2006年12月14日
vol.31 佐賀県 ファインローズ
(佐賀県 太良町)
薔薇の品質、ボリュームにおいてトップ産地のファインローズさんを訪ねました!
佐賀県というと…
コメディアンのはなわの「佐賀県」という歌のヒットで有名になりましたよね。
田んぼしかないとか、牛丼屋がやっとできたと思ったら「吉田屋」だったとか、バス停の名前が「○○さん家前」だとか…田舎っぽさをチャカしている歌詞!
この歌に佐賀県民はさぞ憤慨しているかと思いきや、「全くだ」と納得してしまったり、「これで佐賀県が有名になる」と手を叩く人もいたとか!?
そんな佐賀県の場所はこちらです!↓
佐賀県の中でもファインローズがある太良町は西南端に位置しており、有明海と長崎県に接しています。
こちらは海苔の養殖風景です。
でも、太良町の秋から冬にかけての風物詩といったら、『カキ』!
なんと国道207号線沿いではカキを焼きながら食べられる“カキ焼き小屋”と呼ばれる海の家のような店を何軒も見ることができました。この通りは、通称“カキ焼き街道”と呼ばれているそうです!
次回、訪問の際には食べたいなぁ?!と横目に見つつ、早速レポートです!
JA佐賀みどり・ファインローズは4人の生産者グループ!
この箱が目印です→→→
では、お一人ずつご紹介していきましょう。
?原 高繁さん?
まずはイチゴ栽培から転身、薔薇作りを始めて15年の原さんを訪ねました。沢山の品種がありますが、お薦め品種を聞いてみると…
↑ポニーテール SPでボリューム抜群!
↑マニエル 本来STですが、SP仕立てにして出荷しています!
しかも大輪が5輪も付くのです!!!
←アニシススノー
「白のクォーターロゼット咲きはあまりない!
しかもミルラの香りもある!絶対ヒットするぞ!」と原さん。
でも、まだ試作段階の為すぐに入手することは困難です。
今後に乞ご期待!
どうやらお話を伺っていると、原さんが目指すパーフェクトローズは、
“白の大輪+花弁が強く+クォーターロゼッタ咲き+なお且つ香りがある”
こんな品種でしょうか?
誰もが聞きたい“栽培するにあたってのポイント”について伺うと…
「株作りに時間をかけてます」とおっしゃる原さん。
本数を切ろうと思ったら温度上げて成長を早めますが、温度上げないでゆっくり育てる!
さらに、換気を充分に行う!
これがポイントのようです。
「あとは基本どおりにやってるだけです。」と、とっても謙遜。
それにしてもハウスは何棟もあります。全部に目を行き届かせるのは大変そうです。
そこで、原園芸さんではハウスごとに担当者が決まっているのだとか。
「ハウスに入ると、その人の性格が分かるんです。」とおっしゃる松山さんは以前お花屋さんに勤めていらっしゃいました。
今は原園芸の育種担当!
ココからフローリストのセンスで作られた新たな品種が誕生するかもしれません。
原さんは香りのある品種にも注目していますが…
「よく社長(原さん)がコレいいでしょ!って持ってくる薔薇の香りは甘すぎてダメ!(どちらかと言うと男性が好む)ミルラの香りがわたし大好きなんです!」
女性らしい雰囲気でありながら、男性的なさばさばした性格の松山さんでした。
原園芸さんからお花屋さんへのメッセージ
生産の側からしたら経費も上がり、自分達の思うような値段で売れなくなっているのが実状。
だから、高く買ってください!
(悩みながら)でも、一番に消費者に喜んでもらわないといけんし…
と優しい佐賀弁でおっしゃっていました。
左から原 高繁さん、娘さんの奈津子さん、松山さん
生産者にとっても厳しい時代!でもファインローズさんの薔薇を見たら いい値段でも納得できるはずです!!
?田中 夏雄さん?
続いて、原さんが「熱心な方だよ。」とおっしゃっていた田中さんのハウスへ。
今秋からお目見えしたJローズの新品種も作っています。
香りも豊かで、早くも人気の2品種!
J?ヒーリング
イングリッシュローズのような花型がかわいらしい♪
香りは『T2(ティー/強度2)』です!
J?オードパルファム
その名の通りの芳醇な香り!箱を開けた途端に香ります!
