
春蘭(シュンラン)が控えめに迎えてくれました! あそこにもここにも。
斜面を登るのに夢中だと見落としそうですが、そこはベテランの森田さんが教えてくれました。
「ほらここにな!」と教えてくださる森田さん。
あんりまあ、こんどは竹の陰に隠れニョッコリ頭を出すのは立派なタケノコ☆
立派なタケノコじゃ~。
ウメの実も成り、
4月の飯田の山は、春の恵みに包まれているのでした!
・・・もちろんこれらは鑑賞しただけで、一切採取しておりませんのでご安心くださいませ。
また、森田フラワーガーデンさんがあるこの飯田には、2027年にリニア新幹線が開通する見込みです。 森田さん家至近のまさにココ。
取材当日新宿駅から高速バスで片道4時間かけて訪れたこの地にリニアが開通すると、なんと40分で飯田と品川が往来できるようになります。(名古屋へはわずか20分。車内でおにぎり食べている間に到着やな)
飯田から東京へのまさかの日帰り(!)ももはや夢ではなくなりますね。
つい先日の総務省のアンケートによると、移住したい地域ナンバーワンに輝いたのがほかならぬ長野県。リニアが開通すればさらにそのブランド価値が向上すること間違いなしですな。
☆おわりに・・・
ホントいつもながら、長くてすみません^ ^;
森田師匠のような方にいろいろ教えていただくと、どうしてもみなさまにお伝えしたくなってしまいましてね。これでもだいぶ内容を絞って掲載させていただきました。これ以上は"テキトーにカット"できない性分なのです。何卒お許しください。
<写真・文責>:ikuko naito@花研
2016年5月 3日
vol.114 森田フラワーガーデン様(カーネーション&ナデシコ) 前編
北海道、福島、岩手に次ぐ全国第4位の面積を誇る広い長野県。中でも下伊那郡(しもいな・ぐん)は南部に位置し、静岡県や愛知県との県境もすぐソコという場所です。
下伊那郡豊丘村(とよおかむら)は、1万年以上前の旧石器時代から人が住み、地の利を生かして暮らしを切り拓いてきました。 標高およそ430メートル、赤石山脈と木曽山脈にはさまれた清流天竜川周辺では、標高1,890メートルの鬼面山を背景に、水稲や果樹生産などの農業が発達しました。
もちろん花き生産も例外ではありません。
ココ下伊那といえば、カーネーションの生産地として全国に名を馳せています。 母の日を目前に、この度はこの地でカーネーションとナデシコを生産される森田フラワーガーデン様を訪れました。
ナデシコとカーネーションをなぜ一緒に!?と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、両者は植物の分類上、年子の兄弟のようなもの。
いずれもナデシコ科ナデシコ属に分類され、学名をDianthus(ダイアンサス)と言います。
両方ダイアンサスなのですが、市場では商習慣なのか、便宜的にナデシコをダイアンサス、カーネーションをカーネーションと呼び、混同を防いでいます。
しかし、これは一般的に当てはまることではございませんので、生活者のみなさまはご留意くださいませ~。
Dianthusとは何を隠そうギリシャ語で「神の花」の意味。Oh, my God!Σ( ̄ロ ̄lll)
経営主の森田和友(モリタ・カズトモ)さんは、神の花と呼ばれるカーネーションとナデシコを豊丘村で半世紀近くにわたり生産されています。
なんて悠長にご紹介している場合ではなく、テキパキとお仕事が早くい森田さんは、取材でお邪魔した途端に早い足取りで動きだし何かを始めました。
ショーターレッグス(短い脚)の取材班は小走りではないと森田さんの歩みについていけないほど。
何をされるのか見ていますと、圃場で灌水中の水を小さなビーカーに採取。 その上、なにやら取り出し・・・・ ぁああああッ!
これは、中学生の頃に理科の授業で使ったことがあります! リトマス紙!
「そうだよ、圃場の診断をやっとるんよ。水のpH値を測っているんだ。排水を採ってpHが正常値かどうかを確認する。」
リトマス紙にチョッと水を浸けて、色が変化したリトマス紙の色とサンプル色とを照合し、pHがどのくらいかをチェックしていきます。
pHと一緒に測定するのがEC。(※)
そうした測定値を農業カレンダーに記録し、栽培環境に異常がないか、定期的に確認しています。
※ECとは・・・?
Electric Conductivity:電気伝導度
溶液の中に溶け込んでいるイオンの総量を示す値。単位はミリジーメンス(mS/cm)。
イオンの量が多いと電気が伝わるのに負荷がかかりEC値が高くなる。ロックウールの養液栽培において、肥料分が多くなると電気が多く流れる性質があるので、肥料分のコントロールにEC値を目安にする。
この数値が高すぎると、養水分の吸収が悪くなり、延いては根の張りも悪くなり、植物が傷むことが懸念される。
基準値から大幅に外れることなどがあったら、肥料で調整して正常値に戻していく。
これを「肥培(ひばい)管理」といいます。
「肥培管理をしないと植物が肥料を吸収できなくなってしまうんだ。 まず肥料を吸収できる環境を作る必要があるんだ。」
植物の調子がなんだかおかしいなという時、肥料をやっても調整できなくなってしまうのです。
働き者で手足が止まることのない森田さんには、朝の挨拶も中途半端のまま、森田さんの圃場管理に突撃探検隊となりました。
さて、森田さんが生産環境の上で大切にしていることは大きく3つ。
■水と空気と太陽と・・・ 森田さんにカーネーションの生産で大切なことを伺いました。
「水と空気と太陽。これが植物が育つ三要素。これをいかに整えていくかが重要なんだ。
人間が生きていくためには何が必要や?水と空気と太陽やろ。それと一緒やわ」
という森田さん。植物が育つ三要素を聞かれて、思わず「土」を入れてしまいましたが、土は三要素に含まれていません。土や肥料は条件ということです。
【水】
冒頭でご紹介したように、リトマス試験紙で水のpHやECをチェックするのが一つ。
また、灌水方法も森田さん流のポリシーがあります。
灌水スイッチを押す森田さん。押した途端に水がカーネーションの足元からシャワ~ッと噴出します。
(↓灌水中)
「これは、灌水方法の最先端ではない!」
で、で、ではない・・・!?
「ではない」ことを強調しつつ、なぜあえてシャワー灌水をされるのでしょう。
「新しい方法は点滴形式なんだけど、わたしは点滴は好きじゃないんよ。 ポタポタ落ちるから、水が落ちたところにしか水や養液がいかんやろ。
もっと株全体に水がいきわたった方がいいんよ。管理しやすいしね。純粋に好き嫌いの問題なんだけど。
最新のものが常に最善とは限らないからね。」
水遣りひとつとっても森田さんのポリシーを垣間見ることができます。
【空気】
空気、つまり温度や湿度、風通しです。
暑さ対策も欠かせません。 カーネーションの原産地は、地中海沿岸の地域。 風通しが良く、夏場も日本ほどの猛暑にならない地域で生まれたことを思えば、カーネーションが暑さにそれほど強くないことは想像に難くないと思います。
取材中も太陽が高くなると、森田さんは、
「ちょっとクルクル行ってくるわ!」
と駆けだして、ハウスの側面のビニールを巻き上げました。
↓クルクル中の森田さん。
こうすると、ハウスの側面が空いて、風通しが良くなります。気温や湿度が高くなりすぎないよう、絶えず換気に気を配ります。
【太陽】
カーネーションはとりわけ日照を好みます。日照量が足りないと発色もいまいち、植物体の元気もなく良い花はできません。
しかし、いくら"神の花"と呼ばれるカーネーションを栽培している森田さんといえども、周年出荷を実現するのにお天気のコントロールをするのは至難の技です。
「そこで、使っているのがコレ」
コレ?? どれ??
あ、コレ??
通路に敷いたシルバーのマルチシート。太陽の光を反射するため、畝の中と通路とに敷き、空からの太陽光を最大限に生かします。
「太陽と水と空気の条件を整えるのに手抜きは絶対できない」
良い花を生産するための三原則です。
とはいえ、培土も無視できるものではありません。
■培土・・・こだわりのベンチ栽培
森田さんはロックウール栽培と土耕栽培と両方を使います。土耕から始めましたが、徐々にロックウールに変えているところです。
ロックウールとは玄武岩や石灰などを原料した人造鉱物繊維。このスポンジのことです。今や農業生産では花きのみならず広く培地のスタンダードとして世界中で用いられています。
でもなぜロックウールに変更しているのですか?
「ロックウールの方が作業性が圧倒的にいいからさ!
植え替えるときに土を興す必要も堆肥を入れる必要もない。ロックウールのベッドをパタンとひっくり返し、蒸気消毒をすればいいだけだから、土に比べたら労働力が全然違う。」
それでいてロックウールと土耕とで出来上がりの商品に差はありません。少なくとも森田さんの圃場の中においては。
もう一つ森田さんのベンチには秘密があります。
こちらの、地表から少し上がった「隔離ベンチ」です。
培地が地表に直接付かず、隔離されているから「隔離ベンチ」。
「地表にベンチが近い人ほど生育が安定している。高いベンチほど培地の温度が不安定になるから、その分、地温にも気を付けんにゃならんということ。培地の温度が乱高下すると肥料を吸収しにくくなるということだ。」
森田さんのベンチは高い方ですか、低い方ですか?
「まあ、低くはないわな。 ほれ、見てごらんよ。地に着いとらんやろ。」
でもなぜ、生育が不安定になるのに高めにベンチを作るのでしょうか?地温が安定して作りやすい方がいいのでは?
「それは大きく2つある。
① 病気防止:地表と接着していると、ウィルスなどの病気が蔓延しやすいから。」
う~ん、なるほど、これは重要ですね。病気を防ぐため。もう一つは?
「② 作業効率アップ :高くすることで、ちょうど人が立った状態で腰を曲げずに作業をすることができる。 ベンチの下に足(フット部分)を入れて作業できるでしょ。それだけでも労働生産性が高くなるわけだ。」
なるほど、病気の防止と作業性を考えてベンチを10cmほど上げているわけですね。
「ベンチの下に手を入れてみ?!」
え? w(゚ロ゚;w?ベンチの下にですか?
こんな感じ? ・・・と手をベンチの底に当ててみると・・・ ・・・ん??(・_・?)
あら??なんだか底の部分が波々しちょる?なんでジャ?
底はフラットではなく、3-4cm程度の幅で波うった、京都の千寿せんべい(波形でクリームを挟んだクッキー)のようにうねうねしています。
こッ、これは?
「その波々はトタン屋根になっている素材を使ったんよ。 この屋根。 」
と森田さんが指を差したその先を見上げてみると・・・!?
や、屋根!!(ノ゚ο゚)ノ
「この波打った屋根を使うんよ。重ねて使うことで、畝の幅を調節できる。広くも作れるし、狭くも作れる。」
説明しましょう!
つまり、こういうことです。
このうねうねをたくさん重ねれば畝幅を狭くすることができるし、2-3こにすれば広くすることができる。なんというアイディアでしょう。
「国内生産者さんに教えてもらったり、自分で模索して、独自のこの方式を取り入れたんだ。 」
森田さんのベンチは森田さん考案のオリジナルベンチ。 普段は頭の上にあるものと、足元に使ったというわけですね。
森田さんのカクリベンチにはカラクリがたくさん! まさに森田さん流カクリベンチならぬカラクリベンチ!
「でもここに辿り着くまでに10年くらいずっと悩んでいたよ。」
という森田さん。ベンチ栽培は大型投資。大型鉄骨のハウスでないとなかなか設計できません。
大型投資に踏み切ったのにはきっかけがありました。
「またね、そのころこの辺りでイチョウ病という病気が流行ってね。」
イチョウ病?胃腸病なら私もよくお世話になっていますが・・・?
「ちゃうわッ!
萎凋病(イチョウビョウ)だよ。」
萎凋病とは、カビが原因で植物の導管(水を吸い上げる道)がバクテリアで腐ってしまうという病気。一度発病してしまうと対策を取るのが難しく、最後は株ごと枯れてしまうので、生産者にとっては頭の痛い病気です。
「人間でいえば、血管が詰まる病気と同じだから致命的だよね。
それが根からも茎からも出て、ウチでも発生してしまったんだ。 蒸気消毒をすれば消毒できるということは分かったんだけど、土耕栽培のまま消毒しても地中からどんどん萎凋病が上がってくるから、完全に消毒することはできない。
隔離ベンチにしなくては病気も隔離できない。そこで米国やヨーロッパでカーネーションの産地を巡り、自分の目で見て、"カーネーションの生産とはこういうものだ"というスタンダードを知って、腹が据わったんだ。
投資金額が大きいだけにつまり一生やる!っていう腹づもりがないとなかなか隔離ベンチにはできないわけよ。私の20代はその決心がつくまでの葛藤だったね。」
という森田さんの葛藤の青春時代のお話を伺ったところで、後編に続きます。後編では知られざる森田フラワーガーデン様にさらに深く潜入です!
<写真・文責>:ikuko naito@花研
2015年3月30日
vol.110 イナバの花★南房総のカーネーション
2015年3月のうんちく探検隊は、春爛漫の房総半島に上陸!!\(^▽^\)(/^▽^)/ワーイ!
満開のサクラ、
大地を黄色く染める一面の菜の花、
早春を象徴する草原の花たち、
そして、おまけにこちらはソラマメの花、
みなさ~ん\(^o^)/!南房総にはうららかな春が到来しています!
よーし、ウン探は房総を暴走しちゃうぞぉ~!←ワー、デタデタ、オヤジギャグ。。。「(ーヘー;)ヤレヤレ
南房総市といえば、市章は花をデザインしたもの。
南房総市によると、南房総市の7つの地域を7枚の花びら7枚に喩え、南房総の暖かい春のイメージを図案化したものなのだとか。南房総市の夢と希望が自然と共存し発展する姿を表しているといいますが、まさにそのことが良く伝わる素晴らしい市章ですね。みなさまはさぞかし花生産が盛んな地域と思われるでしょう。
その通り、南房総市が誇る主な農業では花とビワ!そしてこの度、千葉県公認チーバ君のお出迎えに手を振り、
目指す先は・・・
おまっとちゃーん! 「イナバの花」の稲葉修司(イナバ・シュウジ)さんです!
稲葉さんは南房総のちょうど中ほどに位置する、花の有望な若手生産者さんたちが集まる地域で、そのおひとりとしてカーネーション生産に腕を振るっていらっしゃいます。
稲葉さんは花の街南房総市で、施設18棟、面積にしておよそ1,000坪にてカーネーション栽培に取り組まれています。お祖父様、お祖母様から受け継ぎ、カーネーション栽培を始めて丸11年。今年4月から12年目。
スタンダード25品種(バイパー、バイパーワインなど)、スプレー4品種の合計29品種を、なんとご家族4人という少数精鋭で栽培していらっしゃいます。
大田市場内の某仲卸店長さんに伺うと、稲葉さんのカーネーションは、
1. 大輪
2. 色のりが良い(発色が良い)
3. 花持ちがメチャンコよろしい
4. 茎が節折れせず、しなやかで女性的なつくり
であるからと、ユーザーの皆様から大変好評を得ていらっしゃるとのことw(゚o゚*)wスゴイネ!!
