2013年11月15日
vol.102 【後編】ヴァン・デン・ベルグ・ローズ・チャイナ◆(株)クラシック
日本へ
前編では、グローバルスタンダードを満たしたエレガントなバラが、ヴァン・デン・ベルグを出発するところまでをご紹介いたしました。これらのバラを日本での総代理店として大田花きに出荷してくださるのは株式会社クラシック。
こちらは、今回の取材に同行してくださった(株)クラシックの難波稔正(なんば・としまさ)さん。ハンサムで優しいジェントルマンです。
趣味、焚き火・・・と釣り。焚き火>釣りなのだとか。んー、この続きはまた別の機会に♪
昆明から飛行機で成田へ輸送されたバラは、コストの点から成田までは大箱で輸送され、成田で通常の卸売サイズ(1箱30本程度)にリパックされて市場に届けられます。
そのリパックの際、ここでもう一度検品されるのです。
中国から出荷される時に検品、そして成田に到着し、国内輸送される前にもう一度検品、さすが(株)クラシックの品質に対するこだわりが反映されたシステム作りです。といってもなかなかイメージが湧かないかもしれません。
では、画像でご覧いただきましょう!(写真提供:(株)クラシック)
検品、リパックされる施設がコチラ。青い空と白い壁~!
成田空港から車で5分のところにあり、通称"臨空工場"と呼ばれます。
切り前の不揃いなものや花キズの有無を入念にチェックし、見つけた場合は直ちにシャキーン!と抜き取り、国内販売ロットの30-40本にリパックしていきます。
検品の様子↓ 少しのキズも見逃さないという真剣な眼差しでバラをチェックするスタッフさんたち。
こちらがリパックのシーン。
(株)クラシックの品質保持のこだわりで作られたシステムは、これだけではぬぁーーいのです!
はい、コチラ!
↑差圧予冷(さあつよれい)装置という冷蔵システムです。
「差圧予冷」という言葉に初めて触れる方もいらっしゃると思いますが、ざっくり申し上げますと、保管時に速やかに商品を冷却し、時間経過による商品の劣化を防ぐシステムです。管理温度は、バラの劣化を防ぐのに最適とされる3-5度。
↓もっと詳しく知りたい方はコチラをクリック!(手書きやし、わかりにくいかもー!?)
右上の信号機のような三つの穴から冷気がびゅんびゅんに入ってくる一方で、箱が接している 壁面の向こうから空気をガンガンに吸い込み、左上の四角いパイプからその空気を排出しているのです。この部屋の空気が循環し、人が入っても長くはいられないくらい、"SO FREEZING"!!(さっぶ!)!な状態になるのです。
フツーに冷蔵庫に入れただけでは、箱の内部まで冷気が行きわたり、商品を低温で管理するところまで到達するには、結構時間がかかるのですが、差圧予冷により、箱の中を冷気が吹き抜け、速やかに商品を冷却することができるのです。だから、バラへのストレスも少ない!
日本に到着してからも(株)クラシックのシステムにより、信頼の品質が維持されているわけですね。
このようにして遂に大田花きに届いたヴァン・デン・ベルグのバラ。
足元にはきちんとプラスチックバケツに水が入っています。
成田でリパックされる際にこのようにタテ箱に入れられるのです。
そして市場で販売されます。(10月25日のセリ販売の様子)
ちょっとだけアンスリウム
現在はまだ日本への出荷はないのですが、せっかくなのでアンスリウムの圃場も見せていただこうと思います。世界中で流通するアンスリウムのほとんどの品種は、オランダのアンスーラ(Anthura)という種苗会社で生まれたもので、アンスリウムの育種と生産はオランダのお家芸と言ってもいいかもしれません。オランダは世界の花の流通のうち、多くの重要な部分を握っているのですね。
では、アンスリウム、Please!・・・とニックさんにお願いしたら、
「ハイ、これ履いて!」
と渡されたシューズカヴァー!
オッケー、ちゃんと履きますよ、ばっちり(゚∇^*)
「で、こっちも着て!」
と更に渡されたのは、使い捨ての繋ぎ服!
なんとこんな格好に変身させられてしまいました!
ジャジャーン!!!
もちろんウン探も!
この格好をせずにヴァン・デン・ベルグのアンスリウム圃場には一歩たりとも踏み入れることはできないのです!
アンスリウムはデリケートで病気の感染が懸念されるので、徹底した衛生管理が必要なのです。
手洗い、靴のカバーの上から更にこちらのマットで消毒。
では、いざ潜入です。
このアンスリウムの圃場は切花で3ha、そのほか鉢物で2haあります。
アンスリウムもバラと同じように切り前のタイミングにはこだわりがあります。
「ノーズの上から3分の1がグリーンになったころがベストタイミングなんだ」
というニックさん。
理想的なタイミングがこちら↓
こちらはノーズ全体がまだ緑なので、早いというわけです。
アンスリウムの場合、色付くエナメル状の(象の耳のような)部分を「仏炎苞(ぶつえんほう)」といい、実際の花は象の鼻のように見える「肉穂花序(にくすいかじょ)」と呼ばれる部分です。
仏炎苞はいわゆる花ではなく、肉穂花序にらせん状に小さい花が付いて、根元から開花していきます。その開花が進み、残すは鼻先3分の1のというところで、採花するわけですね。
アンスリウムも将来的にはクラシックさん経由で日本のマーケットに輸出される予定ですので、みなさまも楽しみにしていてくださいね!
労務・教育・人事管理など
オランダの人がオランダ資本で中国の人を使って、中国でビジネスを展開する。 こういうのを洋の東西におけるcross cultural management(クロス・カルチャラル・マネジメント)というのでしょうか。
日本国内においてもそれぞれの地域の文化があり、県民性が存在するというのに、ここまで違うカルチャラル・ギャップをどのように埋めていくのでしょうか。
コックさん曰く、
「彼ら(地元のワーカーさんたち)には彼らの伝統的な文化や習慣がある。決してそれを変えようとしないこと。
それを必ずリスペクトするようにしている。
コスタリカでもロシアでもそうしてきたよ。」
さすが海外での経験豊富なコックさんだからこそできること。
頭でわかっていても思うように行動するのは難しい。ところが経験値のコックさんはそれ自然にできてしまう。
お願いした結果が得られれば、細かい過程は問わないというのです。その過程にこそ、彼らの文化や思想、民俗の慣習が詰まっていて、尊重すべきことである。それを無理に強制することはやってはいけないことだと認識されています。
もしくは、昔から世界を股にかけ各地を拓殖してきたという歴史的な背景や、他国で迫害された人々を受け入れることで繁栄してきたオランダならではのお国柄というのもあるのかもしれません。
移民の受容はEUの中でも比較的寛大な国として知られ、他文化を尊重するオランダ人のDNAに流れるセンスによるところが大きいのではないでしょうか。
「コツは、地元のワーカーさんたちへの指示は、地元の人からしてもらうことだよ」
コレ鉄則。
コックさん曰く、指示は中国人のマネージャーさんから。中国人のマネージャーさんは、英語も喋れてマネジメントも勉強されている方にお願いしています。
たとえば、こちらのアギーさん。
とっても有能!現在はMBA取得に向けて、仕事をしながら勉強に励んでいます。
彼女のような有能な人が、ニックさんやコックさんと地元ワーカーさんとの間に入って、ジョイント役として活躍されているのです。
また、従業員さんへの福利厚生として、食堂ではランチが無料で振る舞われます。
休憩時間には、バスケットボールや卓球などをしてリフレッシュすることもできるのです。お邪魔した時には、みなさん食後は速やかに職場に戻っていらっしゃいましたが。
ワーカーさんたちのお給料は、条例で決められている最低賃金はもちろん保証されており、国内向けの販売も好調につき、地元の労働賃金に比べると比較的良いようです。しかも、休暇もきっちりもらえます。また連続で年休を10日間取る権利がありますが、もしこれを利用しない場合は、1か月分のお給料がもらえます。
う~ん、ウン探だったらどっちを選ぶかな~・・・σ(゚・゚*)ンート
そして、従業員の給与もチャイニーズ・ニューイヤーを迎える度に毎年上がっていきます!
It's so WONDERFUL!! O(≧▽≦)O♪
ヴァン・デン・ベルグ・チャイナは、労務管理もきちんと行い、地域の雇用促進と経済活性化に貢献しているのです。
ニックさんのこれまでの経緯
それにしても、ニックさんはなぜビジネスの場に中国を選んだのでしょうか。
"Because the opportunities are here."
「なぜなら、チャンスはここにあるから」ということです。
学生のころ、まさにニックさんが23,4歳の頃中国に留学して、中国に花生産の可能性があると踏みました。
そして卒業するやいなや中国へ。
UNから派遣されてユーゴスラビアで陸軍として働いていたこともあると言います。そこで体力がしっかり付いたのだとか。
今年はニックさんが中国でビジネスを始めてからちょうど20thアニバーサリー。
ニックさんは勉強家で今では中国語もネイティブ並みにペラペーラ。
花の生産と流通がいくら専門分野といえども、海外に来てゼロからここまでにするには、途中で困ったこととか大変だったことはなかったのですか?
「う~ん、特にないね! Everything has been so smooth!」
え、ホント!?゚Д゚)っつ
この気持ちの持ち方も成功の秘訣なのでしょうか。
「なんちゃって、ま、色々あるけど、そうだな、毎年40%ずつ売り上げが上がっているから、いかにこの圃場を拡大するか、それに対して人をどのように増やして、配置して、マネジメントするかがとても難しいと実感しているよ。
近い将来、現在の広さの2倍にして、全部でおよそ30haにする。それがウチの最終地点。圃場を拡大するとアドバンテージはたくさんあるんだよ。いろんなことが効率良く進むんだ。」
これから今の2倍に圃場拡大だなんて、So dynamic!ですな。
どうしてそんなにスムーズに拡大できたのでしょうか。
「オランダのヴァン・デン・ベルグ社とのコンビネーションがよかったこと、そしてコックのような有能な協力者がいてくれたことかな。
圃場の拡大や改善はSTEP by STEPだけどね」
オランダのヴァン・デン・ベルグ社のご子息アリーさんはバラ生産の専門家、ニックさんはもっと販売やマーケティングに近い部分を担当します。アリーさんは圃場に常駐できないので、海外でずっと経験を積んできたコックさんが現地で専任されているというわけです。
でもまさか自分が生産者になるとは夢にも思わなかったといいます。
お父上が花ビジネスをやっていたのに・・・ですか?
「そうだね。My fatherは花関係の仕事をやるなって言っていたんだよ。大変な仕事だったからね。
でも、花やっちゃった(●´З`●)ゝテヘ」
ずっと中国にいて、オランダに帰りたくなりませんか?
「そりゃなるさ~。だから年に何回か帰るようにしている。
I LOVE オランダだよ!
オランダは美しい国。自然も芸術も。だけど僕にとってビジネスのチャンスは中国にあったということなんだよ」
そしてオランダ政府はこのような投資に対して補助金を出してくれるので、幾分初期投資を節約できたといいます。
そのような周りの協力があったから、今のファン・デン・ベルク・チャイナがあると、どこまでも謙虚なニックさんなのでした(*▽*)
日本のみなさまにメッセージ、プリーズ!
(ここは原文でいきましょう!)
Please trust "the Dutch know-how" in China. I would not say, "Believe all China products", because a lot of things still need to be done. But I TRUST my own products. I think we've proven it by very regular supply at least last two years.
Flowers are grown with lots of passion in an extremely nice environment... a good condition in Asia and we'll guarantee vase lives (as long as you treat our flowers very well...laughter)!
So, please try our products!
By Nic
<概訳>
中国で作られるオランダの花は信頼の品質です。私たち自身、品質に自信がありますし、信頼される商品を出荷し続けて証明してきました。
私たちの花は、アジアの大変良い環境の下、情熱を持って栽培されています。もちろん花持ちも良く、十分楽しめることを保証いたします。
是非私たちの花を試してみてください。
By ニック
まとめ:オランダは小さな大国!
オランダの国土は九州ほど、人口1,700万人弱なのにもかかわらず、やることも身長も大きい!なんといっても、オランダ人の平均身長の高さは世界一ですし、ビジネスといえば、いつもグローバルな展開!
中国だけでなく、中南米やアフリカ、東南アジア、もっといえばニュージーランドなどの花の生産現場においても、オランダ人が入植して世界中に出荷しているのです。
花だけでなく、オランダ資本で世界に名を轟かせる会社はロイヤル・ダッチ・シェルを筆頭に、フィリップス(家電)、ユニリーバ(英蘭:一般消費財)、ハイネケン(ビール)など、皆さんもご存知の通り。
むしろ、面積が小さいからこそ自国内でせめぎ合っても仕方ない、人口も1,600-1,700万人となれば内需も期待できない。(ま、実際には日本と違って人口は右肩上がりなのですが。移民もいますし)
おまけにオランダに他国から流入する安い労働力の点では自国民は敵わないから、自国民は外に進出する。その国の労働力を使ってビジネスを展開し、グローバルに競争するという極めて合理的な考えが根底にあるのです。
外国でのビジネスに投資して、"外で稼ぐ"というスタイルは東インド会社設立のころからのスピリットが脈々と流れているのかもしれません。それはオランダ人でも意識しないほど潜在的なものかとすら思います。
翻って日本人は、どうでしょうか。
島国で育まれた独特の精神論、文化、習慣は、有形無形に関わらず、私たちの中で大切な文化遺産として継承されています。それらは日本人のアイデンティティそのものにほかなりません。そのような郷土愛、自然や文化を守ろうというしっかりとした意識があり、鎖国をしてまでも内側を守っていこうという歴史が生まれたほどです。
だからこそ、匠の技、生産の腕を磨くことにおいてはピカイチ☆
花においても例外ではなく、世界に誇る生産技術を持っています。
一方で、何か新しいことを始めるというのはチョット不得手とするところで、激動の状況に合わせて要領良くシフトして稼いでいくというのは、なかなか難しいと感じています。
作るだけではないビジネス。グローバルな土俵でモノを作り、販売は仕組みから作り、実績を上げていく。オランダ人のこの気概とセンス、スピリットは現在の日本人が最も必要としているものの一つのように思えます。是非ここは対極にいるオランダ流ビジネスを学び、見習いたいところです。
今年10月21日に開催された世界経営者会議(日経フォーラム)で楽天の三木谷社長が「サービスを作って輸出することで稼ぐ発想に変える必要がある」とおっしゃっていました・・・と新聞に書いてありました。
私たち日本人は宇宙船地球号の一員としての見識を持ち農業に携わる。日本人のやり方に自信を持ちつつも、農業であれば明治以降の日本を思い出し、また現代においてはオランダに農業や花の商いに学ぶ。このような相互の素晴らしさを会得し、実行することが必要なのではないでしょうか。
ちなみに・・・豆知識
「ヴァン・デン・ベルグ(van den Berg)」とオランダ人の苗字でよく見かけるのですが、"Berg"はオランダ語で「山」という意味です。
van den Bergはfrom the mountain「山から出て」という意味なので、日本風の苗字にすれば「山本さん」といったところでしょうか。(山がないオランダで「僕は山から来ました」なんていう名字を名乗るのは、オランダ流のジョークなんだそうで。)
とすると、ヴァン・デン・ベルグ・ローズとは「山本バラ園」とでもいったところでしょうか。
また、「昆明」というと、どれほど中国の山奥のド田舎かとイメージされる方が多いかもしれません。ま、ウン探も漠としたそれに近いイメージを抱いていました。
ところが、なんのなんの、夜になれば暗い闇夜が包み込む都市・・・ではなく、キラキラと輝く夜空、赤いライトで縁取られた文字が黒い空に浮かび上がり、夜遅くまで消灯されることのない全くの大都市です。
そしてもちろん現在においても建設ラッシュ~!!
↑これらのビル群、ぜ~んぶ建設中!!!
新聞各紙では、中国の成長鈍化云々というようなことが書かれていますが、聞いてみれば実感としては内需は拡大中で、ヴァン・デン・ベルグ・チャイナも毎年40%ずつ売り上げを伸ばしているとのこと。
2008年の北京オリンピック開催に向けてか、2008年3月に新設された昆明の空港は以前の"アジアの地方空港"から脱却した立派な国際空港の様相です。中国国内でも、上海、北京に続き3番目に大きい空港なのです。
昆明を侮るなかれ!
【山本バラ園・・・じゃなくて、ヴァン・デン・ベルク・ローズ・チャイナの格言】
・ 輸入商社クラシックから出てくる中国のバラは"オランダ品質"。
どなた様も、一度手に取ってそのクオリティを確認すべし!
・ オランダ人の"外で稼ぐ"気概とスピリットを見習うべし!
国土が九州ほどの面積しかないオランダ人は、昔からそのDNAが脈々と受け継がれているのです。
その源流は東インド会社設立にまで遡る。
・ 異文化の人との共同ビジネスは、クロス・カルチャラル・マネジメントを心得よ!
結果が重要。やり方を捻じ曲げず、パートナーを尊重せよ。
・ 改革と進歩はstep by step
ニックさんは口癖のように何度もおっしゃっていたことが印象的です。
2007年にヴァン・デン・ベルグ・チャイナとして出発してから、今日に至るまで着実に成長し続けています。
2013年11月 5日
vol.102 【前編】ヴァン・デン・ベルグ・ローズ・チャイナ◆(株)クラシック
みなさーーーん!今回も"スペシヤールな"うんちく探検隊をお届けいたします!
(そう、うんちく探検隊は毎回スペシャル!v(≧∇≦)v )
なんでも噂によると「中国で作られるオランダのバラ」があるというではありませんか。
はて~??そのバラは、一体、中国のバラなのか、オランダのバラなのか??
←(。_。?)どっち?(゚-゚?)→
この話、噂といえども、全く以って意味わからん・・・?チンプン?ヽ(゚◇。)ノ?カンプン?
どういうことなのでしょうか。どうもクオリティも悪くないらしく・・・ウーン「(゚ペ)
大田花きの展示担当で、1年間に何千本もの花材を見ているMチャン(女性)に、「中国で作られるオランダ作られるオランダの噂話」について聞いてみると、
「あ、知っているよー。
それホント!この前、大田市場の中央通路で展示したばっかりやでー。
コロンビアやケニアからの輸入バラほどがっしりしているわけでもなく、柔らかい雰囲気でとてもエレガント。
花持ちも良くて、驚かされたわ~。展示が終わったアバランシェがアタシの机に置いてあるから、チョット見てってよー」
というくらい高評価(*・∀-)b!!噂は本当なり!
というわけで、ウンチク探検隊、「中国で作られるオランダのバラ」の秘密を探りに、102回目にして遂に海外進出です!!v(≧∇≦)v WOW!!
だって、海外の産地が気になってもちょっくら見に行ってくるなんて、なかなか出来ないでしょ!?だからうん探が皆さんに代わりまして行って来ましたー!ってわけです。
行先はもちろんチャイナ!
オフィスを出る時に「チャイナに行ってきまーす!」と言ったら、「行っチャイナなさーい!」( ^^) /とだいぶ気持ちよく追い出され、やってきましたのは、雲南省(うんなんしょう)昆明(こんめい)です。
中国で花生産といえば、なんといっても昆明。早速昆明の空港に着いた瞬間にバラを持っている女性を発見しましたが、中国国内に流通する花の90%は昆明産、バラにおいては全てこの昆明で生産されているといっても過言ではないほど、花の大産地なのです!この地名はみなさんも覚えておいてくださいねー!