なんと、『DM3(ダマスク・モダン/強度3』と最高レベルの強さ!!!
ところで、「どうしたらそんなボリュームに仕立てられるのですか?」
この質問は、他の生産者からもよくされるそうです。
でも、「わからないんだよねぇ…。」と首をかしげる田中さん。
そして、「出来るだけ倒すようにしてるかな。それで出せるのだけ出荷してる。」との事。
すると、同行していただいた原園芸の松山さんが株を見て
「スゴーイ!」と拍手をされました。
えっ、何がスゴイんですか?
「倒す方向も正解だし…切り方もきれいだし…とにかく株がキレイ!」と言うのです。
倒す方向が違ってしまうと、株の中心部からでなく倒した茎の途中から芽が立ち上がってしまう為、しっかりした物ができにくいのだとか。
だから、このような締まった株は=いい株なのです。
同じ作り手の目線で見ると綺麗に、そして基本に忠実に作っている事が分かるんですね。
そして、田中さんのところでは、列ごとの担当制になっていました。
隣の列の人と比較できるのがいい!とか、
芽かきが遅れていたら分かるし、隣の列が綺麗だとプレッシャーになる!という利点があるようです。
さらに、採花は別の担当者が行うのだとか。
だから、「次に携わる人が楽なように管理する事を心がけて!」と田中さんは指導されているそうです。
担当は、こうして名札を付けて分かるようになっていました。
あっ、私と同じ名前を発見!陰ながら応援してます
田中さんからお花屋さんへのメッセージ
同じ花に携わる者として感動を与えられるように切磋琢磨していきたい!
自分たちはこれがいいと思っても、よくない場合もあるし…
だから、意思疎通ができるようにやりましょう!
とても沢山の品種を作っているので、見ていたら次第に時間がなくなってきてしまいました。
急がなくちゃ
?竹岸 康孝さん?
竹岸さんもJ?ローズの新品種を作っています!
⇒
J?ミルキーウェイ
蕾の状態からこんなに変化するんです。
ゆっくり開くタイプで、花持ちが良いのが魅力!
ミルキーウェイとは、“天の川”の意。近所の中学2年生の女の子が名付け親だそうです。
そして、ベストセラーとなっている、J?カンタービレも
山口さんが作っています。→→→
鮮やかなオレンジの発色と、フリルのような花びらが特徴です!
その他には…
マリアブレス ブルードリーム
竹岸さんからお花屋さんへのメッセージ
あんまり品種に拘らず、ベーシックなものを揃えてます。
ぜひ、使ってください!
?山口 広志さん?
やっぱり、ハウスは綺麗です!
山口さんのいちおし品種は…
ジュンカップ トワリモーネカップ スイートラブ
この他、残念ながら画像はありませんが、山口さんが作っている品種ではブルゴーニュが人気!!
純白のキレイな卵型で、感動ものです!
一見の価値あり
山口さんからお花屋さんへのメッセージ
買ってもらえるだけでありがたいです。
継続出荷をして、迷惑かけないよう、という気持ちで作ってます!
またまた謙虚な山口さんでした。
新品種の導入にも積極的なファインローズの薔薇から目が離せませんよ♪
薔薇をこよなく愛するS氏からのメッセージ
大田花き 販売担当のSさんからのコメントです。
ファインローズさんは、従来STの品種をあえてSP仕立てにしているものが多く、抜群のボリュームを誇っています。その為、1ケースに15本?20本しか入らないのです。
その分、時間と手間隙がかけられているという事を知っていただきたい!
そのボリュームは、箱を開けたら飛び出てきて、再びキレイに閉めようとしても不可能な程!
言ってみれば、薔薇のビックリ箱です
ファインローズの格言
・株作りに時間をかけてます!
・栽培の秘訣は、あくまで基本に忠実に!
・4人の職人が作り出すボリューム抜群の薔薇を使ってみるべし!
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J?ROSE(ジャパンオリジナルローズ)については
こちら→http://www.otakaki.co.jp/profile/company/jrose.html
弊社、ショーケースでご紹介しました。
→http://www.otakaki.co.jp/1027.html
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?おまけ?
今回、特別参加の蓬田先生も薔薇の香りに夢中です!