決して肩を張らない、この素朴な感じの稲葉さんから、どのようにしてそのようなカーネーションを作ることができるのか、うんちく探検隊がいざ潜入です!
☆生産
稲葉さん的カーネーションを作るために重要なことは、
① 日照
② 温度
③ 土
④ 灌水
⑤ ・・・そして、稲葉さんの哲学
これらについて順を追ってみて参りましょう。
まず①日照についてです。
カーネーション(だけではありませんが)は特に光を好む植物。原産地は南ヨーロッパ、及び地中海沿岸であること、また現在輸入品のカーネーションの多くは、生産性の良いコロンビアのボゴタ平原やケニアのナイバシャ湖周辺など、赤道直下の国や地域で作られていることを鑑みると、いかに生産に日照が大切であるか、想像に難くないと思います。
従って、良いものカーネーションを作るためには強光が不可欠。
稲葉さんのカーネーションを「イナバの花」たらしめている大きな要素の一つはこの南房総のお天道様。しかし、お天道様ばかりはご機嫌のコントールをできるものではありません。
温度は足りないときは暖房を使えばいいとしても、日照量が足りないときはどのように補うのでしょうか?
「補いません。」
チーン(+_+)
そりゃそうか。
しかし、無いものを有るようにすることができない場合、有るものを最大限に有効活用することが重要。そこで、天窓には光の透過性が良く、更には光を散らす秘密のフィルターを設置。お天道様からの恵みを偏らず、すべてのカーネーションに行き渡るよう工夫しています。
「日照量が十分でないと光合成ができないでしょ。植物は須らく光合成をしてデンプンを蓄えて生長する。
日照量が足りなければ生育が遅れる。体を作りたくても作れない。すると、発色が良くなかったり、輪のサイズが違ったり・・・・ということが起こるんだ」
うまく光合成ができより健康になると、カーネーションの場合はこのように茎や葉から白いワックスが分泌されます。
ワックスは手で擦ると簡単に取れますし、触ってもまったく有害なものではありません。それどころか、植物体の元気印!
例えば、ブドウなどの果実の表面に白い粉のようなものが付いているのを見たことはありませんか?まさかウン探読者の皆さまは、これが農薬だなんて思っていらっしゃいませんよね~??
これらはブルーム(果粉:かふん)といって、果実に含まれる脂質から作られたロウが表面に付いたもの。植物の病気を予防したり、鮮度の目安にもなったりするのです。
つまり、カーネーションの葉や茎についているワックスも、このブルームと同じ役割を持つものだということなのです!
稲葉さんの圃場を拝見した瞬間、グリーンというよりも"シルバー"な印象を受けました。
つまりそれは、この葉や茎から出ているワックスの色なのですね。
「ワックスが出た方が健康体であると言われているんだ」
稲葉さんのカーネーションは健康体!健康こそ美しいカーネーションの源です。
②温度
「昔は管理温度を相対的に低くしていたのですが、実は今は少し作り方を変えて温度も少し高くしたんだ。」
作り方を変えた??(゚ー゚*?)
「そう、私も昔は節(ふし)がゴツゴツとして太くしっかりした、男性的なカーネーションを作っていた。
その時は、真冬でも昼間は天窓を全開にしてハウス内の温度を低めに設定。すると植物がじっくりゆっくり育つので、茎・節がごつごつと太いものができる。
ただそれは、私の目指すしなやかな花とは異なるし、採花率にも影響するので作り方を変えることに。温度でいえば、一般的な管理温度は15-20度のところ、ウチはそれより気持ち高い温度で管理したんだ。」
すると"女性的な花"と褒められるようになったわけですね。
でも、南房総といえども冬の寒さは結構厳しくて、燃料代も大変なのでは?
「そう思ってね、試してみたのが薪ストーブなんだ」
ま、薪ストーブ!?ハウスの中で?
稲葉さんが試しに導入された噂の薪ストーブがこちら。
しかも結構カッチョええ。なんかイメージしていたのと違いますな。
その名も「スーパーゴロンタ」。
地元の森林組合から購入した間伐材を薪としてスーパーゴロンタに投入します。
「12時間燃え続けるので、夕方点火すると翌朝まであったか~いンだから~ぁ
夜温を最適といわれる10℃前後に保つことができるんだ」
燃料費の削減になりますね・・・と思いきや、
1パレット(1㎥)の薪↓コレを、
3日で1つ消費します。
こっそり1パレット分の薪代を聞いてみると・・・うーん、まあ、なんといいますか、決して安いものではありませんね。
ウン探の予想よりは高い。
「でも、重油に比べたら節約できるからね。
メインは重油で暖房を付けることだけど、補助的に薪ストーブを使う。これが試しに導入してみた私の結論。」
なるほど、いずれにしても花き生産にはお金がかかるということですね(*_*;
でも、寒いのはお金がかかったとしてもなんとか解決できるとして、夏場の暑さはどのように対処するのですか?
「マメに水をかけて気化熱で気温を下げたり、換気をしたりして対策を取っている。
カーネーションは暑いのは苦手なんだ。暑いと植物の呼吸が激しくなり、体力を使ってしまう。すると花径が小さくなったり、花の力がなくなったりするんだよ。
カーネーションの場合は30度を超えると生育が停止して、自分を守るようになる。この辺りの地域では外で30度を超える日は頻発するから、ハウスの中ではさらに暑く35度くらいはザラにあるんだよ。
でも、ウチの生産サイクルからすると6月に改植するから、夏はまだ苗の状態で迎えることになる。苗のうちはまだ若いから大丈夫なんだ。」
コロンビアやケニアなど、世界でみるとカーネーションの大産地赤道直下の国なので、てっきり暑さも得意かと思ってしまいます。しかーし!これは大間違い。
赤道直下の国でも標高の高い所で作っているので、夏は冷涼、冬は温暖な気候なのです。もちろん夏だって日本のドロドロに暑い夏より涼しく過ごしやすい。
このように実は暑さが苦手なカーネーション。6月に定植&1年栽培というのは、暖地におけるカーネーション栽培の定番、且つ冬も比較的温暖で日照量の多い南房総に適した方法です。なぜなら、熱帯地域より恐ろしい日本のドロドロドに暑い夏を、カーネーションが若いうちに過ごすことができ、冬の加温で最適な温度帯で生長を促すことができるから。
温度が低下し、切り花の品質が良くなり始める10-11月ころから出荷し始め、稼ぎ時の母の日に納品を完遂し、6月に出荷終了というのは理想的なサイクル。だからこそ、ココ南房総市でカーネーションを作る意味があるというワケです。
③土
稲葉さんは地植え栽培しています。
「ベンチ栽培は限られた空間の中でしか根を張ることができないでしょ。カーネーションの場合、ベンチ栽培が合う品種と合わない品種とがあるんだ。私が作っている品種は、ベンチ栽培では限りなく軟弱に育ちやすい。
でも土耕にすれば、下はどこまでも伸びたいところまで根が伸びるから、株を作るのに適している。」
どのような土を使っていらっしゃるのですか。
「ここに昔からあった土。ここは昔は田んぼだったんだ」
では、比較的粘土質ということでしょうか。
「そうだね。ハウスによっても微妙に土の性質が異なるけど、粘土質というのがカーネーションの栽培に適している。じわじわと根が張っていくから良い株ができるんだ。」
粘土質であることの長所は主に、
・保肥性・・・肥料の持ちが良い
・保水性・・・水持ちが良い
これらをうまくコントロールできればとても良いカーネーションができます。砂系が混じっている土で作ったのと、粘土質で作ったのとでは、株の形が全く違うのだとか。
「でも実は砂が混じっていた方が枯れない。」
え???(゚_。)?(。_゚)?
砂地の方が枯れない?砂地の方が水が切れてすぐ枯れてしまいそうなイメージ・・・ですが、なぜでしょうか。
「病気が伝わりにくいから。
植物の大敵である病原菌は水を伝って伝染していく。粘土質の土の方が保水性が高いので、病気が蔓延するリスクが高い。だから、病原菌のリスクが低く、枯れないのは砂土の方なんだ」
なるほど。
「でも、以前トラブルでカーネーション生産を止めようと思うくらいくじけそうになったことがあってね」
稲葉さんがくじけそうになるなんて、何が起こったのですか?
「ウチの主力の品種であるバイパーとバイパーワインが半分以上枯れてしまった年がある。
もともと合わない場所に植えてしまったことがいけなかった。この品種は病気に弱い特性があるので、地下水がある場所には絶対植えてはいけなかった・・・のに、間違えたため枯らしてしまったんだ。」
地下水が流れていて、土壌中の湿度が高かったのかもしれませんね。それでもくじけずに生産を続けてくださってよかったです。
④灌水
稲葉さんのカーネーションの「イナバの花」たらしめる4つ目のポイント、それは灌水です。
灌水は3日に1回くらい。(ハウスによっても異なりますが)畝に走るチューブで灌水。チューブにはこのように穴が開いていて、ここからピョロロロロ~と水が出てきて灌水できる仕組みになっています。
それにしも、なんだか表面が割れてカピカピの様相ですが、そろそろ水を遣らなくて大丈夫なのでしょうか(゚ペ)?
「まだ大丈夫。
表面はカピカピに乾いていても。
乾いて見えるでしょ。でもちょっと掘ると・・・・
ほら、土の色が変わっているでしょ。もう湿っているんだ。十分水を蓄えている証拠。」
あら本当です!
乾いているのは表面だけなのですね。水を遣りすぎてしまうと根腐れや病気の原因になりますから、表面が割れても慌てず騒がず、3日に1回を守ります。
⑤稲葉さんの哲学(フィロソフィー)
そして、稲葉さんのカーネーションをイナバの花たらしめている最後のポイント。稲葉修司さんの哲学です。
どのような花を消費者の皆様に届けたいと思いますか。
「きれいな花。これに尽きる。
見ていて"いいね"と思ってもらえるような花。
花は咲いてなければ花ではない。これが私の哲学。
だからできるだけ畑で咲かせて出荷する。」
←ベートーヴェン風
そう、なんといっても稲葉さんの花が違うのは、「咲かせて出荷する」という点です。それも稲葉さんのこのような哲学が根底にあるからこそ。
「だから切るタイミングが他のカーネーション生産者さんより遅いんです。花が十分咲いてから切る。
例えば、他の人がこのくらい、
あるいは人によっては早いとこのくらいの開花ステージで切る花を、
私たちはこれくらいになってからようやく切るんです。
」
稲葉さんは、中心の花弁まで全て開き切ってから出荷します。
←稲葉さん的にはこれでもまだぜーんぜん早い。
収穫のタイミングまでまだもう少し。
もしかすると、"それでは日持ちが短くなるのでは?"と心配される方もいらっしゃるかも!?しかーし、
「日持ちは同じです」
と稲葉さんは自信を持って答えてくださいました。
「ただ、気温の高い季節は輸送中に花弁が傷付いたりという事故も起こりえるので、やや硬めに切るようにします。でもなるべくならば花を咲かせて出荷する。畑で咲かせる!これが基本。」
だからこそ稲葉さんの花は大輪で日持ちも十分なのです。
根から切り離されてしまった花は栄養供給元を失います。一方、つぼみが開花する瞬間には大変なエネルギーを必要とします。しかし、その時に切り離されてしまうとエネルギー供給元がないので、開花はしても大きく展開することは難しいのです。それならば、育ってきた畑でその花の力を100%引き出して、咲かせてから出荷した方がより大輪で力のある花になる。そのようなお考えに基づいているのです。
ほかの生産者さんが5-6分咲きで出荷する中、咲き切ってから出荷するのは勇気がいることのように思いますが、どうしてそのような結論に至ったのでしょうか。
「祖父の時代からそうしています。これが当たり前だと思っていてね。
ウチがちょっと違うというのは、他の人と話していてやっと気づいたんだ。」
なるほど、もしかして咲かせて出荷するのは稲葉流が元祖なのでしょうか!?
「祖父が咲かせて出荷していたのは、スプレーカーネーションから生産を始めたということもあるかもしれません。
スプレーは咲かせて出荷しますから、その開花感覚でスタンダードも出荷していたのかな。
それに、お花屋さんで開花調整するのはとても大変ですよね。ウチの花なら買ってすぐに使っていただけます。」
稲葉さんの大輪・長持ちカーネーションは、"咲いている花を楽しんでほしい"、"咲いていなければ花ではない"という哲学から生まれているのです。
☆カーネーション周年出荷のテクニック?!
ところで稲葉さん、カーネーションは周年出荷されているイメージですが、全て同じタイミングで定植するのですか?それとも、開花時期から逆算して少しずつずらして定植するのですか。
「全て6月に改植するんだ。圃場一斉改植!」
はて?では、どのようにして10月から6月という長い間出荷していらっしゃるのでしょうか。
実は、先述のポイント4つのほかに、カーネーションならではの栽培方法に秘密があるのです。それは「株の作り方」に由来しています。
そのカーネーション生産の秘技をウン探がみなさまに伝授してしまいましょう!
カーネーションのプロなら誰もが知る生産方法です。株の仕立て方にはいくつもの方法がありますが、ここでは稲葉流として基本的な一例をご紹介します。
「苗を種苗会社から購入すると、最初にこういう形で入ってくるんだ。
これをまず定植する。」
地面からぷ~っと芽が出てくる。それをしたから5節目でプチン!と折る(摘心)。
せっかく伸びてきた芽ですが、勇気を持って摘心することが大切です。農業に必要なもののひとつ、「勇気」。そーでもないか?
「そうすると、下の節から新しい芽がいくつかに分かれて展開するので、まずは5本を残す。
そのうちの2本を折る。」
残した5本のうち、下図の1-3は出荷用として花を仕立て、4と5はぷちんと摘心(花を咲かせない)。
なんと(◎o◎)/!また摘心してしまうのですか?
