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2006年2月27日

中間流通業者の課題

先週全農は青果の卸売会社を集めて来年度の方針である直販の比率アップについて、あまり心配せず、また協力をして欲しいという旨を伝えるべく、説明会を行った。
 同じ農林水産省の中で2つの流れがある。食品流通改善促進法の流れに沿った自由な流通と、中央卸売市場法に則った幹線交通網のような流通網である。これを併用しているのが現在の日本の生鮮食料品花き業界の姿だが、日本の産地は直接量販店や加工業者に販売してマーケットのニーズを肌で感ずるべきだとして、米から始まり、あらゆる農産物でアメリカのファーマーズマーケットのような形態や道の駅、農協や全農の直売場での販売などを奨励し始めた。これで地方の卸売市場との競争関係は高まるかもしれない。こんなとき是非とも地元の卸売市場を使って欲しい。「地産地消」とは業者全員で地元消費者にサービスすることだ。

 さて、花はアイテム数が多すぎるので生販同盟による合理化メリットが出せないでいる。ドイツでもここ15年で2つのセリ市場が開設されたり、州によっては流通センターが新たに作られたりしていることで分かる通り、卸か問屋か流通センターか、事情によってニーズは異なってくるが、いずれにせよ中間流通を一つかませておいたほうが合理的だ。それはコンビニを見たらよく分かるだろう。コンビニやドラッグストアは問屋を使うことによってしかきめ細かく鮮度の良い売り場を作っていくことはできないとされている。花市場はこれと同じ機能を果たしている。生配販同盟だ。アイテム数が多く、ロットも小さい、また傷みやすい。そうなると中間流通の機能に磨きをかけるためにはサプライチェーンの各所においてITによる合理化投資が欠かせない。もちろん鮮度保持等に関するロジスティクスの投資も必要であろう。中間流通業者はそれらの投資に絶えるだけの財務体質を作っておかなければならない。
 地味だが怖い現実、この財務体質の強化が中間流通の機能が発揮できるかどうか、すなわち存続が許されるかの鍵を握っているのである。心して財務の健全化に努めていきたい。

投稿者 磯村信夫 : 13:22

2006年2月20日

自然の心地よさ

今年のドイツのエッセンのIPMの方向付けは「ホッとする環境=自然」と「アップサイドダウン(さかさま)」であった。ドイツ人は週末に森を散策することが大好きで、自然と共生しようとしている。小生はこの欧州の旅にドイツのシェリング哲学の第一人者である西川富雄氏の環境哲学の本を持っていった。旅行最後の日、ムハンマドを風刺したとかでデンマーク大使館が焼かれ、このトリノオリンピックでも、イタリアの閣僚の一人が風刺のTシャツを着て挑発したとかで、警備が厳しくなっている。
アミニズムから多神教へ、そして一神教へと、こう宗教は進化してきた訳だが、弁証法でいう螺旋状の進歩がグローバリゼーションとともに、一神教からもう一度多神教になって、それで終わりではなく、寛容が大切になってきているように思う。ニーチェの“神は死んだ”から自然の創造物の一つである人間が尊大になり、他の生物を滅ぼしたり、自然環境の破壊をするなどを戒めようとして、現代はそこに神の存在を認識したり、宗教的な価値を哲学でも見出そうとしている。
 フィリピンの大規模な地滑りをみても、結局森林破壊が山の神を怒らせてしまったようだし、まさにゲーテが言っていた“自然の前で人はひとたまりもなく埋め尽くされてしまった”光景となっている。一方に、人のエゴの大きすぎる破壊やご都合主義があり、一方にそのバランスをとろうとする自然なるものへの畏敬と、それを自然の恒常性(ホメオスタシス)が保てるよう、我々人間が慎み深く生きていこうとする規約を作り、守り、行動することが求められている。
花き産業も当然人為的に生み出されたものといえども、有機野菜の料理を手を入れた自然調な盛り付けをして食卓に並べるように、花も減農薬や省エネ栽培、土に戻りやすい鉢ものや関連資材を使って、魅力的な自然を作り出したり、一つ一つの花の生命力を魅力的に映し出す技法で消費者に訴えかけていく必要がある。自然環境についての世界的な関心は、日本の花き業界でもそれぞれの分野で真剣に取り組んでゆく必要がある最優先課題である。

