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2006年4月24日

新しい時代の顧客ターゲットを明確にした花店誕生

先週の木曜日、オランダ国際球根協会がJAFTAと協賛して毎年行なっているMs.Lily2006の記者会見がホテルニューオータニで行なわれた。今年は木村佳乃さんで、ユリの絵柄の着物をお召しになって出席され、オランダ大使夫人よりMs.Lily2006授与の栄誉を受けた。

 同じ先週の木曜日、東京の錦糸町で工場跡地の再開発として注目を集めたOLINASがオープンした。二つ建物があり上でつながっているが、駅から行き奥の建物の一階にコムサショッピングフロアがあり、入って右手のところに株式会社ブルーミストさんが花店を出展している。また地下は東急ストアが1フロア出店しており、ちょうどエスカレーターの乗り降り場所に東急フローラさんが専門店として出店している。
 このOLINASは、激戦区錦糸町の中で、オシャレで値頃な商品を集めたショッピングエリアだ。ターゲットは明らかにロウワーミドルに当てている。他の錦糸町の商業施設がどちらかというとかつて日本で存在していた中産階級狙いであるのに対し、中流階級がなくなり所得がM字型になった今日、全体の40%をしめる年収300万?600万の給与所得者で、最もボリュームのあるこの層を明確に意識した品揃えをしている。東急ストアの方は競合店との関係だろうが、もう少し上も取り込めるこのロウアーミドルプラス年収1000万以上のアッパークラスも対象にしてあり、まさにM字型両方狙いといった感じであった。1998年暮れのボーナスから、日本中の所得は下がりはじめ、明確にロウアーミドルを狙った会社が繁盛している。専門店チェーンではユニクロや無印良品がその代表格だし、我が花き業界ではアイリスオーヤマがインテリア部門に進出し、大変上手なマーケティングを行なっている。
 
M字型所得が明確になった現在、こうあるべきだという今をとらえた花店の有り様の一つが錦糸町OLINASにある。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2006年4月17日

『良くて安い』は国内で供給するか?

 冬は、スキー場の天気が良いときにはスキーに、昨日のように雨のときは妻と朝からお台場のスポーツクラブに行く。それが日曜日の午前中の過ごし方だ。
 7時30分にスポーツクラブにいたが、トレーナーは「今日はゆりかもめが動かないから、宿泊の人で朝から盛況です。」と苦笑いしていた。確かに2日間も止まっていたなら、身動きできず、まずスポーツをというところだろう。
 一汗流して、16日の日曜日の目的、JR中央線で立川駅から歩いて行ける国営昭和記念公園(故昭和天皇のご遺徳を偲び作られた公園)の立川駅口にある花みどり文化センターに行った。ここで第1回切花・鉢物等部門のジャパンフラワーセレクションが行なわれている。初回だということで、出品数は100点あまりと少なかったが、NFDの協賛もあって、「こう飾ったらこんなに素晴らしい」をその場で体感でき、質の高い展示会であった。昭和記念公園を時折降る小雨の中散歩したのもよかったが、この展示会は確かに見に行く価値がある。
 会場の中でバラの新品種に目をみはった。東京都花き市場組合の樋口理事長が14日の金曜日に「磯村さん、バラの品種は素晴らしいですよ」とおっしゃっていたが、日本も菊類を除くとバラがますますシェアを拡大するのではないかと予感した。それを見終わったあと、八王子と並ぶ多摩地域の拠点都市である立川の駅周辺を探索した。
 とある百貨店の社長さんによると百貨店という業態が成り立ちえるのは、札幌・仙台・東京・名古屋・京都・大阪・広島・福岡の8つの都市で、京都は横浜と同じく百貨店の適地として入れてもよいし入れなくてもよい都市だそうだ。これはあくまでも百貨店と言う業態が活躍しつづけられるかという視点で都市を見た見方だが、花市場でも70億円以上の取扱額がある都市と合致しているので、一つのしっかりした地域経済と文化を持っているところと言えるだろう。
 さて、百貨店の話になったついでに、立川の伊勢丹と高島屋、またJRのルミネを見ると百貨店という業態がここでも機能しているのがわかる。
 男性のワイシャツで言えば、世界的なシャツメーカーのブランド品は1枚5万円以上する。さすがにこれは立川にはない。衣料品の世界ブランドのワイシャツは2万円台、それよりちょっと落ちたブランド品が1万円台。デパートで売る一般的なワイシャツは8000円台が主だったところだ。そしてルミネのようなところでは1万5000円から5000円が多い価格帯。そしてユニクロなどでは3000円台。このようにワイシャツはなっている。お仕立て券付で2万円ちょっとが一般的になっているのは、それなりの生活様式をする名士の人たちが日本にはまあまあいるとうことだ。
 花屋さんでも名の通ったレベルの高いお花屋さんたちがここ立川でも消費者の支持を受けている。立川は良いものが売れるのだ。
 花やみどりの本物というものはしょっちゅう見ている身のまわりの自然にあるので、花や緑の品質を誰でもよく知っている。そうなると、良くて値頃なものはどんなものか?ブランド好きな人は「価値あり、高いけれどこれは価値あります」という花束や一流花店で花を購入する。しかし、デパートが存在できない都市で、ここ15年間花の価格帯が下がったところの花店や花市場はどうすれば良いだろう。現に、この国で年収600万円未満の人が80%以上いるのだから、よくて安いものを花も供給しなければ花の需要は減退してしまう。高級品はジャパンフラワーセレクションのように、素材もよく新商品で消費を刺激する。しかしこれはM字消費の高額所得向けだ。中流が下流化し、一家600万円以下で生活をする。その人たちに向けての花は国内で本当に作れるのか。展示会を見たのち、立川の街を見て、つくづくそう思った。たぶん専門店や百貨店で売る花に国産は絞り込むべきではないのではなかろうか。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2006年4月10日

独立店舗、頑張って!

