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2005年5月30日

手取り確保の方法

先週の月曜日から切花相場は過去3年間で最低となった。鉢物は昨年よりも少し良い単価を保っているが、一昨年よりも安い。切花単価が最低となっている主な理由は、年商5千万円未満の店頭売りの多い小売店において、特に関東地方では連日降った夕方のにわか雨が20日悩み(一般的には25日が給料日だから、20日頃サラリーマンは金がなくなる)に拍車をかけたことにある。しかし、経済指標は景気の踊り場にいるが、個人消費は堅調と見ており、悪くても昨年並みの単価水準を保つことができる状況にあると考えてよい。但し、花も他の物財と同様、昨年と同じ事をしていたのでは単価が一割下がると考えるべきで、これは生産者も作業サービスをしている小売店や流通業者も同様だ。なにか新しいことをして前年並みである他業界と同様の見通しとなる。

 さて昨日の日経新聞が、2003年末には10年前と比べて運送会社が4割増えていると報じている。その理由は、いわゆるサード・パーティ・ロジスティクス、つまり自分で物流をやるのではなく、専門業者に託すようになったからとしていた。規制緩和で競争が激化し、その中で一部の業界が物流請負業として気を吐いている。

運賃の価格は荷姿が所定のものである限り、10年前と比べかなり安くなってきている。これは花も同様だ。生産者物流(BtoB)、消費者物流(BtoC・CtoC)とも運賃の下落はかなりのもので、大田花きに産地から荷を持ってくる運送会社はこれだけではやっていけないから、四苦八苦しながら帰り荷を確保していらっしゃる。運びやすい荷姿の物は競争が激しく、運賃は下がっている。

そこへいくと、今年も母の日の鉢物産地の集配センターの集荷・配送は、例年どおり大幅に遅れた。なぜ改善できないのか。それは、この国に5万とある普通のトラックでは運べない鉢物の荷姿になっているからだ。需要が一定量なら世間の運賃にスライドさせればその年の適切な運賃が出てこよう。しかし世間にスライドさせなければ世間と離れた無風な運賃となる。この荷姿をどうするかが卸売市場とて、とても大切である。荷主は運送の競争、或いは販売の競争を促せるよう荷姿を整えて、全国の運送店・卸売会社に供給できる手立てを打つことは無駄ではない。バケツ輸送された切花は裸のままだから鉢物と同様だ。従って、かつては上物・中物以下とを区別し、2つの卸売会社と付き合いながら上手に販売していたのに、今はバケツのままで運んでくれる運送会社が限られているから、一つのところになって手取りが減る可能性が出てきた。母の日以降はそれが顕著である。直送、そして中継の集出荷所を使う物流の2つは、生産者が今まで培ってきた安定した手取り獲得手段であった。これが物流と荷姿とともに出荷先の絞込みが行われ、それが生産者や卸売市場にとって、とりわけ年商2億円未満の業者とそこを利用する買参人にとって必ずしも好ましい方向に行っていない事実がある。ここをどのようにしていくか。地産地消も解決策の一つだが、そればかりではうまくいかない。産地はサプライチェーンと費用対効果をもう一度ゼロベースで考える必要がある時代となっている。

投稿者 磯村信夫 : 18:28

2005年5月23日

イベントで売る

  20日(金)に青山で開かれたフラワーコレクション2005 Blue blueのプレス発表とオープニングレセプションに出席した。クラフトや宝飾品プラス花のアレンジをしていくコンテストだ。元米米クラブの石井竜也氏も出品しており、我々花き業界が狙う20歳・30歳台、そして大人の40歳台を来場者のターゲットとしてショーが開かれた。芸能番組はマスメディアでもここ3年で最も伸びている番組だから、青山のイメージだけでなく、デルフィニウムやフラワーアレンジも紹介されるだろうと見込んで、大田花きも会社として産地と一緒になってお手伝いさせていただいた。

また同様に20日(金)からインボイスSEIBUドームで開催されている第7回国際バラとガーデニングショウに出向いた。弊社とお取引のある10社が出品やら出展して販売している。率直に言って、NHK問題や西武問題など、中年の女性が敏感な社会問題を抱えたこの2社が主催などで関わっているから、動員客数について「減」を心配していた。小生は昨日の昼を挟んでご挨拶がてら見学したが、ゆっくりと見ていられないほど混んでいた。もちろんプロだから花や演出の良し悪しは分かるものの、上野や千鳥が淵の花見と同じように流れに沿って見ざるを得ない。そのくらい大盛況であった。来場客は50歳代の女性が中心で、帰りの電車でブーケを持っていた小生にも気付き、声をかけていただくなど、満足して打ち解けた雰囲気であった。