「そう2本だけね。
3本は出荷用に収穫。」
ここまでで先に3本収穫。
折った2本から側枝がぷ~っとこんな感じで上がってくるので(下図6-9)、
その4本を出荷用に収穫。
これで収穫のタイミングをずらしながら今のところ合計7本収穫。
そして、最後に1-3の後にぷ~っと伸びてきた二番花を出荷用に仕立てて収穫。最低でも1本確保したとして、これで合計8本。
稲葉さんは1株から収穫最低8本を目指しています。
「このようにして、1株の中で出荷時期をずらしながらリレーをして収穫することができ、またこの方法で収量を上げることもできるんだ。
こちらが先に収穫できるもの(稲葉さんの左手の2本)で、これがあとから開花するもの(右手の2本)。
」
なるほど、明らかに開花ステージが違いますね。これが一斉改植でありながらずっと出荷できる秘密なのですね。なぜ8本なのでしょうか。
「"最低でも"8本ね。
ワンシーズンで○万本出荷したいという出荷計画がある。その数を植えた苗の数で割ると、1株当たり最低8本は収穫する必要があるという計算だよ。」
次々と芽(側枝)が上がる強靭な生命力宿るカーネーションの性質を生かして、収穫の時期をリレーしているのですね。株の仕立て方は、いろいろな方法がありますが、稲葉さん流の一例を紹介しました。
しかし、稲葉さんや暖地の生産者さんたちが出荷しない時期(改植中)も市場ではカーネーションを販売していますがどうしてでしょうか。
「それは、暖地と高冷地で出荷をリレーするからだよ。
千葉のような暖地は6-7月に定植、10月頃から母の日過ぎるまで。
暖地が改植中の夏場は、高冷地(北海道や東北、信州などの生産地)が出荷するというしくみになっているんだ。高冷地では12月くらいから少しずつ定植する。ちょうど半年ずれているでしょ。だから出荷期間を補い合えるんだ」
なるほど、出荷を国内の産地でリレーしているわけですね。
☆稲葉さんの名物10本束
通常、カーネーションといけば、1束25本が4束入って1ケース100入り。従って仲卸さんでも25本束で販売しているのが標準形。
しかし、稲葉さんのカーネーションは10本×5束で1ケース50本入り。従って、仲卸さんでも10本束で販売しているのです。
なぜこのような入り数にしたのでしょうか。
「バブルのころから比べると経済状況も変わってきているでしょ。
お花屋さんが1つの品種で25本となると、量的に使いきれないという話を聞いたんだ。だったら10本にした方が買ってもらいやすくなるし、利便性を高めることになるのかなと思って。」
実際に少量多品種で豊富なバラエティを買い揃えたい仲買人さんたちにとても人気なのです。
☆"稲葉さん直伝"良いカーネーションを見分ける三箇条
① ガクを触る・・・ガクを触ってみて、すごくフカフカとか張りがなかったりしたらNG。別のカーネーションを買いましょう。
② 葉や茎を見る・・・ワックスが載っているか。健康や新鮮さの目安です。ワックスが載り、全体的にシルバーがかっていれば◎
③ 花弁を見る・・・傷が付いていないかをチェックしましょう。傷があるとそこから変色してしまいます。
★まとめ
・ 稲葉さんのカーネーションを「イナバの花」たらしめているのは
① 日照 ② 温度 ③ 土 ④ 灌水 ⑤ 稲葉さんの哲学
・私たちが1年中カーネーションを楽しめるしくみ。キーワードは「リレー」
・稲葉さんのカーネーションの人気の秘密は「顧客目線の10本束」
~知っておきたい!カーネーション・ヒストリー基礎講座~
■日本におけるカーネーション栽培の始まり
母の日の発端は1907(明治40)年、米国のアンナ・ジャービスという女性が、亡き母のために教会で追悼式を開いたこと。参列してくれた人たち一人ひとりに、白いカーネーションを渡しました。
翌1908(明治41)年は、同じく米国のシアトルの百貨店で母の日イベントとして、アンナ・ジャービスの活動をヒントに、存命する母親には赤いカーネーションを、亡き母には白カーネーションを贈ることを企画しました。それが全米に拡大し、米国では1914年、議会で母の日と制定されました。
1909(明治42)年、シアトルに在住していた澤田さんという方(お名前・職業不詳)が帰国した際、いくつかのカーネーションを持ち帰り温室で栽培し始めたのが、日本におけるカーネーション栽培の発祥です。
澤田さん亡き後、栽培を引き継ぎカーネーションの生産を体系化したのが土倉龍次郎さんという奈良県出身の実業家。1910(明治43)年に目黒に施設を設け栽培に着手しました。カーネーションの生産史100年超において礎を作ったのはまさに土倉さん。生みの親が澤田さんだとすると、最初の育ての親は土倉さんと言ったところでしょうか。
以来、日本におけるカーネーション栽培100年の間に生産を手掛けた方は述べ8,000人以上。現在、生産真っ最中の方(およそ900軒)を含め、生産者様たちの日々弛まぬご努力のお陰で、日進月歩の生産技術があり、私たちが今のカーネーションを楽しむことができるのです。
長い歴史に思いを馳せながら、ぜひ母の日には素敵なカーネーションを提案していきたいものですね。
・・・参考文献・・・
「カーネーション生産の歴史」 社団法人日本花き生産協会 カーネーション部会
「農業技術体系」花卉編7 農山漁村文化協会
「カーネーションをつくりこなす」宇田明氏著 農山漁村文化協会
2012年5月 8日
vol.93 平園芸(福島県)
いわき市 平園芸へ
今回はもうすぐ「母の日」ということで,母の日のプレゼントの代名詞と言えるカーネーション、鉢物に迫ります。
美しいカーネーションで有名な福島県の平園芸のもとへ訪れます。
上野駅からスーパーひたちに乗っていわき駅へ。
田園風景を想像していたので、都会さに驚きです!
車で15分ほど行くと到着です!
今回平園芸のたくさんのウンチクを教えてくれたのは薄葉大介さんです。
2011年9月からお父さんの丈夫(たけお)さんから代替りされました。
ちなみに平園芸の名前は地名に由来し、「福島県 いわき市 平」から来ています。
花芽を合わせる
さっそくカーネーションに迫っていきましょう!
平園芸では直径15cmの5寸鉢を主に、4寸鉢と6寸鉢も作っています。
鉢物のカーネーションは「すべては母の日のために」と言えるほど、母の日前の出荷に照準を定めます。5輪程がきれいに咲いた頃が出荷のベストな時期だそうですが、咲き加減を合わせるためにハウス内の日照管理、温度管理は非常に大切にされています。ハウスの窓を開けたり、暖房器で調節したりします。
一鉢ずつ見極める
ハウスは全部で18棟もあります!
そして、カーネーションは全部で3万2千鉢も植えられています。
ハウス内はきれいに縦横ともにピシッと整列したカーネーションの鉢花が並びます。
さらにここがポイントなのですが全体的にそのハウス内の咲き加減が揃っているのです!
実はこれは人の手によってできた光景なのです!
品種は同じでも、各鉢ごとに、やはり多少の成長の早い遅いのずれが出てきます。
例えば、暖房の吹き出し口のあたりは気温が高くなりがちなので花の開花が他の場所より早くなります。一方で、ハウスの入り口近くはハウス内より低い温度の外気に触れる機会が多いので開花が他の場所より遅くなります。
また、ハウスの真ん中あたりは日が当たりやすいのに比べ、ハウスの端や柱の場所、ハウス内のカーテンの継ぎ目で2重になっているあたりは陰になりやすく、花の成長も遅れがちになります。
そうした置く場所による花の成長のずれを全体として差が出ないように、日陰で成長の遅かったものを日当たりの良い場所へ移すといった置き直しを一鉢一鉢見て判断し、行っているのです。
この成長の差の判断は各人の目で判断されるので、パートさんたちとの共有で難しい点でもあるようです。
見事に咲き加減が揃っていて、たくさん育てられていた「グランルージュ」という品種は、最初にみたハウスでは1輪かつぼみかというもので統一されていましたが
次に入ったハウスではもっと咲いているものでそろっていました。
3万2千鉢を一つ一つそろえるとは、非常に手間暇がかかっています。
このハイレベルさなので水やりも一鉢ずつ手でやっています。「よく底面給水で鉢の下から水を吸わせる方法がありますが、それだと常に根が濡れていて根が弱くなるんです。」
パートさんたちにも水やりをお願いしていますが、6人ほどのパートさんたちで3時間程もかかるようです。
根が強く育つことのメリットは何でしょう。
それは水ストレスに強いことです。
カーネーションが市場などに出荷された後は様々な環境が待っています。
直射日光がたくさん当たるところだったり、日光が当たりにくいところ、、、また、日本全国どこへ行くかもわかりません。暑かったり、寒かったり様々です。
カーネーションたちにはそれまで育ってきた温度良し、日照良し、肥料良しの平園芸のハウスの環境が一番居心地良いので、外に出ていくことは過酷に違いありません。
植物全般に言えますが、快適にすればするほどその環境が当たり前だと感じて育ってしまいます。水やりも底面給水にすれば常に水がひたひたの状態が当たり前になってしまいます。
すると、出荷後水が常に十分ではない環境に置かれるとすぐにストレスを感じ,根が傷んでしまうのです。
根が傷んでしまうと、植物全体元気がなくなってしまい、葉の下の方(下っ葉)も黄色くなってしまいます。
こうした出荷後のストレスを少しでも減らすため土の表面から水をやっていきます。
水やりの時期の目安は「手で持って軽くなった頃」で表面の土が乾いたくらいです。
より乾いた環境に強くなるために水のやり過ぎを避けています。
この管理力が品質がよくてボリュームのあるカーネーションにする決め手でしょう。
消費者のことを思ってくれているのは嬉しいですね。
色を選ぶ
現在は20品種ほどのカーネーションを育ててらっしゃいますが、やはり色で欠かせないのが王道の赤とピンクのカーネーションです。
赤とピンクで全体のおおよそ3分の1を占めます。
さらに赤、ピンク以外に黄、オレンジ、紫などさなざまな色の品種を栽培しています。花の専門店さんは1ケース6色入ったMIX6種を好んで仕入れることから、平園芸では赤、ピンク以外の色の品種の栽培にも力を入れています。
その他市場などの注文に応じての栽培もしています。
王道の色を重視しつつ、複色のもの、香りの強いもの、珍しい色合いのカーネーションも作られています。
品種選び、大切なポイントは
●株張りするもの(ボリュームがあるもの)
●成育性の良いもの
●花の形が整っていること
●色合い
●輪数が多いこと
●花保ちが良いこと
●花ふけの遅いもの(退色のおそいもの)
●花の弁が多いもの
●葉の色 など
毎年こういったたくさんの点に注意が払われ、同じ赤色でも優れたものが選ばれます!
また、“ベロが目立たないもの”というのも、意外と気になる人が多いのでポイントです。
ベロとは、、、
↑この花の中から白く出た糸のようなものです。雌しべの一部、花柱(かちゅう)と呼びます。
どんなカーネーションにもこの花柱はあるのですが、品種によってこの花柱が花の中に隠れて見えません。真っ赤な「グランルージュ」はまさにそうです。↓
また、今年の母の日が終わり次第来年向けの品種選びが始まります。
大田市場の中央通路で毎年鉢物カーネーションの展示がありますが、いろんな品種紹介や、最近の売れ行きを踏まえた来年に向けての提案がされているので、それも参考にされるそうです。
カーネーション 出荷までの道のり
母の日から遡ること半年。
9月終わり~10月初め頃に種苗会社から「挿し穂」という茎から根が出た状態のものを仕入れ育てていきます。
3~4週間後には1本の茎が伸びて茎の節数が3~4節ある状態になっています。
この時期に“ピンチ”という芽を摘む作業を行います。
このピンチという作業をすることで茎の脇から新しい芽が3~4本出てきて、茎数が増えるわけですね。
このピンチ作業は12月後半にも行われます。
茎に節の数が13個ほど見られるようになった頃、花芽ができます。つぼみの兆しです!
そして1ケ月後 つぼみが小豆の大きさです。
さらに1カ月後 色が見え始めます。
さらに1週間後 開花です。
この道のりを経ていよいよ市場へ出荷です。
薄葉さんの今まで
薄葉大介さんは平園芸の長男として生まれ、幼い頃から家業を継ぐものだという意識の中、育ってこられました。しかし、ずっと今までこのいわき市にいたわけではありません。大学時代は東京で過ごし、経営学部だったそうです。意外な過去がありそうですね!
大学受験の時に農学部と経営学部を受けて両方受かったのですが、
「もともと理科が好きではなかったんですよ。」と振り返ります。
また、「新聞を配達することで奨学金をもらえる新聞奨学生という制度があって、その募集が文系の学生に限られていたんですよ。」
というわけで、2つの学部を天秤にかけた際に経営学部へ進まれました。
その新聞奨学生ですが、お話を聞いていますと結構タフです。毎日の朝刊、夕刊を配り、加えて月末には集金をする仕事もあります。「普通に社員みたいに働いている感じでしたよ。」と語ります。
しかし、「大学よりそっちの方が楽しくて、、、」ともおっしゃるので決して辛い毎日というのではなく、楽しみながら大学生活を過ごされていたのが分かりました。
矢祭鉢物研究会で学ぶ
そんな薄葉さんも大学生活を終えて実家に戻られると、お父さんの勧めで福島県矢祭町に研修へ行くことになります。
福島県は縦に3つの地域に分けられ、東を浜通り、西を会津、真ん中を中通りと呼ばれます。矢祭町は中通りの最南端に位置します。
この矢祭町に矢祭鉢物研究会というカーネーション、シクラメン、ポインセチア、ルクリア(ニオイザクラ)、プリムラなどの鉢物生産において名人級の人たちの集まりがあります。
略して、矢祭鉢研です!
その1人、金澤さんは(有)矢祭園芸として生産されていて、花の栽培や育種で高い技術を持つのはもちろん、研修生への生産技術の指導など、人の育成にも力を入れていらっしゃいます。
薄葉さんは矢祭園芸の研修生として、またその研修生たちや研修を終えた元研修生たちで創った現在20名ほどから成る「金澤塾」という勉強会の塾生として生産の技術を学びました。
金澤さんの考えでは、“実際に自分で失敗しながら必要な知識を学ぶ”というもので、薄葉さんも実際に研修する中で、植物の温度などの管理、病害虫対策の技術を磨きました。
そして、研修後実家で生産を始めます。平園芸ではそれまでお父さんの丈夫さんがシクラメンに力を入れて生産されていましたが、大介さんが生産を始めることになって、カーネーションの生産も加わることになりました。
薄葉さんは今も矢祭鉢研の月1回行われている生産についての検討会に参加し、ひたむきに日々技術向上に努めています。
個人で自分流に作ると花芽の具合が鉢によってバラバラになりがちですが、
矢祭鉢研には、「この時期はこれぐらいの育ち具合が良い」といった目安がしっかりあります。
薄葉さんは、出荷予定の鉢物のサンプルを、種類ごとに各6~10鉢を検討会の時に、厳しく名人たちの目でチェックしてもらっています。
自分はこの矢祭鉢研の名人たちと共に厳しい基準に沿って作っているのが強みと言います。
現在平園芸ではシクラメン、カーネーション、アッツ桜を3本柱に生産し、昨年からチェッカーベリーも始めました。各花の出荷時期が集中していないので年間を通じ、良いリレーができているそうです。
広い土地を生かして量も多く生産されていますが、4本柱のように種類を絞ることでその花の性質を細かく把握し、品質を第一とした生産が行われています。
アッツ桜の珍しい品種も見せてもらいました。
東日本大震災では
先の大震災では原発事故でもいわき市は避難指示が出ませんでしたが、薄葉さんは幼いお子さんの雄大君(当時まだ1歳)もいるので自主避難をすることにしました。
「いわきに帰ってくるのがいつになるかわからない」という辛い思いの中、薄葉さんがパートさんたちに平園芸の休業を知らせた時は、皆さん涙、涙だったそうです。それだけパートさんたちもこの平園芸を大切に思われていたのですね。
薄葉さんはその後お姉さんのお家や、ご親戚の勤めていらっしゃる会社の社宅がある千葉へご家族で避難されました。
これまで愛情を込めて育ててきた花たちを残して、またこれから先の見通しがつかない不安定な状態で生活するのはとてもしんどかったと思います。
1ケ月経って、4月半ばには原子力発電所から半径20~30km圏内の屋内退避指示が解除され、いわき市の放射線量も低いことが確認されました。いわき市から避難していた人たちも戻り始めました。
薄葉さんは避難してから、ありがたい縁で学生時代に新聞奨学生でお世話になったお店で働かせてもらったりした後、いわき市に戻りました。
震災後、平園芸で再び花を作れるようになり「またパートさんたちと一緒に仕事できるのが嬉しい」とおっしゃいます。
「パートさんたちを“雇っている”というのではなく、仕事をパートさんにして頂いている、みんなに助けられて成り立っていると感じます。」
こうした謙虚さ、どんな人も大切にする姿勢はパートさんに話をする雰囲気からもうかがえました。
平園芸のモットー
こうした姿勢は、薄葉さんのお父さんの丈夫さんが考えられたキャッチフレーズ
「人と共に 花と友に」にまさにつながっています。
これには一緒に働いてくれている人がいて、市場で売ってくれる人がいて、いろんな人が関わってくれるおかげで花を生産できることができ、また、花が友達のように身近な存在になってほしいという思いが込められています。
花は好きになるのに年齢、性別は関係ないので、たくさんの人に花好きになっていってほしいと薄葉さんはおっしゃいます。
ちなみにこのキャッチフレーズを考えたお父さんの丈夫さんは、今は家庭菜園とお孫さん雄大君のお世話を楽しんでいらっしゃるということでした。
平園芸の格言
○たくさん作っても愛情は一鉢ずつしっかりかける!