(商品開発室が調査・研究している香りの提案において、香り技術顧問としてご協力をいただいております。)http://www.otakaki.co.jp/development/fragrance/message.html
ますます注目度の高まる香りの薔薇を楽しんでください。
2006年4月21日
Vol 13.大分県玖珠町 メルヘンローズ 編
今回はなんと大分県!うんちく探検隊では最南端の地。
個性豊なバラを出荷しているメルヘンローズさんを訪問しました。
突然ですが、おめでとうございま?す!!!
4月14日?16日に開催された『2006 ジャパンフラワーセレクション・スプリングショー』において
メルヘンローズさんが育種された3品種が入賞しました。
審査基準は優れた品種(花や葉の美しさ)はもちろん、消費者の視点から「育てやすさ」「購入しやすさ」「飾りやすさ」などが評価されました。
M?ヴィンテージピンク M?ヴィンテージスイーツ M?ポルボロン
?メルヘンチックな町??
メルヘンローズへ向かう道すがら目に入ってきたのは『メルヘンの森』『童話の里』という看板。 メルヘンという名の由来って?と疑問に思い、案内してくれた総務・企画担当の安部さんに尋ねてみると こんな話をしてくれました。『玖珠町切株山のお話』
むか?し昔、この地に天にも届くクスの木がそびえ立っておって、玖珠ちゅう地名がついたんじゃ。
あまりにも大きいから、年中陽も差さん。
そこで通りかかった大男に、この木を切ってもらうことにした。
大男は、万年山と大岩扇山を足場にして巨大なクスの木を切りたおした。
その切株がこの伐株山。
倒れた木が川をせき止め、その水がひいた後がひた(日田)。
クスの木から鳥の巣が落ちた所が、とす(鳥栖)。
クスの葉が最も遠くへ届いた所が、はかた(博多)。
ここまでは、くるめえ(久留米)。
になったとさ。おしまい。
最後はオヤジギャグでしょうか?(^_^;)でも玖珠地方に伝わる民話なのだとか。
「日本のアンデルセン」と讚えられた久留島武彦によっておとぎ話が生まれ育った町。
なるほど、それでメルヘンですか。
?おいしい空気とバラの香りに癒されるハウスへ?
車で山を登って行き、メルヘンローズへ到着です!
メルヘンローズには育種部があって、独自にバラ切花の新品種をどんどん生み出しています。
そこで早速、試作品種の展示ハウスへお邪魔しました。
世に出る事を待ち望む名もないバラ達がたくさん並んでいます。
ベンチ(隔離床)を用いたロックウール栽培で、地面はコンクリート。バラの圃場訪問初めての私には、このハウスは宛らバラ工場のように映りました。
苗木が植わっていないベンチを見ると、丸い穴が並んでいます。
実はこれもメルヘンの栽培方式の特徴のひとつ!
大抵の産地では四角いポットに包まれた苗木をベンチに並べていくだけなのですが、この連結ポットに苗をさしているにはやっぱりワケがありました。
安部さんによると、「草の種が飛んできて広がった時に除去しやすい!だから作業の効率化を図ることができ、コストはかかるけれどもこのスタイルに落ち着いたんです。」 ということ。
なるほど、そんなご苦労もあるんですね。
真ん中の黒い線は点滴の役割、ここから栄養分が注入されています。
J?クルンテープ キャラメルアンティーク M-ストロベリーミルフィーユ
巻きがかわいらしくて私の好きな花達です。
では、その成長過程を見てみましょう♪
⇒⇒⇒
ここでも特徴ひとつアーチング栽培をチェック!
ひと株のバラを採花用の新梢部と生長のための養分確保の枝葉部に分業させ、枝葉部をアーチ状に折り下げることによって株元に光が十分にあたり、たくましい新梢が発生し、高品質のバラを育てる、というものです。
だいだい二度程折り下げるのだとか。出荷されるまでには時間を要するのですね。
今回、大田エプロン(デニム生地で会社のロゴが付いたエプロン)を持参してきてよかった!と実感しました。というのも、ベンチの間を歩いていると太もも辺りをトゲ攻撃にあってしまうからです。圃場へ出かける際には持参されることをお勧め致します。
?メルヘンローズ設立秘話?