それにしても先週末に出向いたこの2件のイベントは大盛況であった。そして今朝の商況はどうかというと、あまりたいしたことはない。例年どおりで母の日以降の20日がらみというのは、25日の給料日まで売りあぐねるといった感じだ。小売店では、このような世間のイベント等に合わせたりして、とにかく「お勧め」などの期間限定特集を組んで、販売にメリハリをつけなければならない。

さて、先週日本花き卸売市場協会の総会が宮崎であり、総会後のショートブリーフィングで農林水産省花き対策室長の吉田氏からいくつか重要なお話があった。その一つに、近年40歳台が花を買い控えている旨のデータを示され、宿題として改善を業界に投げかけられた。 

今、男性雑誌で40歳台を中心にいくつか発刊が続いている。そのほとんどが男性の40歳台、すなわち「不惑」をイメージさせる本物の大人が公私ともシャープにおしゃれに生活をするための知識として花とカクテルを取り上げている。また、ホームセンターに行くと、結構30歳・40歳台の男性が花を買っている。このようなマーケティングを更に推し進めることが必要である。よく話題になった団塊の世代のマーケティングもとどのつまりは「男は女房の言うことを聞く」だから、奥様に訴えかけるという方法で落ち着いたが、30歳・40歳台に花を買ってもらうマーケティングのやり方も、この世代の男性が花を活け、そして女性に訴えかける。假屋崎省吾氏やクリスチャン・トルチュ氏、ローラン・ボーニッシュ氏などにどんどん出てもらう。花店もそういう進め方をしていってもらうということになる。もちろん使う花もそれに合わせて進化させていくことが必要だ。

投稿者 磯村信夫 : 18:31

2005年5月16日

当たり前のことを当たり前にする

  経営に関してアドバイスが欲しいと言われているいくつかの小売店や仲卸さん、或いは卸売会社の総会前の役員会などにお邪魔している。その業態の中で決して大手ではない所が殆どだが、厳しい中でもまあまあの経営を行っている所が多い。

 昔と違って皆が良いという時代ではなくなった。従って販売拡大の余地があるところに経営資源を投下して、売上や利益を掴んでいかなくてはならない。特にここ5年は総務庁の家計調査が示す通り、花を買わない家庭が5割から6割に増えた。個人消費が不活発になったわけだが、そこで販売拡大余地を探るとなると大変だ。では本当に大変なのかというと、実は当たり前のことを当たり前にやるということに尽きる。小売店であれば5Sの徹底と1日1回は顧客の気持ちになって道の向こうから自分の店をチェックする。これを習慣化して仕事をすればよい。もちろん事業規模が大きい方が有利ではあるが、売上規模だけではないと土曜日に伺った長野県の卸売会社で実感した。そこは堅実経営、気を吐きながら昨年は取扱金額は落としているものの、利益を上げることができた。無駄は一切ない。

 花き業界全体としてなすべきことは、花を買っていない6割の家庭に買ってもらうようにすること。拡大余地はまだまだある。努力をしなければならない。また、個々の経営は時代に対応して確実に変化していくこと。変化しつつ、消費者の先回りをして提案すること、価格ではない競争をしていくことに尽きる。是非とも個々の事業活動では小売店に任せておくだけではなく、種苗会社・仲卸・卸も、直接消費者に訴えかける活動をして欲しいと願っている。

投稿者 磯村信夫 : 18:31

2005年5月 9日

母の日

オフィス街の花店やコンビニエンスストアを除き、各花店の売上は昨年と同等か昨年を上回ったところが多い。ギフトというと百貨店だが、百貨店の花店はいずれも気を吐いた。

 さて、母の日までの市況は5月2日の切花の入荷量が多く、母の日用以外の品物は暴落市況を呈するものもあった。カーネーションについては、地域によって相場はばらついた。コロンビア産のカーネーションを手当てして落ち着いてしまった買参人を相手に販売した卸売市場は、概ね間際の6日(金)まで低調市況であった。しかし、お母さんにあげるものだから品質を吟味するということで国産に焦点を絞った販売を心がけたところが多い卸売市場では、輸入品は10円以下のものも多数出た反面、国産は70円から100円前後と全体の市況の中からいえば堅調に推移した。