○母の日に向けて花芽をしっかり合わせる!
○人との結びつきを大切にする!
平園芸からメッセージ
●カーネーションは多肥料を好む植物なので、開花している時期には多くの肥料を必要とします。長く楽しんでもらうために肥料を随時あげてください。
●置き場は日当たりの良いところに飾ってください。
●水をやった後に受け皿に溜まった水は、しっかり取り除いて下さい。
最後に
もうすぐ端午の節句です。雄大君がいるので、立派なのぼりが立っていました。
↑雄大君。穏やかで安心した表情が印象的でした。素敵な人たちと、素敵な環境の中で大きくなってね。
今回平園芸さんに訪問させて頂いて非常に人への思いやりを大切にされているのを感じました。この思いやりが花へも向けられています。
今年も母の日の出荷が楽しみです!
(文責:kadono hiromi)
2011年3月28日
vol.84 JA香川綾歌南部
東北関東大震災で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
小欄で過去に取材の際にお世話になった生産者さんの中でも、多くの方々が甚大な被害に遭われています。
1日も早い復興をご祈念申し上げます。
さて、香川県シリーズ第3弾です。
母の日前特集で前回からカーネーションリレーをしています。
花業界では決して無視することのできない年間一大イベントである「母の日」が目前に迫ってきました。全国各地のカーネ―ション産地はこの母の日に向け、今一生懸命準備中です。
カーネーションをご利用される皆様も、この産地ウンチク探検隊をご覧頂いて、ぜひもう一度カーネーションの生産に関するノウハウを少しだけインプットしていただきたいと思います。
今回やってまいりましたのは「JA香川綾歌(あやうた)南部」(以下「綾歌」)です。
綾歌のカーネーション栽培は森さん、岡田さん、岡内さんの3軒から成り、次世代後継者とともに生産に取り組んでいます。
3軒合わせてハウス10棟、延べ床面積6,000坪、栽培面積3,000坪、総生産品種は50品種にもなります。
はい、早速ですがここで一つお勉強です。
ハウス内全てを指す延べ床面積をカーネーションの場合「建て坪」、そのうち花が植えてある実際の栽培面積を「植え坪」といいます。
建て坪に対し植え坪50-60%くらいが平均です。前回の香花園さんは60%でしたが、綾歌さんは50%くらいのようです。(どちらが栽培に良いということではありません。念のため)
JA香川綾歌としてカーネーションの生産を始めたのは平成元年。
“それまでも花生産一筋48年!”というのは岡田さんのお父様である岡田義美さん。
「日本の花文化は確立していて、既に何百年も続いている。これからも廃れることはないだろう」との見通しから花生産に携わっています。カーネーションを選んだきっかけは、当時日本花き生産協会カーネーション部会の部会長をお勤めであった香花園の真鍋さんが近くにいらしたので、指導してもらえるからということでした。他の生産品目も案はありましたが、近くに指導者がいらっしゃるカーネーションを選んだというわけです。
さて、平成元年にカーネーション栽培を始めたこの綾歌には、どのようなウンチクが隠されているのでしょうか。
まずは生産から伺ってまいりましょう。
3軒がそれぞれの方法で生産していますが、森さんは100%ロックウール栽培をしています。
(中には土耕でやっている方もいらっしゃいます)
こちらは森健人さん、27歳。
「栽培はロックウールとピートモスを使い、改植は毎年。毎年ゼロからスタートするんだ」
同じ香川でも前回の香花園さんは土耕だったかと思いますが、ロックウールを使うメリットは何でしょうか。
「改植のときに時間短縮ができるんだよ。ロックウールは1ベンチずつ蒸気で消毒していくんだけど、この作業を1日で仕上げることができるんだ。一気に消毒、一気に定植して、その日のうちに次期に向けたスタートができるわけだから、効率的でしょ」
なるほど、これは作業効率が良いですね。労働力と時間が短縮できるというのは、ひとつの大きなアドバンテージですね。
「6月のブライダルシーズンでも“白が欲しい”というリクエストがあれば白を残して、別のところから改植を始められるという作業メリットを得られる。皆さんが欲しい時に買っていただいて喜んでいただくために、1年の中でもできるだけ長い期間、良い品質のものをご提供するための選択だよ」
そうですか。消費者のニーズを思ってこその選択なのですね。
栽培のときに注意していることはありますか。
「生き物やし、結果は正直に出る。肥料も含めて、天気に合った管理をしないとな。
同じカーネーションでも品種によって全然特性が違うから、それをつかむまでに試行錯誤。毎年変えていかないといかん」
何かコツとか勘どころってあるのでしょうか?
「6-7月に定植するんやけど、水も肥料も一気にたっぷりとやる」
え?“たっぷり”ってそんなことアリですか?∑('◇'*)エェッ!?
「そう思うやろ。普通は何でもエサを少なめにして、強く育てるんやけど、うちはちょっと栄養過多にするんだ。
そうすると枯れたりするでしょ。それでも残った良い株を育てていこうっていうエリート教育なんだよ」
あえて過保護にしてスポイルされた子はサヨウナラ(^_^)/~~サヨナラ
それでも逞しく生き残る子だけを育てるって、そういう方法なのですね。
そういうのって誰から教わるのですか?
「他産地にお邪魔して勉強させていただいたり、本を読んだり・・・まあほとんどは独学だよ」
お父様から聞いたり?
「こんなことは親父にも聞けん。プライドかな?親父に聞いたら親父を越えることはできん。」
おっと、森健人さん27歳、“親父越え”を目指します。
こちらは森さんのお父上。壁は高そうですよ~。
ここ綾歌でも、カーネーションの葉にはしっかりワックスが載って、葉がクルンクルン@@しています。
このことを生産メンバーのお1人、岡田浩二さんが分かりやすく説明してくださいました。
「ワックスは植物が自分自身を守るために出すもので、これがあるということは病気にも強いということなんだ。人間でいう皮脂が固まって白くなったものだよね。成分は油分だから水もはじくしね」
では葉のクルンクルン@@は?
「栄養状態が良く、ストレスが少ないとクルンと巻こうとするんだ。ストレスが強いと葉を伸ばそうとする。
葉を巻いても十分生長できるくらい栄養状態が良いということなんだよ」
なるほど。そういうことでしたか。“若くて元気で丈夫!”これはもうなんだかアタシから見ても「3大羨ましい」の全ての要素が入っていますね。
綾歌のカーネーションから若さと元気と丈夫さをいただいてしまいましょ!(o^∇^o)ノ
前回特集した香花園でもそうでしたが、綾歌でも炭酸ガス発生装置を使っていました。
コレコレ。
香花園さんと同じこのようなものから、森さんのところでは高価なマシンもご購入されたそうです。
(↓コレ、ホント、タカイ。そう見えないけどウン十万円;)
「きちんと一定量の炭酸ガスがあると生長も促進され、節折れしにくくなるんだよね」
そうそう、カーネーションといえば、お花屋さんでも花瓶から取ろうとするときにポキッといっちゃうんですよね。特にスプレー・・・
これはお花屋さんにとっても悩みのタネですよね~*´Д`*
「品種特性もあるんだけどね。高かったけどこのマシンを導入してから秀品率が高くなったんだよね。今は90%が秀品」
出ました秀品率90%。なんとスゴイ!
ていうか、森さん、先ほどからお話をしながら何をされているのですか?
「芽かきだよ」
芽かき?
「そう、余計なツボミを取り除くことだよ。スタンダードもそうだけど、スプレーは次の芽がどんどん出てくるからね。
付いたままだとカッコ悪いし、極論だけど1本にツボミ10輪、花3輪だと結局お花屋さんでツボミを取らなくちゃいけなくなるよね。
取るときは葉が出ている方向と垂直の方にポキッとおると簡単に折る。
でもきれいに節から折らないと、完全に取りきれていないからそこからまた芽が出てきちゃうんだ。
2番花、3番花が出てきたら、1番花は必ず取る。すると2と3に栄養がいく。
2と3だけになるけど、あとから必ず4番花が出てくる。
そこでこの4を取るんだ」これが芽かきの手順です。
チョットチョット、ヾ(゜、゜*)コレなんですか?
御座のようなものがこんなところにありますが、何のためのものなのでしょうか。
「圃場で切ったカーネーションをこれに巻いて作業場に運ぶんだよ」
なるほど、でもなぜ、い草なのでしょう。
① 大きいから一度でたくさん運べる。→作業効率が良い
② 自然素材なので、素材が丈夫→耐久性が良い
③ ビニールに比べると、い草で巻いた方が花傷みが少ない→品質保持性
④ 入手しやすい→商品確保、流通性
などということのようです。
日本にある資源を有効に使うということは良いことですね。
収穫したものをこのようにい草マットに巻いて集荷場に持っていき箱詰めします。
このい草マットは出荷準備の作業台にもこのように使われています。
お邪魔した時はまさに出荷のピーーーーーーークッ!
皆さん黙々と作業されて、物音だけが作業場に響きます。
スゴイスゴイ。
おっと、大田花き行き発見!
(・_・).....ん?この青い大きな器はなんじゃ(・_・?)
夏の子供用プールか?そういえば森さんも岡内さんも岡田さんも育ち盛りのお子さんがいらっしゃると言うとったな。
教えて下さったのはJA香川県綾歌南部の瀬戸宏隆さん、25歳。(←若ッ!)
「前処理用の桶だよ。25本パックにした後、ここで花持ち剤入りの水で水揚げをするんだ。もちろん全量ね」
なるほど、こうやって出荷前にここに浸けて鮮度保持剤を吸わせるのです。
「たまに夏の暑いときはプールにしちゃうけどね・・・」
え??∑(゜◇゜;) あ、やっぱり??
「うそ」σ(゚┰~ )
はい、どうもありがとうございました。
出荷物は全量前処理を行います。
こちらがそのマーク。
出荷箱のここに付いています。
産地が行う前処理のことを“STS処理”といったりします。
出ました。業界のキーワード、“STS”。出る単間違いなし!
STSとはsilver thiosulfate(チオ硝酸銀)の略で、これが入った溶液で水揚げをするため、そう呼ばれます。
植物が収穫されたときに自らが出すエチレンガスにより、(エチレンガスを出す切り花は)一気に萎れていくのですが、このSTS剤はその老化作用を抑えて、切り花の寿命を長くするミラクルパワーを持っているのです。
殆どのカーネーションの生産者さんは、このようなSTS処理をしていますが、綾歌でもその処理をきちんとしていますよということを、出荷箱に明記しているのです。
さて、生産の次は綾歌の団結力について探ってみましょう。
綾歌では生産者の3軒と農協との4団体でチームを作り、担当制ではなく4組織で全部を行うという方法をとっています。
この組織の大きな担い手は25歳から36歳までの若いメンバーです。
こちらがその構成メンバー↓
あ、あのぉ普通でいいんですけど、普通で・・・^_^;
何もお願いしなくてもこんな風にフォーメーションを組んでしまうところが、日ごろの団結力の強さを物語っていますね。
「毎日会っています。会っている時間はお互いの奥さんより長いかも!」
というくらい彼らは密にコミュニケーションを取り合っています。
「公私を分けないんだよね。“ちょっと子供の熱出た!”みたいなことになると、事情も理解してお互い助け合う。“僕はこの担当”ではなく、4人で全部を担当するのです」
東京にも毎年定期的に訪問し、マーケット調査に余念がありません。
グループを構成するお1人にお話を伺ってみました。
あ、アレ?(゚ー゚?;)
お花の生産者さんですか?
「ハイ、岡内です」
これはこれは失礼いたしました(^^;)。。。綾歌のコアメンバーのお1人である岡内史行さん。27歳(←若ッ!)
こう見えて正真正銘のフラワーピープルです。
岡内さんはご卒業されてから某地方市場にご勤務されていましたが、平成18年から生産スタート。
仲間の皆さんの存在は?
「見本になるし、尊敬できます。経験豊富な方たちだから、助け合ったり教えてもらったり。“隣よりも良いものを!”っていう競争心も出るから良い存在です。競争原理が働かないと、良いものはできないからね!」
小学生のころ、ハウスに囲まれた通学路を毎日歩きながら花の生長を見ているうちに、自然に自分の庭で始めるようになったそうです。この時期には種をまいて、この時期には芽が出る、そしてこの時期には鉢上げが必要などというサイクルは、毎日朝夕見ているうちに自然に覚えたといいます。
観察力があるのですね。
みんなが同じような通学路を通っていたにもかかわらず、岡内さんには花や野菜が目に留まり、また別の人には別のものが目に留まるわけですから、やはり岡内さんは幼いころから植物の生長にご興味があったのでしょう。
そして、小学生低学年のうちからご自身でマリーゴールドやパンジー、ビオラ、サルビアなどのタネを撒き育て始めたといいます。
冬場でさえも、ご自分の部屋に土を持ち込んで、花を育てたのだとか。この興味と好奇心は半端じゃありませんね。
花生産て大変ではありませんか?
