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2006年8月28日

生産者のコスト増を代弁する

 8月26日の土曜日、第16回の大田花きバラ会議が開催された。日本の中でも高いレベルの花き生産者が一同に集まり、自分の方針がこれで良いか確かめたり、軌道修正の有無を決定したりするためにこの会合を使っていただいている。弊社の目的は切花の中でバラのシェアを20%にすることだが、16年経ってもまだ満たず、まだまだ努力を重ねなければならない。日本の夏は東南アジア並みだが、それでも目標を修正せずにやっていきたいと思う。

 さて日本の花き生産だが、露地物を中心に減ってきた。2002年をピークに減りはじめた切花・鉢物類は生産減に歯止めがかからない。野菜や果物などは下級品や規格外のものができてしまったとしても、カット野菜やカットフルーツ、中食用の素材としてお金に換えることができる。しかし、花は1本は1本、1鉢は1鉢で失敗作はお金にならない。また、昨年までは価格の下げ圧力がマーケットに蔓延していたから、花き生産を断念する人は思いの外多い。メーカーというのは工業製品、工芸品、農業とも大変な仕事である。花は成熟産業だから、花をやっていれば嫁さんが来るというわけではない。農家にはこのような問題が現実に多くある。しかし、農家も良い経営をしているところは良い嫁さんがくる。
 再度言うが、国内の露地生産が減ってきた。だから暑い夏の時期から秋まで、もう前年を上回るということは考えられない。露地の時期というと、6月から11月までだが、この間は菊や仏花用小物の生産がもう前年を10%くらい下回ることを前提に考えなければならないわけだ。そして油が高くなると当然冬場の生産が減ってくる。そうなると唯一潤沢にそれなりの量が出てくるのはハウス中の無加温で花が咲くときに限られる。これが従来の基準から見た今後の日本の出荷傾向だ。
 市町村合併、農協合併など産地の大型化は避けられない。狭い地域の産地では一定量の確保ができなくなっているからだ。安定した出荷のためには一定ロットを確保したい。となると市町村合併や農協合併は時代の要請だとわかる。安定供給の量が確保できるようになると、安定して出荷できる市場を再度選びなおさなければならない。それはこの国の人口も減っており、都市部によって明らかに格差がつくことが予測できるからだ。コスト削減はスケールメリットを生かすことによって実現し、それが利益となる。1989年ベルリンの壁が崩壊し、1991年にソ連がなくなりロシア連邦ができた。デタントがまさに現実のものとなったのとほぼ同時に、アメリカはGPSとインターネットの民生化を決定した。それは情報産業が限界効用逓減の法則に則らずスケールメリットを利かすことのできる産業だからだ。そしてこの情報産業とお金の産業では、電子送金するときに1円と1億円の手間はほとんど変わらず、金融業はスケールメリットが大きいと言える。お金の仕事はスケールメリットを利かすことのできる産業である。仕事花で言えば、一つ一つ異なるテーラーメードの結婚式より、ほとんど既製に近い葬儀の花は利益が出せる。これもスケールメリットだ。この経済合理性のために現在産地で第一の優先事項は農家の所得をこれ以上下げないこと、増やしていくことだ。そのためには一定規模以上の卸で出荷物流コストが安いところに集中して出荷する必要がある。物流コスト、手間のコストなどを削減することが手取り増につながる。物流、情報流、金流、商流、この4つのコストパフォーマンスを産地は追及していく。未だ産地は出荷先運賃のプール計算をし、平均運賃として組合員にお願いしているところもある。しかし個別卸ごとに費用対効果を算定しているところが増えている。これは利益を重視しはじめると当然のことだ。
 もうこれ以上花の生産減を加速化することはできない。生産減が誰の目にも明らかになり、景気の追い風で単価が上昇すると予測される。日本中の小売店は消費者に日本花き業界の現状と油高騰による農家の生産コストを花き業界の一員としてお客様に説明してほしい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2006年8月21日