独立店舗、頑張って!

花の小売店の新しい動きについて以前このページで、隣り合わせた私鉄の3つの駅で、花店が同じ店名で店構えもほぼ同じようにしてチェーン店のように販売しようとするプロジェクトが進んでいることを報告したが、正式に断念せざるを得なくなったので連絡したい。
その理由は後継者ありが1店舗、後継者なしが2店舗であって、今後とも続けるかどうかというところで意見の食い違いが合ったため断念することになった。「私たちが今何をなすべきか」は「将来どうなっていたいか」。そこから考えて今なすべきことを決めるという方法がある。格差の時代であると言われるが、花店にしても花の卸売市場にしても「将来どうなっていたいか」その夢が今の努力を決めていく。
『30年先はどうなるか分からないが2030年の夢はある。でもそれまで俺たちは健康に生きているだろうか。』と2件の花店のご夫婦は考えたわけだ。『そう言ったってワンジェネレーション?30年の半分、2015年までだったらあと10年だからお二人とも65歳前後でしょう。まずそこへ向かって努力したら?』と説得したが、『息子もやらないのに店舗を改装したり、いろいろと投資をするのは嫌だ』ということで3年間も話し合いを続けてきてもう一歩というところで破談になってしまった。誠に残念である。
破談になったもう一つの理由は、この3軒ともいずれも広い意味での団塊の世代で、ここのリタイヤ問題が世間で話題になっているために、なんとなくサラリーマンのように第2の人生を考えているということだ。だったら第2の人生のつもりで花店の改革をすればいいのに何か違ったことをしたいらしい。
とある地域の店主に相談を持ちかけられた、『後継者がいない仲間が、店をやってくれというのですけれどもどうすればいいのでしょうか?』と。また直接大田花きの顧客サポートチームに『自分はもう○○歳。あと○年以内に店を譲りたいからその相手先を探してくれないか?』と。読者の皆様方は小生が花店の2世3世を集めて、塾を開いていることをご存知だと思いますが、そのナルシス会のメンバーは支店をいくつか出している。それは彼らの父親の友人の花店から『店をやってくれないか?』という相談を受け、有利な条件で引き継いだものだ。
花の専門店は廃業率が5%未満と他の商売から比べてみれば、小料理屋と同じように独立店でも十分に採算ベースのせることができる業種だ。卸売市場流通という商材を選んで店づくりできる仕入れ形態だから、今後とも十二分にやっていけると思うのだが、どうもここにきて団塊の世代のリタイヤ論とともに少し様子が変化しそうだ。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2006年4月 3日

デザイン力

昨日の午前中、新橋にある東京美術クラブへ「東美アートフェアspring」を見に行った。好きな作家の絵や香炉などを堪能したが、景気が上向きのせいもあり、例年になく力の入った展示会であった。
目の保養だけのものや、車を買うのだったらこれをという購買意欲をそそられる秀作がいくつかあり、なじみの美術商と相談をしたりした。特に島田文雄の香炉は、大田花きの商品開発室でちょうど香り分析や香りを花の付加価値として販売するプロジェクトをやっているため、私とその作品との間に壁がなく、愛情を持って見ることができた。
新橋の美術クラブには友人の古美術商の家が三軒先にかつてあったことから、建て替えてからも何度か行ったが、長い不況のため秀作も思った値段が通らなかったので、美術組合としてもようやく春が来たというところであろう。
さて、そのあと並木通りを通って日本橋へ行ったが、美術品を見る目で商品を見ているものだから、あるいは人の所作を見て値踏みをしているため、買い物をしていてもなかなか買う気にならない。そこへ行くと桜もそうだが、花店の春の花はのびのびしていて本当に買う価値がある。
日本橋界隈で買い物をしていても、どうしても美術クラブの影響でデザインに目が行く。機能も含め、このデザイン力が商品力だ。ついに日本橋をあきらめ、いつも買い物している新宿の伊勢丹に行ったが、ここの品揃えは昨日の私の価値観によく合っていた。
ファッションは生活デザインであり、そのデザインゆえに買う者の心を強く打つ。一流ブランドの物はデザインに優れ、プラス機能的であるから、普段はブランドをきちんと見ようとしない私も、昨日ばかりはそれぞれのブランドのデザイン力と自分の生き方のデザインを重ね合わせて買い物をした。新宿にも高島屋と伊勢丹に花店が入っているが、それぞれデザインを意識した取り組みがなされている。そして他の物財と比べると、さらに花もデザイン力を高めていくことが必要である。デザイン性の観点からいくと、テーブルセッティングやインテリアデザイナー、家具デザイナー、居住空間デザイナーの方が、現在のところ我々花のプロよりも勝っていると言わざるを得ない。デザインの視点でもう一度切花の作品や鉢物を見直す必要がある。特に、鉢物にはデザイン力は生命線となっている。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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