「大変というより楽しいな。苦にはならん」
花を生産するために生まれてきたような岡内さん。
生まれ変わったら、カーネーションじゃないとしてもまた花の生産をしたいといいます。
なんだか見た目によらず(あ、失礼!)本当に花好きなのですね。
綾歌はこんな花好きの生産者さんが集まっているグループなのです。
岡内さん、写真撮りますよ~。笑って、笑ってぇ~^_^;!!
【東京進出のきっかけは?】
綾歌は2009年から大田花き出荷してくださっています。お取引を始めてまだ年月が浅いのですが、何かきっかけはあったのでしょうか。
瀬戸さん「果樹や野菜の販売で大田市場でも野菜の方にはよく行っていたんだ。
あるときに大田市場の青果の方で会議があったんだけど、30分くらい時間が空いてしまって、フラッ~と花市場に行ったら、(大田花きカーネーション担当の)芳垣さんがいたんだ。
産地検討会などでお会いしたりして、顔だけは知っていたので声をかけてみたら、カーネーションを出してみようっていう話になってね。
それが始まりで今に至っているんだ。周りのみんなのお陰でいろんなことがトントン拍子でうまくいっている」
それまで花は地元と関西の市場のみに出荷していたそうです。
大田花きでカーネーション担当の「芳垣と目が合った」のがきっかけで東京に一度出荷してみると、意外にもマーケットの評価が高く、それ以降も「東京で勝負したい!」という気持ちが高まっていったといいます。
ここで復習ですが、そもそも母の日の発祥は何でしたでしょうか。
遡ること1900年代初頭、米国のアンナ・ジャービスという女性が、母親の追悼式で教会に集まった人々に白いカーネーションを贈ったことに始まります。
このアンナの母親というのは日曜日に教会で教師をしていて、なかなか人徳も篤く、南北戦争中に組織した女性運動クラブで敵味方を問わず負傷した兵士の衛生状態の改善に尽力した人なのだそうです。
母親の死後2年後に、アンナが教会で母親を偲び集まってきた人に白いカーネーションを贈る記念会を催したところ、母親思いのアンナに心を打たれた人々はいつも母親を思う大切さを認識して、毎年母親を集め母の日を祝ったことが発端となりました。
日本では、戦後米国の文化に倣ってカーネーションを贈るようになりました。カーネーションは日本でも生産され始めてから100年以上経ちますが、前回のウンチク探検隊でもご説明いたしましたとおり、昭和40年代のカーネーションの技術革新に洋花ブーム到来が相まって、国内のカーネーション需要と生産は爆発的に伸びていきました。
ところが、現在はコロンビアや中国などの輸入品が劇的に増え、国内生産者は生き残りをかけて策を講じていかなければならないのが現状です。
一般的には、工業製品では輸入が25%を超えると国産商品は大きな影響を受け、更に30%を超えると急速に息を潜めると言いますが、このデータから行くとなんと花き業界でもカーネーションの輸入は2007年の時点で既に30%程度。その後も増えていますので、更にその数字を上回っているものと思われます。こんなに右肩上がりで輸入が増えている花き品目をほかに探すのはなかなか難しいのではないかと思うくらいの輸入品率です。
このような輸入の増加は脅威に感じませんか?
森さん「全然感じないよ。」
マジで?∑(゜◇゜;)
「(消費者に対して)花の価値を下げなければ、輸入も受け入れたいと思うね。国産を買ったらモノが悪かった(だから花はもう買わない)とか、輸入を買ったらモノが悪かったと思われることがなければOKだよ。
むしろウェルカムくらいに思っているよ。周年通して消費者に良い花を供給するのが私たちの役目だから、輸入品とタグを組むことによってそれができるなら、ウェルカムだよ。
消費者の皆さんが欲しい時に自分たちが出荷できない時期だったとして、無理して変なものを出すくらいやったら、輸入にお願いしたいくらいやわ」
海外の見えない産地とも連携をして消費者の満足のために花を作るという森さんの心意気は、まさに本物。
コロンビアからでも火星からでもどんどん入って来い!って感じでしょうか。
もう一人、お兄さん格の岡田浩二さんにも同様に輸入品に対する見解をインタビューしてみましょう。
「脅威を感じないといえばウソになるけど、消費者は輸入品が必要だからそれを買うわけだよね。必要とさせた国内生産者に問題があるってことだと思う。マーケットが必要としているんだ。
本来なら必要のないものは生活に定着しないでしょ。
20年くらい前に米が不作だった時に、海外産の米を大量に輸入したことがあったけど、日本には定着しなかったよね。それと同じだと思う」
また、栽培者の高齢化が進み、栽培面積の減少、国産花きの将来の不安が叫ばれる昨今ですが、この綾歌においてはそんな話はどこ吹く風。ここでは20、30代を中心をしたこんなに頼もしい次世代経営者が確実に育っているのです。
森さんは後継に何の戸惑いもなかったのでしょうか。
「ないよ。19歳の時に大変そうな両親を見て手伝おうと思ったんだ。
花を触っていたら、自分の性格も元気に明るくなってね。それまでは“なんでそんなに怒りよるん?”て言われるほどいつも怒っていたのに。それで花をやろうと決心した。最近は“いつもニコニコ楽しそう”って言われるわ」
なるほどぉ~。その笑顔が若くて元気で丈夫なカーネーションを作る秘訣なんですね。
そのスピリットは、綾歌のカーネーションを手にされた消費者の皆さんにも届いているはずです。
【香川県で花を作るということ】
カーネーションの原産国はシチリア島などの南ヨーロッパ、或いは北アフリカや西アジアなど地中海沿岸地域です。
前々回の丸福清花園さんのオリーブではありませんが、香川県で何かを栽培するというのはやはり地中海性気候に似た気候環境を生かせるという特徴があるのですね。
地中海といえばローマ帝国が繁栄を遂げたところでもありますし、周年を通して農産物は豊穣な収穫ができるからということもあり、周辺各国でも取り合いとなったほど自然の恵みに溢れているところですね。シチリア島などはまさに地中海の真ん中に位置して、みんなが“欲しい”と領地合戦の戦場となったところです。
そんなカーネーションの原産地地中海と同じような気候条件でカーネーションを作れるいうのは、香川県が持つ大きな強みです。
香川は少ない人口ながらも比較的就農率が高いと伺いました。
瀬戸さん「小豆島でオリーブ生産が盛んなように、瀬戸内海気候は地中海性気候に似ているんだよね。日照量が多くて雨が少ない。だから周年何か作れるというメリットがあるんだ。
一方、日本一面積が小さいから量では他県に勝てない。香川県は農業従事者数が多いけど、1軒1軒の所有面積も小さくなる。こういうデメリットをカバーするのに十分な気候があるから、香川県の農業はあらゆる品目を幅広く作っているんだよ。実は香川県は規模は小さいながら全国でも有名な農産物の産地なんだよ」
香川の特産はうどんやカーネーションばかりではなく、コメを始めとしてカキ(柿)、ブドウ、イチゴ、レタス、ブロッコリー、アスパラガス・・・もちろん県内、関西地方の消費のほかに東京のマーケットでは高級店を顧客に勝負しています。
こちらはちょうど取材当日出荷を迎えたイチゴちゃん。
「さぬきひめ」ですって。ネーミングも麗しい☆ヽ(*'∀'*)/☆゜:。*。
しかも・・・全長が5cmもあるぅ~(≧∇≦)
青森のリンゴ、愛媛のミカンみたいに「うちはコレ!」というのはありませんが・・・ま、オリーブがそれに当たるかな・・・幅広い品目を栽培できる、或いは他県にできない品目を栽培できるというのが香川県の得意技です。
また、香川の場合、多岐にわたる品目を栽培できるだけに果樹や野菜の生産農家は品目のかけ持ちが多いのですが、花と畜産では専業率が高く、80%以上が専門農家であることが特徴です。ちなみに畜産といえば“讃岐三畜(さぬきさんちく)”:讃岐牛、讃岐コーチン、讃岐夢豚も香川特有の農産物です。
讃岐三畜のほかに“讃岐三白(さぬきさんぱく)”というのもあります。
砂糖、塩、木綿の三つの特産を指していますが、実はここ綾歌にとって讃岐三白と言えば「砂糖、塩、ホワイトラブ」。
ホワイトラブとは綾歌から出ている白いカーネーションです。
「讃岐といえば、砂糖、塩、ホワイトラブ」という合言葉もどうぞお忘れなく( ^―゜)b
いやいや、それにしても雨が少ない快適な気候の下、香川で農業をするというのは様々な選択肢があるんですね。
「雨にはそんなに降られんけど、女の人にはよくフラれます・・・(;_;)」(by瀬戸さん)
“結婚しとるやろー!” ヾ(ーー )ォィッと突っ込みたくなりますが、フラれて傷心のときはカーネーションにイヤされてくださいな。
JA香川綾歌南部の格言
・ カーネーションは過剰なくらいの栄養で育て、それでもスポイルされずに生き抜いたエリートのみを選りすぐるべし!(森さん流)
・ 部署担当制ではなく、グループ全体で全てを行うべし。
お子様が熱を出しても助け合い♪
・ 輸入品はライバルではなく、消費者目線で供給不可能な時期の協力者と心得よ。
輸入カーネの増加はそれだけ消費者が必要としているからという事実を忘るべからず。
・ 切り花を観賞するということは、ご飯を「いただきます」と一緒で、花の命をいただきますということ。
地中海のシチリア風日光を浴びて育った綾歌のカーネーションから若さと元気と丈夫さをいただき、自らの英気を養うべし!
消費者の皆様に一言
・ カーネーションは特に使い勝手の良い花なので、母の日のみならず日常で使ってください。(by 森さん)
・ TPP参加ムードが高まる中、花を作る人は花が好きな人だと思うので、職業としての花ではなく、花を愛する人たちによって育まれた温かいカーネーションを見てください。そして、綾歌の花のオーラを体感してください。(by 岡田さん)
・ 「綾歌の花で癒されてください」(by ISSA似のフラワーピーポー岡内さん)
綾歌のマークはこちら。買出人の皆さん、箱にこのマークがついていたら、香川の綾歌からカーネーションを出荷する若い精鋭たちを思い出してくださいませ。
↑この三角形のマークは、平成18年に綾上町と綾南町が合併して綾川町が生まれましたが、綾川町の前身にあたる綾上町の町章です。
【ウン探のつぶやき】
カーネーション(carnation)の語源を考えてみました。
カーネーションて日本語でなんて言うのでしょう。ナデシコというと一般的には一重のナデシコを指しますし・・・
薔薇みたいに当て字もないし、carnationという言葉はどこからやってきたのだろう(~ヘ~;)ウーン
よく見るとcarとnationでできているではないか。
つまりcar+nation=車国家か??
いやぁ、違うでしょ。どう考えても。これは絶対にハズレ。
Reincarnation(輪廻転生)と関係があるのか?まさかね。
昔、英語の先生に聞いたら「全然関係ない」って言われたしな。
・・・と思ったら、それを語源と説く人もいるようです。
ナデシコやカーネーションを英名でpinkというように、その花色から肉体を連想し、Carnis(肉)、或いはincarnacyon(神の化身、肉体化)が語源であると。
これらの言葉に「再び」という意味のReをつけると、Re-(再び)+incarnacyonで輪廻転生という言葉になるので、無関係ではなく元の語は同じということになりますね。となると、いよいよカーネーションを見る目も変わってきます。なんだか深い。
更に有力なのはcoronation(花冠)やcorone(花輪)から派生したとする説。
カーネーションが自生していた地中海の国ギリシャで行われた儀式の冠にカーネーションが使われていたからだそうです。
ちなみに学名のダイアンサス(Dianthus)は「神の花」という意味を持ちます。
最初の疑問に戻りますが、カーネーションを日本語で何と言うかというと、オランダセキチクといいます。
日本には江戸時代初期にオランダ人経由で紹介され、オランダセキチク(石竹)とかオランダナデシコなどと呼ばれていました。「竹」の字にあるように、確かにその節が竹っぽいですね!
【カーネーションの花言葉】
母の日の花色選びの参考にしてくださいませ。
赤 : 真実の愛、愛情、母の愛、愛を信じる
白 : 亡き母を偲ぶ、尊敬、純潔の愛、私の愛情は生きている
ピンク : 感謝、上品、暖かい心、熱愛
黄色 : 美、友情
オレンジ : 温厚
紫、青 : 誇り、気品、永遠の幸福
オット、香川県シリーズ最後の最後に忘れてはいけない、讃岐うどんの話。
讃岐うどんが香川で普及したのは、うどんに不可欠である小麦、塩、イリコ(煮干し)、醤油などの原料がこのあたりでは特産品で、容易に入手できたからだそうです。
もともとは弘法大師空海が平安時代に唐から讃岐うどんの技法を持ち帰り普及させたとされます。
香川ご訪問の際は、讃岐うどんグルメツアーもお忘れなく。どのお店も外れなくおいしいですよ。
2011年3月11日
vol.83 香花園(香川県)
香川県シリーズ第2弾。
今回は母の日前特集カーネーションです。
カーネーションの生産は1908年に東京都の中野で始まり、今や世紀を超える生産の歴史があります。
現在花市場ではありとあらゆる品目品種が流通しており、その多彩さは品質とともに世界トップレベルですが、国内で100年を超える生産の歴史を誇る品目は数えるほどしかありません。
カーネーションの流通は年間スタンダードで300品種、スプレーで400品種ほども。世界のマーケットを見ても、日本は最大級のカーネーションのマーケットを持っているといえるでしょう。
そんな中で、大田花きのカーネーション担当者を以ってして「確実にカーネーションのトップ産地のひとつ」と言わしめるのが、香花園(こうかえん)さんです。
香花園さんは香川県高松市塩江で市内でも少し標高の高いところ(香花園は標高約200m)にあります。
あれに見えるは四国山脈。あの山の向こうは鳴門の渦潮徳島!
香花園さんは誕生以来35年、谷口さんと真鍋さん、野口さんの3軒から構成される出荷グループですが、野口さんは鉢物生産がメインのため、大田花きには谷口さんと真鍋さんにご出荷頂いております。
谷口さん親子。右がお父様の伸次さん、左が伸輔さん。
こちらは真鍋さん親子。
お父様の光裕さんと佳亮(よしあき)さん
まずお邪魔したのは谷口さんの圃場です。
ん??
何か違う、何か違う、何か違う・・・何だろう
デッ、デカッ!!∑(゜◇゜;)
ツボミ、デカッ!!
なんと大きいつぼみなのでしょう。
え??ホントデスカ(←自分の目を疑う隊員)
・・・グルグル(@_@;)
コレ、ツボミィッ??
なんだかカーネーションのつぼみがロリポップキャンディーか・・・
もしくはに地球儀か見えてきました。
なんだかホルストの組曲『惑星』が頭の中をグルグルグルグル(@_@;)
ちょっと試しにグルリとガクの部分の円周を測ってみましょう。
どれどれ・・・
11.7cm・・・
な、なんと、11cm越え!?
あ、あれも、これもぉ??ドーユーコットデスカァア?