では、ざっと昆明についてご説明いたします。
昆明は、中国の西南部に位置する雲南省の中で北東部に位置する都市です。
正確には昆明市といい、神奈川県藤沢市と友好都市として提携しています。人口600万(上海は2,400万)。
地図をご覧いただくとわかるように、中国でも最も南部に位置し、ベトナム、ラオスとの国境に接しています。ハノイなんてスグソコじゃん!なんて勢い。
標高は1,500メートルほど。
気候は温和で、気温は1年を通して0度から29度にしかなりません。
世界でもこれほど恵まれた気候のところもあまりないでしょう。日本を思えば、"30度を超えない夏"なんて天国ですね~♪
昆明は別名「春城」と呼ばれるのも、年間を通して春のような穏やかな良い気候に恵まれているからこそ。国内からの観光客もたくさんいるのです。
そんな自然環境に恵まれた地域ですから、花の大産地になる以前からお茶の産地として有名であるばかりでなく、フルーツやナッツ、香辛料など、あらゆる農産物を産出しています。
これだけ豊かな自然があり"実りの土地"であれば、大航海時代に欧州各国が中国と交易をしたがっていた理由も、昆明を訪れればよく分かるような気がします。
その昆明でバラを生産しているのが"ヴァン・デン・ベルグ・ローズ・チャイナ"です。その総代理店として日本に花を輸入しているのが株式会社クラシック(本社:千代田区)。
ヴァン・デン・ベルグ・チャイナとは、ざっくり申し上げますとオランダのヴァン・デン・ベルグ・ローズ社の中国版です。
VAN DEN BERG と書き、オランダ語では「ヴァン・デン・ベルフ」と読みますが、暫定的に小欄では英語読みさせていただきたく存じます。どーぞよろしくおねがいいたしますm(_ _)m
ヴァン・デン・ベルグ社とは、オランダ人のヴァン・デン・ベルグさんが経営しているバラ生産企業で、アバランシェの生産量はぶっちぎりで世界ナンバー・ワン!
中国だけでなくケニアにも広大な圃場を持っています。
こちらが中国の社長のニックさん。Mr. Nic Pannekeetです。
かっこええやろ~(´▽`)
ニックは漢字で「尼克」と書きます。ウマイ( ^∀^)!
この当て字のうまさ、なんだかニクいですね~。学生時代に中国に留学した際、クラスメイトが考えてくれたそうです。
ニックさんはオランダのアルスメーア生まれで、お父上もバラの生産をされていたという血統証付きのフラワーピーポー。
正確に言えば、ヴァン・デン・ベルグ・ローズ・チャイナは、ニックさんとヴァン・デン・ベルグ社とのジョイントベンチャー。中国のお花屋さんであれば、誰もが知っている国内随一のトップブランドです。
前置きはこのくらいにして、みなさんも早く圃場をご覧になりたいと思いますので、早速案内していただきましょう。
ヴァン・デン・ベルグは、切りバラ生産が主でその広さは、10ヘクタール!東京ドームをヘクタール換算すると、4.7くらいですから、バラだけで東京ドーム2個分くらいですね。
日本の生産者さんの平均的な広さがおよそ0.3ヘクタール(バラに限って言えば0.26ヘクタール:H19年農水省)ですから、オランダ式生産規模は桁違いということがわかります。
しかし、オランダの生産規模からすると、とてつもなくビッグ!というほどでもなく、極スタンダードでしょう。
そのほかに、アンスリウムの切り花圃場が3ヘクタール、鉢物が2ヘクタールあります。
はい、こちらがその圃場です。
っていうか、デカッ∑(゚□゚;)!!
あっちの終わりが見えぬぁ~い!
日本で思い浮かべるハウスが繋がって、いわゆる「連棟」になっていて、その広さは500メートル×160メートル!ってコレ、あーもー、アタシャ走ったら息切れして力尽きる距離やな。
このような広さでどのように管理されているのでしょうか。
早速、生産から見てまいりましょう。
生産
生産の専門家はこちらのコックさん。料理人のコックさんではありませんよ、くれぐれも!
キラーン★★★
料理人のコックはcookと書きますが、こちらのコックさんはCokです。
Mr.Cok Harteveld、どーぞよろしくお願いいたします!
コックさんもオランダ人で、お父上からバラの生産を引き継がれました。国内で作るばかりでなく、今までコスタリカやロシア(具体的にはソチ!来年冬季オリンピックが開催されるあのソチです)などで生産指導をしてきたその道のプロフェッショナルです。昆明に来てから7年になります。
コックさんはヴァン・デン・ベルグ・チャイナの総支配人。
生産から品質管理、人事管理など全てをマネジメントしているのです。
ニックさんは通常、上海を活動拠点として販売やマーケティングに力を入れています。もちろん圃場にも頻繁に足を運びますが、圃場に常駐し留守を守るのはコックさんです。ニックさんの右腕として活躍しています。
では、コックさんにナビゲーター役をお願いいたしましょう。
まず、土の代わりに使っているのは、ココピート。ココナツの実の殻から繊維を取り、発酵させて作るエコロジーな媒体です。園芸品や生産現場ではそのメリットが評価されて多用されています。
どうしてココピートを選んだのですか?日本ではロックウール(鉱物に石灰を混ぜ高温で繊維質にしたもの)栽培や土耕栽培がよく使われますが・・・
「お答えしよう!
それは、ロックウールと土耕の中間を取ったということなんだ。
ロックウールは施肥した養分を保ちすぎてしまい、それだけ植物体が養分過剰になってしまう。
一方、土耕は養分が流れ出してしまい、根に十分に栄養を与えることができない。
その中間がココピートということだよ」
表面の白いつぶつぶはパーライト。軽石のようなものです。
培地中の空気層を確保する役割と排水を確保する役割とを担っています。根も呼吸をしているので、空気が必要なのです。
水をやり続けていると、土の中の空気層が潰れて根が詰まってきてしまうので、根の呼吸を保つためにパーライトを混ぜているのです。
あーーーー!LOOK, LOOK!!
ここでもアーチング栽培をしています!(アーチング栽培とは?ヨコヤマ薔薇園さんの記事でチェック!)
アーチング栽培は、世界に誇るべき日本発の栽培技術ですが、既に特許期間が切れて、世界中誰でもこの技術を使っていいことになっています。このようなところでも日本の生産技術の高さを垣間見ることができますね。
灌水はもちろんこの通り自動・・・
と思ったら、自動なのは灌水ばかりではなく・・・
「ほかのことも、ほとんど自動だよ。
① 圃場内の気温(外気温も計測)
② 湿度
③ 葉の温度
④ 日照
もセンサーで計測して、自動で環境を整えるようになっているんだ」
えッ!?Σ(゚口゚;
センサー??ドコ、どこですか?
これが気温と湿度を測るもの。
これが日照量のセンサー、
外でも太陽光を測っている。
そして、これが葉の温度を測るものなんだ 」
へ~、これがぁ・・・ドレドレ(・_ ・)ジーッ
このカメラで2m四方の葉の表面温度を計測しています。
計測値が高くなると葉にストレスがかかり過ぎていると判断し、自動的に遮光をしたり、場合によっては天窓が開くなどして温度を調整しているのです。
では、ウン探がこのカメラの前にずっと手をかざしていたらどうなるのでしょうか?
「長い間かざしていると、葉の温度が高いと認識して、自動的に天窓が開く。」
冷静に答えるコックさん。
ほぉ~、なるほど、これは迂闊にイタズラできませんな・・・_;
オランダ式の生産場面に人はあまり介していないのですね。
「そう。全てオートメーション管理。
これだけの広さで人の能力ややる気等に頼っていたら、品質に差が出すぎちゃうでしょ。
センサーからデータを集めて、コンピューターで総合的に計算されるようになっているんだ。その計算結果に合わせてハウスのコンディションをコントロールする。
例えば、曇天が続いて日照が足りないとなると、水をやり過ぎては病気や徒長、根腐れなどあらゆる問題を引き起こすから、一つのファクターが変わっただけで、総合的に環境をコントロールするよう自動管理されているってわけさ。
だからこそ統一規格のバラを大量生産できるんだ。
そのプログラムを作るのは人だけどね」
そのプログラムを作ることが重要なのですね。
環境変化に対して、機械がどのように反応するかを決めて、プログラミングする。
バラに対して最適な環境になるよう考えるのはコックさん、で、それをプログラミングした人たちがこちら。
名付けて"コンピューター ピーポー"。取材日にたまたまオランダからいらしていました。
オートメーション管理をしている心臓部など、見せていただくことはできますか。
「いいよ。何でもないものだけど。あんなのが見たいの?」
はい、是非見せてください。Please!!
「これだよ」
え?コレ(@_@?? なんだか拍子抜け。
ま、確かにパソコンとコードがあるだけというは納得ではありますが・・・これに精密なプログラムが組まれていて、すべてこのパソコン1台で管理されているのです。
このシステム、ヴァン・デン・ベルグ・チャイナだけのものではなく、世界中どの生産者さんでも購入可能とのこと。
う~ん、でも高額な投資になりそうなので、回収の見通しを立てるにはある程度の規模が必要かもしれませんね。
圃場を歩いていて気付いたのですが、葉がなんとまあキレイなこと!
コックさん、どのような葉が良いとされるのでしょうか。
「グリーンが濃いこと、そして艶があること。これが良いバラ条件。
逆に葉が小さくて厚いものはNG。何か管理が間違っているってことなんだ。
(写真右側は、日本での総代理店㈱クラシックの難波稔正さん)
例えば、葉が厚ければ、湿度が低くて、気温も低い状態に長い間、晒されていたという可能性が高いんだよ」
苗も見せていただきました。(ほんと、余すところなくどこでもオープンに見せてくれる!
Thanks, God!・・・ではなく、Thank you, Nic & Cokさん)
このようにココピートの苗床にバラの挿し芽(cuttings)が並べられています。
これらは発根を促して苗を作っているのですか?
「んにゃ、ちがう。これらは既に根が生えていて、この苗がこのまま収穫用の株になるんだよ。どこにも植え替えない」
えー、ホント?(¬з¬)
これはもうそのまま苗になっているんですか?
もし根っこ生えていなかったら何かもらいますよ~!!
「そんなに言うなら見せてあげるよ。ホレ!」
ガーン!Σ(゚口゚; ホンマヤ
根がガシガシ生えている!!ではこの苗はどこで作っているのでしょうか。
「別のところに苗を作るハウスがあるんだよ。そこで挿し芽をして発根してからこちらに移す。」
そして、このまま株を大きくして採花するのです。
(ちなみに、パテント意識の高いオランダの花ビジネスですから、ロイヤリティはきっちりと払っています。)
今まで拝見した日本のバラの生産者さんの場合、株の作り方は
① 苗を種苗会社から購入し、育てる
② 病気に強い品種を台木にして、栽培したい品種の枝を接ぐ
というパターンが多く、実際それらが一般的。
挿し芽からそのまま発根させて株を作るというのは初めて拝見いたしました。
このような方法は、ハウス内の環境がかなり良く、病気などの心配が少ないからこそ有効なのです。ま、コスト削減の意味もあるのかもしれません。
栽培に使う水は、圃場のすぐ横を流れる川から農業用水を引きます。
そしてここに↑貯水する・・・のですが、なんでも川からの稚魚が入ってきて、この貯水池で元気に大きくなる魚もいるのだとか アハハ~_;
それをこの↑タンクで浄水して、圃場用に使うというわけです。フィルターがありますので、ここまではもちろん魚は入ってきません。
昆明のような環境の良いところでバラを栽培するのに最も骨を折ることは何ですか、コックさん?
「主に2つあるよ」
① 防虫
② 夏場の暑さ対策
まず①の防虫についてですが、虫が付かないようにするためには、防虫ネットをハウスの外側に張り巡らせること。でもその網目が細かいのでハウスにベタっと張り巡らせてしまうと、ハウス内の空気が動かなくなってしまって、今度は病気が発生しやすい状況になってしまう。だから、空気循環を確保しながら、いかに防虫ネットを張るかがポイントです。
②がまた問題で、昆明では気温30度以上にはならないといえども、ハウスの中はやはり暑くなるのです。
「暑くなるからハウス内を換気したいけど、虫が入ってこないよう防虫ネットを張らなければならない。防虫ネットを張れば、空気の動きが止まり、気温が高くなってしまう。この①と②はいつも矛盾するというか、どっちを取るかの戦いなんだよね。」
で、どっちを取るんですか、コックさん?
「真ん中を取るんだ。( ^^)
虫が入ってくるようなハウスの側面にネットを張り巡らせて、風は天窓から取り込むようにしたりね。」
バラづくりに最適な気温とはどのくらいなのですか。
「14時間が昼間、10時間が夜として、昼と夜の平均気温が19-20度がベスト。
例えば昼の平均気温が30度、夜が10℃だとすると、昼と夜の平均は20度でしょ。これが理想的なんだ。」
なるほど~!すんごい明解!
「でも、1日中20度だったらそれでいいかというと、それは違って昼と夜との気温差が重要。
1日の平均気温が20度くらいがいいからといって、1日中20度というのも花には良くない。
夏が過ぎたこれからの季節は、ウチの圃場でも品質がさらにアップするよ。
一般的には、夏のバラは頭が小さく、冬の寒い時には大きくなるんだ。昆明でもこれから気温が下がるからね、輪が大きくなるよ。楽しみにしていてね」
はい、でもどうして夏は小さく、冬は大きくなるのでしょうか・・・?(゚ペ?)???ナゼ?
「それは葉で糖分(栄養)が作られるんだけど、夜の気温が高いと、このプロセスがとても速く進んでしまうんだよね。
プラス、せっかく葉で作った栄養は、暑さのあまり昼も夜も植物の体力を維持するために消耗が激しくなる。
そうすると生長するために、つまり花の組織を作るのに、十分な時間も栄養も不足しているってことになる。だから必然的に頭が小さくなってしまうというわけ。
冬は逆に全てゆっくり生長する。葉で作られた糖分もしっかり花に運ばれるから輪が大きくなるとうわけなんだ」
これはバラ作りであればどこでもそうです。頭が小さいから品質が悪いということではありませんが、涼しくなると全体的に品質がグッと上がります。
ひとつの産地でも、夏に見るバラの輪が幾分小さく感じるのはそのためなのですね。
バラの切り前
ちょうど従業員さんたちが切り集めていました。これを、選花場に持っていきます。
従業員さんたちは、どのように切り前を判断するのでしょうか。
「確かにこれは難しい問題。でもウチは明確にそのタイミングを決めているんだ。
芯までふんわり開いているもの。これが最も重要な条件。
これを見てごらん。
右側は開いていなくて中心が見えないでしょ。これは切り前が早すぎるということ。
それに対して左側を見ると、つぼみのサイズは同じように見えるけど、中心まできちんと"巻き"が見える。
これが正解◎」
なっるほどぉ~!
←こちらが正解◎のバラ。中心までふんわりを広がり「巻き」をみることができます。
ところが、こちらは花弁が閉じて、中を見ることができません。これではまだ切り前が早いということです。
確かに、閉じたツボミの側面を触ると、中に芯があるというよりも、外側の花弁まですべて芯という感触を受けるほど固い。巻きが見えるものは、ツボミの外側がふっくらと柔らかく、中に固い芯を感じることができます。
切り前が早すぎるとお客様のところで花が開かなくなってしまいますし、遅すぎれば花持ちが悪くなるばかりではなく、輸送中に傷が付きやすくなってしまいます。
そのタイミングは1日の中でも数時間の差。
収穫のタイミングは1日3回、午前7時30分、12時、15時ですが、7時30分の段階で固すぎても、12時に切れることがあります。
つまり、裏返せば、7時30分に切るところを切りそびれてしまえば、切り前のタイミングを逃してしまうことになるのです。切り前はそのくらい真剣勝負。しかも、何百本、何千本切ろうとも全て切り前を揃えなけれればならないわけですからね。
「バラの切り前は判断が本当に難しい!
オランダのミスター・ヴァン・デン・ベルグでさえも難しいと首をかしげるくらいだよ」
しかーしッ!ヴァン・デン・ベルグ・チャイナのバラは最後まできちんと咲き切るのです。
こちらをご覧くださいッ!ファン・デン・ベルク社の花持ち試験室です。
どのバラも見事なまでに揃って120%開花しています。
"ヴァン・デン・ベルグのバラはエレガントに咲き切る!"
この試験室での結果が規格が均一で、信頼の品質である何よりの証拠!
説得力のあるでしょ~!!
あら?これはなんでしょうか・・・ハウスの至る所に見られる赤いシール。シールには番号がふってあります。
「これはここを担当するスタッフの番号だよ。
バラを切ったら、そのロットにこのシールを貼るんだ。そうすると、選別のときに誰が収穫した花かが分かるでしょ」
なるほど、名前のようなものですね。
「もし、そのロットの中に規格外のバラが多かったら、担当者に言って改善指導をするんだよ。だって仕事が早いからってその質が低ければ、意味がないでしょ(No sense!)。だからスピードと質とを総合的に評価する仕組みなんだよ。」
なるほど、もし規格外が少なくて優秀なスタッフさんだったらお給料が上がるきっかけにもなるわけですね。
「その通り!いつもきちんとした切り前のタイミングで収穫した人は、昇給のポイントにもなるんだ」
選別
これがまた難しいポイントのひとつ。
しかも複数の人がやるとなると、基準をどこに置くか、そしてそれをどのように目線合わせをして仕事を均一化するかのが、国内外と問わず、どこの産地さんでもひとつの大きな課題です。
ヴァン・デン・ベルグ・チャイナの場合、
① 茎が曲がっているもの
② 切り前のタイミングが違っているもの(固すぎ、咲きすぎはもちろんNG!)
③ 花弁にキズやシミあり
を確認し、該当するものをはじきながら、長さごとに選別していきます。
選別もまた機械でやるものだとばかり思っていましたが・・・?
「昔は機械で選別していたんだ。
でも、機械のメンテナンスにコストがかかるのと、やはり人の目で見た方が精度が上がる。」
人の目によって、判断の差が出たりしませんか?
「判断の基準は徹底しているよ。
一つはマネージャークラス(中国人)がマニュアルを持っていて、そのマニュアルに従ってワーカーさんたちに指導をするんだよ。
ワーカーさんたちは、新しい人が入ってきた時にきちんと指導係がついて、判断基準を伝授する。」
そしてはじかれたものは、理由別に統計を取って、何がいけなかったかを分析し改善に努めるのです。
ここではPDCAのサイクルが確実に働いているのです。
だからこそ、選別の段階ではじかれるのは全体の収穫量の0.5-1.0%なのだとか!
ぬぁんと、驚異的!ぉお!!(゚Д゚屮)屮
そのお陰で、この統一感。
収穫されたものは、その日のうちに選別、パッキングまでされて、冷蔵庫へ。
冷蔵温度は2度に設定されていますが、ドアの開閉があるので5度までは許容範囲。この管理温度がバラには最適とされています。
そして翌日には全てのバラが圃場を旅立ちます。
You see? 彼らは、very quick, very freshなのです!
ヴァン・デン・ベルグ・チャイナのクオリティはグローバルスタンダードを満たしています。
・・・後編は11月15日にアップいたします・・・
2011年12月20日
vol.89 栃木のバラ
「栃木県」で連想するものを挙げてください。
チチチチチチチチチッ←秒針の音
日光東照宮、宇都宮餃子、那須高原、鬼怒川温泉・・・
では花でいえば?
チチチチチチチチチッ
栃木県といったらバラです。バラ!
栃木県のバラについてある仲卸さんからの評。
「サイコーだね。
とりわけローテローゼのクオリティは全国有数と言って間違いない。
仕立ても立派だし、バランス、花保ち、全てにおいて素晴らしい。
他産地と比べても、同じ品種でどうしてここまで花持ちが違うのかと思うくらい違う」
絶賛!!!
大消費地東京までちょうど100km圏内という好適地にそんなにいいバラを作っている産地があるとは!
ここまで高く評価される秘密を探りにいざ出陣!
紅葉の東北道を駆け抜け―――
向かう先は栃木県宇都宮市のヨコヤマ薔薇園さんと上三川町の斉藤武さん。
栃木のバラの二大巨頭にお邪魔しました。
こちらのお二人が栃木県のバラのクオリティを牽引しているといっても過言ではないでしょう。
こちらがヨコヤマ薔薇園の横山陽一さん。
前職「俳優」・・・ではありません。
なんだか岩城晃一と田村正和を合わせたようなスーパーダンディズムを感じます。
そんな横山さんに見とれていないで、ウンチク探検隊、いざ横山さんの圃場に潜入です!
