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2006年1月30日

第1回目の過渡期

松の内までに読みたいと思って用意しておいた本をようやくこの月末になって読み終えた。50歳も半ばを過ぎると著者の気持ちがわかるようになって、読み飛ばすことがなかなか出来ない。また、自分のリズムもゆったりとしてきて、それに合わせて読まないともったいないと感ずるから、どうしても遅くなる。
特にこの正月に熟読したのは、ネルソン・マンデラ氏の『自由への長い道』と白川静氏の『孔子伝』であった。鉄人とはこのような人であるのかと畏敬の念を抱きながらも太陽を感じながら拝読した。

ほぼそれらの本だけを抱えて出かけた出張先では、重油の高騰、寒波、単価安、後継者不足などを実感した。また、荷を運ぶ運送会社からは荷が少なくなっているのに、運賃も上げられないし、軽油代も上がって経営が大変苦しい運送店の実態を知った。地方の卸売市場では鉢物だけではなく、切花も集荷のトラックを出さなければならず、取り扱いが増えていないために運賃を相殺できず、経営を圧迫していることを知った。小売店は世界で最も激しい過当競争を余儀なくされているから、この苦しみも尋常ではない。このように花き業界では過渡期になっている。
促すべき施策は、まず地産地消。地元産品は地元の卸売市場が扱い、地元の小売店が消費者に販売する。これが各自の手取りが多く、今後とも一義に考えるべきことである。2つ目は地元の卸は国産のブランド産地を集荷販売すること。3つ目はできればこれに加え、世界の花を集荷販売することだ。この3つを揃え、地域の消費者に選んで満足してもらう。季節的に偏りはあろうが、地域の卸売市場と小売店はこのような花を消費者に届ける役割を果たさなければならない。こうすることによって今ある殆どの業者は生きていくことが可能になる。もちろん2008年には新たな手数料率の契約を結び、2009年の手数料自由化に備えなければならない。そしてこの2ヵ年で市場協会で手数料自由化対策を十二分に練って具体的ないくつかのあるべき姿を提言していく。それを参考に各社考えていってもらえればと思う。
現在、大変厳しい寒さが続いているが、果敢にリストラをして第1回目の過渡期を凌いでいきたい。

投稿者 磯村信夫 : 16:03

2006年1月23日

『年商3500万円』

 21日の土曜日、東京は雪が降って、一都六県の小売需要は鈍い。今年は本当に寒い日が続くので、小売需要は日本列島冷え込んでいる。しかしヨーロッパは今年は暖冬気味で、読者の皆さん方も冬物衣料が売れ残ったパリの1月大バーゲンに、日本人が大挙して押しかけ、コートなどを買っていたとのニュースをお聞きになった人も多いでしょう。ロシアは寒いものの、ポーランドぐらいまでそんなに寒くなく、オランダで最低温度が3℃以上の日がずっと続いているので、小売需要が活発で、ヨーロッパは総じて去年よりも相場が一割ほど高い水準で推移している。
2月のヨーロッパは、パリでメゾンオブジェがあり、ドイツのエッセンでIPMがある。11月のアムステルダムの花き園芸フェアと、この2月の冬のフェアは、花き産業がどういう方向に向かっていくのかを見る大切な展示会だ。これにチェルシーフラワーショー、日本のギフトショー、アメリカのスーパーマーケットショー、そして日本のIFEXを見ておけば、おおよそ世界の花き業界がどのように動いていくか、両3年の見通しはつく。
 世界の花き業界では、日本とオランダを除き、前向きな投資を行っている。特に東アジア、東南アジア、中央アフリカ、南米で花き生産業への参入が盛んだ。これは将来産地が移動することを意味する。荒っぽい数字だが、オランダの花市場協会で2005年の輸入花比率は30%であったという。日本が20%を下回る水準だから、日本より10%オランダは多い。そうなると、この冬場など半分以上が諸外国のもので、よほど高付加価値のものを作っていかないと、製造原価の高いオランダでは既に生産が難しくなっている。
日本の問題点は、オランダの生産者より、産地から消費地まで運ぶ運賃コストが余分にかかる点だ。もう一度各生産地は、トータルのコストの見直しと、品目品種の見直しをしていく必要がある。また買い手である買参人は、小売業は立地産業だから、自分の立地を再度チェックし、ネット販売などの比率も考え、年商で3,500万円以上の店作りをしなければならない。個店で平均日販10万円で年商3,500万円が、そこで働くもののお子さんを大学に行かせることができるかどうかの目安で、何も大学に行かなくてもいいが、しかし行きたいと言った時にお金がないというのはこれは問題で、花き業界の人材の質に懸念が残る。生産地、小売店ともこの3,500万円が、世界で購買平価から見た独立店舗の花店や生産者の売上目安である。日本は、そこを一つの目安として、自分の事業の再構築を行ってゆきたい。

