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2005年12月26日

最終週の月曜日、最大の入荷

年末押し迫ってきても、曜日で動いている。今日は今年最後の月曜日で未曾有の入荷量である。
当初暖冬予想で台風被害も殆どなく荷物は潤沢であるという情報をもとに、11月に予約相対が組まれた。暖冬予想だったため間際になって仕入れを起こそうとする仲卸さんや花束加工業者さんが多く、12月中旬に急に寒くなってからも一度設定した納品日を変えなかった。この寒さで今度は開花遅れ気味になり、雪による高速道路の閉鎖もあり、入荷が後ろにずれ込んだ。今日の月曜日はごく一部の高速道路を除いてほぼ全面開通しており、どこの卸売会社でも1日の取扱量としては今までの最大となっている。また、寒くてなかなか咲かなかったため、九州や沖縄方面も船やトラック便から飛行機便に切り替え、航空貨物を扱う業者は輸入品ともどもパンク状態であった。それだけではない。東京に3つある共同荷受所からの荷は遅く入荷した。

消費者段階では今後とも花は「皆が買う時に買おう」とする傾向がますます強くなる。物日になると平常の5倍以上売れる可能性がある。そうなるといつ小売店に搬入するか、小売店の手間、仕事の手順、そして鮮度保持などを勘案し、出荷納品計画を立てなければならない。このような質・量・価格・納期の取引条件をどうするか、これが物日の多い花き業界の今後の課題である。
産地も小売店の仕事のやりやすさや卸・仲卸のことを考え、小売店も産地や農協の集出荷所、運送店のことを考え、お互いが事前に話し合いをして仕事をしていくことが必要である。

今回大田花きでは、荷扱い場所をここ大田市場以外に二つ設けた。というのは大田市場だけのスペースでは1日6万ケース分の荷扱い場所しかない。今年の日巡りからそれ以上の入荷量を予想して、先に手配していた。ロジスティックの関係者だけでなく、営業担当者も荷受け・荷捌きを手伝った。それでも荷が多いので、普段より大幅に遅れるところもあったりと、仕事の品質は荷の量で低下している。これでは農協・運送店・卸・仲卸などの中間流通において混乱をきたし、問題である。来年の3月は限られた用地、トラックスペース、人手の中でスムーズに流れる仕組みを作っていくことが必要である。

投稿者 磯村信夫 : 14:58

2005年12月19日

2005年 磯村信夫の三大ニュース

53週目の今週はラスト2の誌面です。今年も重大なニュースがたくさんありましたが、私が思う三大ニュースを報告します。

1. 5月に新市場法が施行されました。1999年以前の卸売市場法が生鮮食料品花きの「取引所」としての法律でしたが、相対がセリ入札と同様の正式な取引として認められるようになった99年からは、生鮮食料品花きの「専門問屋」、或いは「専門商社」としての法律に移行してきているようです。
 日本の総合商社が小売業、加工食品卸へ出資し、系列色を強めている昨今、生鮮食料品花きも総合商社系列になっていくのか、或いは独立色を保って業務を行っていけるのかの分かれ道です。国産品と輸入品も卸売市場チャネルで取り扱うことが出来るのか、規制で守られている一方、縛られてもいる卸売会社が経営収支だけでなく、地域の社会インフラになりえるかどうかの瀬戸際での法改正でした。日本全国を見ると問屋化しつつある花き卸ですが、今度の法改正は個々の会社の実力を問われていて、競争の中に活路が見出されるとの判断は、他の規制緩和された業界を見ても自明の通りです。

2. 生産減が明確化しました。切花・鉢物とも生産は減少しています。昨年は台風で被害に遭ったから生産減になったと判断したが、今年は昨年よりも少ない。2002年ごろを生産のピークとし、高齢化で止めたり、新規に花を作ろうという人は少なくなってきています。一部消費は減退していますが、その目減りよりも生産減が先行し、中間流通では損益分岐点を割り込む出荷量になってきました。今後ともこの傾向は続く可能性が高い。

3. 1ヵ月も持つカーネーションの開発が3番目です。大変花保ちが良い品種が国で開発され、それを親に民間が育種していきます。これによってカーネーションが再度メインのクロップになっていきます。現在コロンビアに加え、中国のカーネーションもマーケットに出回っていますが、再度日本のオリジナルとして1ヵ月持つカーネーションを親に次々と新品種が出てきて欲しい。日本花き園芸発展のために、花保ちを最も大切なポイントとしながらもその親を外に出さないルールが大切です。