穏やかな風景を見、爽やかな空気を吸い込みながら次なるハウスへ向かう途中メルヘンローズ設立秘話を伺いました。1990年、小畑社長の声がけによって玖珠町の8人の園芸農家が集結して始まりました。 当時、花の需要は上向きでしたが、市場の再編成や、流通形態の変化など消費を取り巻く環境が変化していた頃。ちょうどロックウール、アーチングといった栽培方法も海外から入ってきました。そこで生産においても今こそ変わるべきだ!と奮起し、菊・カーネ・野菜など作っている物も様々だった8人が‘バラ’の花で日本一を目指すことになったのです。
山の上 3ヘクタールの敷地を自分達の手で草を切り、造成して平等に8棟のハウスを建てました。
「この石垣も自分達で作ったんですよ。」と言われ「えっ、石垣まで?」と 近寄って見てみると、なるほど自助努力の跡が見えました。
そういえば、玖珠町にある安太(あのう)積みの城 角牟礼(つのむれ)城跡の観光ポスターを宿泊先のホテルで見ました。
ちょっとご説明しますと、角牟礼城とは難攻不落の天然の要塞といわれていた城です。そしてその石垣は自然石を積み上げる野面積みでした。一見雑な積み方に見え ますが、強度・安定性では他に引けを取らない強い石組みを築くことができ、ならではの技法が隠されているのです。穴太でこうした石垣を積む技術をもった集団のことを“穴太衆”と称していますが、その技術は四百年の時を越えてメルヘンローズ8人衆にも伝わったのでしょうか???
そして現在、社員は7名、温室従業員が4名、パートさんが10名、研修生が3名、犬6匹、いのしし5頭(?)で頑張っていらっしゃいます。いのししは冬に食べられてしまう命のようですが…。
生産過程全てを数値化して判断する 賞状が壁一面に並ぶ事務所の入口
凄腕の経営者 小畑社長
犬好きでいらっしゃいます。
写真はいいよと恥ずかしがられていましたがパチリ。
輸入バラが急増する中、国際競争に対応すべくコスト削減という守りの姿勢だけでなく、鮮度保持対策や、新品種の開発によるオリジナル商品の提示といった攻めの姿勢もしっかりとあって、時代の流れに即した経営をされているのです。
? ? ?
?城に乗り込む小畑社長と宍戸隊長
?別名 海賊城!忍者屋敷のように抜け道もたくさん作られた不思議な城
?メルヘンに住むイノシシちゃん
?『代替のないバラ』を目指して?
バラの育種に際してテーマとしているのは「よりバラらしいバラ」「バラらしくないバラ」ということ。
バラらしくないというのは、つまり、見た目の色や花型が変わっているもの、いい香りがしたり機能的に効果が見込めるもの、ということ。
オリジナリティがあり、人が惚れ込むようなバラ作りを目指す思いが伝わってきました。
また、面白い事にヨーロッパではバラの切花はスタンダードが主流。スプレーの分野ではバリエーションの豊かさは日本がダントツ!なのだそうです。ヨーロッパではオールドローズなどのスプレー品種は庭に咲くガーデンローズであって、わざわざ店で買ってくるものではないのでしょうか?
日本人好みの品種をどんどん生み出し、これからはその良さを世界の人にも知ってもらいたいですね。
Mシリーズおすすめ品種
(Mとはメルヘンローズが育種した品種のことです。)
M?フラワーボックス M?ヴィンテージレッド M?ヴィンテージシルク
M?あんず姫 M?トロピカルサイクロン M?ハリケーン
↑台風の当たり年2004年に育種された品種↑
メルヘンローズではJシリーズ(ジャパンオリジナルローズ)も育種しています。
こちらをクリック→http://www.otakaki.co.jp/profile/company/jrose.html
出荷準備をする農協 選花場の様子
10?15名のパートさんが作業されてます
国産第1号の首賭け式選花機
宍戸隊長が思い描くパーフェクトローズの条件は、
?ミミエデンのような色(グリーン×ピンク)
?なおかつ大輪
?咲き方はパーフェクトロゼッタ
?人を惑わすぐらい強い芳香
これらを兼ね備えた夢のようなバラを求めています。
衛藤さん、隊長の願いをどうか叶えてやってください。宜しくお願いします。m( _ _ )m
‘新しいバラ作り’の夢を追い続けるメルヘンローズから これからも目が離せません!