「大きいのは品種特性もあるんだよ。それは大きい品種なんだよね」
ちなみにこの品種の名前は?
「キング・オブ・キング!」
最敬礼!('◇')ゞ
大変失礼致しました!king of kingのサイズをメジャーで測ってしまうなんて恐れ多い。
それにしてもこのking of kingを除いたとしても、どうしてこのような立派な大輪ができるのでしょうか。
「何もやっていないよ。
普通に作っているだけ」と伸輔さん。
ンまたぁ~、もうそんなこと絶対ないナイ。信じナ~イ!
謙虚に答えてくださっていますが、これはやはり一つ一つお伺いしてみることにしましょう。
堆肥に秘密あり?
谷口さんのところでは大きな植木鉢に土を入れて栽培する隔離ベンチで土耕栽培しています。ここで重要なのが土作りです。
「土、見る?」
秘密の土作りかと思いきや、結構簡単に見せてくれました。
み、見たじょぉ~(-.-)!!!
夏には一度堆肥などの有機物を入れて良く耕します。
↓こちらがその堆肥。
ん?モミガラらしきものが入っている?
「牛糞堆肥を使っているんだよ。以前は水分調整のための副飼料がワラだったんだけど、それをくれる人がご高齢などを理由に止められてね・・・今はモミガラを使っているんだ。」
「こうして堆肥を混ぜた土に苗を植えてね、苗が小さい時はミストで潅水、根が活着して苗自体に吸水パワーがついたらパイプを経由して養液を混ぜた水をやるんだ」
ベンチの上にこういうパイプが2本走っていて、ここから潅水をします。
「これを“養液土耕栽培”っていうんだよ」
はい、出ました。「養液土耕」、ウン探の新しい四文字熟語。コレ花の生産のキーワード。
テストに“出る単”間違いなし。(゚-゚*)(。。*)ウンタン
土耕栽培は土に直接苗木を植えて育てる昔ながらの栽培方法です。より自然な状態で栽培するので、一般的には生命力の強い、引き締まったしっかりしたものが出来上がります。
このときに土にこだわりつつ、養液土耕栽培することによって、麗しくも強いカーネーションができあがるのです。
「作物はとにかく土だよね。ロックウール栽培はそれなりにはできるけど、その上ができん。土はそれなりに作るのは難しいけど、その上ができる!」
なるほど、これぞ品質にこだわりを持つ生産者のお言葉!
施設内管理に秘密あり?
チョットチョット、見てください。カーネーションの葉っぱってクルンクルンしているの、ご存知でした?
あっちこもこっちも、面白いくらいクルンクルン♪
「肥やしがよく効いて栄養がいきわたると、葉がクルンとするんだよ。だからクルンとしていた方がいい。もちろん、これも品種特性が大きいけどね。品種によっては栄養がいきわたってもクルンとならない葉もある。
そして、葉の表面に白い粉状のものがある方がいい。これを“ワックス”って呼んでいるんだけどね。
葉がクルンとしてワックスが載っていたら、肥やしが効いて元気な証拠。肥やしを効かせるためには施設内の管理が大切なんだ」
↓葉の表面上のワックス。
↓葉っぱのクルンは豚のしっぽ状がベスト!
このような良好な状態の花にするには、重要なのは施設内の管理ですか。
温度調節とか遮光とか、そんな感じかしら??←シロウト(-.-)
「いやいや、ポイントは空気の入れ替えなんだよ。換気がよくできていると結果的にワックスがよくのる。
夜明けとともに天窓を開けて空気の入れ替えをするんだ。日中は開けておく。これをすると全然違うんだよ」
むむむム「(´へ`;ムムム
何が違うのですか。何のために空気の入れ替えをするのでしょう。←まだワカッテナイ(-.-;)
目的は以下の通り。
① 湿度を下げる。
② 外気から炭酸ガス(CO2)を取り込む。
③ 朝外気を取り込むことによって温度を下げ、日中に向けて温度を上げていくという温度コントロールを行う。
なるほど~。
①は湿度が高いと病気にかかりやすいのと、葉の気孔が開かず呼吸できずに息苦しい、そして蒸散が少ないのでので、水や養分を吸わなくなってしまうということなのです。
また、②は夜間のうちに密閉された空間で呼吸していたカーネ様たちがたくさん酸素を吐いて、朝は酸素濃度が高くなっているのですね。
そうか、換気をきちんと行わないと、施設内の湿度が上がり、炭酸ガス濃度も高くなり、光合成や呼吸ができず生長しなくなってしまうわけや。←ワカッタ(≧∇≦)!!
炭酸ガス濃度を上げるためにこのような補助的なものも使っています。
基本的には空気中の炭酸ガス濃度が高い方が光合成が盛んになります。通常空気中には300ppmほど含まれていますが、閉じっぱなしにしているとすぐ半分くらいの値まで減ってしまいます。そうすると植物の生育に多大なる影響を及ぼしてしまうわけですね。
こちらは温湯パイプ。西日本独特の手法です。
「夏は暑いけど、銀色のマルチが熱を跳ね返してくれるんだよね。だからマルチのすぐ下は気温が低く、逆に下の方へ行くほどベンチの地温が高い。そうすると根っこは土とマルチの間でよく動くんだ。
ところが冬は、土の下に温湯パイプを敷いて地熱を温めるから、根を下の方に張らせる」
つまり、カーネーションにとって居心地の良いい快適温度があるということでしょうか?
「15度から20度くらいやね。最低温度は8度」
なるほど。これはまさに地中海温度ですね。
「改植後、とりわけ花芽を形成し始めたときにはよく肥やしを吸収するんやけど、毛細管現象で寒暖差があった方が肥やしをよく吸うんだよ。だから昼間は温かくても夜温は下がらんといかん。
関東はいいよね。関東ローム層でできているから、いわば“地球と繋がっているわけ”よ。だから地を温めるパイプの必要がない。土もフカフカだし、深いところに根を張るからベンチも温湯パイプもいらないんだ。ちなみに深いところに根を張ると、ガクが割れにくくなるというメリットもある。」
ほぉ(゚o゚ )、関東で栽培するはそんなアドバンテージがありましたか・・・でも関東には地球海性気候に似た瀬戸内式気候はありませんよ。
あらゆるハンディキャップをクリアして、日本でトップクラスのカーネを作ってしまうなんてすごいじゃないですか。
惑星のように球状のツボミがゴロゴロしているカーネーションの圃場にはウンチクが凝縮していました!
<小さなツボミから開花まで>
→→→→
品種選びに秘密あり?
谷口さんはスタンダード品種に限って栽培しています。どうしてスプレーを栽培しないのでしょうか。
「1回スプレーもやってみたんだけどね、スプレーとスタンダードは管理が異なるんだよ。
肥料管理も異なるし、温度管理もスプレーのほうが2℃高い。だからスプレーをスタンダードと一緒に作ると、スプレーがえらいごっつくなるんだよね。1本で見ると立派にできるように見えるんだけど、色気のないムキムキマッチョ系スプレーができてしまうんだ。しかも切る回転が遅くなる。だからスタンダードに特化しているんだ。消費者はしなやかで上品なカーネーションの方がいいでしょ」
一般的にカーネーションは栽培過程でガクが割れたりすることがありますが、これは大きくなりすぎてしまって割れてしまうのですか?
「まあだいたいは品種特性だね。そういう品種なんだよ。誰が作ってもね。ガクが5つの品種はまず割れるね。割れるのがいやだからヨーロッパでは盛んに交配をしていたんだ」
これ、よく見ないと気付きませんが、カーネーションのガクが割れないように留めているのですか?
↓ガクが割れないように透明のテープで留めてある。
「そうだよ。これひとつひとつやっていくねん」
つぼみが大きすぎてガクが割れてしまうのですか?
「いや、大きすぎてではなくて、これもやっぱり品種の特性だよね。
ガクが5枚だと大体割れちゃう。シム系(※)は大体5枚だからまず割れちゃう。6枚から7枚あると大丈夫だったりするんだけどね」
※シム系=スタンダード品種で、1938年米国のウィリアム・シム氏が育成したウィリアムシム(赤大輪)という品種から枝変わりで生まれた品種。100品種以上が選抜され、40年間に亘りシム系品種が一世を風靡したこともある。
おっとー、これらの惑星、いやカーネーションのガクにツボミのうちからひとつひとつテーピングをしていくなんて。
しかも花やから丁寧にやっていかんとあかんし、カーネーションやからちょっとした加減で節がポキッと折れてしまうし、上手にまかんと目立ってしまうし、きちんと巻いて貼らないと結局ガクが割れてしまうことになるし・・・これは気の遠くなるような作業です(+_+)
一方、真鍋さんは栽培品種のこだわりとしてスプレー品種も含め育種を行っています。
「自分たちが売るための品種を自分で開発できるからね」
将来は、必要とされるオリジナル品種で埋めたいといいます。
改植に秘密あり?
「改植(かいしょく)」とは、そのシーズンの出荷が終了したら、今ある株を総取替えして新しい株を植えることです。
この辺りにそれぞれの生産者さんのご苦労やらノウハウやらが凝縮しているはずなのですが、谷口さんはどのようにされているのでしょうか。
「毎年改植するよ」
おっと。
「出荷が終わったら株を抜いて堆肥を入れて、薬ではなく蒸気で消毒して、新しい株を植え込む・・・毎年するんだ」
2年で改植という生産者もいらっしゃると思いますが、どうして大変なのに毎年改植するのですか?
「2年目の株は彼岸や年末などのタイミングに合わせられずに早く咲いてしまうんだ。
根が張っているから、その分元気でしょ。だから出荷したい時期より早く咲いてしまうっていうことなんだよ」
なるほど毎年1年生を植えて出荷したいタイミングに出荷できるよう調整しているということなのですね。
2年生では自我が目覚めて言うこときかない?みたいな感覚でしょうか。
土耕栽培×毎年改植って、カーネーションの栽培パターンの中でも最も大変な方法だと思うのですが、1,000坪(約3,300m2)もあるこの広さを全て改植って、どのくらい時間がかかりますか?
「1か月かけるつもりで予定して3週間で終わらせるよ」
すごいな。谷口さん、働き者です。しかも1年で最も暑い時にそれそれは大変な作業でしょうに。
仕事できる人なんやろな~(*´∇`*)
「我々が採用しているカーネーションの栽培方法をカリフォルニア方式っていうんだ」
カ?カリフォーニャ方式??
う~ん、なんだか急にアメリカ~ン♪
ホテルカリフォルニアという歌なら存じております(古っ!)が、カーネーションカリフォルニア方式って一体何??
「研究されたカリフォルニア大学に倣って“カリフォルニア方式”って呼ばれるんだ。
特徴は
① メリクロン苗(組織培養で増殖されたウィルスフリーの苗)を使う
② 土は完全無菌、蒸気消毒
③ ハウスの中は清潔に♪
という3つが大条件であるということなんだ」
なるほど、ここに香花園さんの栽培の基本があるわけですね。
これは真鍋光裕さんの御父上が学んで日本で広めた方法だそうです。
カーネーションの普及
冒頭で日本におけるカーネーション生産の歴史は100年を超えると申しました。
どうしてカーネーションが日本の花きマーケットで「バラ・キク・カーネ」と呼ばれるほど三大品目のひとつに名を連ね、今でも尚廃れることのないほどの膨大な流通量があるのでしょうか。
菊のように「日本の花」というイメージもありません。
だからとって年に一度の母の日の存在だけがその理由ではありません。
それはやはり100年の生産の歴史が物語ってくれます。あ、いえ、真鍋光裕さんが語ってくれました。
その転換期は昭和40年代に訪れます。
ちょうどこのころ、カーネーション生産の技術革新が起きたのです。
イギリスにおける産業革命、ヨーロッパにおける文芸復興(ルネッサンス)、或いは現代におけるIT革命のようなものです。その革新の内容とは以下のとおりです。
① 土壌消毒技術の確立
カーネーションは連作障害も起こりやすく、ウィルスにもかかりやすい。ですから、それまでは土を毎年(あるいは隔年)全取替えしていました。(こりゃ大変だ(+_+))
それを土壌消毒という技術を導入することによって、取り替えるのではなく、今使っている土を繰り返し使えることができるようになったのです。
② 無病苗の導入
無病苗(病原体を持たない苗)とはそもそもフランスのジャガイモ栽培において、モーレさんという方が初めて導入したものでした。
それを香川大学の狩野(かのう)教授という方が日本にも導入したのがきっかけです。ちなみに狩野教授は真鍋さんのお父上である真鍋行雄さんとご友人だったのだそうです。
③ フラワーネットの導入
このネットのことです。
今は最初からネット状になっているものを張るだけですが、技術革新前はまず外側に針金を張って、その間に糸を張っていくという地道で時間のかかる作業をしていたのです。
④ 自動潅水システムの導入
そうです。ご想像のとおり自動潅水システムが導入される前は、ホースで水をやっていたわけです。
しかし手遣りでは広い栽培面積をカバーしきれませんし、コストもかかりますし、今ほど大量のカーネーションを生産するのは困難になっていたはずです。
このような技術革新を経て、日本のカーネーションの生産効率は劇的に向上し、生産量、品質ともに世界一のマーケットを創出するに至りました。
これとあいまって同じく昭和40年代、日本に洋花のブームが到来しました。
カーネーションの需要は爆発、技術革新を迎えていたカーネーションはこの需要に応えるべく爆発的な量を生産、供給するようになり、この上向きのスパイラルが上昇気「龍」のようにどんどん伸びていったのです。このようにしてカーネーションは日本中に一気に広まっていったのです。
ところでカーネーションていつが一番キレイ?
カーネーションは周年出荷がありますが、いつが旬で最もきれいな時期なのでしょうか。
香花園さんでは出荷は9月から6月。出荷後に改植、再び9月から開花が始まります。
もちろん大田花きのカーネ産地の中でトップクラスに君臨する香花園さんのカーネはいつお会いしてもうっとり麗しいのですが、中でもいつが最もきれいかお伺いしてみました。
「花は何でもそうだけど、季咲き(人工的なコントロールを加えずに、季節を迎えたことで開花すること、つまり旬ということですね)がきれいなので、やっぱり4月から5月にかけてだね」
生産のプロがおっしゃっているのですから、これはホントウです。
母の日に向けたこのころのカーネーションが最も美しくなるのです。
9月から6月までの出荷のうち、3-5月の3ヶ月間で年間出荷量の3分の1、6月単月で3分の1を出荷します。
つまり通算10か月出荷しているうち、この3カ月半くらいで、全体の3分の2を出荷しているのです。美しさもそのころにピークを迎えると言っていいでしょう。
カーネーションは香花園の皆さんにとって・・・
谷口さん「釣りのための資金源やな」←谷口さん、いい味出しています。仕事にモチベーションは不可欠!