シゴト、シゴト!
ジャジャーーーン!
ワオワオ,WOW,WOW!w(*゚o゚*)w
元気な葉が青々と茂っています!
このようなイバラの道から身を守るために、横山さんがこちらのエプロンをご用意してくださいました。
さすが横山さん!
用意周到!
ジャン!マグネットでカンタン装着ッ♪
これがあれば、トゲが衣服に引っかからずこの通りスイスイ歩けます。
あれれ~。ずいぶんと枝がなぎ倒されていますが、これは正常な状態ですか?
ワザト?(・_・?)
一糸乱れぬラインダンスを見ているかのような光景ですが、これはどうして倒れているのでしょうか。
「アーチング栽培(用語レベル★)といってね、バラを生産する技術のひとつなんだよ」
とダンディズム横山さん。
アーチング栽培?「(゚ペ)ハニャ??
そうなんです。これは、バラの枝が伸びてきたところで思い切ってグニャッと曲げて、
葉から多くの光を取り込めるようにする方法です。
こうすることにより光合成が促進され、株に効率良く栄養を送り込むことができるのです。
グニャッと折っても、また中心部から新しい枝がまっすぐに伸びてきます。
この枝をベーサルシュート(basal shoot:用語レベル★★★)といい、そのうちの太くてしっかりした枝(=採花母枝:用語レベル★★)を出荷用として育てるのです。
アーチのように茎を折り曲げて行くからアーチング栽培。
日本人が開発した画期的栽培方法のひとつ(アッパレ!)で、現在のバラ栽培におけるスタンダードになっています。
倒された枝が日照量を確保して株に栄養を蓄える、残された採花母枝はその栄養を使って美しく生長する役割を持っているのです。
バレーボールでいうと倒された枝がレシーバー兼セッターで、アタッカーに栄養というトスを上げる、そして残された枝がエースとして市場に出荷される・・・ということなんですね( ^ー゜)b
「そうそう、私は働き蜂と女王様だと思っているんだ」
分かりやすい例えです。
倒す枝と残す枝の判断はどのようにされているのでしょうか。
「1株のうち倒すのは3本以上なんだ。だからまず最初に出てきた3本は倒す」
早く生まれた芽は倒される運命なのか~!! (+_+。) ガーン(悔)地道にガンバロ。
「3本倒してやっと株が充実してくるんだよ。
4本目からはその枝が製品に向いているかどうかで判断するんだ。もし曲がっていたら製品にはならないから倒す。
スプレーバラの場合は、長さが60cmになった時点でツボミが3つ付いていなかったら倒す。
あとは初蕾(はつらい=初めてツボミが付くこと)(用語レベル★)したときにツボミが曲がっていたり、葉に奇形があったりすると倒すんだ」
バラの場合、この小葉3枚か5枚か7枚で1枚の葉を形成します。
↓これで1枚の葉。
採花母枝の下に行くほど1枚を構成する小葉の数が多く7枚、上に行くにつれて5枚、3枚となっていきます。
バラたちが最も快適と感じる温度は24-25度、
最低でも18度、たとえ真冬の夜でもこの温度を下回ってしまうときれいに発色しなくなってしまいます。
(品種名:タージマハル)
あら?こちらの大きなボトルのようなものは何でしょう??
「酸素だよ」
酸素?(゚ペ)?
光合成のための二酸化炭素ならわかりますが、どうして酸素が必要なのですか?
「この酸素は潅水する水の中に入れるものなんだ。
植物の根も呼吸しているから、有機物を分解してエネルギーを得るときに酸素がいるんだけど、酸素飽和度が下がるとミトコンドリアで酸素を消費して、●∀й☆ΘΛ†Π・・・・」
ガラガラガラガラ(←シャッターの閉まる音)
ううぅぅ・・・・わがんねぇ(+_+;)チーン!
ココで一度、植物の根が持つ働きについておさらいとまとめをしてみましょう。
植物の根が持つ働きは一般的に3つあります。
① 植物を支える
② 栄養を吸収して上半身に送る
③ ②のために働くエネルギーを作り出す
③をするためには「空気」「水」「養分」の3大要素が不可欠です。
上半身の葉で光合成をして作られたでんぷんが根に送られ、根は自分で取り入れた酸素と送られたでんぷんとを結合してエネルギーを作り出すのです。
これが植物が持つパワーの源というわけです。このときにもちろん3大要素のいずれも欠けてはいけないわけですが、酸素が欠乏すると苦しい~~~~~!と窒息して元気がなくなったり、根腐れを起こしたりするのです。
なるほど!
つまり植物の元気の源を作り出すには光合成をするときの二酸化炭素だけではなく、根から吸収する酸素も必要だというわけですね!( ^―゜)b
「そうそう、ところが夏は酸素が不足しがちなんだ。
気温が高くなると酸素の飽和度が下がるから酸素が不足するんだ」
暑くなると次の2つの理由から酸素の吸収率が下がります。
① バラが活動しやすい適切な気温というのがあり、暑くなると
「うわ、あっちーのぉ(;´д`) あンまり動きたくねーだ」
と根の活動が弱まる
② 気温が上がると水中に溶ける酸素量(=溶存酸素量;用語レベル★★★)が下がる
「そういうときにいつもと同じように水をやっているだけでは、根が十分な酸素を吸収できずに植物の根の元気がなくなってきてしまうんだ。これも研究しながらなんだけど、そう思って水に酸素を送り込むようにしているんだよ」
そういうか! ('-'*)(,_,*)('-'*)(,_,*) ウンウン
「金魚を育てるときも水槽の中に酸素のブクブクを入れるでしょ。それと同じ原理だよ」
一方でもちろん光合成のための二酸化炭素は必要。
日の出直前の2時間程度、施設の中に二酸化炭素が充満するようこのように発生装置を使っています。
二酸化炭素発生装置の形っていろいろあるんですね。
話が少し前後しましすが、こちらは斉藤武さんの圃場にある装置です。
このように写真を撮っただけではわかりにくいのですが、実はボーボーに(!)二酸化炭素が出ています。
二酸化炭素濃度はどのくらいなのでしょうか?
「今は・・・312ppmですね」
これは高いのでしょうか、低いのでしょうか?
参考までに↓大田花きの会議室に置いてある二酸化炭素濃度測定器です。
12月某日の午前中の二酸化炭素濃度は540ppmを示しています。
自然界で二酸化炭素濃度はだいたい350-400ppmくらい、
人の少ないオフィスや会議室などで500-600ppmくらい。
そこに人が入ると800-900ppm。
このときに1,000ppmを超えると会議や授業をするにも集中力がなくなると言われます。
数人が密室にいるだけですぐに1,000ppmくらいには到達してしまうので、闊達なディスカッションをするためには、本当はこの二酸化炭素濃度が見える化されるといいですね。
また2,000ppmを超えると不快感を感じたり、眠気を感じたりする人が出てきます。
3,000ppmを超えると頭痛を訴える人も出てくるというレベルになってきます。
と、少し話が飛んでしまいましたが、植物の光合成が促される施設園芸などの環境においては、空気中の二酸化炭素は吸収され値が低くなりがちなので、このように炭酸ガスを発生させているのです。
この網はなんでしょうか?夏休みの昆虫採集用??
「チョウチョ採りだよ」
やはり!珍しく当たった??
「夏休み用ではないけどね^_^;
たくさんいるわけではないけど、チョウチョとかガはどうしても施設の中に入ってきちゃうでしょ。それを放置しておくと、卵を生みつけて大量発生しちゃうんだ。
薬でやっつける人もいるけど、うちは気づいたときに一匹ずつ人海戦術で対処する」
さすが横山さん!こうして使用する農薬を少しでも減らそうと努力をされているのです。
MPS※(用語レベル★★)も導入直後にいち早くご取得され、もちろん評価は文句なしのAです。
※Milieu Programma Sierlteelt オランダ語で「花き産業総合認証」の略。花きの生産流通において環境負荷低減に配慮したり、品質管理を行う企業・個人に対し認証するシステム。世界約30カ国が加盟、日本へは2007年に導入された。
「評価はBでもCでもよかったんだけどね。参加することに意義があると思っていたから」
圃場内の戸棚もこんなにきれい!
しっかり整理をされています。仕事は整理整頓から。
圃場心臓部へ
「ここは生産圃場の心臓部ね」
圃場の心臓?
どういうことでしょうか。ドキドキ❤
「今は生産管理は殆どが機械化されているからね、ここでバラにとっての最適な環境をコントロールしているんだよ。」
肥料と水を混ぜて潅水したり、気温や湿度を調整したり。
バラの管理は次の3つを適切に行うと収量がアップするといわれています。
① 温度
② 湿度
③ 炭酸ガス濃度
①が適切に調整できないと・・・
(温度が低すぎる場合は)ローテローゼなどの赤い品種は黒ずんでしまいますし、温度が高すぎると輪が小さく、また色褪せてしまいます。
②が適切に調整できないと・・・
灰色カビ病などの病気が蔓延してしまいます∑(゜◇゜;) ドキッ!
③が適切に調整できないと・・・
つまり二酸化炭素濃度が低すぎてしまった場合ですが、うまく光合成ができず、植物が栄養を蓄えることができません。
うわぁ!∑(゜◇゜;)
ほんとに心臓のようにガチンドクッ、ガチンドクッと脈を打ってポンプが溶液を送り出している!
鼓動のような音にポンプの動き、これはまさに圃場の心臓です。
「この音を聞いていれば、機械の調子が悪いかどうかが分かるんだ」
なるほど、この音は体調管理のバロメーターというわけですね。
あらら~ン、こちらのニャー様は横山さんの愛猫ちゃまですか?
「ネズミ捕りなんだ
ヘビとかネズミって結構出没して、農作物に害を及ぼすんだよ。
特にネズミなんかはこのパイプをかじっていたずらすると、
養液が途中で漏れて苗のところまで辿り着かなくなったりする。
以前は薬やなんとかホイホイみたいのも仕掛けてみたけど、ダメだったんだよ。20年前から猫を飼い始めて以来、ネズミもヘビもいなくなったよ。
ネコがニャーと鳴くだけで全然違う。
これをニャオ効果(用語レベル???)っていうんだ」
にゃんと、ニャオ効果、絶大なり!
これも天敵を使った一種のIPM農法※(用語レベル★★)ですね。
※IPM農法=Integrated Pest Management(総合的有害生物管理)の略で、天敵を使って生産の邪魔ををする害虫たちをやっつける方法。農薬を使って退治するよりも環境や人体に優しい方法とされる。
大変ご活躍のニャー様のお名前は?見た目もゴージャスだし、よく働くし、ダンディーな横山さんちのニャー様だし、さぞかし高貴な響きの名前だったりするんやろにゃ~・・・ドラクロワとか?ダ・ヴィンチとか?はたまたシャルルとか?そんな感じ?
「ピーマン」
・・・(゜.゜)
こちらは出荷準備中!
跡継ぎのご子息貴一(きいち)さんは働き者!
わーいっ!(^o^)丿
やった、やった♪ OTA行きの荷物をご準備くださっています。ありがとうございます。
あらら?チョットチョット、出荷箱の中のこちらは何ですか?なにかの仕掛けでしょうか?
ワンダム??と書いてありますが、マンダムでもなく、アスワンハイダムの略でもなく??
・・・いったい何のことでしょうか??(゚_。)?(。_゚)?
「出荷するときにここの袋に水を入れるんだけど、このワンダムをセットすると箱を横にしても水がこぼれない」
なるほど~。そんな素晴らしい仕組みがあるんですね。どのような仕掛けになっているのでしょうか・・・?
このビニールの部分に水を入れて・・・フムフム
足元にペーパータオルを巻いたバラを入れる!と。
それから口をふさいでワンダムにセットすると・・・
ほらこの通り!
立てればこの通りバラの足元をしっかり保水、
横にしてもこのダムで水が流れ出るのをこのダムでしっかりとブロックしているのです。
また市場流通においても、横にしてローラーに流して自動分荷機に投入してもノープロブレム!
立てておいた箱をうっかり倒してしまっても、もちろん水が漏れて商品が傷むこともありません。
「水が漏れたっていう事故はほとんどないね」
なんと!すばらしい!ワンダホー!ヽ(‘ ∇‘ )ノ
「そうでしょ。ワンダフルなダムだから略してワンダムって付けたんだ。
水が止まる不思議なダムでもあるから不思議の“ワンダー”ともかけてあるんだよ」
これはなんと横山さんが開発したもので、特許をご取得されています。
この紫色の帯のようなものは何ですか?
「ひもで商品を固定するときに、商品が傷つかないように保護しているんだ」
でもどうして紫色?(゚ー゚?)(。_。?)
「色の効果だよ。緑色が映えるように反対色の紫を使うんだ」
なるほど~。補色効果ですね。反対色(=補色)を組み合わせることによってお互いの色を引き立てる相乗効果を狙った作戦ですね!
そういえば、スーパーに売られているチンゲンサイやホウレンソウなどの葉物野菜はよく紫色のテープで巻いてあったりしますね。
ウン探行きつけのスーパー(そんなのあるのか?)を覗いてみると、ホラこんなに。
↑写真だと少し青く写ってしまうのですが、本当は紫色。
あっちもこっちもグリーン系の野菜はことごとく紫色のテープで巻いてあるか、パッケージの印刷の字が紫だったりします!
あのテープの色にはそういう意味があったのかぁ(゚∇゚)ナットク!
補色効果、偉大なり!
足元もこのとおり通りきれいに脱葉(だっぱ=余分な葉を取り除くこと)(用語レベル★)され、さすが横山さんの性格や商品ポリシーを反映しています。まさに神は細部に宿る・・・!という感じです。
常にお客様の目線に立つ横山さんのクオリティは1993年にドイツのシュツットガルトの園芸博覧会でも認められた世界品質です。
横山さんがバラ生産で最も大切にしていることは何ですか?
「OTAとか仲卸さんとか、買い手との交流や頂く情報を大切にしているよ。
作るのは黙々とやれば誰でもできるし、システム化することもできる。
だけどコミュニケーションによる情報提供は人だけが持つ力だから、これを意識してうまく情報収集できるようにしているんだ」
なるほど生産はシステム化して機械心臓に任せてあるわけですから、人にしかできないことをやるわけですね。
横山さんはそもそもどうしてバラ生産を始められたのですか?
「うちの親は米中心の農家だったんだけどね、昭和45年から減反調整が始まって47-48年ころに花に取り組んだんだ」
その時取り組んだのは“ポットマム”(=鉢植えのキク)だったといいます。
「でも1年でバラに変更したよ。鉢植えだからポットに土が入っているでしょ。重いし、輸送のときも場所を取るし、花というよりも土を運んでいる感覚で採算も合わなくなっていったんだ」
その時に選んだのがバラというのはまたなぜでしょう?
「昔から人がやっていないことをやってみたいと思っていた。
へそ曲がりなんだよね(笑)。
栃木県ではバラを作っている人もまだいなかったしね。普及所の人からオランダのバラが売れているということを聞いてね、日本のマーケットでもきっとそうだろうと思って取り組んだんだ」
それで今の成功に結びつくわけですね。
「いやいや、成功しなかったよ。最初の10年はね。下積みだよ。
病気も出たし、その時は土耕栽培で始めたんだけど、土の扱いが難しくてね。
堆肥の入れ替えも大変だし、大変だから量産できないし。
土が新しければバラもそれなりに良くできるけど、改植をしないとだんだん品質が悪くなってくる。
新規参入してきた新人さんは私より良いものを作るし、自分の品質は思うようにならないし作業は大変だし・・・」トホホ
昨日今日始めた若手が、土が新しいというだけでご自身よりもちょっくらうまく作ってしまうわけですからね。
それはありゃりゃ(+_+)って思いますよね。
そこをどのようにクリアされたのですか?
「これを解決したのロックウール栽培(※後述)だったんだ。
ロックウールの生産が軌道に乗ってから」
「改植も管理も簡易化されたしね。
改植してリセットされたら必要なものだけを与えればいいわけだけだから、管理がマニュアル化できる。つまり特別な技術を持っている人じゃなくてもできるってことなんだ」
花きマーケットの難しさはなんですか?
「品種選びが難しいと思う。
例えば栃木であればイチゴが有名だよね。何の品種か分かる?」
と・ち・お・と・め( ^―゜)bですね?
「そう、栃木でイチゴを作るって言ったら、90%はとちおとめでOKなんだ。
トマトであれば桃太郎ね。
これを90%作ればOK。ところが、花は1品種90%生産はありえないでしょ。やっていけないよね。
この品種選びというのが難しいポイントでもあり、花生産の醍醐味でもあると思う。
同じ農業だけど胃袋を満たす産業と心を満たす産業との違いだよね。
花生産はとりわけデリケートなものだと思っているよ。ブライダルにも使われるしね。
生産というのはサービス業の延長なんだ。」
なるほど、「生産と販売」というのではなく「販売(のため)の生産」ということですね。
「生産して、市場や消費者が評価してくれて初めて価値が出るもの。
もてなすものであったりとか、喜んでもらえる花を生産することが販売に繋がると思うんだ。
色、形、花保ち、香り、荷姿、細部に足るまで評価ポイントになるからやり甲斐がある仕事だよ」
なるほど、このようなポリシーがあるからこそ細部にまで配慮されたパッケージ、品質へのこだわりというものが生まれてくるのですね。
バラ生産40年、振り返って思うことは?
「ここまでしかできなかったかと思うこともあるね。
もっと大きなこともできたのかな・・・とも。
でも、息子にも引き継げたし。こんなものかな」
コチラが横山さんと奥様、ご子息の貴一さん。
皆さんでポリシーを共有してこれからも高品質のバラをご出荷くださいます。
さて、こちらの菅原文太風ジェントルマンは斉藤武さん。(上三河町=宇都宮市のお隣)
ローテローゼのクオリティは日本一といっても異議を唱える人はいないでしょう。
「ローテの斎藤武さん」と枕言葉になってしまっているくらいです。
そのような斉藤さんのバラ生産の根底に流れる哲学を探りにいざ潜入です!
圃場を入るとするに目に入ったこの白いブロック。
これは何ですか?
「ロックウールだよ」
ロックンロールではなく、ロックウール(用語レベル★)です。くれぐれもお間違いのなきよう。
ロックウールとは玄武岩を砕いた上に焼いて作ったスポンジ状の人工培地です。
ロックウール栽培(用語レベル★)とはこれに苗木を植え、養分を含んだ水に浸けて栽培する方法です。
充分な養分を与えられると共に、根にも空気が行き渡りやすいので、生長が早いというメリットがあります。
このロックウールを使うことによって、それまで土耕栽培だったバラ生産に革命が起きました。
改植も養分コントロールもロックウールのお陰でスイスイ。
斉藤さん、バラとの出会いは何かきっかけがあったのでしょうか。
「大嫌いだったんだよぉ、農家がさぁ。サラリーマンに憧れてねぇ」
なッ∑(゜◇゜;) ナント!農家が嫌いだった・・・なんて。
ストレートッ!!
「うちの親はイチゴをやっていたんだ。
昔から“農家の長男は家を継ぐものだ”という共通認識があって、親に言われなくてもやるもんだという暗黙の了解のうちに農業高校に進んだんだよ」
でも農家は嫌いだし、イチゴは絶対やらないと思っていた斎藤さんが選んだ道はなんとコチョウラン。
え?コチョウラン?(._.)
バラじゃなかったんですか?