メルヘンローズの格言
・日本人好みのSPバラの魅力を世界へ発信すべし。
・育種によって次々に生み出されるオリジナル品種に注目すべし。
?おまけの話?
この冬は油が高いからハウスの暖房も思うように炊けなくて大変!って話はどこの生産者さんからも聞きますが、メルヘンローズさんもみんなで真剣に話し合ったそうです。そして、ハウスのドアはこまめにきちんと閉める、ハウスに穴が開いていたら補強する など基本的な事をきちんとする!という結論に。驚くことなかれ、その対策によって原油使用量は昨年より少なかったとか。身近なことからコツコツと努力をすれば改善に繋がるんですね。それって家計にも繋がりますね…私も見習わなくちゃ。2005年2月 4日
Vol.1 神奈川県平塚市 浜田バラ園 編
第一回目からバラへの情熱を語り出すと止まらないウンチク大王浜田ご兄弟へ突撃です!
しかしすごいのはその言葉通りの日本一の品質のバラを作っているということ。まさしく有言実行なご兄弟であります。
大田市場から車で1時間半、首都高速の渋滞を抜け、厚木インターを下りると「ベルマーレ平塚へようこそ!」の看板が。(ちなみにチームは平成11年に「湘南ベルマーレ」に改名しています。念のため。)
サッカーチームの取材に来たような錯覚にとらわれつつ、しばらく進んだ先に浜田バラ園はあります。
あぁ富士山がきれい…とみとれる間もなく、さっそく圃場見学させていただきました!
主にご案内と解説をしていただいたのは浜田(弟)氏です。
温室は年季の入った感じ。天井の開閉は手動です。温室の中に一歩入るとバラたちが天を目指して上に上に高く伸びています。
(こんな風に見上げる感じ。高い!)
切り上げ式という方法で栽培しているので、どんどん高くなるんだそう。
天井が低めなのは、意外なことに元々カーネーション用の温室として作られた温室だから。最初は菊栽培からはじめてそれから1年ほどカーネーション。
最初からバラじゃなかったんですね。
なぜバラを?という問いには「当時近くにバラを作っている人がいて、ラクでもうかっていたから」。
・・・偉大な歴史が始まるきっかけって意外にこんなもんなんです。
土へのこだわりがとまらない
浜田バラ園最大の特徴は土耕栽培。ロックウール栽培が主流になりつつある今、浜田バラ園は土耕にこだわり続けています。
「完璧なバラを100点とすると、土耕は90?95点のものができる。土が持っている自然の力が最終的にバラの能力を引きだすんだね。香りも違う。マレーラもうちのは香りが強いよ。ただ土耕は失敗すれば30点のものができちゃうリスクはあるし、本数が切れない。太いの切れば切るほど数が切れない。
うちなんかみたいに同じように作れば土耕でもいいけど、すごい能力がいるわけよ。」
このものすごい自信の裏には長年試行錯誤した土作りへのこだわりと成功があるようです。よく見ると、表土近くにピートモスやEM菌など有機物を混ぜてあり、表面には敷きわらを敷いてあります。
(これがEM菌の入ったボカシ。ちなみにEMとはEffective Microorganisms(有用微生群)という意味です。)
ピートモスを混ぜているのは土中の酸素を多くするため。
土に酸素が多いと根張りがよいのはなんとなく分かりますが、ナゼ表土近くに?
「生ゴミとか集めておくはきだめってあるでしょ。そこに捨てたカボチャやらキュウリの種から山の表層のところに白くて素晴らしい根っこが生えているんだよね。
なるほど、これと同じ環境を作ればいいんだなって思ったわけ。有機物を土の上に置くと早く湿気るからよく吸収される。
そうすると一年中酸素がいっぱいあるところに根っこがあることになるの。よく土壌は深く掘らなきゃって言われてたけど、学者の理論が間違っていたんだ。ミミズがすごく繁殖するのよ。ほら!」
(最高級のバラとともに生きるフトミミズちゃん)
と、浜田(兄)氏がちょっと表面を掘っただけでにょろにょろフトミミズちゃん登場です。これにはビックリ!