ロシアの花:雑感

 夏休みをいただいてロシアのペテルスブルグとモスクワで一週間過ごした。35年程前、シベリア鉄道でナホトカからハバロフスク、モスクワからレニングラードへはじめてのソ連の旅をした。絶えず国営旅行会社のインツーリストがぴったりくっついて同行し不自由であった。そして社会主義国家を統治するとはこういうことかと感じた。その後度々、ヨーロッパに行ったときは行きか帰りにソ連を訪れた。ゴルバチョフのとき、エリツィンのとき、そして特に95年以降マフィアが横行し、街に麻薬があふれ、20世紀末デフォルトでほとんど混乱の極みともいえる様相を呈していた。しかし、それでもペテルスブルグとモスクワを5年毎に行っていたのは、オランダでは命をかけてでもロシアに花を売りに行って輸出会社はそれなりの成功を収めていたからで、花好きで人情味のあるロシア人に対する愛情からだ。昨年の夏、突然ロシアはオランダの花に害虫がいるということで輸入禁止措置をとった。ロシア人が大好きな大輪菊と大輪バラの価格がオランダ市場では下がった。鉢物では観葉植物などの相場が下がった。
さてこの夏、今までは旅行者として花店を見るに過ぎなかったが、今回は問屋の大手をペテルブルグ3軒、モスクワ3軒を見て廻った。店頭売りの75%がギフトで、25%がホームユースと言われるが、他にも結婚式や葬儀の花にも花き専門の業者は取り扱っている。ロシア人の好みは大きな目立つ花だ。大輪の菊とバラはよく使われ、大輪のカーネーションがお墓の花として使われる。日本の菊とカーネーションは逆の立場だ。両方とも早く偏見がなくなるよう祈っている。
9月1日は新学期で、特に小学校・中学校ともに1年生は先生によろしくおねがいしますと花をプレゼントする。
 ロシアの卸はどこも、「いよいよ需要期になってきて値段を吊り上げてきたと花の小売店に思われるのはつらい」とオランダのここのところの高値相場を嘆いていた。5年前まで約100億円あったとされるロシアの国内花生産額は4分の1の約25億円になっている。花壇苗や植木はポーランド産が多い。もちろん一部シベリア産のクリスマスツリーは絶品だ。ほとんどの切花・鉢物はオランダ産、デンマーク産、バラはエクアドル、カーネーションはコロンビア、そして2,3年前から売り込みが激しい中国雲南省のカーネーションと韓国のユリ類がある。ポーランド産の切花が少なくなって残念のような気がするが、しかしロシア人はオランダの市場を当てにしている。ロシアの流通業者は幾度も「オランダの花市場はヨーロッパ社会のインフラストラクチャーだ」と言う。このようにロシアでもオランダの花き業界を頼りになる相手として選んでいる。
 ロシア人は自らを細かいことを気にしない大雑把な国民だと言うが、こと花に関してはオランダからの良い影響で基礎がしっかりしていると問屋を廻ってみて感じた。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2006年8月14日