「そう。コチョウランを専攻したんだ。2年研修したのもコチョウランの生産だった。
でもいざやろうとしたときに初期投資が高くて少しためらいがあったんだよね。
そこで卒業する年に神奈川県の浜田バラ園さんに見学に行かせてもらったんだ」
浜田バラ園さんとは泣く子も黙る日本が誇る屈指のバラ生産者さんです。
小欄でもなんと第1回にお邪魔させていただいております。
「浜田さんのバラを見て“スゴイ!”と思ったことと鮮明に覚えているよ。
それまで切バラの圃場を見に行ったことがなくてね、壁のように両脇にドーンッ!と立つバラの株がすごく印象的だったんだ。
コチョウランと違って収穫までのサイクルも早いし、“すンげーなぁ、バラもよぉ”と思ってさ、ランからバラに切り替えることに決めたんだよ」
ご自身でそう決めたとき、お父上は何とおっしゃったのですか?
「そんりゃもう大反対だよ。栃木県に花で成功している人はいねがったからね。
栃木で農業するっつったら、なんといってもイチゴかトマトなんだよ。それを花作るってったら、もう変わり者扱いだよ」
その反対を押し切ってバラを作り始めたわけですね?
「あくまでも強引にね(笑)。
基本的には親と同じことをしたくない。
だから息子にも反対してほしかった。私と同じことをするのではなく、何か別のことをしてほしかったんだよ」
こちらがご子息の裕充(ひろみち)さん。斉藤さんの後継者です。
あ!間違えたッ!ヤバ!(p・Д・;)アワワ・・・
こちらはお孫さんの“いしづかようと君”でした。
すみません。ウン探としたことが!
改めましてこちらがご子息の裕充さんです。
↑もちろん左側の方ですよ♪
これは頼もしい!
「息子にはいつでも辞めていいよ。サラリーマンになれぇって言っているんさ」
斉藤さんご自身がやっていらしたことをご子息が継ぐということは、嬉しいことではないのでしょうか?
「自分で反対してやり始めた方が、途中で絶対ぶんなげねぇからいんだよ。
その方が諦めないで最後までやるんさ」
“信念”ということでしょうか。
「私もバラを始めて6年はダメだったね。切れないし値段はとれないし、感激を覚えた浜田さんのバラのイメージには程遠かった」
今と何が違ったのでしょう?
「やることやっていなかったんじゃないかな。やっている内容も甘かったんだよ。仕事をしていないっつうことだよね。
バラの生産は手間をかけないとダメ。昔は理屈だけで行動が伴っていなかったんだ。今は手間をかけるようになってバラを見る時間が長くなったよ」
最初の6年のうちに辞めようとは思わなかったのですか?
「挫折しそうになったことはいくらでもあったよ。技術も追い付かないし、稼げないし。
でも女房の協力と意地だけでやってきたんだ。
好きでやれれば一番いいんだけど難しいね。今の仕事が好きかっていったら、好きと言えない。まだプロになっていねんじゃねぇ」
日々バラと向き合いながら40年、まだプロになっていないのではないかとご自身を客観的に見る斉藤さんは、本当に仕事に厳しい方です。
ご自身で決めたからこそ、その選択に最後まで責任を持ち、日本一のローテという賞賛を得ても尚、ご自身のバラに満足することなく更に上を目指しているのです。
“入り(始めたきっかけ)が甘いと生産は続けていけない”と斉藤さんは断言します。
そのくらい生産は厳しく大変なものだということが斉藤さんの一言一言から伝わってきます。
生産に欠かせない資質とは何でしょうか。
「観察力だろうね。鋭くないといけない」
どこを見ているのですか?
「まず立ち姿全体を見て、バランス、花の大きさ、茎の1本1本や葉の1枚1枚に至るまで。
そして次に触ってみる」
何かおかしいと思ったらどうするのですか?
「ロックウールのpH値とEC値(※)(用語レベル★★★)をすぐ測るんだ。これでね」
※EC値=Electric Conductivity:電気伝導度
溶液の中に溶け込んでいるイオンの総量を示す値。単位はミリジーメンス(mS/cm)。
イオンの量が多いと電気が伝わるのに負荷がかかりEC値が高くなる。
ロックウールの養液栽培において、肥料分が多くなると電気が多く流れる性質があるので、肥料分のコントロールにEC値を目安にする。
この数値が高すぎると、養水分の吸収が悪くなり、延いては根の張りも悪くなり、植物が傷むことが懸念される。
なにやら体温計のようなものが出てきました。
これをロックウールに挿してpH値とECを計測します。
「それで肥料や水の量を調整して、正常値に戻す。
pH値は5.5-6.5、ECは2くらい。
それからまた立ち姿全体をよく見て、触っての繰り返し」
それでもきちんと直らないことはあるのですか?
「あるよ。その時は私の頭が三角になっちゃう。
バラは何年経ってもわかんねぇな」
斉藤さんが10年後に目指すものは何ですか?
「浜田さんに近いイメージのバラを作れるようになったらいいと思うね。
まだ全然追い付いていないけど」
増え続けるバラの輸入品について
2010年度のバラの輸入品率はおよそ20%。(数量ベース)
大田花きの取り扱いの中でも輸入品率高く、葉物、スプレーギク、カーネーションに次ぐ第4位。
このような現実を横山さんはどのように見ていらっしゃるのでしょう。
「“脅威”は感じないよ。
ケニアやインド、アフリカの生産者には日本のエンドユーザーのことまでは分からないでしょ。
例えば外国の人にソバとうどんの違いが日本人ほどよく分かると思う?」
うーん。。。c(゚.゚*)。。。わからないでしょう、恐らく。
よほどの日本フリークでない限りは、全て日本の麺類は全てジャパニーズ・ヌードル!で片付けられるだろうて。
「あるいは桃と梅、梅と桜の違いが分かると思う?」
まず無理ですね。そうか。
「でも日本人ならわかるよね。日本人には言葉を尽くさなくても分かり合える独特の感性とか世界観ていうのがあるでしょ。
日本のマーケットに出荷するには、この感性や価値観を分かっているということだけでも大きな強みだと思うんだ。
それにエンドユーザーの声を聞きたいときにはすぐに聞ける。エンドユーザーが近くにいるというのはこれも一つの大きな利点なんだよ」
輪(りん)が大きくてボリュームがあるだけが良い物ではありません。もちろんそれらも評価に値するのですが、日本人はそれ以外の多くの評価軸をたくさん持っているわけです。
横山さんはボリューム一本勝負ではなく、もっと精細なところで差別化しているのです。
「輸入品については、こっちでできないものを受け入れればいいと思っているんだ。
全体のパイの食い合いではなく、新しいものをどんどん提案してパイの大きさ広げてその中で棲み分けをしていくことが共存の道だと思っているんだよ」
斉藤さんも「バラは価値を決める構成要素が多く、許容範囲が広い」といいます。
花びらの形、色、輪のサイズ、香り、しなやかさ、展開するとともに変化していく表情。
バラはとても変化に富む花で価値基準が多様なので、輸入との差別化も有利なのです。
ヨコヤマ薔薇園、斉藤武さんの格言!
・ 初心貫徹。
何を作るかは自分の選択。その選択の責任を全うし、生産を究めるべし!
辞めたくなっても信念が支えてくれるでしょう。
・ 市場や生花店さんと絶えずコミュニケーションを取り、移りゆくマーケットのニーズをタイムリーにつかむべし!
マーケットに近いところでの生産は大きなアドバンテージ。
・ 消費が日本人なら生産も日本人であれ!
日本人の豊かで繊細な感性を理解できるのは日本人だからこそ。
守備範囲が異なる海外品とはうまく棲み分けよう。
消費者の皆様へひとこと
<菅原文太チックな斉藤さんより>
「私は皆様にリピートしてもらえるような花を作っていきたいと思っています。そのためには最後まで咲くバラをコンスタントに供給するようにしています。使ってもらえるかどうかは結果論。
皆様がご自宅で花を飾る場合には、その場所だけ配慮していただきたいと思います。エアコンの風が当たるところや直射日光が当たるところはせっかくの花の寿命を縮めてしまいますので、それだけは気を付けてください。
お花屋さんは延命剤を付けてあげてください」
<ダンディズム横山さんより>
「日本人男性は一般的にはシャイですが、奥様のお誕生日とか記念日とか是非バラを贈ってください。
バラの花保ちは限られていますが、バラ贈りの効果は長持ちします。費用対効果抜群です!」
横山さんのところは?
「毎日あげているから、効果は一生続くさ❤」
キャー(≧∇≦)!!!
なるほど、だからこそ(?)この風貌。
ダンディやわ~゚・:,。(✿ฺ❂ฺ◡ฺ❂ฺ)゚・:,。 (←しつこい)
この横山さんが毎日奥様にバラをあげて効果絶大というのは説得力があります。
※文中の用語レベルはウン探が勝手に判断した用語の難易度です。
★→基本中の基本!是非ここでマスターして♪
★★→花き業界常識の範囲内です。
★★★→ちょっとレベル高め? 頻出ではないが覚えておくといいかも。
■■■おまけ■■■
ところで・・・み・な・さ・ま♪
「バラ」の語源てご存知ですか?
なんと、バラはイバラの「イ」が抜け落ちてバラになったのだそうです。
イバラはトゲのある木の総称で「茨」「棘」「荊」などと書きます。
アバラではありませんよ。イバラです( ^ー゜)b イバラ
イバラのイが取れて花のバラ。
アバラのアが取れるとバラ肉のバラになります。
だいぶ微妙な違いではありますが、実際のモノは全く違いますのでくれぐれもご注意を!
ということで、小欄の読者のみなさま、本年も1年大変お世話になりました。
蛇足半分の回が多いにもかかわらずこのコーナーが続いているのも、みなさまが支えてくださっているお陰です。
深く深く感謝申し上げます。ありがとうございます。
2012年もこのコーナーを楽しんでご覧いただけるよう精いっぱい取材してまいりますので、どうぞ引き続き宜しくお願い申し上げます。
また来年お会いしましょう。
I wish you a merry merry christmas and a happy new year!
See you next year!!!
2011年5月30日
vol.85 前橋バラ組合(群馬県)
季節はバラの最盛期!
お庭のバラが今とばかりに満開に咲いているお宅も多いのではないでしょうか。
さて、ウン探はバラの生産者さんを訪問しました。やってきたのは“つ:鶴舞う形の群馬県!”(『上毛カルタ』http://www.jomokaruta.org/)
あれに見えるは赤城山~!ってちょっと霞んでいましたが、空気が澄む冬などは、麓のおうち1軒1軒までクリアに見えます。
す:裾野は長し 赤城山
前橋市は関東平野の北西の端に位置します。ちょうど関東平野が終わりを遂げるところにあるわけですね。
少し話が逸れますが、“鹿沼土”というのは園芸界であまりにも有名ですが、ご存知の通り栃木県の鹿沼から採れた土のこと。実はこの土、赤城山がその昔噴火を起こしたときに、西からの偏西風が吹き、栃木県に舞い降りてできたものです。栃木の土ですが、群馬県のここ赤城から飛んで行ったものなのです(!)
もしかしたらその時の風向き次第では、"前橋土"とか"日光土"とか呼ばれていたかもしれません。
はい、ここで話を戻しますが、この前橋は群馬の典型的な農業地帯で、昔から米麦養蚕(べいばくようさん=米と麦と養蚕)が大変盛んです。アノ国定忠治も赤城山の麓に農家の長男として生まれ、まさに米麦養蚕業に励んでいたそうです。
「赤城の月も 今宵限りか あれぇ~」
上毛カルタでは前橋が次のように詠われています。
け: 県都前橋 生糸(いと)の町
ま: 繭と生糸(きいと)は 日本一
昔ほどではありませんが、繭を作るお蚕の大好物である桑の畑は、現在でもこの周辺にたくさんあります。
さて、今回はその前橋でバラを生産する前橋バラ組合にお邪魔させていただきました。
前橋バラ組合の圃場は赤城山の緩やかな南斜面にあります。赤城の麓なので土壌は火山灰が多く、傾斜と相まって、大変水はけが良いのが特徴です。
また、ら:雷とから風 義理人情というように、強いからっ風が吹き下ろします。からっ風とは、冬場に日本海側から流れてくる湿気を持った空気が新潟県と群馬県の境にある高い山々にぶつかり、日本海側で雪を降らせ、山より東側に吹き下りてくる湿度のない強い風のことです。
群馬のからっ風のことを「赤城おろし」ともいいます。
ここ前橋で農業をするときは、このからっ風さえクリアできれば、群馬県は冬場の日照量は全国第2位、災害も少なく、農業には最適な場所・・・とおっしゃるのは、前橋バラ組合の組合長の大澤憲一さんです。大澤組合長はJA前橋市の代表理事専務という大役もお務めでいらっしゃいます。
大澤組合長のおっしゃる通り、バラの場合は施設栽培ですから、からっ風は態勢に影響なし!大変環境に恵まれている土地柄といえるでしょう。
前橋の環境が良いことはわかりました。では、その土地でどのようなこだわりを持って栽培しているのでしょうか。
こだわりは、なにしろ土耕栽培ということです。
「植物は長年土で育ってきたのだから、土で育てるのが基本なんだよ。ロックウールなども良いのは分かるけど、長い植物の歴史の中では最近現れたものだよね。人間が植物に合うように作ったものでしょ。植物のことを考えたら、結局は土が一番いいんだよね」
メリットは以下の2点。
① 水や肥料を保つパワー(保水性・保肥性)に優れている
=「置換容量(ちかんようりょう)」が高い
② 断熱効果が高い
①「置換容量」ってなんですか(゚_。)??
なんだか耳慣れません。。。
「土が持つパワーのことだよ。
肥料分を土中に蓄えたりする力。土耕栽培なら他の人工培地よりもこのパワーが強いんだよ。だからいいものができるんだ」
②断熱効果って必要なのですか?←シロウト(-.-)
「バラの場合、地温は20-22℃くらいが適温なんだ」
ふむふむ、夏場はそれ以上に暑くなることが頻発しますね。するとどうなっちゃうのですか?
ピカーン!
「これ以上暑くなると生長が止まるんだよ。人間でも暑いと疲れるし、動きたくなくなるでしょ。植物も仕事をしたくなくなるんだよね」
なるほど、暑いとダレやすいのは植物も同じだったのかぁ・・・
「ロックウールやヤシガラは土に比べると断熱効果が低いんだよ。だからそれらを使う人は、一緒に段ボールも使ったりするでしょ。土は1cmでも敷けば断熱効果が全く違うんだ。暑さ寒さに強いんだよ。
ロックウール栽培をしている人は、昨年の猛暑で株が枯れてしまったという話をよく耳にしたよ」
なるほど、昔の日本家屋でも、土壁を使って、寒暖の差が激しい日本を快適に過ごすという工夫がなされていましたね。土耕栽培を取り入れている前橋では、歴史的な暑さを記録した2010年の夏でも、株が枯れるという悲運とは無縁だったのです。
土が持つ自然のパワーを利用する!これが前橋のポイントのひとつです。
今年の夏も期待できます!
ここで、もうひとつポイントをご紹介します。
前橋バラ組合は土耕栽培でも、ただの土耕栽培ではありません。
「少量培地(しょうりょうばいち)」といって、プランターで栽培する方法を採っています。
プ、プランター??
プランターって、あのプランターですか??
ま、まさかね。私がイメージする普通のプランターで日本屈指の品質のバラができるわけが・・・
^_^;ナイナイ。
う~ん、百聞は一見に如かず。ちょっと拝見してみましょう。
な、なんと!!∑(゜◇゜;)
本当に家庭用のプランターではありませんか!
え?チョット、チョット ・・・キョロ|゚Д゚*||*゚Д゚|キョロ
豪華なバラの足元は、“大地に根を張る大きな木”のイメージを覆すコンパクトな家庭用プランターを発見!これは農業界のパラダイムシフトか??
中国の纏足(てんそく)を思わせる小さな足元。これに植えて、高品質のバラを生み出しているというのでしょうか!?
どして?どしてぇ??どうしてそんなことができてしまうのでしょうか?
根っこというのは、①木を支える根(=主根)と②肥料を取りに行く根(側根、ひげ根)の2つのタイプがあります。
①はその株を支える根でこの根が、底に着くと生長が止まり、代わりに②の根が生長してきます。すると、花芽の分化が早まり花を早く咲かせることができるのです。
プランターではなく、直に地面に植えるとバラの根は勢いがありますから、どこまででも主根が深く突き進んでいってしまいます。それを想定して、最初の土壌づくりのときは、ものすごく深く土を起こす必要がありますし、それでは改植も大変です。
ではどうすればいいかというと、①と②の根のバランスを取ることが大切なのです。
それを考えた時に出た結論が、“少量培地”というプランター栽培。ホームセンターに売っているフツーのプランターにバラ苗6株を植えて栽培します。
前橋で使っていたのは幅18cm×長さ60cm×高さ15cmのプランターで、土量にして12リットルですから、1株当たり2リットル(ペットボトル1本ですね)の土で栽培しているわけです。
そう考えると少なくないと思われるかも知れませんが、1つの株から年間平均20-25本のバラを切って、4-5年で改植するわけですから、およそ100-140本のバラを出荷するのに、土2リットルです。
人で言うと畳2畳の生活といったところでしょうか。ですから「少量」培地といいます。
う~ん、結構窮屈そうなイメージですが、これ以上多すぎても少なすぎても少量培地の効果が薄れてしまいます。だいたい5-6株くらいが適しているようです。
あれ?この土の下に敷いてある白い布はなんですか?
「傘の布地だよ」
か、かさッ?(。_。).。??
「傘は水をはじくために油でコーティングして被膜を作っているけど、これは加工していない元の生地なんだ」
どうして傘の生地をこのようなところに使うのでしょうか。
「防根シートとして使うんだよ。普通の布ではバラの根が元気だから突き破って外に出てしまうんだ。これだったら大丈夫。肥料とか土とか有効なものだけはしっかり確保して、余分な水は流れてくれるんだ。根っこもしっかり止まる」
なるほど、これは考えましたね。
傘の生地なら水はけをキープしながらも、勢いが強い根はしっかり止まるようにできるのです。
実は、前橋バラ組合でもかつては地面に植える通常の土耕栽培をしていました。しかし、これでは連作障害の心配もあるし、植え替えの労力も本当に大変なものです。
そこで試行錯誤を重ねるうちに、この結論に辿り着きました。少量培地ならプランターをササッと置き換えるだけですから、作業性の改善という意味もあるのです。
高いところに張ってあるネットや頑丈そうな支柱は、以前の土耕栽培の名残です。
いや~、それにしてもすごいですね。世界のバラ生産者の中でも、ここまで細かく観察して生産の工夫を凝らしている方っていらっしゃるのでしょうか。日本人だけでしょうか。それとも前橋の方だけでしょうか。与えられた環境と、限られた資源や土地で、最大限の商品を作るために創意工夫を凝らす力というのが備わるのでしょうか。脱帽です。
いずれにしても日本の生産レベルは世界のトップレベルということが窺えます。
はい、少量培地による土耕栽培というのが2つめのポイント。
ん?これはどうしたことでしょうか。
打ちひしがれて、がっくりとうなだれているバラたちがいらっしゃいます。
挫折組でしょうか?┐(-。ー;)┌ヤレヤレ
「挫折組じゃなくて、“ハイラック”っていうんだ。きちんと名前が付いているんだよ」
と教えて下さったのは同じく前橋バラ組合の吉原一郎さん。大澤組合長がお忙しくて留守がちな場合は、吉原さんが組合を取りまとめます。
あ、すみません。“ハイラック”ですね!
インプットしました(*`◇´*)ゞラジャ!