「ミミズの糞はいろんなアミノ酸が入ってる。うちのバラはアミノ酸を食べているんだよね。だから色がよくて、花が開くときに力強い。」
「地鶏」をつくる
確かにこだわりの土からできた浜田バラ園のバラは力強さがウリです。でもそれは具体的に何がどう違うのか…?「ブロイラーなのか、地鶏なのかの違い。うちのは地鶏だね。」
はぁ、バラなのに地鶏ですか。
「ブロイラーなんかすぐ殺せば肉になるけど、長い距離を輸送したりするとやっぱ死んじゃうもんも多くなってくるでしょ。うちは地鶏みたいに体力のある、マラソン選手みたいなバラを作ってるわけよ。」
なるほど。力があるってことはお客さんの手元に行っても力が残っててきれいに咲いてくれるってことですね。
「うちのばらはトゲが痛いでしょ。」 ほんとトゲ痛いです!(即答)
浜田氏のバラは新聞紙に包まれバケツに入って出荷されていますが、トゲが新聞紙を貫通してますから!
軍手をしているのに何度刺されたことか・・・。しかしトゲの硬さと力強さとの関係は?
「ちょっと農業の話をすると、チッソ・リンサン・カリってあるでしょ。チッソは体、リンサンは色艶をよくする、
カリは骨格をしっかり作る。トゲの硬さを作るはリンサンとカリなの。これが多いといい咲き方をするんだよ。
だからトゲがいたくないバラはすぐベントネックしちゃう。
あと茎をつぶしてもらえばわかるけどうちのは茎も硬いよ。
ブロイラー(茎が柔らかいバラ)は100円ケーキみたいに膨らましてるだけ。
形成層が薄くて茎がつぶれるということは水揚げも悪い。でもリンサン・カリをやると長さが伸びにくくなる。
長さが伸びないと市場では安くなるから、今はステムだけ長いバラが多いね。しっかりしてるのに伸びるバラを作るのは技術がいるわけよ。」
写真家も惚れた銀座の女のようなバラ
「うちのバラは1本でも見れるバラを作ってる。それとバラの良し悪しは茎の太い細いじゃないよ。うちのは太くないけどスラーっとしてる。
細すぎず太すぎず下から上までのステムの差がほとんどなくてピンとしたバラがいい。
銀座の柳みたいに風が吹いても揺らしてもゆれるけどピンとする、
銀座の女のようなバラが理想なの。」
(揺らしてもピン! の実演中)実際にバラを持ってゆらゆら。スラーッ、ピン!
なるほど?!夜の激戦区銀座でしなやかにしたたかに生きる「黒革の手帳」的?なバラですね。
「それと蕾の大きいのがいいっていうでしょみんな。でも上が大きいってことは上に伸ばしてるってことなのね。
チッソが多いと上に伸びるけど横幅がなくなる。ってことはガクのところは細くなる。細くなるってことは倒れるように開いちゃう。
うちのバラは蕾は小さい、でも横に幅があるしコシもあるからゆっくりちゃんと開くでしょ。
うちの3L4Lってのは長さだけじゃないんだよね。幅もあるから長いものほど花も立派だし、よくもつんだ。」
そうなんです!浜田氏のバラはつぼみの大きさの予想に反して大きく、そしてゆっくり開きます。
ミカドの立派なものになると花が20センチにもなります。ヘタな巨大輪種より迫力あるかも!