投稿者 磯村信夫 : 17:41

2006年1月16日

どんな業種もどこにいても国際競争

今朝の入荷を見ていたら、絶対量が不足しているスカシユリ類で、南米のチリから輸入されたものがあった。今までは南米と言えばせいぜいコロンビア、エクアドル、コスタリカだったのに、日本のまるっきり反対側からも花が出荷されている。日本の専門商社の皆さん方が、世界中の良いものを探してきて、日本のマーケットに供給してくれている様子が本当によくわかる。
 部屋を暖房しているので、真冬には切花でもオオニソガラムのように、花保ちの良いものが珍重される。もちすぎて困るのだが、このオオニソガラムも殆どは南アフリカ産だ。
 土日に茨城県常陸野カーネーション組合の新年会があり、その勉強会で議論したが、常陸野の組合員の人達は「カーネーションはもう既にコロンビア、中国を中心とした輸入品と国産は棲み分けた。今までとってきた方針を推し進め、納期そして情報発信力などをより強めていく。」としている。同席した仲卸の課長さんは、「ご年配の買参人はカーネーションが昔に比べて使われなくなった経過をよく知っているので、今更カーネーションを、という人が多いですのが、若い人の中にはむしろカーネーションを新鮮に感じている人も出てきました。」とおっしゃっている。ガーベラの方が一般的なこの若い人達の世代において、カーネーションをもう一度見直しているのも事実である。
 切花、鉢物ともどの品目もそうだが、グローバリゼーションとポスト産業資本主義下の日本では、質を追求する以外に我々が生き残る道はない。貧しい家の子供が教育によって、末は大臣になれる可能性を人は持つ。この教育とは、我々にとっては勉強や研究、モノを考え出してそして実行することである。新しいものというのはそんなに簡単に生み出すことができるとは思わないが、花き業界でもそれに向けて改善ややり方の見直しをしていく必要がある。何せ種苗、生産、中間流通、小売の全ての花の分野においても消費者や取引先の目はより厳しくなっていて、今までの質や作業サービスではしてもらって当たり前になってしまっている。人やモノが集まるのは当たり前を当たり前に行う会社や人だが、これはゼロのレベルであり、それプラスアルファで初めてプラスに転じる。高く買ってもらわなければ、生活が成り立たない日本の価格まで含めると、日本で仕事するというのはそう簡単なことではなさそうだ。こういうことがどの業界でも分かってきた。質的レベルは日本リーグだが、価格だけは世界リーグの覇者であってよい筈はない。しかめっ面しても仕方ないから、はつらつとニコニコしながら苦しいことを行っている。だから当然日本の花き業界も当たり前に、且つ前向きに仕事に取り組んでいこう。

投稿者 磯村信夫 : 11:13

2006年1月 9日

外部化

2006年第2週、今週から平常な取引である。店売りは、年末にあれだけ販売してしまったから、スイートピーやチューリップ、プリムラ類などを除き、小売りの動きはよくない。今年は寒いからなおさららしい。しかし、結婚式はもう始まっており、今週は葬儀も行われるので、業務需要中心の展開になっていく。

結婚して2回目だろうか、年末年始に家内の買い物に付き合った。すると外部化、いわゆるアウトソーシングが家事の中でここまで進んでいるのかと本当に感心させられる。
企業ではあらゆるものをアウトソーシング化せざるを得ない。その企業が企業文化として残し、発展させたい仕事や資産以外は、できるだけ自社で持たずに外部化した。人材もパート・アルバイト・派遣社員を使っていきたい。そうしないと競争の中で次の設備投資をする資金を生み出すことができない。競争激化の中で日本の企業はこのように考えてきている。
そして外部化は家事においても食だけでなくあらゆることで行われてきている。花でもそうだが素材を買って自分で活ける、あるいは植え込み、育てるという花好きの人もいるが、時間をかけずにできたものを買って飾るという人たちのウェイトが益々増えていく。この正月にはスーパーマーケットにも百貨店にも行ったが、値段ではなく評判、実績を積み重ねたところは一味違う。この一味を作っていくことが必要だ。繁華街の花店はこのように味付けされた花のウェイトが高いが、商店街の花店ではサービス花束以外は素材売りが多い。ライフスタイルと少し合わなくなってきてはいないだろうか。
またこのキーワード「外部化」は、顧客と密着することにより、あらゆる企業の生き残りの道を示している。正月休みに留守にするお客様の家の鍵を預かって、鉢物に水をやったり、旅行から帰ってくる日の1月3日の昼間にはリビングのテーブルの上に春めいた花を飾っておいたり、バックヤードの殆どない路面店に水揚げサービスや値札付けをして納品する仲卸がいたり、農協花き部の販売戦略に従って経済連東京支所の職員と一緒に販促活動をする卸売会社の社員がいる。「代行サービス」や「外部化」というのは今後の花き業界の大切な収入源となっていくと思う。

投稿者 磯村信夫 : 16:19

2006年1月 5日

企画提案力が決め手--花き業界の利益の源泉

新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

昨年の止市と今年の初市挨拶で小生は買参人に訴えた。国内生産が減少していることが花き業界の誰にも解った。大田市場でも、11月12月と切花鉢物とも前年を下回っており、農林水産省の統計では出ていないが、市場協会の統計から類推すると、2002年を境に国内生産は減り始めているようだ。国内生産を再度活発化するためには、我々卸売会社も「提案する産地」になってもらうように一緒になって努力していく必要がある。だから花き業界のアンカーとして消費者に日々接している小売店の方からアドバイスやアイディアを頂きたいと訴えた。

 国内生産が減少した最大の理由は、企画力に富が移るようになったためだ。卸も仲卸も小売店も昨年と同じ提案企画をしていたのでは、売上は横這いどころか下がってしまう。だから花き業界の人は種苗会社を見習い提案力や開発力に磨きをかけよう。卸は、産地と一緒になって買い手に新しい提案をすることに国内生産が活況になっていくポイントがある。卸の持ち味は先見性と思いきりにあるからだ。生産地はもはや品種の更新だけでは不十分だ。私たち花き業界人は物販50、作業サービス50でお取引先に喜んでもらい生存しているのだから。

投稿者 磯村信夫 : 16:41

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