で、ハイラックって???c(゚.゚*)。。。
「“ハイ(high)=高い”、“ラック(rack)=台、棚”でしょ。だから、高いところにある台ってことなんだ。つまり作業をするときの高い台。いつも同じ高さで作業できるように、植物の生理と人の作業性を考えて考案された栽培方法なんだよ」
バラはどんどん上に↑上に↑伸びていく性質を持っています。そのとき、「頂芽優勢(ちょうがゆうせい)」という性質を持っていて、最も高い部分(頂き)から伸びていこうとします。
出ました4文字熟語。これは必須単語です。
つまり、ここで折り曲げた場合は、この折り節が最も高くなるわけですから、ここから新しい芽が出て上に伸びていこうとするのです。
一度ここで倒すと、生長点が横にした長さだけ低くなるので、作業がしやすくなるのです。
放っておいて、どんどん高くなってしまったら、作業するのに梯子も必要ですし、作業効率が悪くなります。そこで、生長途中で一旦折り曲げておいて、高くなりすぎないようにするのです。これをハイラック仕立て法といいます。
横に倒したこれらの葉は、より広い面積で太陽の光を取り込み、栄養になります。
これも全てを倒すわけではありません。1株から立つ3-4本の枝のうち、1本かせいぜい2本。全てを倒すと新芽の生長が鈍くなってしまい、逆効果となってしまいます。この辺りに腕の良さが出てくるのでしょう。
はい、ここで本日はもう一つ4文字熟語を学びましょう。
「採花母枝」(さいかぼし)です。
“採花母枝”とは出荷できる花をつける枝のことです。
コレのことですね→
↑この場合は1株に3本の採花母枝があることになります。
↑この場合は4本。
一つの株からたくさん花を切ろうと思って多くの採花母枝を仕立てれば、それだけ花が採れ、効率が良いかもしれませんが、実際には花が小さかったり、品質が劣ったりします。何より大きくて丈夫な花を1本採るということであれば、採花母枝は1本でいいのかもしれませんが、それではなかなかコストを回収するほどの利益が出ません。
そこで、採算ベースに乗りながら、品質の良いものを収穫するには、1株から3-4本くらいの採花母枝を仕立てるのが良いとされています。1年に採花母枝1本から通常7回花を切ることができます。
3本の採花母枝 × 7回採花/年間 = 21本/年間(およそ)
先述した「1年間に採れる本数が21-25本」というのは、つまりこういうことなのです。
こちらは点滴チューブ。
病院の点滴のようにポタポタと少しずつ養液(養分を混ぜた水)を流せるようになっています。
こちらはコーナーウィール・・・とでもいうのでしょうか。
基本的には、消毒の際このマシンで自動で行うのですが、
葉の裏や細かいところなど、機械では行き届かないところはホースをグイーンと中の方まで伸ばして手動で消毒をします。その時にコーナーに引っかからないよう、このウィールがあるのです。
う~ん、うちのオフィスにも掃除機をかけるときに欲しい^~^!
難しいボキャブラリーをたくさん詰め込んだところで、ちょっとひとやすみ。
3.11の震災以降、前橋バラ組合が抱えるジレンマについてのお話です。
・・・前橋のジレンマ・・・
前橋バラ組合ではCO2排出削減のためにヒートポンプを購入、国内クレジットの売買契約を某大手電力会社と交わし、CO2排出削減にも貢献しながら、冬場の品質を確保していたところでしたが、なんと今年の夏は東日本大震災で消費電力15%の削減目標が・・・。これも達成できない場合はペナルティがあるそうで、冬場は燃料を使用しないようにしていたのに、今度は電力を使わないように・・・だなんて(:_;) せっかく今まで燃料を使わないよう奨励されてきたのに、今度は電力までもですか。少しでもよいものを消費者の皆様にご提供しようという前橋は、ジレンマと闘っています。
閑話休題、前橋バラ組合のこだわりは生産だけに留まりません。
まず採花。
「我々は1日3回切ります。」
えッ??(゚∇゚ ;)エッ!? 3回も?バラの場合は多いところでも1日2回だったりするのですが・・・一体、何時に切るのでしょうか?
「6時、11時、16時の3回だよ」
と吉原さん。
え、6時って朝の6時ですか??
「そう、朝5時半から切る人もいるよ。みんな早起きでね。冬の日の出が遅い時なんかは、ニワトリを起こして働き始める人がいるよ(笑)」
な、なんと!∑(゜ロ゜)ギョエ!!
ニワトリより早起きだなんて、皆さん働き者です。
それにしても、3回に分けて切る理由は何でしょうか。
「すべての品種で切り前を揃えるためだよ。バラは品種によって、
1. 朝開くもの
2. 太陽光に反応して開くもの
3. 時間が経って開くもの
と大まか3つに分けられるんだ。それぞれの品種を見極めて、切るタイミングを図るんだよ。」
いや~、恐れ入りました。さすが観察眼が鋭い!
よく見ていらっしゃいます。ここまでできるのって日本人だけ?それとも前橋の人だけ?いずれにしても、いやぁ、参りました。
採花の次は「選別」。もちろん選別にもポリシーがあります。
「第三者による選別」です。
選別をする作業室には、前橋の生産者さんはほとんど足を踏み入れません。「良いものは良い、悪いものは悪い」と第三者による客観的な評価をし、選別を行うためです。その際に最も重視するのは「切り前を揃える」ことです。バラの場合は展開しているときのどのステージで切られたものかで評価が大きく変わるのです。
冷蔵庫をご案内くださる大澤会長
選別をする前もした後ももちろん冷蔵庫で保管します。
選別が終わったら次は梱包です。拝見していると・・・・[壁]д・)ジーーーー
なんだか完成させるまでの動きが少ない・・・。
業務を限りなく効率化し、必要以上に花を触ったり、動かしたりしていません。イメージ的には“サッ、サッ!”とやっているように見えます。動きの工程が、1作業に1つか2つかといったとてもスピーディで手際の良い印象です。
テープを早送りした「早い」というのではなく、工程数が少なく作業がスムーズなのです。
「そうなんだよ。花を動かせばそれだけ傷つくということだから、花への接触や移動は最小限に留めるんだ」と大澤組合長。
足元には水がこぼれないように作られたバケツを入れて、輸送中水が切れないように対処しています。
梱包の後は、市場への輸送ですね。“市場に届くまでが自分たちの責任”と輸送への取り組みも余念がありません。
選別の後梱包された商品は、速やかに台車に積まれ、その台車ごとトラックに積まれます。
それも作業場と繋がる扉からではなく、こちらの別の扉を開けると、搬出専用のトラックのプラットフォームになるのです。
う~ん、トレビア~ン♪
さすが、花の女王であるバラを傷つけないために、全ての過程において仕組み作りがなされているのです。
そして最後に、消費者の皆さんのところできれいに咲くようにした“咲き切る工夫”。
「まずは品種特性を知ることだね」と吉原さんはおっしゃいます。
もともとの品種による花保ちの差もありまし、開かせて出荷した方が良いもの、少し硬め(ツボミに近い状態)で出荷した方が良いもの。それぞれの品種に合わせた切り前を調整します。
そして水揚げはここ前橋の“きれいな水”で!
切ったらすぐに前橋の奇麗な地下水に浸けて水揚げを行います。
実はその「すぐに!」がポイントなのです。どのくらい「すぐに」か?
バラは切られた瞬間に、切り口から空泡が入ります。この空泡がどんどん上にあがってきて、ちょうど首のところに来ると、ベントネックなどの症状を引き起こしてしまいます。
この茎の中の空泡がたくさん入り、水が入っていない部分が長かったりすると、ベントネックになりやすかったり、花保ちには大変悪影響を及ぼしてしまうのです。ですから、いかに短くして、水揚げをするかが勝負なのです。この勝負次第で、お客様のところでの花保ちに変わってきます。
それにしても地下水を使う必要性はあるのですか?
「地下水はカルキ分のない自然の水でしょ。植物にはいいんだよ」
何を隠そう、前橋の水はおいしいと全国でも有名なのです。
赤城山麓の水がペットボトルでも販売されていますが、その昔ペットボトルが普及する前に、缶コーヒーならぬ缶ウォーターが全国に先駆けを発売されたのもこの前橋市の水なのです。
そのようなおいしい水をたくさん飲んだバラは幸せだわ~+。*。+圉+。*。+☆□★+。*。+圉+。*。
ここまで仕組み作りができている前橋バラ組合の農業は、市場においても高い評価を得ていて、当然のように若い世代にも魅力的に見えるものです。
ですから魅力的な農業を実現している前橋バラ組合では、20代から40代前半を中心とした次世代が続々と育っています。
皆さんとても仲よし。全員で足並みを揃えていこうという協調性のある方々なのです。
それにしても、そもそも大澤さんがバラに出会ったきっかけは何だったのでしょうか。
昭和41年に農業高校を卒業された大澤さんは、その際に進路相談の先生から派米(米国に派遣)農業研修生制度というのがあるが、行ってみないかと言われました。米国での農業研修制度がとても魅力的に感じ、迷わず申し込んだといいます。研修制度の中でもいろいろとコースがあり、花の中でもバラコースを選びました。
“花では食べていけない。花を作る人は変わり者”という論調がまだまだ強かった時代にもかかわらず、そこで花を選んだ理由は何だったのでしょうか。
「先輩も何人か花をやっていたし、食べられないとは思わなかった。何よりやっぱりきれいだしね。
食べられるか食べられないかよりは、花が好きだった。だから花なんだよ。」
何年行ってらっしゃったのですか?
「2年。」
きょえ~w(゚o゚)w ワオー!
2年も米国(オレゴン州)に行ってらっしゃったなんて、それはもう英語ペラペラですね。バイリンガルの花農家さんて、かっこいいな~。
「米国に行ったら行ったで、それも大変。楽しかったけどね。真珠湾攻撃が記憶に新しい世代がまだまだ多くいた時代だし、有色人種差別も普通にあったからね。街で突然怒鳴られたりもしたよ(笑)」
その時に感じたことは?
「いろいろ経験を通して覚えたよ。欧米の雑誌を見ると、住居や花の写真などがたくさん載っていてね。高度成長期にあった日本も、いずれこうなるだろうと思ったんだよね。
日本が豊かになったときに、食べ物はお腹いっぱいになったらそれ以上はいらないけど、花の需要には天井がなくて、1人が2倍が欲しいといえば、純粋に需要も2倍になるわけでしょ。そこに花業界の将来性があると若いなりに思ったんだよね」
豊かになりつつあった日本を肌で感じていた大澤組合長は、生活文化面で先を行っていた欧米に日本の将来を重ね合わせていたのかもしれません。
そうして2年の研修を終えて帰国された大澤組合長は、昭和44年いよいよ自らバラの生産を開始します。
「ところが、自分でやってみると大変だったのなんのって・・・」
ハウスを建てるのにも十分な資金がなく、土地を売ってまで資金を集めたといいます。
「米国で仕事をしているときは、何(WHAT)をどのように(HOW)行うかは教えてもらえましたが、自分で農場を始めるときはWHATから決めなくちゃならないでしょ。“何をするか”から考えるのだから大変なんだよ。」
施設を建てたら今度はバラ苗の入手が困難!
当時は今のように簡単にはバラの苗は手に入らなかったのです。
「最初に建てた施設600坪を埋めるのに、2年かかったよ。当時のバラの先輩などに譲ってもらったりしてね。仲間や先輩、行政に恵まれて・・・みんなに面倒を見てもらったよ」
と謙虚に当時を振り返ります。
これが大澤組合長のバラ作りの原体験となりました。
こうして昭和44年に個人で始めたバラ生産は、45年に仲間を迎え、50年代には上向きに伸びていきました。55年には3人で1,800坪の施設を建て、共同出荷を始めました。(東前橋温室バラ組合設立)
56年以降、さらに仲間が増え、現在は12名にて約13,000坪、およそ70品種のバラを出荷するまでになりました。
広い圃場で皆さん作業中でしたので、全員集合とはいきませんでしたが、お集まりいただいた前橋バラ組合の方々で集合写真です。なかなか若い方が多いでしょ♪
「大切なことは助け合い。自分だけ良ければいいのではない。一人でできることは限度があるが、協調の精神を忘れずにみんなでやれば、相乗効果で個人の力の純粋な総和よりも大きくなる。コミュニケーションを取って自分の持ち場は自分で守る。これが“協同”の基本だよ」
前橋バラ組合の基本精神です。
大澤組合長にとっては「バラそのものが生活であり人生」。“バラ色の人生”とはこのことを指すこともあるのでしょう。
ろ:老農 船津伝次平(ふなつでんじべい)
船津伝次平とは、ココ前橋市出身の篤農家です。「明治の三老農」の一人で、従来の日本の伝統的な農業に、西洋の近代農法を取り入れ、この農法は全国に普及していきました。
なんだか赤城に流れる農業の才腕を感じます。
前橋バラ組合の格言
・ 人間よりも遥か前に生まれ、悠久の時を生きてきた植物は、ほかならぬ土に根を張ってきた。
土が持つ自然のパワーを利用し、やはり土耕栽培が鉄則と心得よ。
・ 土耕栽培で全国でも記録的な前橋の猛暑でも品質を維持すべし!
・ 少量培地で側根を発達させるべし。収量が上がり、栽培効率アップします。
・ 採花は1日3回。品種特性をよく観察して、それに合わせて採花のタイミングを図るべし!
・ 赤城の太陽と土と地下水を有効活用すべし!
・ 出荷作業は最少工程数にて!触れば触るほど、バラは傷つく!
スムーズな仕組み作りを実現すべし。
消費者へひとこと
毎日バラのある生活をしてほしいけれども、なかなかそうもいかないご事情もあるでしょう。せめて、記念日にはバラを使ってみてください。家の中でふと目をやるとそこに花がある、そんな生活をしてみてください。
お花屋さんへひとこと
店頭に並ぶ花は日々ご覧になっているかと思いますが、生産現場を知らずに、販売のときにご苦労されるお花屋さんはたくさんいらっしゃると思います。私たちはオープンですので、いつでもいらしてください。
今回学んだ四字熟語
「土耕栽培」(どこうさいばい)・・・人工培地ではなく、土に植えて植物を育てる一般的な栽培方法。
「置換容量」(ちかんようりょう)・・・土が持つ保肥パワー。
「少量培地」(しょうりょうばいち)・・・プランターなどの限られた容量の培地、またはそのような培地で行う栽培のこと。バラの場合は栄養を吸収する側根が発達しやすくなるため、収穫効率が良くなることが期待される。
「頂芽優勢」(ちょうがゆうせい)・・・その枝で最も高いところから上に伸びていくという植物の特性。
「採花母枝」(さいかぼし)・・・収穫用の花を付ける枝のこと。
「前橋バラ組合」・・・群馬県の赤城山の麓、前橋市において、全国でもトップレベルの品質のバラを作る生産者の集まり。次世代が育ち、技術も協調性もある精鋭生産グループ
・・・あ、これは四字熟語じゃなかった^_^;
2010年12月21日
vol.80 JAわかやま 興里農場 バラ ~和歌山県産地シリーズ~ 後編
和歌山県シリーズ後編は、JAわかやま興里(こうさと)農場からです。
こちらはJAわかやまのバラがセリで販売される様子です。
(QUEEN ROSEと記載されているピンクの縦箱がそれです)
まずは大田花きの担当者にインタビュー!
大田花きでバラ販売歴5年の担当者に聞いてみました。
興里農場のバラはどうですか?
「いや~、すごいよ!
あんなすごいバラ見たことないナイ。
大田花きのバラの中でも屈指の優良産地さんだよね。
トンカチのように丈夫でありながらホントに美しく咲くし、スタンダードだけでなく、スプレーの輪付きもすんごくいいのよね。
どうしたらこんなに立派なバラができるのかな。
特異なまでに豪華なバラは、一体どんなところからやってくるのか、ちょっとウン探で見てきて!」
('◇')ゞ ラジャ!
美しく乱れる興里農場のバラの謎に迫るため、大田花きバラ担当者から指令を受けJAわかやま興里農場へ潜入!
ウンチク探検隊、いざ出陣!タッタラーー♪
秘密の潜入です・・・といいつつ、正面からこんにちは~!
って全然秘密の潜入になっていない^_^;
ぬぬッ!Σ(゚д゚;) !?
な、なんとこれが噂の“トンカチバラ”ですね。
確かに茎もしっかりしています。
そしてあれもこれも、“今日中に出荷しなくてはいけないのではないか??”とこちらが心配するくらい大きく色付いたバラばかりです。
こちらは25年前から驚愕のバラ生産を手掛ける中村さん。
バラ作りのきっかけはなんだったのでしょうか。
「トマトを作っていたんやけどね、トマトの裏作として花を始めたんよ。その時はアルストロメリアとか、アネモネ、スイートピー、フリージアなんかを作ってたんやけど、そういう季節指数の高い花は、パートさんを雇っても休みになるとどっかいっちゃうんだよね~」
なるほど、つまりその季節にしか雇えないパートさんだと、また雇用しようと思ったときになかなか人員を確保するのが難しい。
そして、メンバーも交代するから、雇用するたびに一から教え直し。パートさんにスキルを蓄積していくことが難しいというわけですね。
「そうそう、だからパートさんにも通年で働いてもらえるものを作ろうと思って、バラにしたの。それもスプレーね」
ふむ、どうして当時はスプレーにこだわったのでしょうか。
「あ~、誰も作っていなかったから。それだけ」
そうですかぁ、“誰も作っていないから自分が作る!”というのは、ニッチでありながらリスクも高い。なぜ周りがやっていないかを見極めないと、成功するか失敗するかは表裏一体。
そのリスクを計算しつつ、「周りがやっていないから」というところにかけて実行されていくところが中村さんですねぇ。
品種選びの基準は何ですか?
「感覚ッ!( ^―゜)b
趣味ッ!
う~ん、でも一応自分の戦略に基づいてやっているんだよ。でもその戦略も毎日変わるからねぇ」
(゚-゚;)ウーン
もう少し教えてください・・・
「そやなぁ、ベースとして使ってもらえる花を導入するようにしてんねん。
“この産地のこれを買っておいたら安心”と思ってもらえる花。
欲しいから買うのではなく、必要だから買う。“なくちゃ始まらないよね”という品種という観点で選ぶねん。
花保ち剤を使ったとしても、それは魔法とちゃうからな・・・開いていない花が希望通りに咲くとは限らんやろ」
おっしゃる通り。
「それにもともと良い花、きちんと咲く花でないと花保ち剤使っても効かんやん。だから、そういう基準でも品種を選ぶね。
大型のパッカー屋さんの友人が多いからね。安心して彼らが納品できるものを提供したいやろ。裏切れんしな」
ビジネスパートナーさんを“友人”というポジションでご紹介いただきました。
大切なご友人と捉えていらっしゃるからこそ、信頼を裏切ることなく納品しようとする中村さんの姿勢が見て取れます。
「そういう観点で品種を選んどるけど、つまり大切なことは品種ではなく品質っちゅーことや!
品質を保つためにどの品種を選ぶか。そういうポイントやな」
ご自身でも育種されると伺いました。
「そうそう、そのときも感性でやるよ。でもなにしろ強くなかったらあかん!
花も樹勢も、何もかも強くあること。でないと中村セレクションからは落ちてしまうな。
例えばどんなに発色が良くてきれいでも、輸送に耐えられんかったら意味ないやろ。そんな花、エンドユーザーに届くときにはスカスカや。」
スカスカはいけません。
確かに、強さあっての美しさですよね。
「そや。弱かったらお客様にも迷惑をかけるし、出荷現場も大変や。
流通に載らん花は、畑でいくら良くてもお金にならん!」
確かに。
ホント、丈夫さを売りにしているだけあって、この茎、太ッ!∑(゜◇゜;)
ご覧ください。ちょっと太めの絵を持つボールペンと比べても、ひと回り太いくらいです。
これじゃぁ大田花きの営業担当をしてトンカチバラと言わしめるわけです。
納得、納得(゜ー゜)(。_。)(゜-゜)(。_。)ウンウン
育種、育苗
そんな中村さんにとって、ご自身で育種していて良い品種に出合えるのは4年から5年に一度だそうです。
こちらの花をご覧ください。
中村さんが育種された品種です。名前はまだありません。
とてもきれいだったので、取材班もつい手に取って香りを嗅いでしまいましたが、形、色、香、三拍子揃ってとてもいい花ですね。
持った感じも茎が細い割にしっかりしていて、使いやすそうです。
「いや~、茎が細すぎてあかん。
市場の流行からしたら全てええかもしらんけど、バランス悪いわぁ」
えーーーーー!!!(+_+)
中村さん、ここまで条件が揃っているのにNGだなんて、なんてバーが高い!