投稿者 磯村信夫 : 17:31

2006年2月13日

第55回関東東海花の展覧会

 2月5日(日)ドイツのエッセンで開催されたIPM2006国際園芸専門見本市を見学した。「より自然に」と“Upside down”が今年のデザイン傾向のテーマで、IPMは他の国際展示会に比べ、フラワーデザインや関連資材の今年の傾向を知る上でまたとないチャンスである。真冬の展示会だから、北欧を含め、ヨーロッパアルプス周辺の国々では寒さが厳しいので、造花の比率が高くなる。従って寒さに強い植木や造花などが多い展示が特徴となっている。
ドイツは失業率10%以上で、経済復興の目途がなかなか立ちにくい。そのように経済的に喘ぐ中での展示会となった。花の専門店やデザイナーのところまで株高の影響が回らず、やや苦しんでいる感じもしないではないが、そんなときにこそ花の魅力をと積極的に提案していた。フラワーデザイナーたちのブースで面白いと目に付いたのはカーネーションで、種苗会社の展示では殆ど使われていなかった一方、デザイナーの展示には結構使われていたということだ。ドイツとアメリカ、日本とでフラワーデザインの教材・花材としてカーネーションが使われているということは、次の世代にも繋がると嬉しく思った。

さて、2月11日(土)には池袋のサンシャインシティで開催されていた第55回関東東海花の展覧会を見に行った。今年の主催は茨城県が当番で、素晴らしい生産者の出品物とフラワーデザインの数々が展示されていた。
今年の展示物を「恐る恐る見に行った」と言うのが私の正直な心情だった。天候不順、原油高、12月の市況の悪さなど、生産者は混沌とでも言っていいくらいやる気をそがれ、将来の見通しが立たずにいる人も決して少なくないと聞いていたからだ。
しかし、実際に行って目を見張るばかりの品質に感激するとともに、何か希望のようなものを感じた。日本の花き業界は捨てたものではない。今後も益々発展する。「人は希望と共に若く、勇気とともに輝く。」誰が言ったか忘れたが、このフレーズが自然と出てきた。関東東海花の展覧会ももう55回。それほど回を重ね、その品質の素晴らしさ、まさに本物はこれだという物を広く一般の消費者に見てもらいたい。少なくともプロの花き関係者には見てもらいたいと思った。IPMより数段素晴らしい品々を見て、足も軽やかに帰路に着いた。

投稿者 磯村信夫 : 17:00

2006年2月 6日

産地との話題は「手数料自由化」

産地に出張したり、産地の方が市場見学されたりする際、2009年卸売市場の委託品販売手数料自由化の話が出るようになってきた。農協や県・経済連の方針――方針というが、現時点ではその人の個人的な考えといっていいだろうが――によってあまりにも色々な意見があるので、一つの形で通せるものかどうか甚だ疑問である。カナダやオランダ、ドイツでセリをしているところは、12月に翌年の様々な課金料金表を発表する。もちろん、事前に生産者団体や卸・小売り団体と交渉した上で締結したものだ。1年ごとに変わらないものとしては台車使用料やバケツ使用料、分荷手数料、家賃、その他各種サービス料がある。年ごとに違うのが委託品のセリ販売手数料、表示と中身との相違や品質のクレームに対するペナルティの罰則・罰金、買参権の値段などである。もちろん買い手に対しては金額ベースで大口と小口は違うし、また品種ごとのロットのまとまりによっても徴収される金額は違う。
オランダの場合には一つ一つのアクティビティに基づくコストを計算し、3つの大きな収入の柱で卸売市場を運営しようとしている。一つは販売手数料で売り手と買い手の両方から頂く。ひとつは分荷サービスなどの各種サービスからの収入、そしてもう一つは事務所を貸したりする不動産からの収入である。
輸入品は水揚げしてバケツにつけるために1本ごとに料金を頂く場合と、売価のパーセンテージで頂く場合とがあるが、今では殆ど1本いくらで卸売会社に支払っている。結局、海外産地は10%以上市場に支払うことになっている。日本人の関係者はよくオランダや海外の市場に行って販売手数料が5%以下と知ると、そんなに安いのかと驚き、日本に戻ってくると9.5%や10%は高いですねということがあるが、それは認識不足というものだ。市場の台車やバケツを使って賃料を取られているとは思わないだろう。しかし、それらは自分の物ではないのだから付帯サービス料を取られるのは当然で、日本もそのような条件で手数料を決めるべきか迷ってしまう。韓国では卸はセリをするだけで場内物流は別の業者、産地は卸と場内物流業者に5%ずつ、合計で約10%払う。或いは、台湾のように売り手と買い手の両方から手数料をいただくというのもある。
これからの2年で今までの慣習を見直し、より合理的で常識的な料金体系にしていくべく、議論を積み重ねなければならない。

投稿者 磯村信夫 : 06:47

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