日本の「花の輸入商社」

 日本の「花の輸入商社」は大手総合商社の仕事というより花専門商社の仕事である。それは金額が大きくないことや例えばワックスフラワー1つにしても品種が10種類もあり、時代によって売れる品種が変わり、また一年のうちでも季節によって売れ筋の色が変わる。このようにプロ化しないと利益を上げることはむずかしい。さらに日本の国内生産は圧倒的な強さを誇るから、相場は相変わらず国内の生産動向によって変わってくる。ここを読みきれないと、なかなか商売を続けることがむずかしい。だから切花の輸入は専門商社の仕事となっている。
 花の輸入商社の会社運営の形は二つある。一つは、到着した荷を今一度国内選別を行い、ものによっては水揚げをして甦生させ、出荷する。そのような設備を自社内に用意した装置産業としての輸入商。もう一つは飛行機運賃が割高になったとしても、小箱で現地から出荷してもらい、国内選別をせずにそのまま出荷する商社。この方式をとっているところは、その地域トップの生産者と取引したり、生産グループを作ったりして小箱化現地厳選で仕入れコスト増、運賃コスト増を日本国内であまり手間隙かけずに相殺していこうとする。言うなればメーカー商社だ。前者は国内選別を自らするから、自らの会社がブランド化するように動く場合が多い。一方後者の場合は、原産地農園と輸入商社の名前を記し、この取組みの素晴らしさを一つのブランド名にして販売をすることが多い。
 今まで輸入の花はオセアニアのネイティブフラワーなどを除いて、国産の足らず目を埋めるために輸入されていた。量の充足の時代だったので「安全・安心」や「ブランド化」など考えなくてよかった。それが今、「信頼」や「ブランド」が大切になってきた。となると、どうするのか。輸入商の腕の見せどころである。
 一般にその国の輸入量が15%を越え、20%近辺になると大手の生産会社は、3年程前までは販売子会社を消費地等に作ったり、消費地の卸売市場に委託出荷をしたりしていた。2?3年前から今まで委託出荷を受けていたオランダやドイツ、フランスの市場はそれをやめ、餅屋は餅屋でアウトソージング、専門業者に任せていった。日本は輸入に際し、島国なので植物検疫や燻蒸処理だけでなく、税の問題や柔軟性、あるいは人件費問題などがある。今後輸入量は増えてくると予測されるが、明確な方針を持った専門商社の活躍が期待される。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2006年8月 7日

ソウルブランディング

 「政治は日曜日作られる」と言われているが、このところの日曜のテレビは、政治番組だけでなく経済番組も潮目が変わってきたことを痛感させられる。それはというと、日本は長寿国であるのに、機能食品を売り物にする宣伝の比率が減ってきた。健康でありたいということは誰もが願うところだが、LOHAS(Lifestyles Of Health And Sustainabilityの略、健康と地球の持続可能性を志向するライフスタイル)的な訴えに健康食品は変わってきた。さらに言うと、禁煙や野菜の5 a day、10種類以上の異なった食べ物、各種運動の1ユニットなどLOHAS的習慣化へ向けた健康維持の宣伝や番組が目を引く。そして比率的に多くなっているのが、環境を考えた精神の豊かさや、カタルシスを促す悲劇や人の証であるユーモアに富んだドラマや映画、あるいは宗教の番組、さらには政治話題やその具体的な取り組み事例の紹介番組などが増えてきていることが分かる。
 精神的な心の問題までくると食品添加物を使っていない食べ物や減農薬有機の野菜や花などに生活者の関心が行く。現代は、一方にはニートや自殺者の平均年齢が下がってきていること、または男性も女性もファッション雑誌が良く売れていること、一方にはサスティナブルをキーワードに身体だけでなく精神や心を鍛えることを提唱し、仕事においても自分を成長させるという面を強調することが多くなっている。確かにスピリチュアルな方向に世の中の価値は動いてきているが、一般大衆の我々のところではただいま現在、ヨガが示すとおり、精神の安定の前に肉体の健全化、健康に大衆は関心がある段階だ。これをどのように精神にまで繋げていくか、この段階に新しい日本と日本人の生き方がある。花き産業のあり方がある。
 花き業界を見ているともう一度和に戻ろうとする力が強く働いているように思う。企業経営で言えることは結局、近年言われ出した“ソウルブランディング”、その企業の精神の価値と言われるものであろう。それはただいまのところトヨタやホンダに代表される企業の生き様である。4号前に日本の花き業界でこれに関することに触れたが、組織運営に関して欠かせない価値であるソウルブランディングは新たな富の源泉が地球環境・社会性、ともによくなろうとする諸活動などにおかれはじめてきているということであり、取引先や生活者の共感がビジネスの繁栄となったのである。今までと時代が変わって、新たな時間に入ったのではなかろうか。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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