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2012年4月15日

世界に誇れる日本の花

世界一の国際園芸博覧会「フロリアード2012」が4月5日からオランダで開催されています。今回の日本ブースのテーマは「世界に誇れる日本の花・自然と調和する人生」です。

日本国には原種や野生種、そして古より日本の心として人々に親しまれてきた植物が数多く存在しています。その中で最も美しく日本らしさも表現できる植物、それが桜・椿・桔梗です。今回はこれらの植物をいつもとは少し違う視点で紹介していきます。

◆桜(サクラ)
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バラ科サクラ属の植物、日本人に最も親しまれている花の一つで日本の国花。桜色とも呼ばれるフワリとしたウスピンクは春の象徴でありこの時期の流行色でもある。桜色の○○・桜の香りがする○○という表現は商品のイメージアップにも繋がる。

桜は古より絵画の中に登場しその柔らかな色彩で見る人を和ませてきた。現在でも花びらを含めイラスト・CG等の使用は花として№1である。今、若い世代の男性を中心にサクヤまたはコノハナサクヤという言葉がよく使われ、この名前でイメージされたキャラクター等も数多く存在する。コノハナサクヤとは日本神話(日本書紀等)に登場する女神で 木花咲耶姫(コノハナサクヤビメ) のことを指し、日本神話の中で最も美しく、桜の語源になった女神ともいわれている。木花咲耶姫を祭神、桜の木を御神木として祀る静岡の富士山浅間大社は近年パワースポットとしても人気が高い。

昨年は震災の影響で全国的にお花見が中止となったが、その分今年は例年以上の人出が各地で予想されている。早咲きの桜として有名な伊豆の河津桜は、寒さで開花が半月遅れたものの3月上旬に満開を迎えお花見客で賑わった。

桜はお花見として野外で楽しむことが一般的だが、近年は切り花も充実している。正月から真冬に楽しめる啓翁桜・早咲きでピンクの河津桜濃いピンクと下方ラッパ状が特徴の寒緋桜・小輪で花付きの良い彼岸桜、他にも多品種が揃い種類も豊富だ。そしてほとんどの品種がソメイヨシノより早い時期に楽しむことができる。これが桜切り花一番の魅力である。桜は日本の心、春を告げ震災後の日本を元気にすることができる日本の名花だ。


◆椿(ツバキ)
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ツバキ科ツバキ属の植物で冬に咲く花の代表種。椿には数多くの園芸種が存在するが、日本らしい美しさを表現できるのは藪椿(ヤブツバキ)と茶ノ木との交雑種である侘助(ワビスケ)だ。お寺や神社の裏、雑木林にひっそりと咲く藪椿は一見飾り気も無く誰の目にも留まらない、人通りが多く目立つ場所に咲いていたとしても見る人は少ないだろう。

藪椿の良さは花枝を1~3輪挿しにしてこそ現れる。深紅と黄金しべのコントラスト、深緑の照り葉、統一性のない枝振り、斜め下向きに咲く表情これらが合わさり完璧なまでの美しさを醸し出す。(深紅や赤色の藪椿・侘助は黒と相性抜群、黒い花瓶や黒い背景であればその個性が最も生かせる)
藪椿は葉が多く葉色も濃いため全体的に暗く汚いイメージがあるが、花の表情と美しさは全ての花に引けを取らない究極の和花だ。ひっそりと誰の目にも留まらず、暗くてどことなく汚い木にこれ程の花を咲かせる、そのギャップもまた良い。

よく花の展覧会や花屋さんの店頭で藪椿が展示されているが、どうしても大枝の状態(葉が多すぎて花が目立たない)での展示になってしまっているこれでは完璧な美しさをもつ藪椿の花もその名が示す通り藪や、どこにでもある街路樹と同じに見られてしまう。椿や山茶花は生け花としては使われるが、菊や鉄砲百合のように花瓶に入れ玄関や部屋に飾られることは意外と少ない=日本の花文化が衰える。「花瓶に活ければこんな感じ」・「玄関に置けばこんな感じ」といった見せ方の提案も椿には必要だ。

椿の仲間はガクを残して花全体がポロリと落ちてしまう特性がある。開花前に飾ったとしても開花後2日程度で花が落ちてしまう。この特性により「武士の首が落ちる」・「椿の古木には妖怪が宿る」と伝えられ一般に縁起の悪い花とされている。しかしこのような妖怪にまつわる言い伝えなどがあるからこそ、日本の花はストーリー性に富んでいて面白いのだ。

縁起が悪いといわれる落ちた椿の花も、地面を紅に染める「落ち椿」や花を水に浮かべる「水盤」では他の花にはない風情を楽しむことができる。また椿の学名であるカメリア(Camellia)という言葉は、カッコ良さ、美しさ、高級感、に満ちている。一般にはほとんど使われることの無いもう一つの名前 カメリア これも椿の魅力のひとつである。 

◆桔梗(キキョウ)
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キキョウ科キキョウ属の植物で秋の七草のひとつ。平安時代より伝わる、桔梗色と呼ばれる淡い青紫色と星型の花が特徴、園芸種には白と極薄ピンクがある。

極めて完成度の高い星型の花は、日本家紋の図案として使われた程で、明智光秀の桔梗紋、安倍晴明が使用した五ぼう星は有名なところである。桔梗の花は、その美しい色と明智桔梗紋から明智光秀の娘 細川ガラシャ のイメージに例えられる。完成された花の形、どこか儚い青紫は、絶世の美女であり女性として強く、そして悲しい運命をたどったガラシャそのものである。キリシタンでもあったガラシャには、大天使ガブリエルが片手に持つという白百合 マドンナリリー も似合うところである。

桔梗は日本の涼をあらわした花でもある。初夏には玄関などに一輪挿しにして飾られる他、イラストを始め、着物・浴衣柄、風鈴などにも描かれることが多い。一輪挿しが特に似合う花だが、椿と違いある程度本数を多く活けても汚くはならない。灰色系(石の色)の花瓶と抜群の相性をもつ、黒または白の花瓶でも相性が良い、また木製の花挿しでも個性が生かせる。

万葉集の中では秋の七草として詠われているが、秋近く開花するのは絶滅危惧種でもある野生の桔梗である。一般に出回っている園芸種の開花は関東では5月下旬~7月、切り花の桔梗は4月下旬~6月にかけて出荷される。園芸種の桔梗は秋近くになると種子が膨らみ、葉は枯れ落ち、なんとも無残な姿になってしまう。

現在、切り花ではトルコギキョウ(リシアンサス)が主流である。トルコギキョウは切り花として極めて安定している花であり、今ではオリエンタル百合と肩を並べる程。それ故日本の桔梗は影が薄く、園芸誌やフラワーデザイン誌による掲載も少ないため、桔梗=トルコギキョウになりがちである。

日本の花はそのどれもが個性的で独特のストーリーをもっています。花の良さを世界に伝えることで新たな花文化が誕生するかもしれません。

(むらた)

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