真鍋さん「人生の最高のパフォーマンスです」
何を隠そう、真鍋光裕さんのお父上である真鍋行雄さんは、昭和45年に結成された日本カーネーション技術協会の結成員のお一人。日本で近代的なカーネーション生産の技術を確立したメンバーの一員なのです。
「カーネーションは生産者にとっては扱いにくい品目じゃないかな。
連作障害はあるし、芽かきに始まり手のかかる品目だし、切りにくいし・・・」
切りにくい・・・?
「そう、ほかの花みたいに花が咲いたから切るっていうのではなくて、次にこのツボミが上がってくるからココを切らなくちゃいけないと考えながら切らなくちゃいけないんだ。
ほんとうまくいかないね。全然言うこときいてくれへん。今までカーネーションを作ってきて満足したことは一度もない。だけど嬉しいのは消費者の人に喜んでもらったときだね」
失敗談もあります。
「芽かきをパートさんに任せたら、4輪のはずが3輪になっていたことがありました」
ガーーーーン(沈没)(;_;)
これはショックです。
「でもすべて私が悪いんです。指導の仕方が悪かった・・・(泣)
いろいろ失敗してますよ」
カーネーションの生産者さんにとって芽かきは最も大変で重要な作業の一つです。
これに失敗すると、商品になるはずのカーネーションを傷つけたり、全体のバランスを悪くするだけでなく、次に上がってくる芽を摘んでしまうことにもなりかねませんから、なかなか被害甚大です。
↓芽かきで取られた芽
輸入激増 その対策は?
そうです。カーネーションは言わずと知れた輸入激増の品目。
下のグラフは平成19年までのデータですが、その後もカーネーションの輸入品は現在に至るまで右肩上がりに増え続けています。
このことをどう捉えているのでしょうか。
真鍋さん「海外品が多いというのは、問題と捉えるか、当然の流れで認めざるを得ないとするかのどちらかだと思いますが、私たちの場合はむしろ後者と捉えています。
安くて良いものが売れるのは当たり前ですから。
としたら我々は輸入にはないものを出していこうとする取り組みが大切なのです。でも花は食べ物と違って安全性などの点からは差別化しにくいでしょう。
コロンビアか中国かと言われれば、国産のカーネーション生産者が相手にするのはコロンビアですね。規格もきちんとしているし、生産も安定している。これ以外のことをいかに強みとして持つかが国内生産者の課題ですね。全てを価格で競争し始めてしまったら、将来はなくなります。
絶対にこれなら勝てるということはまだ見つかっていません。ただコロンビア産のカーネを“脅威”には感じていません。強敵であることは間違いないのですが」
海外品を良きライバルとして見て、ともに業界全体を盛り上げていきたいというお考えをお持ちです。
海外品にどう対処していくか、谷口伸輔さん、真鍋佳亮さんをはじめとする新しい世代の課題です。
香花園さんの格言
・ 養液土耕栽培 × 毎年改植 × 換気で炭酸ガス取り込み × 香花園さんの技術と愛情 = 史上最強のカーネーションの誕生
わ~、ホルストの惑星がまた聞こえてくるぅ~!!(≧∇≦)
・ 輸入品は脅威ではなく、良きライバルと捉え、国産勢として競争するべし。
そのことによって消費者のフラワーライフをより充実させることができる。
消費者の皆さんに一言
・ カーネーションの良さは扱いやすさと日持ちの良さ、また価格も安定していることです。色のバリエーションもたくさんありますから、是非素敵な1輪を見つけて使ってください。
・ 香花園でなくてもいい。良い花を選んで買ってください。買ってすぐ枯れるのが一番悲しい。良い花を買って、1日でも長く花と向き合って楽しんでください。そして、花屋さんは1日でも早く消費者に花を渡してください。
深い!^~^!
ふかいな~。
エゴからの脱却!
消費者のための花であるという基本から決してぶれることがありません。
・ 「同じ品種なら」(という条件において)葉がクルンと巻いているものの方がコンディション良好です。理想は豚のしっぽよ~ん。
香花園の皆さん
後列左は真鍋さんの御子息の真鍋修平さん
2010年4月20日
Vol.76 千葉県 安房農協 カーネーション部会
母の日といえばカーネーションということで、今回はカーネーションの生産量では日本有数の千葉県、その中でも気候が温暖で古くから花の栽培が盛んな南房総へ行ってまいりました。
・・・しかし、4月も中旬になるというのに春まだ遠く、関東は肌寒い曇り空。強風でアクアラインもあわや通行止めか、という天候の中の出発しましたが、やはり南房総も寒気の中でした。
今回お邪魔したのはJA安房花卉共選部会のカーネーション部会です。この地域は花造りの歴史が長いだけに、個人での出荷が中心でしたが、共選共販を目的として平成13年に部会が設立されました。JA安房ではカーネーションの他にもストック・スナップ・金盞花、夏はトルコキキョウ・紅花を生産されています。
それではさっそく集出荷場を見学・・・の前に、お昼時ということで近くの定食屋さんへ。陽気な女将さんに運ばれてきたオススメのシメサバ定食がこちら。
見た目、もちろん中身も美味しゅうございました。
お腹も満たされたところであらためて集出荷場へ。
こちらがJA安房花卉共撰部会が誇る千歳集出荷場です。平成19年築の新しい建物です。
この建物ができるまでは、地区別に集荷・出荷していたそうですが、一箇所にまとまったことで効率よい作業が可能になったとのこと。
部会長の富永さん。
カーネーション部会員は11名、作付け総面積は約5000坪とのこと。ピーク時には5万本前後のカーネーションを出荷されています。
この日は農協の人を交えて、母の日に向けての選花基準についてのミーティングが行われていました。
生産者の皆さん、選花担当の皆さん、どちらも真剣です。
・・・・・・・・・
☆選花ってなに?
カーネーションに限らず、花は「等級(花の付き方や花の大きさ)」と「階級(草丈)」で選別され、市場に出荷されます。産地によって等級・階級の付け方は変わりますが、こちらの場合は 秀>優>良 といった一般的な付け方。階級はカーネーションの場合cm表記となり50?70cmが主体です。
この選別を生産者さんが個別で行うことを「個人選別」、複数の生産者さんで共同して行うことを「共同選別」と呼びます。安房カーネーション部会は「バラ共撰」。複数の生産者さんのお花を、生産者さんではなく第三者の目で選別することで規格・品質の均一化を図っています。
・・・・・・・・・
選花された花は25本ずつの束にされ、巨大な冷蔵庫に入り・・・
出荷時にはこの箱に入れられてトラックへ。25本束が4束で1箱100本入ります。
選別に関しては特に病気に注意して行っているとの事。咲き具合も重要視されていますが、集出荷場から市場に着くまでのタイムラグ、気温が安定しないとバラつくなどなかなか難しいようです。
選花をする皆さんと、とリーダーの石井さん。大田市場に出荷するリストをチェックしていました。
集出荷場を後にして、安房農協の川名さんにカーネーションの栽培ハウスを案内していただきました。
ハウスの中で寒さから守られつつ、膨大な本数の花がじっと出荷を待っています。オススメの品種は、と聞くと「赤ではエクセリア、チカスですね」とのこと。
赤いカーネーションのスタンダード「エクセリア」 作りやすく、秀品率が高いということで選択されているそうです。
川名さん(中央)とお話されているのは、安房農林振興センターの西廣さんと竹内さん。農林振興センターのお二人は来年の作付けの検討材料とするために、朝から各農場の土壌調査を行い、ミーティングでも肥料などについてお話されていました。花も野菜も、良いものを作るならばまずは良い土からということですね。
そうこうしているうちに冷たい雨が・・・。風も出てきて、4月だというのに足から凍えるくらいの寒さです。
皆さん気にされていたのはやはりお天気。
3?4月の不安定な気候で、なかなか思うように切れていないとのこと。寒ければ開かず、暖かければ咲きすぎる。これからの需要期に向けてどれだけの数量が出せるかが心配されるところです。とはいえ、
「こればっかりは御天道さま次第だからなぁ」
と、にこやか(?)にお話される生産者さん。お天気との付き合いも慣れっこのようでした。どんな状況でもより良いものをより良い姿で作り続ける。国内のカーネーションはまだまだ頑張っています。
皆さん、寒い中ご協力いただきましてありがとうございました。
(文責:川田)
★JA安房花卉共撰部会のホームページ
→ http://www.ja-awa.or.jp/kakibu/index.htm
2008年6月27日
vol.63 静岡県 PCガーベラ 他
安藤隊長、西山副隊長率いる、大田花き平成20年度の新入社員9名で探検する今回の産地新人探検隊。愛知県豊川市のJAひまわりで研修・取材を終えた後は、浜松PCガーベラに向かいます。
この一輪一輪を試験管にさす展示方法を最初に見たときには、このまま一式全部持って帰りたい!と思ってしまったほど。(弊社 展示にて撮影)
とってもかわいいオリジナルキャラクターのPiroro&Clara(ピロロとクララ)。パンフレットやダンボール箱、スリーブなどで活躍中!
浜松PCガーベラとは?
■どこにあるの?
浜松PCガーベラは、静岡県西部地方の浜名湖沿岸に位置する浜松市にあります。この地域は、気候が温暖で日照量も多く、農作物の栽培に
はとても適しています。
■PCガーベラのPCとはどういう意味?
「Packing Center」の略です。JAや地元ベンチャー企業と共同開発した世界初のキャップ掛け装置を設置。
■ガーベラの他には、何を栽培しているの?
キクやスイートピー等もたくさん栽培されています。
では、早速見学させて頂きましょう。ご紹介いただいたのは、浜松PCガーベラの部会長の古橋さん、副部会長の杉浦さんです。
写真は、部会長の古橋さん
まず、始めにご案内頂いたのは、ガーベラのキャップ掛け装置です。ガーベラは花弁が柔らかいので、輸送で傷がつきやすいため、一輪一輪ビニールのキャップがつけられています。通常であれば、手作業でする作業ですが、一日に考えられないほどたくさんの量のガーベラに一輪一輪キャップを着けるとなると、この作業にたくさんの時間が取られてしまいます。PCガーベラでは、平成5年に「パッキングセンター」を設立したことにより、ガーベラの出荷調整作業を各生産者の家庭から切り離して、ゆとりのある農業を目指されたそうです。
各圃場から、一度集められて、前処理中のガーベラ。12℃の冷蔵庫で一旦保存されます。
これが、世界初・ガーベラのキャップ掛け装置です。(ガシャ、ガシャ、ガシャ・・・)
どんどん進んでいく、ガーベラ
「ポトっ」落ちたー!!長さによって落ちる場所が異なるようです。
束ねて、箱に入れられます。
JAや地元ベンチャー企業と共同開発した、世界初のキャップ掛け装置を設置した施設へ一元集荷を行い、今まで手作業で出荷処理をしていた時間を高品質栽培やマーケティング等に費やし、品質や組織力の向上に繋げたそうです。
各生産者が「パッキングセンター」にガーベラを一度集めてから一元集荷する事で、他の生産者との比較を行い、パートさんが最終チェックを行うことで、常に最高レベルのガーベラを提供すること可能になりました。
このようなオリジナルキャップに入ります。これなら、市場、お花屋さんを経由しても、消費者までPCガーベラのガーベラと伝わりますね。
これが、パッキングセンターでのチェック表です。誰のガーベラが、何本良くない物があったかが記載されています。
続いて、ハウスを見学します♪
「土にビニールシートが被っていますが、これは何をしているのですか?」
「熱処理をして、土壌を殺菌しています。土壌を周期的に、殺菌・休憩させて土作りをして、十分に準備が整ったらまた新たにガーベラの栽培を始めます。」
この機械が、熱処理を行う機械です。作業時は熱くなるので注意が必要です。
土壌で栽培もされていますが、ロックウール栽培に変更されたいうのが、今回ご紹介頂いている杉浦さんです。とても清潔感のあるハウスですね。
ヤシ殻の上にロックウールを置いて栽培しています。通称「ヤシ殻ベッド」と言われ、やしの実の繊維の部分を細かくしたものを固めて作ったものです。ロックウールを使った水耕栽培の利点は、排水性の改善、病気の発生が少ないこと。収量が土耕より多いこと。連作が可能であること。肥培管理がしやすいことが言われています。
杉浦さん:「1品種は700株?2,000株までを目安に栽培しています。1品種を700株作る事によって、週3回1ケースは出荷することが出来ます。また、部会のルールとして、新品種%、色%など取決めがあります。これは、全量を共選共販として販売方針を一元化し、業務・小売用の特定品種の強制作付け、色別の作付けルールを制定しています。これによって自分の好みに偏らず、栽培することができます。時々、生産者もお花屋さんの意見を聞きに、直接出向くことがあります。自分でお花屋さんの意見を聞くことによって、新しい品種を入れるときの判断材料になりますし、ズレを防ぐことが出来るんですよ。」
もうちょっとゆっくりとお話を伺いたかったのですが、次の研修のためタイムアップとなってしまいました。
今回は突然の訪問で、名物広報の鈴木さんは別件でお仕事があり、お会いできない予定でしたが、お昼ご飯の時にわざわざご挨拶にと駆けつけて下さいました。
「男子はいいから。」と、新入社員の女の子たちと楽しく記念撮影をして嵐のように去っていかれたのでした。女性限定!!PCガーベラをよくご購入して下さる美人店長(?)がいる東京のお花屋さんには、よく出向かれるそうですよ。ここで書くまでもなく、みなさんよくご存知かもしれませんね(笑)
PCガーベラの皆様、お忙しい中、どうもありがとうございました☆
?KIRIN agribio 花き商品開発センター!?
続きまして、昨年10月にオープンされたという、KIRIN agribioの花き商品開発センターにお邪魔しました。浜名湖花博の跡地で、浜名湖ガーデンパークの隣に位置しています。
「今までは、新しい品種を開発しても実際に栽培をする圃場を持ち合わせていませんでしたが、花き商品開発センターが出来たので、自社内で栽培試験を行い、国内生産向けに優れた新品種を選び、生産者・卸売市場や小売店などの流通に対して新品種情報の発信を行う情報発信施設として、活用ていきます。」とお話頂いたのは、キリンアグリバイオの登坂さんと原さん。
キリンアグリバイオさんは、カーネーションをはじめ、スプレーマム、バラ、リモニウム、ガーベラ等の切花や、世界初の八重咲きカランコエ「カランディーバ」、母の日のポットカーネーション、世界の品種評価会で数々の賞を受賞しているペチュニアやニチニチソウ等の花壇用花き等、幅広い商品を全国の営利生産者様に販売されています。育種力とマーケティング力を融合した品種開発力をベースに、時代のトレンドに合った商品をいち早く消費者の元へ届ける仕組みを創っておられます。
昨年に無花粉ガーベラの“フルーツケーキシリーズ”を発表されています。今秋には、新品種のカスミソウ’ファンタイム’と、’ダブルタイム’が市場に出回る予定だそうです。
花き商品開発センター入り口で記念撮影です。
広?い商品開発センターです。
中でも、心打たれたのは、モカスイートです。名前もピッタリ!去年作付けされた新品種だそうで、今年から出荷が始まるそうですよ。
ウッドストックも同じく、去年初めて作付けされた新品種。やはり、ノスタルジックな色合いに惹かれます。
下田隊員のオススメは、ポエム
続いては、バラの試験圃場へ。
深紅のフリンジ咲きのバラを発見しました。トルコギキョウのコサージュシリーズのような咲き方です!