「大きく開くだけじゃないよ。うちのバラは外側から開いていって真ん中がググーッとあがって咲く。
この凹凸が大きいと花の表情が豊かになる。これがバラのほんとの姿なんだよね。おれは、バラは動く芸術だと思っているから。
そういうきれいな表情をいかに保つように作るか、ということだね。」
この表情の豊かさが、かの著名な写真家秋山庄太郎氏が惚れこみ、浜田バラ園に通われた理由でもあります。
写真集「薔薇よ!」の表紙はしっかり浜田氏のバラたちが飾っています。たくさんの美人女優たちを撮ってきた秋山氏が、浜田氏の薔薇を「色気がある」と評したそうです。
(注:簡単に秋山氏をご紹介しますと、原節子(すいません、ワタクシ顔分かりません)や夏目雅子など、有名女優のポートレートを多く手がけたと共に花を撮り続けた写真家としても有名な方なのです。)
「うちのバラは、光線が当たったときに光線を跳ね返すツヤがある。
人間の何千年っていう歴史の中で美人の基準が変わってないのは肌だけだよ。スタイルとかあとは変わってるでしょ。
昔から永遠にもち肌は美人。いかにしたら肌のきれいなのができるのか。バラを作るって「美の探究」だから。」
消費者を考えたバラ作りの哲学
事務所に戻っても浜田節は続きます! 「一つのバラの中にいかに要素を入れるかってことがプロの仕事だから。 花の色がいい、水揚げがいい、開いてから持つ、バランスがいい、いかにその要素を入れるかなの。うちのバラは、品種的にあまりもたないって言われてるのを作ってる。 よそから比べれば蕾は小ぶりだし開きのアシは速い。だけどもよく開いてる、色もいいしよく持つねって言われるね。
でも最近は「バラはもたない」って思われちゃってるでしょ。仲卸の社長とたまに銀座のクラブに行くけど、ああいうところの女の子はいい花もらってるんだけど、それでもバラはすぐダメになっちゃう、って話になっちゃうのよ。
おれは自信があるの。でも自己満足で終わるんじゃなくて相手の人が喜んでくれることをするってことが大事。
生き物だから悪いものは絶対できちゃう。だから知ってる店に持っていった時なんかは後で「どうだった?」って聞いてる。
1週間は持つのが3日で終わっちゃった、って言われたらどうしてか、って考えるもんね。」
でも実際は暖房がガンガンかかってるような、花にとってはサイアクな所に置かれちゃってることもあるのでは?
「それでも俺は肥料とかの関係で柔らかくできちゃったかなって考えるわけ。消費者がいい、って思うものをプロは作らなきゃいけない。」
一流の感性
「一流のものを見ないと一流のものは作れない。バラを作るって感性なの。セーターはカシミヤが一番、セーターなんかめったに買わないけど買うときはカシミヤを買うもんね。それとおれはなぜヴィトンとかエルメスがいいのかをいつも考えてる。
時計なんかも千円からあるけど、なぜローレックスがいいのか、とかね。
ところでなんでヴィトンがいいか知ってる?」
エッ・・・。(ワタクシ悲しいことに大田では珍しく?ヴィトン未所持であります。だっ、誰か買って・・・)
パーツごとに専門の職人さんがついてしっかりした品質のものを作ってるからでしょうか?
「そうなんだよ。いいもんって職人が作るわけだな。生モノだと、例えばワインだとブドウや畑の力を引き出すのが職人の仕事。その人の感性が味に出てくる。
人間が作ったり手をかけるってことは自分の分身を作るってことと一緒だと思う。
自分をそれに表現していくってことだから。それはバラの生産者にも言える。そしてこういう職人の美意識が分からない花屋にはうちのバラのよさは分からないね。」
歴史が示す最高級の品質
ふと事務所の上を見上げてみますと、賞状がずらずらーっと並んでいます。「関東東海花の展覧会ってあるんだけど、親父の代から数えてうちは全部で大臣賞を6回出してるよ。
昔は今と違って土耕ばっかりだからこの頃はレベルが高いわけよ。だからこれだけ大臣賞とってたんだからすごいわけ。いいものを一年二年作るのは易しいの。トップをとってそれを維持するのが大変。
土耕で安定生産できる技術を作ってきた。その集大成が今の浜田バラ園だから。
技術的には日本のバラはトップ。だって環境で作っちゃってるコロンビアなんかとは違うでしょ。その中でのトップなんだから、うちのバラって世界一だよ。
大田でも、うちんとこのバラを世界一のバラだって言ってくれる人がいるけど、なんで世界一のバラをあんな値段で売るかな?って思うわけ。」
はっ・・・す、すいませんっ。末永く世界一のバラを作り続けてください!市場も今以上にがんばりますから!!
浜田氏の語りは聞きしに勝る辛口ウンチクでしたが、バラへの情熱がガッチリ伝わってきました。
帰り際には探検隊の私達にしっかりお土産のバラまで持たせて下さいました。ほんとうにありがとうございました!!
浜田バラ園の格言
・「銀座の女」のようなバラが理想!もち肌!
・美の探求と一流へのこだわりをとことん追う!
お花屋さんへの一言・・・
浜田バラ園から出荷されているバラたち
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