投稿者 磯村信夫 : 12:02

2005年12月12日

龍頭企業

 昨日は松市であった。若松や門松以外にも、五葉松や根引き松などもっと評価して欲しいと感じた相場であった。それには生け花文化を広める努力を地道にしていかなければならないと強く感じた。
 また、今朝はセリ前にフラワー・オブ・ザ・イヤーOTA2005の表彰式を行った。表彰式にはフラワースピリット代表の上條氏と執行部の倉科氏がお越しくださった。委細は弊社ホームページ上のフラワー・オブ・ザ・イヤーOTA2005の項目をご覧いただくとして、四季受賞品目の特徴として、マスコミ用語で言うと「キャラが立っている」、すなわち「キャラクターが際立っている」あるいは「とんがっている」花であるということだ。背景にはグローバリゼーションの中で薄まらずに活躍していくために求められる資質、人物や物、花に限らずそういう法則が動いているように思う。
 
 皆さんは「龍頭企業」というものをご存知だろうか。中国政府は三農問題(農業・農村・農民)に取組み、龍頭企業を一つのビジネスモデルとしてこれを解決しようと努力し、一定の成果が出てきた。人民公社→郷鎮企業→龍頭企業の流れである。中国政府は2001年から龍頭企業を物心ともに援助してきた。農業の組織化、産業化である。規模の拡大と機械化、農産物の加工、統一販売の3つを実施することによって、日本の農家の半分の耕地面積である中国農家に国際競争力を付けるためと、余剰労働力の2次産業吸収が目的であると言われている。農業は中国のGDPの15%だが、農民は就労人口の58%を締める。今朝入荷した中国産の神馬は龍頭企業のものであるようだ。この龍頭化は上手くいく場合もあるし、そうでない場合もある。

 私自身は日本では農業協同組合や法人、小面積の個人の花作り、いずれも今後とも存続していくべきだと思う。但し、出荷販売レベルになったとき産業としての継続性やロットは必要だと考える。日本では卸売市場が花を見ても160以上もあるから、小口でも受け入れられ販売ロットをあまり重視してこなかった。しかし、切花鉢物とも日本以外の国は中国の龍頭企業、韓国の農協(農協だが、出荷においては個人出荷のグループで民間企業と変わらない。日本の農事法人と言ってもいいだろう。)のように、輸入花の状況はこのようになってきたので、日本の生産者や農協の出荷担当者はスピーディな意思決定とロット、そしてトラブル時の責任の所在の明確化の3つを意識して仕事に取り組む必要がある。

投稿者 磯村信夫 : 11:23

2005年12月 5日

今年の松・千両の産地概要

 日本中の花の卸売会社でも供給過剰になるに連れ、青果と同様にセリ前相対取引が増えてきて、直前の情報で取引することが多くなっている。その意味で、情報は産地から卸、卸から小売店へ、また売買情報は逆に産地へ瞬時に伝達される。相場情報、或いは損得に関わる情報だ。本来卸売会社は社会のインフラとしての仕事をしているわけだから、卸が得た産地情報は小売店を通じ、消費者に伝わっていなければならない。そうでないと次回も同じようにその消費者が花を買ってくれるとは限らないからだ。出来るだけ今年の作柄情報やどのように長持ちさせるかなど、小売店は商品情報を積極的に消費者に伝えて欲しい。

以上をお願いし、今年の筋物の松と千両の産地状況をお伝えしたい。
茨城産の松は、生産者Aさんの場合昨年に比べて4割少ない、Bさんは2割少ない。思ったより葉が黄色かったり、昨年の台風の影響で根が弱くなっていたり、小さいものが多く、本数ベースでは多く見積もっても前年比20%落ちる。そして肝心の箱数(束数)は入荷が3割程度少ない卸売会社も多いのではないかと思う。葉先がやや黄色いのは、千葉県沖を通過した2回の台風の塩害などによる。また、千両は日本全体を見ると昨年の台風の被害に遭った地域は今年の出荷物にも影響が出て、数量減で実付きも思ったほど良くない。一方、茨城県、千葉県産は実付きが良く、等階級が上がり本数ベースで上限は昨年並み、箱数では1ランクずつ上位等級にいくので、1割増の箱数となるのではないか。

 産地状況はこのようになっているが、相場は売り価格から類推すると花だけで物価が決まっているわけではない。他の物財は新しい工夫をして前年並みの価格を維持しているわけだから、花の小売価格は上げられる状況にはない。そうなると小売店は少ない物は仕入量を減らす、質が良くて出回りの良い物を昨年より多く扱うといった流れに身を任せた商売をするだろう。松も千両も規格や荷姿、せりと予約相対などの取引手法は確実に変わってきている。このような消費地や流通の変化は、鹿島・銚子地域の生産者に数の調整を促すことになる。思ったよりも早く大手の松・千両生産者が新しい時代の産地商人化する可能性が高いと思われる。

投稿者 磯村信夫 : 18:01

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