こちらは交配した苗を育てる育苗室です。
接ぎ木したバラが活着(かっちゃく;根が張ること)するかどうかは温度と湿度が重要なポイントになります。
湿度が十分でないとすぐに枯れてしまうので、十分室内の湿度を保っておく必要があります。
みなさん、バラの接ぎ木苗をご覧になったことはありますか?
こちらがそれです。↓
こうして上手に茎を合わせてテープで巻き留め、育成したい品種(穂木;ほぎ)を台木(だいぎ;その株の根っことなる木)に接ぎます。
なぜ台木に次ぐ必要があるのかというと、ここに育種した1本のバラがあるとします。
これを販売用に増やしたい。すると、こうして1本のバラから育成用の枝をチョキチョキと切っていくわけです。
このとき切られた育成用の短い枝が穂木となります。
この穂木をプツプツと土に挿していけば、根が出てバラの株に生長するのですが、一般的にバラ、とりわけ若い穂木はデリケートで病気に弱く、大きくなる前に病気にかかってしまう可能性がとても高いのです。
そこで、直に土に挿すのではなく、病気に強いバラに接ぐことによって、病気にかかりにくい強い株を育てることができるのです。
台木に使われる品種はロサ・オドラータ(原種)やノバラなどで、これらの丈夫な台木に接ぐことによって、丈夫で樹勢が強いものができ、株全体の寿命も伸ばすこともできるのです。
中村さんもロサ・オドラータを台木にしています。
「樹勢も強いしな、丈が取れるわ」
なるほど、中村さんのトンカチバラの秘密はこの辺りにもありそうです。
こちらが台木に接ぐ方法で丈夫な株を作り、増やされた中村セレクションの数々です。
中村さんの手によって生まれた育種は興里農場の"K"が冒頭につき、“K-なんちゃら”という名前になりますので、どうぞご注目ください。
さて次に、生産の秘密にもう少し迫ってみましょう。
もしかして培地にワケあり?
「土耕栽培のときは土作りを重視していたんだけど、ロックウールに変えたときに買ったまま使うのではなく、独自にアレンジを加えて使ったんよ。
ロックウールでの十数種類の組み合わせで下に敷いてみたんよ。ゼオライトとかサンゴとかね。もちろんヒントは土耕栽培の中にあって、それまでトマト栽培などで研究したノウハウがあったからこそ、いろんな組み合わせを思いついたんやけどね。
いろいろやり始めたときに“土耕の水揚げはいいけど、ロックウールはイマイチとかね、いろいろ培地によって評価がまちまちなんよ。」
では何を・・・?
「これ」
ぬぬッ!
こ、これは切り花用の給水スポンジ?!!w(゚o゚*)w
「そうそう、給水スポンジを砕いて使ってんねん」
中村さんは切り花のアレンジ用に使う緑色の吸水スポンジを2cm角のキューブに砕いて培地としています。
でも、このスポンジだけでこの強くて美しいバラができてしまうのですか?
「うん!(≧∇≦)」(大きな声で元気良く!中村さんスマイル~)
え、ほんとですか??c(゚.゚*)。。。??
「その“うん!”の中には企業秘密も入っとる!」
そ、そうですよね~^_^;
聞いたあたしがウブすぎた。すみません。
「でも今の形に行きついてから、夏場ベッド内(培地の部分)に酸欠が起こらなくなったな。
潅水するにも保水に柔軟性ができて、根腐れがなくなったよ。
それにロックウールに比べ、花首も大きいものができるようになったよ」
すばらしーーー!一石二鳥も三鳥も・・・。
独自の摸索と研究で、他産地には真似できないバラができてしまうのですね。
核心は企業秘密にしても、強くて美しいバラの秘密のひとつは培地にもあることが分かりました。
他には?
切り前(採花のタイミング)にも何か理由が隠されていますか?
「あるで~。
うちはドレスフラワーで特許を取ってるんよ」
ド、ドレスフラワー??(・_・?)
ドレスフラワーとは、出荷時にバラの花の部分をネットで包んで出荷するというアイディアと技術のことです。
採花してからお花屋さんの店頭に置かれるまでの輸送中でも花は生長して開花を進めてしまいます。
その開花を抑えるためのものです。
このネットかけの発想が生まれた背景は?
「そうだね、ツボミで出してしまうとエンドユーザーのところで咲かないかもしれないという悩みがあるよね。小売店さんのところで開花調整などしてくれるのかもしれないけど、それも大変でしょ。
それに、ツボミで採花したものと咲かせてから採花したものでは日持ちが全然違うんよ。ツボミで出しても咲かないし、ベントネックになっちゃったりするんよね。
咲いたものの方が確実に長持ちするから開かせてから出したいんよね。
でも十分咲かせてそのまま出したら、エンドユーザーの手に渡ったときに、どんな姿になっているかわからないよね~。
そこで“咲かせて出荷”+“輸送中の開花を抑制”するための対策がこのドレスフラワーってわけ」
なるほど。
花は圃場で咲いたものが最も美しい。そして十分大人になって(開花して)強さを備えてから採花したものは、強さと美しさを両方兼ね備えているのです。
しかも長持ち!大人になって最も美しい状態で切ってそのまま飾ることが、最も長持ちするコツなのです。
ごく一般的にはこれくらいの開花で市場に出荷されます。
ここを中村さんのところではこの状態プラス2-3日圃場で咲かせてから、このくらいの状態で出荷します。
商業ベースに載せるとなると、切ってから飾るまでに必ず輸送が発生します。
その間のストレスをどのように解決するかということで生まれたのがドレスフラワーの発想なのです。
まあ輪(りん)の大きいことなんの!
「ウェディングで利用してもらう場合、お花屋さんが結構苦労して咲かせているんだよね。そうすると中には咲かないものもあるし、お花屋さんは大変でしょ。切るときの年齢を少し上げて、それを畑で咲かせてあげるんよ。そして、できるだけ切った瞬間の状態に近い形で消費者に届ける。それが狙いなんよ」
なるほど~。これだけ開花していてもネットでカバーすれば花びらが反り返るほど開いてしまうことはないわけですね。
↓↓↓↓↓
↓↓↓↓↓
若いのはかわいいけど大人のお話はできない。できるだけ大人に開花させて出荷したいけど、老化との矛盾がある。その問題をネットでカバーしようということですね!
このネット、リアル女性にも欲しいアイテムやわ~(≧∇≦)
実は取材班も市場でこのネットを見たことあります。
国内品のみならず海外からの輸入品でも見ますね。
しかし中村さんのパテント案だったとは存じませんでした。
「そや、海外の人もみんなマネしてんねん。
ほんまはパテントやから勝手に使ったらあかんねんで」
恐れ入りました・・・。
「結構みんな無断で使っているんよ。
無断で使っていたら処罰の対象になるから、みんな気を付けて!」
でもどうしてこのタイプのネットに辿り着いたのでしょう?
「まず一つは伸縮性のあるもの、これは大切だよね。作業上も商品保護上も考えてね。
女性のストッキングとか、果物を包んでいる保護材なんかでもやってみたんやけどね・・・虫も入るし、いろいろ試した結果、今のこれになったんよ。パッキングするときに緩みを持たせないと、花びらにネットの跡が付いちゃうでしょ。そう、緩みも大切」
中村さんは、このネットはお花屋さんではなく“エンドユーザーに渡った時点で取って欲しい”とおっしゃいます。
それは、このネットには花弁の保護と開花抑制の2つの意味があるからです。
このネットはエンドユーザーのためのものなので、エンドユーザーに届くまでは外さないでね♪と中村さん。
どのタイミングでネットをかけるのですか?
「採花の5日前から1秒前まで!」
ふむ。このあたりのルールはだいたいで大丈夫のようです。
なんて教えていただきながら、圃場を見渡してみると、このようなものが・・・この数字入りのカートは何でしょうか。
「サイズを測るメジャーの意味もあるけど、トゲで葉や花が傷まないようにこのウィール付きのこのカートに入れていくんよ。
それぞれの長さに合わせ置いていき、長さの異なるバラが上下に重なることはない。
そうすれば下に置かれた花への負荷が最小限にとどまり、傷もほとんど付かないねん。」
ふむふむ(゜-゜*)、なるほど。
「右手で花を切ったら流れ的には左手で抱えるやろ。それをやったら下に持った花や葉は傷つくやん。だからこれ(カート)を使うねん」
人の腕で抱えるってことは少なからずバラの重み以外の力がかかりますからね。
このような細やかな心遣いと創意工夫で、興里農場のバラは葉もきれい!
だからこそ、中村さんは自社のバラをQUEEN ROSEと名付けてブランド化しています。
←看板最上部に「QUEEN ROSE」と書いてあります。
どうしてKINGではなくQUEENなのですか?
「花は男性ではなく女性やねん。なーんでKINGにせなあかんねん。」
あ、これまた愚問で失礼いたしましたッ!m(_ _)m
「QUEENやしな、丁寧に作ることだけは心がけてるよ。傷つけたり汚したりしないように」
そうですね、ウェディングなどで使っていただくためにはキズものはいけません。
冷蔵庫に保管するときも長さをきちんと整理して長いバラのトゲが短いバラの花びらを傷つけることのないよう細心の注意を図ります。
そらもう、トゲとトゲの間に花が挟まろうものなら、出荷前に八つ裂きですわ。
この辺りの細やかな配慮や工夫はさすがです。
ユニークダイバーシティ : イスラエルへ
何でもイスラエルに頻繁にお出かけになっていたとお伺いいたしましたが、何のために?
「そうそう、某大手企業が日本に農業資材を輸入しようというときに、イスラエルの窓口になったんよ」
花き業界の多くの人がオランダやドイツ、フランスに出かけて花業界の発展に向けて様々なことを吸収しようとしているときに、中村さんはイスラエルに目を向けていました。
それもバラの品種を見に行ったり、農業資材を見に行ったり・・・何回か見ているうちにイスラエルが面白くなってね。
1990年代ころは隔月でイスラエルに出かけていたよ。
気候もイスラエルは地中海性気候でも南端の方だから、西岸海洋性気候のオランダよりも暑さ対策では参考になることが多いんよ」
冬の寒さはどうにでも対策が打てます。しかし、日本の夏の暑さはバラの生産者さんにとっては毎年異常とでも言いたくなるくらいやっかいです。
ですから、倣うべきはオランダよりもむしろイスラエル、ヒントはイスラエルにあると中村さんは考えたのです。
「そうしているうちにイスラエルに色々知り合いができてね、ある日『エコノミスト』というイスラエルの新聞の一面に載ったことがあるんよ。」
な、なんと∑(゜◇゜;)
「そこからまた芋づる式に知り合いが増えてね」
と思ったら、何と日本の雑誌にも掲載されているではありませんか!
経営と技術と商品の情報誌『農業経営者』(1998年11月号;㈱農業技術通信社発行)のグラビアを飾る中村さん。
かっこええなぁ~(*´ -`)
これはもうグラビアアイドルならぬ「グラビアファーマー」ですね!
ところで生産はどのように学ばれたのですか?
「僕ね、(技術などを)盗むの得意なんですわ。
師匠みたいな特定の人に教えてもらったことはないんやけど、(圃場に)3回くらい見に行ったらだいたいわかるな。
とりわけバラは誰の生産も参考にしてない」
え?ではどうやって?
「トマトの栽培が原点になっているし、90年代当時から南米やイスラエルを見て歩いているのでわかってしまったよ」
生産の基本がインプットされているから、1を見て10を知ることができるということでしょうか。センスがあるのでしょう。
「海外の産地の人がうちに来て、圃場を見ると“FANTASTIC!”や言うねん(嬉)♪」
中村さん、このグローバル社会の中、海外の一流産地が見学にいらして彼らに“FANTASTIC!”と言わせてしまうこと自体が“FANTASTIC!”ですよ。
「オランダの或るバラの種苗会社の社長に“お前んとこのバラ見たら、海外の産地はジェラシー覚えるでぇ”と言われたこともあんねん」
って、その社長さんはさすがに和歌山弁ではないとは思いますが、そんなことまで言われるほど生産を評価されるなんて、OTAのバラ担当者がすごいすごいと言うはずですわ。
おっと、このピンクのカーペットはなんでしょう?
「オキザリス“ディープオマ”や」
中村さんはバラの育種、生産だけでなく、ほかの花苗の育種や育苗もやっていらっしゃいます。
こちらは中村さんが育種されたオリジナル品種のディープオマ。種苗登録されています。
「パテントはしっかり取らなあかん。“整理をする”ということやわ。無秩序は良い物を世に出させなくなってしまう。そしたら日本の花き産業はダメになってしまうやろ」
なるほど、中村さんの視点は単なる“良いもの生産”ではなく、日本の農業をさらに活性化するところにおいていらっしゃいます。
ミクロの目とマクロの目。中村さんは農業経営者として両方の目をお持ちです。
そのほか和歌山県の主力品目でもあるスターチスなどの育苗も行っています。
中村さんにとってバラとは何ですか?
「生きる糧やな。命やわ。
LIFEでありEVERYTHING。
何物にも代えられん。
寒いも暑いも生活の全てバラがバラ生産に関する思考に繋がる」
10年後の夢は?
「日本でトップ産地の一つになりたいな」
もうなっていらっしゃるのでは?
「いやいや、バラでクイーンローズいうてもまだまだエンドユーザーはわからんやろ。雑誌にもあまり載らんしな。
上から◎傑みたいな名前を連ねる産地として、エンドユーザーに認知されるようになりたいわ」
興里農場の格言
・ 生産するときは常にエンドユーザーを意識すべし。
また業務用のバラは仕事をされる方が使いたい状態まで圃場で咲かせて出荷すべし。
・ 品種選びの品種はひたすら「強いもの」。強さあっての美しさ。美しいだけのバラは流通に載せるべからず。
・ 独自性を生かすべし。人の後を追っているだけでは、その人と同じものしかできないということ。
・ ドレスフラワーはただの網かけローズではない!
バラ人生の中で最も美しい状態を保つための老化防止効果の高い秘密兵器であった!
・ 花の取り扱いは丁寧に行うべし。皆がやっている当たり前のようなことに聞こえるかもしれませんが、そこに創意工夫を施すことによって、最後の品質はグンと違ってくるのです。
消費者の皆様へひとこと
どこの花より1日でも長く持つバラを作ります。
同じ品種で他産地と混ざったら、「これは興里の!」とわかるくらい顔がある産地。
それがREMARKABLE(リマーカブル;際立っている)であるということです・・・という産地であり続けるよう努力しますので、宜しくお願いします。
興里農場の「興里」とは「里を興す」の意味。
「設立当初は周りの人と一緒に花をやって産地として形成できるようにと思って始めたんだけどね。今はうちだけだよ。お金の問題ではなく、花が好きじゃないとできないでしょ。」
ここにもまたひとりFLOWER PEOPLEを見つけました。
【番外編】
こちらは中村さんのご自宅です。
スッ、スゴイ!!!ヽ(*゚O゚)ノ
築60年、造りは歴史を感じさせますが、とてもきれいで良くメンテナンスされている感が漂います。
しかも、お庭(「庭園」ていうのかしら、こういうの??)には塵ひとつ落ちていない!
あの煙突、ご覧ください。今ではかなり珍しいそうです。
【CM】 JAわかやまのジンジャーエール
中村さんが大田花きにご出荷される際は、輸送効率を考えJAわかやまを通じて出荷されます。
そのJAわかやまから販売しているのがこちらのジンジャーエール。
ショウガの生産量が高知県に次いで全国第2位の和歌山が、その特産であるショウガを使って開発した商品がこちらです!→
お味は・・・?
(* ̄O)◇ゞ ゴクゴク・・・
う~ん♪
とぉってもジンジャリー(≧∇≦)!!
こんなジンジャーエール、いただいたことがありません。
ジンジャーエールというより“ショウガまるごとドリンク”って感じです。
風邪をひきそうだったので、こちらを少し温めていただいたら、すっかり良くなってしまいました。
【松下幸之助】
世界的に有名なのは中村さんもそうかもしれませんが、こちらの松下幸之助さんもご存知ない方はいらっしゃらないでしょう。
言わずと知れた現在のパナソニックの創設者であり、経営の神様との異名を持つ日本を代表する実業家です。
1894(明治27)年、和歌山市(旧海草郡和佐村)にお生まれになりました。
なんと中村さんはこの松下幸之助さん生誕の地から目と鼻の先にあるのです。
こういった偉人を育てる土壌がある和歌山県はさすがです。
それではみなさま、本年もウン探をご愛読いただきまして、誠にありがとうございましたm(_ _)m
2010年の締めくくりは、来年に繋ぐべく「末広がりの8」、「vol.80」で縁起良く幕を閉じることになりました。
どうぞ2011年もウン探を宜しくお願い申し上げます。
we wish you a merry merry christmas & a happy new year!
see you in 2011!
<写真・文責:ikuko naito@花研>
2008年10月 5日
vol.67 宮城県 梶農園
「箱を開けて見れば、分かる!」と評判のバラがあります。定評があるところには、かならず何かがあるもの・・・いったい何が違うのか、それはどんな風に作られているのかを知りたくなります。そんな期待にお応えするべく、ビデオカメラひとつで産地さんに飛び込むのが、われらが産地ウンチク探検隊です。
それでは、さっそく今日の舞台をご紹介しましょう!
?宮城野のバラを訪ねて?
風光明媚な自然から食材王国とも呼ばれ食通をうならせる豊かな大地、さらに今、開発まっさかりの仙台スポット!自然と都市がミックスされた不思議な魅力を持つ宮城県。
仙台からほど近く、古くから宮城野と呼ばれるその地を訪ねたウンチク探検隊は、東北のバラ産地「宮城野バラ工房 梶農園」と出会いました。
?梶農園に到着!?
晩夏の9月下旬、宮城野は早くも涼しい秋の風・・・のどかな田園風景には仙台米が穂を垂れています。
さすが東北地方というだけあって、夏は暑くも寒くもカラッとしているのですが9月下旬ともなれば肌寒いくらいです。夏がカラッとしていることはバラにも良いらしく、夏場に作る宮城のバラは品が良いことで有名だそう。
着きました!ここが梶農園です。出迎えてくださったのはお父さんの丹野敏晴さん。2008年バラ会議ではパネラーとして大活躍された、息子さんの岳洋さんも肩を並べていらっしゃいます。大きなハウスが軒を連ねていますね!どれくらいあるのですか?
「ハウスは15?16棟、広さは3000坪ぐらいあります」とお父さん。
「どうぞどうぞ」と事務所に案内してくださるお二方。岳洋さんが煎れてくださったコーヒーに暖まりながら、しばしお話を伺いました。
「バラをはじめたのは昭和55年、それまではカーネーション栽培でしたね。」と歴史を振り返るお父さん。
梶農園のバラの歴史は、今年で28周年を迎えるんですね。かくいう私自身も同じ年なので、何だか親近感をおぼえちゃいます。
事務所の壁に「MPS」のポスターを発見しちゃいました。「去年5月からMPSを始めたんですよ。」と岳洋さん。MPSというのは環境に配慮した花づくりに取り組む生産者に与えられる国際認証、いわばお墨付きのようなものです。
海外でさかんですが、日本国内でもMPSに取り組む花の生産者がどんどん増えてきていますよね?
でも・・・一体どんなことをやっていて、どんなふうに環境に結びついているのか?は意外と分かっていなかったりして。
のちほどゆっくり、MPSについても教えてください!
バラを見たくてソワソワ落ち着かないわたしたちを察してくださって(?)、イスから腰を上げた岳洋さん。
「まずは選花場を見に行きましょうか。」
?「切り前」と「選別」へのコダワリに迫る?