みんなのオススメは「これ!!」
香りに酔いしれる立石隊員♪高芯剣弁咲きのワイン色のバラ。リークを大きくしたような、スタンダードのバラです。香りもリークと同じようなダマスクモダン香でした。
最後は、ガーベラの試験圃場へ
各品種の上いは、写真・品種名・特性などが分かりやすく表記されています。
男性隊員も和気藹々のムード
この試験場から新しい品種が生まれるのですね!
キリンアグリバイオの皆様、お忙しい中ありがとうございました。
これで、栽培現場の研修は終了です。夕方になり、御殿場研修所へ急ぎます。
?橋本フラワー?
最後は研修所の近く、いつもお世話になっているお花屋さんの橋本フラワーさんで見学させて頂きます。ときどき市場から代表者が、橋本フラワーさんに、水揚げ方法など花屋業の勉強でお邪魔させて頂いております。
お店の入り口では、芍薬が優しく出迎えてくれました。
たっぷりとした品揃え月・水・金の表日は毎回仕入れをされて、全ての花が入れ替わるそうです。道理で、お花がイキイキして見えます!バラのレッドイントュージョンや、アリアム、トルコギキョウのコサージュ、八重のクレマチスの鉢ものなど、新しい品種もたくさんあり、お花好きのお客様の目を楽しませてくれます。また、仏花や胡蝶蘭などもたくさん置いてあり、たっぷりとした品揃えが安心感を与えてくれます。
PCガーベラのスリーブ入りのガーベラを発見!
奥様:「うちは、いつもPCガーベラさんのガーベラを購入しているんですよ!」
橋本さんと奥様
あまり花は、レジの下のスペースでアレンジの参考として活用させます。「この方が素敵でしょ?一石二鳥です」と奥様。
最後には恒例の記念撮影!橋本フラワーさん、ありがとうございました☆
格言
一つの目的に向かう強い意志、部会の取決めがスゴイ!(PCガーベラ)
・新品種情報発信施設
・・・キリンアグリバイオの花き商品センターに注目すべし!(キリンアグリバイオ)
・お客様を満足させ、楽しませてくれる品揃え・雰囲気を参考にするべし!(橋本フラワー)
隊員は無事に研修を終え、御殿場研修所に向かったのでした。
新人探検隊のみなさん、花卉業界のスペシャリストたちから、たっぷり吸収しましたね!
初めての研修お疲れ様でした♪
(文責 Cimone♪)
2007年8月22日
vol.44 長野県 しんせんむら
今回訪れたのは、蓼科のカーネーション産地です。
というと、別荘地!
蓼科山が連なる八ヶ岳連峰は本州の中央部を南北に走る大地溝帯にあたるため、湿った空気が流れ込むのが遮られ、湿度が低くイギリスに似た清涼で爽やかな気候風土が特徴!
梅雨の鬱陶しさもなく、夏でも平均気温が19℃程という、とても快適な気候に恵まれています。
信州ビーナスライン沿いに建てられた“文化塔”はそんな気候を表す証拠!
紀元2600年(西暦1940年)を記念して建てられた塔で、当時の新聞や雑誌、書籍等を納めている、今でいうタイムカプセルなのですが、乾燥した気候ゆえにコノ地が選ばれたというのです。
しんせんむらは5人グループですが、全員の圃場が標高1000m以上の場所に位置しています。
そんな人間にとって快適な環境は、花にとっても不快なはずがありません!!
「天然記念物の松の木が目印だよ!」と言われ、今年開通したばかりのエコーラインをひた走ると、発見!
立派な松がありました。
この松は田んぼを守る防風林だとか。
そして到着!
あいにくの曇り空ですが早速レポートです。
あるアンケート調査によると、カーネーションの購入時に一番こだわるポイントは、色・品種という結果
が出ています。
しんせんむらの花色、花持ちバツグンの出荷品種は、幅広い用途に使えるベーシックなものを取り揃えています。
エリス ガンジーイエロー ロイヤルグリーン
ウエストダイヤモンド スカーレットクィーンスーパー
こちらは花がまだ咲いていませんが、『チーク』という品種です。
まるでダンスを踊っているように見えませんか?
これは、このように茎が暴れやすい性質のようです。
品種ごとに異なる性質は、色・形・香りだけではないんですね。
訪問した時は ちょうど切終わりで、ハウスには蕾ばかり…。
でも、栽花最盛期には綺麗に咲きそろったカラフルな長方体が見られるとか。
「まるで花の羊羹のように綺麗なのよ!」と教えてください
ました。一足遅く、残念…。
でも、花の長さがピシっと揃っています!
出来上がったばかりのハッピに身を包んだ しんせんむら 島立村長にお話を伺いました。
『私たちの栽培ポイントは、土壌消毒をしない、完全有機栽培ということです。
悪い菌はいくら消毒しても土に残るから、増やさないで、他の菌とのバランスを取っていればよいんです。
そうすることで、植物の根が必要なもの選んだり、時には自らの分泌物と有機で求めるものを作り出して吸い上げてくれるのです。
化学肥料だと必要でないものも全部吸収してしまうから、摂取しすぎてしまうんですよ。』
有機栽培に変えて6?7年経つしんせんむら。やはり最初は半信半疑だったようです。
でも、ピシッと揃って芽が上がってきたり、病気になりにくかったり、葉が厚く、ワックスがのった健康状態を見て、その良さを確信されたようです。
今回のキーワード その1: ワックスがのる
カーネーション特有の表現で、ワックスを塗ったように茎や葉が白くなっていること。
これは自らが分泌するもので、害虫や病害に対する抵抗力をつけている証拠。
言ってみれば、健康のバロメーターです。
!有機栽培で健康状態良好のカーネーションは、普通ならボリューム落ちる2番花も1番花と変わらない太さとボリューム、そして 花持ちの良さに表れます!
2度切りもしていますが、9月に1番花だけを切る秋物もあります。
2回切だと12月に定植することになるので、冬の寒さ越えが大変なのです!
高冷地の強みを活かした秋商品は、同じ品種でも太さ、ボリューム感が違います。
さらに、花だけでなく足元からも健康さをうかがい知ることができます。
下葉が枯れるのは株に元気がない証拠。
ところが、全く枯れていません!
つまり栄養を吸い上げる根っこが元気な証です。
では、そんな元気なカーネーションを作る秘密に迫ってみましょう!
高品質の秘訣?
土が一番です。
土作りは福島で行われ、仲間で共有する堆肥場で熟成させるということなので、案内してもらいました。
堆肥と聞いて悪臭を想像していましたが、意外なことに醤油工場のような甘い香りがします。
これは分解発酵菌で発酵完熟させることによって発生した“放線菌”によるものだとか。
そして、こんなにフカフカ!
桐生隊員の腕がずぼずぼと埋まっていきます。
「あんまり行くと埋まって出れなくなるよ!」なんて脅され、おっかなびっくり歩いた足跡もこんな風に残ります。
福島から送られた土に発酵菌と信州特産の蕎麦がら、そして 卵の殻を混ぜて、さらに1年熟成させると、有機発酵堆肥の出来上がり!
これが、苗の健康維持に大切な要素となります。
高品質の秘密?
魔法の赤い水!
光合成細菌を使った秘法の赤い水を灌水に混ぜて与えています。
赤い水に含まれたアミノ酸など多数の物質が、植物の生育を促進させるのでそうです。
この水と酵素を灌水すれば、豊富なミネラルを吸収して立派なカーネーションが育つのです!
高品質の秘密?
人の手による毎日のお手入れ
やっぱり日々 人の目による健康診断と愛情が注がれることによって元気なカーネーションができるのです。
ここで使用されていたアイテムがこちら!
コロコロ車もプラスチック性で軽く、且つ、車輪の幅が太くて安定感があるものに進化しているようです。
こうした栽培方法により、カーネーション産地としては日本で始めてエコファーマーを取得されました!
今回のキーワード その2: エコファーマー
「持続性の高い農業生産方式の導入促進に関する法律」に基づいて、持続性の高い農業生産方式を導入するための「導入計画」について、県知事が認定した農業者(個人または法人)のこと。
つまり、環境に配慮して、地球に優しい生産方法を計画的に取り入れている生産者のことです。
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恵まれた自然の中で、秘伝の土や水によって高品質な花作りを実現したは、神仙村!?
どこか神秘的な香りがする村でした。
お花屋さんへのメッセージ
しんせんむらのカーネーションは、花が大きく、発色、花つきもいいです!
また、1回水上げしたら、切り戻し回数が少なくとも日持ちします!
ぜひお試しください。
“しんせんむら”の格言
寒暖の差があり、乾燥した空気で別荘地としても人気の蓼科は、カーネーションにも
最適!
高品質なカーネーションの秘密は、土、水、そして人、それぞれの高いコダワリに
よるもの!
地中の微生物のえさは良質の有機堆肥!
だから、良質でないとお腹こわすんです!
2006年8月 1日
Vol.19 グリーンバレーファーム & 鮎沢農園
(長野県 岡谷市)
長野県産地訪問第3弾!今回は初のカーネーション産地、グリーンバレーファーム&鮎沢農園へ行って来ました!
くしくも世間は3連休の初日!朝6時に会社を出発したのに、都内を抜けるまでに2時間。
観光へ向かう車に紛れて、なんとか到着しました!
設立以降 環境や健康に配慮して、低農薬で栽培されているグリーンバレーファームのカーネーション。その栽培方法には拘りがたくさん!代表の鮎沢正浩さんにお話を伺いました。
?出荷を待つ花達に出迎えられて?
始めに選花場へお邪魔したら、出荷を待つ花がお行儀よくならんでいました。 現在、出荷があるスプレーカーネーションです。エトランゼ ラパン ミシェル
ウッドストック Gサファイア ルーレット
いよいよハウスへ、と思ったらハウスの外のカラフルで可愛らしい草花に目が止まってしまいました。 自然の野の花の美しさに心が癒されます。
ハウスは網戸で風通しもよく、創造していたよりも涼しくてホッとした私達でしたが、それには秘密がありました! ハウス内は 風向き、風速、そして内外の温度差を考えた窓の開閉など、全てをコンピューターで管理されているのです。 そうして、花にとって常に最適な環境が保たれているのですね。
?カーネーションの顔を見て健康をチェック!?
鮎沢さんのところの土はフカフカしていて、腕が肘まですぽっと埋まっちゃう、って聞いたんですけど…。
「ホントだよ、やってみな。」と言われ、いざ実験!
でも、化学肥料を完全に否定されているわけではありません。
「料理と一緒だよ!科学調味料でもある程度味付けできる。でも、不純物も含まれる昆布だしを入れた方が味に深みがでるでしょ!」
と言われて納得した私達でした。
日頃から自分で土の検査をして、窒素量などを測るのだとか。
そして、不足しているものを適度な量混ぜてあげるのがコツのようです。
「だけど、土の検査して悪い場合があるけど、慌てて不足してる肥料を足すと失敗することがあるんだよね。」
だからプロは、“植物の顔”を見て判断するのだとか。
そして、健康に育っていれば問題なし!
データーだけを見て機械的に判断するのではなく、顔も見て『いつもと違いがあるかな?』と診察しているのですね。
まるで植物のお医者さんのようです。
?花作りへの思い?
ところで鮎沢さんが花作りを始めたきっかけは何か聞いてみました。
鮎沢さんのお父様は花を作り始めて50年!
生活の手段ではなく、花を作ることを目的として頑張ってこられたお父様の背中を見てきたからこそ、
“消費者が見ていいと評価してくれるものを作る!その為には資財、手間を惜しまず、これをやったら採算が合わないとは考えない”という思いを自然と受け継いでいるようです。
偉大なる先生が身近にいらしたんですね。
そして、グリーンバレーファームは理想的な施設で、最高のものを作る!
というコンセプトの元に3人の生産者によって行われています。
成熟したカーネーション市場で次に流行るのは何か?を常に意識しています。
1番はやっぱり 花保ち、そして日本人好みの色!
「濃い、薄いの中間の色を表現できるのは日本人だけだからね。」と鮎沢さん。
そんな日本人好みの繊細な色を作り出そうと努力されているんです。
そして、花付きのフォーメーション、香りにも拘っています。
さらに、輸送中に花が傷み易かったり、病気が出やすくてハイリスクな為、他産地では作るのを嫌がるような品種もあえて作っているのです。
ネボ マーロ
こんな品種もあります!
インパクトシリーズ スザク ドナ ダークテンポ
「カーネーションは1,000品種あるというのに無難に売れる品種しか生産者は作らないし、花屋も買わない。だから自ら無限の可能性を狭めている。そんな風だから古くさいイメージがあり、値段も安くなってしまっている。他にない復色、香りをもっとアピールするべきなのに。」と熱い思いを語る鮎沢さん!
カウボーイハットがとってもお似合いですが、あれ?切っているのはガーベラ???
現在は近くの花屋さんに直接卸す程度しか作っていませんが、来秋から市場にも登場します!
「夏場の日持ちしないガーベラのイメージを払拭したい!」と力が入ってます。
たしかに茎の太さにビックリです。
グランディーバ フジ スノーフレーク
ビビット ミノー
そして、隠し玉はガーベラだけではありませんでした(?)
マスデバリアも発見!
今はお休みしていますが、いい品種が手に入れば再開の可能性も?
カーネーションを基本にしながら、少しは違うものをやってみたい!と意欲的な鮎沢さんでした。
?老舗の趣き 鮎沢農園さん?
お父様のハウスも見せていただきました! 昭和43年に木造ハウスから始め、徐々に鉄製へと変化を遂げてきたハウス。
燃料タンクも昭和43年から使ってます。
以前は申請すれば1/2の値段で購入できましたが、高くなった今でも惜しみなく使って栽培しています。
主力品種のパールピンク、ライラックは、夏場弱くて、病気に弱いことから作るのが難しい品種ですが、淡く、上品な色合いから根強い人気があります。
ライラック パールピンク
でも種苗会社では もう販売していません。
だから、「ここにあるものを世に送り出したい!」 「生きているうちは頑張るんだ!」
さらには、
「来年は母の日に合わせて出荷できるものを増やす」、と意欲満々に語ってくださいました。
ブライダルでも人気の品種!
最近 私が出席した結婚式でもこのように飾られていました。
グリーンバレーファーム・鮎沢農園の格言
・有機肥料で栽培したカーネーションは、化学肥料だけのものに比べ、色や日持ちに差が出るばかりか、
「表情のある花」が出来る!
・鮎沢さんにしか作れない定番品種と、毎年 登場する時代に即した新しい魅力のカーネーションに注目すべし。
・夏場でも日持ちがするガーベラの登場に期待すべし。
?おまけ?
雨上がりの帰り道、ちょっと幸せな気分になれました♪