 昨年末、そして今年の彼岸期、母の日と切花では輸入品の下げが目立った。エクアドルのヒペリカムやマレーシア・韓国の品質が安定しているスプレーキクなどは気を吐いたが、それ以外の中国のカーネーションなどは物日になると溜める癖があり、インドのバラやケニアのカスミソウなども極端に価格が下がった。

 かつて日本も産地で荷を溜めることがあった。諸外国の生産地の意識はまだその段階でいかに顧客に役立とうとするかに仕事の焦点を当てていない。カーネーションというと国産はコロンビアや中国に押されて大変だと思うかもしれないが、単価は以前と違い安くなっているものの、買参人の信用だとか信頼は以前にも増して強くなっていることを知っておいて頂きたいと思う。

日本は一国だけで生きていけるわけではないので、当然輸入の花も欠かせない。輸入商社の皆さんの苦労がそこにあるのだが、物日になると安くなってしまうのは困る。原産地との再取組みが必要であろう。

鉢物は物日相場がなかったものの、昨年のようなカーネーションの暴落市況もない。結局カーネーション、エラチオールベゴニア、アジサイ、ミディ系のコチョウランや他の蘭鉢、クレマチスやカラーなどが売れ筋となっている。昨年の都心部では3,000円以上のものではアジサイが、3,000円未満のものではカーネーションが中心に動いていた。日頃から努力している店は前年をかなり上回っていたことは花の拡大の余地が大きいことを示している。

投稿者 磯村信夫 : 18:32

2005年5月 2日

まず物流改善

 JFTDのテレビコマーシャルはなかなか面白い。あのようなセンスでこられるとこれはどうしても花を贈りたくなってしまう。みどりの日から始まるゴールデンウィークは、今年は母の日で終わる。毎年の例だが、花とみどりが主役の時期だ。このときに合わせて、日本橋高島屋では池坊展が始まり、横浜では(社)日本フラワーデザイナー協会が主催するワールドフラワーショーが開催された。また表参道では草月流が中心となって、花のイベントを催し、5月1日のスズランの日にちなんでスズランを販売しているところも多く見かけた。イベントを企画していた日比谷花壇さんや青山フラワーマーケットさん、プレジュールさんなどが中心となって取り組んだが、売上げは予想していた通りで、今年は開花が遅れたので充分に出回らず、スズランの量が足りない結果となった。また、小売店や量販店では端午の節句の花菖蒲、風呂菖蒲を盛んに売り込んでいる。先日、伊豆太陽農協が晴海トリトンスクエアで花菖蒲の販促を行ったが、15分で完売という人気ぶりだった。

 そして今日は母の日用カーネーションと葉物の入荷が最も多い日である。昼過ぎまでセリが続くほどの大量入荷だ。この時期は花の仕事をさせてもらい本当にありがたいとつくづく思う。

 さて、必要とされているときに供給するのは我々業者として当然のこと。しかし、最近のようにお天気が安定しないと、咲いたり咲かなかったりで約束どおりの日に納品できなかったり、予定より多く出荷され予定通りの時刻に出発できず、結果的に卸売会社でも待たされて荷を下ろすのが朝になってしまうというような結果になってしまう。昨日から今朝にかけては雨だったため、荷を下ろすスペースが足りなくなるということも起きた。

 このような物日の時に物理的な要因(場所・人員・時間)から1日で処理できる量は限られてしまう。とすれば花き業界全体で商物分離、前日集荷など制約条件を取り払う努力をしなければならない。改正市場法で安全・安心が叫ばれているが、これはデメリットがないように、マイナスにはならないように、危険ではないようにしてくださいということだ。言うなれば、マズローの欲求段階の中で一番下の欲求だ。これをクリアーして、更にメリットを提案する業者として、産地・運送会社・市場(卸・仲卸)は顧客に選ばれなければならない。顧客のメリットを提供できなければならないのだ。

 今年の母の日前の産地と卸売市場間のロジスティックを見ていると、相変わらず「しかたない」で済ませようとする甘さがある。もっと取引先のことを考えて、物販50、作業サービス50でサプライチェーンを構築していかないと、結局小売店が売り損なう。小売店が売り損なうと花き業界全体の商い額が減ってしまう。卸と産地は「小売の現場でジャストインタイム」に焦点を当てて物流改善をしなければならない。もう後はない。

投稿者 磯村信夫 : 18:33

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