ここが選花場。けっこう広いんですね。
バケツにはきれいなお水。
「採花のたびにバケツを洗って水を全部取り替えて、雑菌が入らないようにしてるんです。」と岳洋さん。
そうですか、ということは一日に何度も水換えを・・・という私のひとりごとに、「でも当然のことなんですよ。」と何でもないような岳洋さんのお返事。
真っ先に目に飛び込んできたのは、市場でもお客さんから定評がある丹野さんの「アヴァランチェ」。
けっこう、咲いてますね。バラはもっとつぼみの小さいうちに採花するのだと思っていましたが・・
「バラの切り前と選別には一番神経を使ってます。花屋さんからお客さんの手元に届く日数を計算して、お客さんの手元で咲くように”切り前”を計算して花を収穫しますから、たとえばアヴァランチェはこの状態がベストなんです。これよりも小さいつぼみのうちに採ってしまうと、きれいに咲かないんですよ。」と岳洋さん。
切り前というのは花を採るタイミングのこと。
なるほど、そうだったのですか!ある程度花を大きくしてから出荷するというのは、その分、手間がかかるんじゃないですか?
「もちろん、花を傷めないようにあれこれ工夫していますよ。バケツは出来るだけゆったり使って詰め込みすぎないようにしたり・・・。」
あっ、本当だ。バケツはゆったり。ただ置いておくときも、花をネットや農薬の袋でていねいにくるんでいます。
よく見ると1本ずつ手選別されていました。
「品種によって、花を採る切り前はまったく違いますね。今はようやく花を見て感覚的に判断できるようになりました。」と岳洋さん。
ハウスの中を見渡して遠くから花のつぼみを見つけ、切るか、切らざるかを一瞬で判断するんだそうです。
「いちいち近付いて見に行っていたら、1本切るにも時間がかかっちゃうよ!パッと判断しないと。」
まるで鷹の目・・・!経験と職人技ですね。お客さんの手元で咲かせる、そのためだけに1本1本ここまで気を遣われている梶農園のバラ。
ここまで丁寧に扱われてキレイに咲かないワケがありません。
実際に「アヴァランチェ」をはじめ、なかなか咲かないと言われている大輪系のバラも、梶農園さんのところなら心配ないとお客さまからご指名での注文も多いとか・・・やっぱりお客さまが一番良く見抜いていらっしゃるんですね。
お客さまに見て楽しんでもらうために「産地では出来るだけのことをする。別に特別なことはしてない、当たり前なんですよ(笑)」という岳洋さん。
う?ん・・・掃除でも料理でもバラづくりにおいても、「やって当たり前なこと」と言われていることほど地道で手間のかかること、ですよね。当たり前をちゃんとやるって大事なんだなぁ。
大きな冷蔵庫の中を拝見。庫内の温度は5度、かなり寒いですね。
除湿機を置いて湿度を保っているんですね。あっ、こんなところに梨が(笑)
これですね、切り前が見事にそろってます。全部同じつぼみの大きさ。良く咲くバラはこの時点で違うんだ、ということが一目見て分かります。
選花場に戻ると、パートさんたちがきびきびと手作業で花を選別されていました。切り前を見極めた採花も、選別もすべてパートさんたちが全部心得ていらっしゃるそうです。
「パートさんたちは全員プロですよ。」お父さん。
?魅力的なラインナップに迫る!?
梶農園では、どんな種類のバラを作られているのでしょうか?ハウスを見学させていただきながら、おさらいしてみましょう。
その1、人気の高い定番のバラ
「ザ・テレサ」 「ローテローゼ」 「エスタ」 ・・・みなさんも一度は手にしたことがあるはず!
その2、ゴージャスな大輪カップ咲き
「アヴァランチェ」 「スイートアヴァランチェ」 「ロッソクラシコ」
その3、ユニークな花色
「ラナンキュラ」 「レッドラナンキュラ」 「アローフォリーズ」
その4、変りダネ
「ラ・カンパネラ」 「エクレール」
その5、最新品種
「アムネシア」 「ピーチアヴァランチェ」
何かしら興味を引かれて、欲しくなってしまうバラがありませんか?
とくに、切り前や選別に神経質なほどこだわっている丹野さんのバラだからこそ大輪カップ咲きは、間違いなしに生きてくると思われる品種構成です。
「品種構成では、花色の配色バランスには気を遣いますね。お客さんは花色を見て買われますから。
あとは1輪で存在感のあるバラ、個性の強いバラも必要。何といっても、お客さんを飽きさせないバリエーションが大事。」とお父さんはおっしゃいます。
なるほど、定番のバラから変わりダネまで・・・流行をとらえた大輪品種や最新品種もしっかり網羅されているから、お花屋さんは梶農園のバラだけでお店をコーディネート出来そう。
「それでもお客さんのニーズは年々変わるんですよ。それにすばやく対応できるように情報収集だけは欠かせないですね。」
今では頼もしい息子さんの岳洋さんが、そのあたりをしっかりサポートされています。
「ここ数年まで、ずっと土耕栽培だったからね。」とお父さん。
バラ工房の昔をしのぶネーム入りショベルカー。まだ動くかな?
ここはラベンダー通り。これまた立派なラベンダー!
「今年はもう咲き終わっちゃったんですよ。夏は一面良い香りでしたよ?」と岳洋さん。
近付くとまだほんのり爽やかな香りが残っていました、癒されます?。
?環境コントロールの秘密?
ハウスで見つけました!この大きなヒートポンプという装置。
装置から飛び出た丸いパイプは送風口。ハウス内の温度、湿度のコントロールを助けて、バラにとって
良い環境を作ってくれます。
「全部で15台導入しています。効果は目に見えて分かるほどだよ。」とお父さん。品質向上に一役買っているそうです。
「幸い、宮城県は年間の日射量に恵まれて夏は涼しいから、バラづくりには良い環境なんですよ。
冬も太陽が出ている日中は暖かくて、ヒートポンプいらずの日もあるぐらいです・・・といっても宮城の秋冬はやっぱり寒いですけどね、9月末頃からもう暖房を入れ始めてますから。」と岳洋さん。
夏涼しい高冷地の気候は、バラには最適。湿度が低くカラっとしているから、病気も出にくいということで無駄な農薬も使わなくて済むんじゃないでしょうか?
さらに宮城は、東北でも特に日射量が多い地域。環境コントロールをしやすい恵まれた土地なんですね。
食材王国と呼ばれるわけも、良いバラが出来るわけも分かります!
「去年から始めた”MPS”も環境コントロールのひとつだね。」とお父さんはおっしゃいます。
なるほど、丹野さんたちは具体的にどんなことをされているのですか?
「まず花の栽培に必要なエネルギー、肥料、農薬を日々チェックしてデータを毎月提出します。花を作るためのコストはどれだけかかるのか?ゴミは正しく分別されているのか?といったことまでチェックして、自社の生産を把握することが出来るようになります。」と岳洋さん。
MPSに取り組むことでどんなことに役立っていると思いますか?という質問には、一番大きなところでは、自分たちの生産の実態を知ることが出来て肥料や農薬についてこれまでよりも深く考えるようになったことかな?」とのこと。
あの、ずっと気になっていたんですが机の上に置いてある「農薬事典」これは、もしかして岳洋さんが読まれているのですか??
あーそれは!と岳洋さん。「農薬といっても成分とか残効期間も様々なんで、使用量を見直したりうちのバラに最適な薬を組み合わせたりしています。まだまだ勉強中です(笑)」と。
本当に勉強熱心ですね!
MPSを通して環境に配慮した花作りを目指して作られたバラは、自然と無駄な農薬が控えられ、花の品質も細かくチェックされているということ。このバラはそんな生産者のもとで作られたバラですよ、という
安心感や信頼をもたらしてくれる目印になりそう。
?ここでちょっと息抜きタイム♪?
梶農園では一般のお客さま向けに採れたてバラの直販店もやっています。
事務所の側にある、こちらのお花屋さん。贅沢にも採れたばかりの新鮮なバラを1本から買うことが出来ます。
店内、バラづくし・・・贅沢?!これはお客さまも嬉しいはず。あの「アムネシア」や「レディチャペル」を、1本100?300円とはかなり良心的なお値段だと思います。実際に、ご近所から仙台方面まで色んなところからお客さまがいらっしゃるのだとか。花保ちの良さに感激して、リピーターが多いそうです。
お近くの方は是非!
梶農園HPでお店の情報をご覧いただけます。コチラ→http://kaji-noen.jp/index.html
ちなみに、お店のロゴはお父さんのお気に入り。お越しの際は間近でチェックを♪
?バラづくりのコンセプトに迫る!?
丹野さん、梶農園のバラづくりのコンセプトを伺っても良いですか?
うーん、そうですねぇ・・・と少し考えてから、ご主人と岳洋さんは語ってくれました。
「まず第一には、お客さまが楽しめるバラですね。お客さまに、それぞれのバラのもつ個性や魅力をお伝えするのが自分たちの役割だと思ってます。」
とてもシンプルですね。
「そのためには、産地では”当たり前なこと”を徹底してやり続ける。出来ることは全部やる、努力を惜しまないこと。」と岳洋さんも続けます。
「当たり前なこと」とおっしゃるのは、つまりバラを咲かせることを前提にした切り前や手選別、花を傷つけないよう無理のない梱包をして出荷すること・・・などなど、当たり前だけど手間のかかる仕事ですよね?
「そうですね(笑)なんでも基本に立ち返って、地道にやり続けることが大事なんだって思いますよ。」とお父さん。
「昭和55年からバラを始めて色んな時代がありましたが、少しでも良い方向へ進むためにあれこれと努力はしてきたと思うんです。長い目で見て、立ち止まらず流されることなく・・・。」と深いお言葉。どんなときも一本筋の通ったお人柄と懐の大きさを感じます。
「どんなバラが求められているのか、流行やお客さんのニーズについて行けるように情報収集も大事」と
岳洋さん。「情報収集も息子が熱心にやってくれるから安心です。」と嬉しそうなお父さん。
梶農園は、この素敵なコンビの前向きなバラづくりがあってこそ成り立っているということがずっしりと伝わってきましたね・・・。今日一日、本当にお世話になりました。お父さん、岳洋さん、どうもありがとうございます!
箱を開けて見れば分かる、梶農園のバラの秘密。バラづくりの原点。
みなさまにも伝わったでしょうか?
梶農園の格言
・梶農園のバラは量より質、効率より手間+環境配慮型である!
・合言葉は「咲いて楽しめるバラ」。
咲いてこそ分かるバラの個性を楽しんでください!
・定番から最新トレンドまで、幅広い品種バリエーション。
必ず欲しいバラが見付かります!
(文責 三浦彩)
2008年7月16日
vol.64 山形県 東北第一花卉 (T.D.K)
ちまたは二酸化炭素削減トピックでいっぱい 、「エコなんちゃら」という新しいボキャブラリーが乱発し、世の中の関心が「環境問題」に集中する中、この花卉業界を代表する環境認証であるMPS(花卉産業総合認証プログラム)をいち早く取得したバラの産地が山形にあるそうな。
しかも、それは4人のグループで、その4人全員がMPSを取得されたという。
名を聞けば、なんと泣く子も黙る「東北第一花卉」(略してT.D.K)だというから、ただごとではない。
4人のうち2人は2007年12月にご取得、あとの2人も晴れて2008年7月にご取得された。
ならば山形まで行って話を伺ってこようではないか。
・・・と山形まで「エコ出張」。
詳細はこちらをご覧あれ↓
<第1編> MPS取得編
<第2編>
T.D.KのURLと品種一覧はこちらでご覧いただけます。
・・・T.D.Kの格言・・・
世の中はエココンシャスモード全開。この時代の流れに合わせて、MPSを取得すべし!社会のニーズです。
産地として生き残るため、明日への投資は惜しむべからず!
仲卸さんや小売店さんを裏切らないように、品質は常に維持すべし!
T.D.Kが売っているのは「バラと信用」!
4人の品種は重ならないように、話し合いで新品種を導入すべし!
新しいものが常にいいとは限らない。マーケットに耳を傾けるべし!
1人は4人のために、4人は1人のために。4人でひとつの大産地を作るべし!
2008年5月23日
vol.60 愛知県 JAひまわり
うんちく探検隊 記念すべき第60号!
今回は安藤隊長・西山副隊長率いる08年度入社の新人探検員9名が、新人研修を兼ねて、うんちく探検隊初参戦!
朝4時出発!新人探検員が「生まれて初めて見る生産現場」向かった先は・・・?隊員は西へ西へと車を走らせます途中、お茶畑や富士山を横目に高速を飛ばします。
安藤隊長:
「お茶畑にたくさんある、扇風機みたいなもの何か知ってる?」
「風力発電ですか?」
「ちがうちがう、霜にやられないように設置してあるんだよ」
「あれだけで、霜が防げるなら、ダリアなどお花でも活かせそうですね!」
と、会話は続きます。
しばし休憩です。
安藤隊長の指の先に見えたのは・・・
(左)内藤隊員(右)下田隊員
「ほら、浜名湖だよ!」
?JAひまわりに到着!?
東京を出て約4時間、隊員は愛知県の豊川市、JAひまわりに到着しました。
JAひまわりの知識
■どこにあるの?
愛知県の豊川市です。
■どんなお花をどのくらいの方が作っているの?
SPマム(75名)、キク(72名)、バラ(46名)、洋花(28名)です。
■ひまわりを作っているの?
ひまわりは、ごく少量しか作られていません。
■なぜひまわりってついたの?
昔、いくつかの生産地が合併をした際に、募集をかけて決まったのがJAひまわりでした。
今回、迎えてくださったのは、JAひまわり営農部花卉出荷センターの小林センター長です。
「このシールは、各生産者が一箱一箱貼って、出荷場に持ってこられます」「このシールを自動ローラーで分荷する前に、検査を一箱一箱行っています」
「えー!全部の箱を毎日チェックしているのですか?」
「生産者の当番がチェックしているんですよ」
これが「検査報告書」です。各品目ごとに報告書が異なります。これはキクの検査報告書です。ダニ、アブラムシ、白さび病、曲がり・・・様々な理由の項目。連絡事項には、検査員がコメントを書きます。チェック項目のランクは、連絡→注意→格下げ→返品。中には出荷場で、返品されることもあるそうです。これは昔から続いているJAひまわりの習慣だそうで、検査までが「自分たちの責任」という自覚をお持ちで、これに不平不満を言う方はいらっしゃらないそうです。
この検査報告書には「もう少し咲かせてください」とコメントが書かれています。市場でも、特にセリの際にはセリ人がお花を見て判断して、セリ機に「咲きすぎ」「曲がり」「葉悪し」・・・などを表示させて競ることがありますが、セリという限られた時間の中できっとこの「検査報告書」ほど細かくチェックできていないでしょうし、産地へのフィードバックも細かい対応はできていないでしょう。JAひまわりでは、ここまでは産地の仕事という認識から、毎箱毎箱チェックをされているそうです。
検査員の生産者の方々も、生産・出荷作業にプラスしてのチェック作業は、時間を作り出すのも大変だと思いますが、他の人が作っている花が見れたり、荷姿が見れたり、新しい刺激になっていると、小林センター長はおっしゃっています。
「1箱でもダメな物があったら、産地の信頼が崩れてしまう。ここでは、こんなに沢山箱があっても、結局、お花屋さんに届くのは1箱なのですから。」
このような認識があるからこそ、ひまわりのブランドが保たれているわけですね!
みんなも納得!(してるよね?)
左から、石井隊員、吉田隊員、矢作隊員、依田隊員
「他にも、組織で役割分担がきっちり決まっていて、抜き打ちでバラのバケットのバクテリアチェックをしたり、広報活動や、開封検査など、ローテンションで役割が決まっています」
では、JAの山田さんと金子さんに圃場をご案内いただきましょう!今からガーベラと、バラと、SPマムの圃場をご案内頂きます。
その前に、記念撮影。
お忙しい中、朝からありがとうございました!
?市川さんのガーベラ!?
早速、ガーベラを生産されている市川さんのハウスにお邪魔しました。とても広く、設備の整ったハウスには、出荷前の赤・黄色のガーベラが沢山ありました!初めてガーベラの栽培現場を見る新人探検隊も「きれい!」「すごい!」と感動の嵐。
市川さん:「今までは鉢で栽培をしてきましたが、今年からはロックウールの栽培に変更しました。肥料や原油の高騰から、どちらも量を少なめにしてしまったことが影響して、今年の栽培は良かったとは言えませんでした。肥料を吸い上げるのにも、ある程度の温度が必要!ということが分かった一年でした。」
ハウスの温度を保つのに、一日最低50ℓ?80ℓもの油が必要だそうです。
原油の高騰したからと言って、花が高く売れるわけではない、というのが残念ながら今の花卉業界の現状。弊社では、そのためにも「一円でも高く売れ!」というシールを営業全員のパソコンのデスクトップに貼ってあります。
市川さん:「ロックウールで栽培するメリットは、太くていいものができることです。」
←去年まで使われていた鉢
市川さん:「ロックウールのメリットは、本数は切れること。1?から400?500本/年間切れます。アルミ箔のようなものをかけることで、蒸散や微生物の繁殖を防ぐことができるんですよ。デメリットは重みが少ないように思います。」
黒い線のようなもので、自動的にお水をあげることができます
光を当てないと、このように何も生えてこない
ガーベラの花保ちをよくする方法memo
市川さん:「ガーベラは、花びんに活けるとき、水は茎の5cmくらい使っていれば十分です。毎日少しづつ、足してあげるのがガーベラにとって良いんだよ。」※ガーベラは水浅で活けることは常識でしたが、もっと少なくて良かったのですね。
市川さんから、お花屋さんへ一言☆
ガーベラは使いやすく、手ごろ。色々な方面で活躍できる花だと思います。冠婚葬祭にも、もっともっと使って頂きたいし、その方法を考えて下さればと思います。
わたしたち生産者は、いいものをがんばっていい花をつくります!
近年のブライダル重要についてのmemo by 安藤隊長
「大人婚」という言葉が持てはやされている今、結婚しても仕事を続ける女性が増えています。企業で働く人にとって、春先は転勤や異動で何かと忙しいので、結婚式は秋にするカップルが増えているようです。人口減少から、結婚式の需要も年々少なくなりますが、春の式は減少傾向にあっても、秋の式は横這いのままです。ブライダル需要に合わせてお花を作るなら、「秋」ということですね!
写真左:倉持隊員
市川さんと記念撮影!
市川さんから、新入社員へメッセージ☆
市川さん:私は昨年新しい栽培方法にチャレンジして失敗をしました。しかし、失敗で得た経験は大きく、そこから利益を生んでがんばっていこうと思います。会社でも、失敗やミスをすることはあると思いますが、同じ失敗を繰り返さずにそこから何かを学べば、上司や先輩も、皆さんのことを怒らないでしょう。皆さんも失敗を恐れずに、がんばってください。
市川さん、素晴らしいメッセージをありがとうございます。
ガーベラを頂きました。気分もhappy☆よかったね!!
ガーベラ@car
ちゃんとお水入りのペットボトルに入れて、車の中でも水揚げします。車に花があるのも気分が明るくなって良いですね!
?河合さんのバラ!?
続いて向かったのは・・・
バラの生産をされている河合さんのハウスです。
河合さん:「バラの生産をしています河合です。15年ほど前からバラのロックウール栽培を始めました。現在では、バラを63?栽培していて、43?がフィルム・20?がガラスのハウスで栽培しています。栽培を始める際にはハードにお金がかかり、ガラスのハウスを作ることには、周りからとても反対されましたが、今となってはよかったと思っています。」
屋根が高?い!
河合さん:「これまではロックウール栽培でうまくやってこれたけど、楽をしすぎてきてしまったのではないか?という考えのもと、3年くらい前から一個一個解析して、努力をしている最中です。」
(後姿の畑中隊員)
みんなも真剣にメモをとります。
わたし:「ロックウールで栽培しているバラは、今までに見たことがありますが、こんなに木化しているのは初めて見ました。何年くらい栽培すると、木化するのですか?」
河合さん:「3年くらいですね。普通は、2?3年で植替えをする方が多いですが、私は4?5年周期で植替えします。また、植替えをするなら、植物にとって春が良いと思いますよ。株の出来もいいです。よく、夏に植替えをする方もいますが、夏に植え替えると、その年の年末までに出荷するのはおそらく無理でしょう。それもあって、春に植替えするのが良いです。」
わたし:「これはなんですか?」
河合さん:「除湿機です。これを入れることによって、葉がしまったような印象になります。重量のあるしっかりしたバラが作れるんです。湿度は70?75%に保つようにしています。今日は雨が降ってないから、水がポトポト落ちるところがお見せできなくて、残念ですよ(笑)」
ちなみに雨の日は90?92%になるそうです。
河合さん:「ただし、落とし穴があって、20℃以上ないと除湿できないので、冬はそのためにも油を焚く必要があるんですよ」(相対湿度の問題)
「新しい機械やヒートポンプを入れると、その業者がなんと言おうと、自分で感じて試してみる。これが一番大事ですね。なので、去年は3日くらい、ハウスに寝泊りしました。これをやった時どうなる?秋にこれをしなかったら?品種によっても異なるし、これからも試行錯誤です。」
除湿機を入れたことによって出来た厚みのある葉
社会や環境を背景に、花きの生産者も国際競争で戦わなければなりません。継続性のある経営とは?
河合さん:「私は、定番品種を1/3、可能性を秘めた新品種を1/3、自分の好きな品種を1/3の割合で栽培しています」「やっぱり、食べていくために稼ぐことも必要だけど自分の好きな品種も作らないと、おもしろくないじゃない?ただし、これは1,000坪以下では出来ないと思います。1,000坪以下なら1/2を定番にする。もしくは、8割を定番に。1割好きなもの。1割あたしいもの。という比率が良いのではないでしょうか。」
後に、車で移動中に・・・
安藤隊長:「河合さんは安定して生産されていらっしゃるから、理想の比率で生産されていますね。私がもし、生産者なら始めは7割を食べていくために。残りの3割で新しいものと好きなものを作りますね」
「作りやすい」「作りにくい」「自分の好きなもの」「市場性」・・・比率を決めて生産をすることがキーワードですね!
「河合さんの好きなバラはどの品種ですか?」
河合さん:「マダムヴィオレです。香り・色、最高でしょ?咲くともっと違って見えますよ」
「いい香り?☆」
出荷前のものなので、蕾の状態でしたが、ほんのりいい香り!他のバラとは違う香りがしました。
病気に弱いマダムヴィオレ。それでも市場に「いつもあるように」という考え方のもと、栽培・出荷されています。
マダムヴィオレと、ラ・カンパネラは、栽培するのに腕が試されるバラ。
わたし:「次々と新しい品種が出るバラ。それを待ち望んでいる顧客が大勢いる中、市場からは栽培上の視点から、同じ品種を10年くらい作って欲しいという要望があります。河合さんはどのようなご意見ですか?」
河合さん:「そうですね。やはり、品種特性を掴むのに3年はかかるでしょう。それから多少栽培方法の修正をして、4年周期、4年周期と繰り返せば、10年ですからね、その通りだと思います。しかし、商品性については新しい品種がないと、デザイナーが寂しがりますね。」
河合さん:「いろいろとありますが、私は生産をする上で、いつも初心に返れるようにと心がけています。」
立石隊員:「河合さんの初心とは、どのようなことですか?」という鋭いツッコミ。
河合さん:「自分の作った花で、みなさんに喜んで頂くことです。」
河合さん、たくさんのメッセージをどうもありがとうございました!
とても勉強になりました☆
?JAひまわりのSPマムと輪菊?
最後はスプレーマムと輪菊の温室へ
残念なことに、輪菊の生産者の小林さん・スプレーマムの生産者の林さんは出荷作業のため留守にしていましたが、JAの金子さん・山田さんにご紹介頂きました。
こんなに背丈があるのですね!
コガネハマ(写真の花はあと2日くらいで出荷です)
この品種は、「芽かきなしで良いという作業性、冬場にあまり油を焚かなくていい」という生産性の良さから、これからますます出荷量が増えていきそうです。
ダッチライトという、花の生産に適した高い屋根のハウス。
オランダでは、このハウスが主流だとか。湿気がたまりにくいそうです。
ここで自動的に温度や湿度を測って管理しているそうです。
レミダスプリンス
突然の取材で、SPマム生産者の小林さんと林さんにお会いできず残念でした。次回は是非、いろいろと教えてください。
また、お忙しい中JAの金子さん、山田さんご案内・たくさんのご説明頂き、ありがとうございました。
最後は、JAひまわりの周辺の風景!
JAひまわりの皆様、ありがとうございました!
JAひまわりの格言
・一人一役(JAひまわり)
・新しいことにチャレンジして、たくさん学ぶべし!(ガーベラ・市川さん)
・自分の作った花で、皆さんを喜ばすという心を持つべし!(バラ・河合さん)
このあとも、新人探検隊の旅は続く・・・
(文責 Cimone♪)
2008年1月14日
Vol.49 滋賀県 Rose Farm KEIJI
滋賀県にあるRose Farm KEIJI。
関東で既にご存知の方は、ツウな方たち。それというのも弊社にご出荷頂いているのは去年の秋からなのです。
「ばらの持つ力を生かす栽培」をモットーに、品質と顧客満足度にこだわるとともに、オリジナルローズや鉢バラなど新部門の開発、またメッセージローズや染めバラなど、新しいバラの楽しみ方にも積極的に取り組み、生産者としての技術、ノウハウを軸としたバラの専門企業を目指されています。
ところで、アヴァランチェ+やドルチェヴィータ+のLEX+社の苗の代理店をされている國枝バラ園は、ジャパンフラワーセレクションでも数多くの賞を受賞されている有名なバラの生産地です。実は、國枝バラ園の國枝武夫の弟さんの啓司さんが独立して経営をされているのがRose Farm KEIJIです。去年からは、息子さんの健一さんもプロモーションに携わり、ますますパワーアップ!
Rose Farm KEIJIのオリジナル品種のバラは、日本の和や、日本の美を意識されたオリジナルの品種は、美しく可憐に咲き誇り、咲いてからも長持ちするという特徴を持ち合わせています。
JR京都駅→JR東海道本線快速・米原行で8駅→守山駅に降り立ち、息子さんの健一さんにピックアップしていただき、圃場へ案内して頂きました。
道中
「HP拝見しました!それぞれの品種特性もたくさん書かれていて、すごく丁寧なHPですね。
プロの方が作成されたのですか?」
「いえ、自力で作成しました。」
「すごいですね?」などなどお話していたら、あっという間に到着しました。
まずは選花場からおじゃましました。
こちらは、鉢物のバラ「京?みやこ?」。京と書いてみやこと詠みます。ロゼット咲きが美しく、でもどこか和を感じるRoseFarmKEIJIオリジナル品種です。
つぎに選花場の冷蔵庫を見せて頂きました。冷蔵庫の中で一番目に留まったのは、
「てまり」
このふわふわな感じ!女心にたまらない市場でも早い者勝ちの人気のバラです。
続いて、圃場へご案内して頂きました。
まずは、主に出荷して頂いているオリジナル品種をご紹介して頂きます。
てまり、ハート、ジェルソミーナ、小町、京(みやこ)、綾、紅、mia愛子、JANE愛子・・・などなど。
育種家であり、代表の啓司さんは長崎にお出かけで不在。今日は健一さんにご案内していただいています。遅くなりましたが、こちらが息子さんの健一さん。ドイツに留学されたり、サッカーでご活躍されたり、サッカーの本(DVD付きの本)のモデルもされていたそうですよ!
実はここに来る3日前に、偶然(?)東京の大田市場でお会いしていました。
突然の訪問に快く答えて頂き、ありがとうございます!
「てまり」
茎がやわらかく、しなやかさが評価されたジャパンフラワーセレクションにも出品・入賞されました。日本伝統の「美」をコンセプトに、可憐さ、儚さ、やわらかさが表現されています。
なでしこ度★★★★★(★5つ)ですね!
「蕾と咲いた状態ではこんなに違います」
「夏では、花弁が反り返って本当に手鞠みたいになるんですよ」
今でもポンポンしていて可愛らしいですけど、夏の状態も見てみたいですね。
蕾の状態と咲いたときでは、こんなに違う
「ハート」
「ハート」
心「HEART」をイメージしたバラ。満開期からの花保ちの良さ、花色の鮮やかさを追求した自信作。露芯しているからって、もう終わりじゃないですよ。満開を楽しむバラです。明るい「心」を表現したというこのバラ。蕾からの花色の移り変わり、芯から花びらへの色のグラデーション、丸みを帯びた花姿が、心をやさしく受け止めてくれます。
「mia 愛子」
そして、昨年(2007年)末に女優の内山理名さんが「第5回きもの大賞」を受賞された時に、都内の山野美容専門学校・山野ホールで授賞式が行われ、鮮やかな水色とピンクの着物で臨まれましたが、その着物に描かれているのは、このバラ mia愛子なのです。
「初恋」真っ白の高芯剣弁の整った花型。しなやかな茎。
「すごい真っ白でキレイですね?!!」
「夏には透明感がもっと増しますよ。」
「今年、もう少し売れると思ったんですが、そんなにイイって言うならプロモーションしてくださいよ」と健一さん。
私が一番魅せられたのは、この赤バラ「紅」です。
この赤も去ることながら、この蕾の感じがすっごいキレイ!
ルドゥーテのバラみたいでしょッ♪
採花中のお母さま登場!すっごく明るくてパワフルな健一さんのお母さんです!
「ジェルソミーナ」
「咲くまでは早めですが、咲いてからが長い!」というRose Farm KIJIのバラ、
個人的に購入して家で楽しみました。
フラワーフードとお水、期間中一度の切戻しだけで、
ベントネックも一切起こさず本当に2週間以上 持ちました♪
「小町」
今は出荷されていないレアな品種をご紹介します。
洗面台で来年の新作を発見!!
まわりは高芯剣弁の整った花形&中はロゼット咲き、色はスノーホワイト。
しかも、香りは・・・
「ミルラ」度★★★★★
こういうバラを待ってました!来年まで楽しみにしています。
ハウスに入ると真っ先に目に入ったのが、「ときめき」でした。こんなに綺麗な一重咲きのバラがあったとは・・・
鮮血な赤。元神戸元町シンボルローズだったといいます。八重が流行の現代でも、
このバラは別格!!切り前の問題などで、出荷は今はしていませんが、ご希望があればお応えしますということです。
プリンセスマサコ
「健一さんの一番好きなバラはどのバラですか?」
「プリンセスマサコは本当に表情が素晴らしいです。花弁の上品な光沢感がいいでしょ?」
シルクのような上品ななめらかさです。今は鉢限定で生産されています。
来年の出荷予定の新品種「あおい」
「めっ ちゃいいから!めっ ちゃいいから!めっ ちゃいいから!」と連発する健一さん。
なぜなら健一さんの息子さんの名前のローズだから。残念ながら、この時期は咲いていなくて拝見できませんでしたが、来年の出荷を楽しみにしています☆
ほんの少し栽培の秘密何でバラの圃場にホットプレート?うどん粉病には純度の高い硫黄粉を空気中に漂わせることによって効果が高いそうですよ。
>
バラの新芽が赤っぽいのが、栄養分たっぷりの証拠!
これですよ!この感じ。
圃場の中の試作スペースから、朝見つけたというバラ。
健一さんは偶然の産物だといいますが、とってもかわいらしいですね。
ところで、社会で働く女性は、ついつい男っぽくなってしまいがち。。。
最近これや、ストレスに悩むF1世代の女性、団塊ジュニアの女性は多いのです。
今の日本というやっかいな時代を「女」としてタフに美しく生きるには・・・?
すべての女性におくる心のビタミンとして、素直に育った(KEIJIさんの)美しいバラを飾りましょう!
ふわっとした花姿のバラをそばにおいて眺めていたら、やさしさを取り戻せるかも!
※もちろん女性だけでなくみなさんに効果があると思いますよ。
F1世代・・・マーケットの購買決定権の約8割を握っているといわれるF1(Female 1:20?34歳女性)
Rose Farm KEIJIさんの格言
・バラは作るのではなく育つ!
・採花本数ではなく、うちは花重視!!
・雰囲気重視!!
・心がやわらかくなるバラ、表情がある花を追求!
おまけ
某外国車○○Wへ毎週納品に行っているというRose Farm KEIJI一家。
一緒に行かせて頂きました。
You tube プロモーションビデオを作ってみました。
一部の方にはお馴染みのあの曲にのせて。
オリジナル品種以外で生産されている品種をご紹介します。
「アバランチェ」
「うちのアバランチェは特に真っ白で綺麗でしょ?」と健一さん。
「ミルバ」
「ミステリアス」
「ドルチェヴィータ+」
「リトルシルバー」
「スイートオールド」
「ゴールデンボーダー」
Rose Farm KEIJIオリジナル品種以外の生産されている品種のご紹介は以上です。
おまけ2
次の日、和歌山に行ってきました。
KEIJIさん一家に教えて頂いた「くろしお何とか」にも時間が合わなくて乗れなくて、
京都?和歌山を電車で行くと遠かった(涙)
←目的はこちら。ピロピロ鳴ってる!
神と交信するナギ
これぞまさしく、スピリチュアルプランツ!
(詳しくは、大田花き花の生活研究所 銅金所長へ)
ナギの脈拍
(文責 Cimone♪)
2007年12月21日
vol.48 山口県 柳井ダイヤモンドローズ(九州大田会)
今回は、商品開発室が事務局を務める“九州大田会”の総会で、会員の柳井ダイヤモンドローズがあるココ山口県へ!
三方を海に開かれた本州最西端の地です。
そして、薔薇栽培のプロである会員の皆さんと一緒に圃場見学となりました。
山に囲まれた1000坪という広大な敷地面積、そこに連なって建つ大きなハウス。
柳井ダイヤモンドローズの特徴屋根型連棟ハウス。
1棟ずつ独立したハウスが横に並んでいる生産地は見かけます。しかし、ココはこれで1棟のハウス!
一般的に、『体積に対して表面積が少ない方が熱効率がよい』と言われているので、このハウスは利に適った省エネハウスという事が言えるのではないでしょうか。
ハウスの中も広くて、立派です。
ハウス内では、たくさんの花芽が立っている列と、全くない列が見られます。
これが特徴一斉切り戻し方式。
これは母枝を株元から一斉に切り戻す方法です。
この方法によって、
切り戻し後に花芽が沢山あがる!
まとめて栽花することが可能な為、量を出荷できる!
順次切り戻しをする方法よりも管理がしやすく、選別する必要がないのでパートさんでも栽花作業ができ、人手が少なくても対応できる!
というメリットがあるのです。
そして、これが大田花きへ出荷のある産地で唯一の取り組み!
特徴栽花日表示。
出荷日でも、販売日でもなく、栽花日を表示する取り組みから、鮮度のよい商品をお客様へお届けしようという誠意が伝わってきます。
中には花ではなく、タンクが覗くハウスも!?
このハウスでは、地下水がくみ上げられていました。
ここで、液肥と混ぜられた水は、各ハウスへ流れ、点滴チューブによって注入されます。
そうして育った花々は…
スイートオールド
オフホワイトで、ふんわりと丸い形が魅力的なオススメ品種!
←画像をクリックすると、拡大写真をご覧いただけます。
<主な出荷品種>
そして、これはJ-ローズの今年の新作『J?703』。
オレンジ色のスプレーで、剣咲き、他のバラにない変わった咲き方が魅力!
まるでデコラ咲きのダリアのような雰囲気を持つ今年の有望品種の一つです。
只今、品種名募集中!!ステキな名前を思いついた方は、商品開発室までご連絡ください。
その他にも、
(左)J?ラビット: 目の覚めるような濃いピンクが特徴のSPバラ
(右)J?パヴェ: 「パヴェ」とはフランス語で石畳の意味
ショッキングピンクで花弁が波打った咲き方が特徴のSPバラ
このように、SPバラメインに栽培している柳井ダイヤモンドローズ。
特徴ベーシックなものから、ちょっと変わった品種まで、値頃感ある価格で安定出荷できるのが魅力です。
九州大田会は、大田花きにしか出荷がないオリジナルローズの総称『ジャパン・ローズ』のこと。
バラ生産においても国際競争が激化する現在、日本人の感性に適合したメイド・イン・ジャパンのバラを作ろう!日本のバラ文化を発信しよう!と一致団結しました。
大田花きとの共同開発により、地域を越え、お互いの栽培情報やマーケティング情報を共有し、質の高い商品提供を目的としている会なのです。
そこで、年に1回 いずれかの産地において総会を開催し、来期の方針を検討したり、市場動向を勉強して意識を高めたり、会員の圃場を視察して栽培技術の向上や研鑽に務めています。
<九州大田会のメンバー>
■大分県 泉水ローズ
■宮崎県 伊豆元久義(宮崎中央農協 田野)
■佐賀県 ファインローズ
■佐賀県 JA佐賀市
■佐賀県 鬼木バラ園
■熊本県 宮村バラ園
■熊本県 村田一樹
■福岡県 MRG村上バラ園
今年は、種苗を供給するメルヘンローズさん、生産する会員の皆さん、さらに販売サイドとして大森花卉さんもゲストにお招きし、活発な意見交換がなされました。
ハウスを案内する柳井ダイヤモンドローズの中田さん(左写真の中央)と、九州大田会のメンバー。
柳井ダイヤモンドローズさんよりお花屋さんへのメッセージ
いつでも手に入る安心感を皆様にお届けできる産地を目指しています。
ぜひ、ご利用ください!
写真:左から中田和孝さん、兼重正明さん、中田隆之さん、西本正和さん
九州大田会の会員でもあるメルヘンローズさんで修行した中田さんのご子息(写真左)も今年10月から社員として加わり、若い力がプラスされた柳井ダイヤモンドローズに期待です!
←柳井ダイヤモンドローズの薔薇はコノ箱が目印です!!
箱に描かれたカワイイ金魚ちゃんのヒミツは、最後に!
柳井ダイヤモンドローズの格言
手頃なサイズのSPバラを安定して提供できる秘密はハウスと栽培方法にあり!
熱効率バツグンの屋根型連棟ハウスで、一気に栽花するからまとまった数量を出荷することが可能!
鮮度が命!栽花日表示があるから安心して購入できます!
日本のバラ文化を考えるJ-ローズの取り組みにも注目すべし!
?山口県柳井市ってどんなとこ??
<柳井白壁通り>
柳井駅の程近くに見られる風景。
柳井は、元禄時代から瀬戸内海屈指の商都として栄えた町です。
この白壁通りは、国の重要伝統的建造物に保存地区として指定されており、かつては岩国藩の
お納戸と呼ばれ賑わっていた地域!
白壁と格子窓の古い町並みが200メートルほど続き、今でも当時の面影を色濃く残していました。
<金魚ちょうちん>
江戸時代から伝わる柳井の郷土民芸品。
青森の「ねぶた」をヒントに作られ、氏神様の祭礼などにお迎えちょうちんとして使われていたそうです。
印象的な赤は伝統的綿織物「柳井縞」の染料を用いているとか。
駅にも沢山のちょうちんが見られましたし、公園にまで金魚!!
でも金魚の養殖が盛んなわけでもなさそうだし…
なぜ???
それは、柳井市の右下にある島「周防大島町」の形が金魚のようだから、と言われています。
そう言われれば、確かに金魚に見えますよね!
それで、出荷箱に金魚ちゃんが描かれているのです。
山口だから「フグ」の絵だと思っていた方はいませんか?私だけでしょうか…(-- ;)
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