大田花き 大田花きコーポレートサイトへ
 

« 戦後の一時代が終わる | トップ | 何日前の荷?物流トレーサビリティー »

2006年9月18日

胡蝶蘭の育種ターゲット

 土曜日の午後、胡蝶蘭の育種家と、特にギフト胡蝶蘭の鉢を販売している大手の卸、そして小売店の方々と弊社で懇談会をした。
 中心話題の一つに胡蝶蘭の鉢は今後も行けるか、飽きられて代替品に取って代わられないかを話し合った。胡蝶蘭の鉢の生産者は現在2通りある。観葉の木物がそうであるとおり、開花株を輸入して温室を回転良くまわすタイプと、従来通りじっくり良いものを作っていくタイプとの2つの型がある。回転を高めていくタイプの人のものは、大輪種では残念ながら高級品というわけにはいかない。しかし10年前からすると、その品質たるものは大変高いレベルで、かつての特級品が現在の開花株を輸入して効率よく温室を回転させる品質レベルとなっている。事業として素晴らしい。そのことを踏まえた上で、小売店はあえて頂点を目指す品質を育種家たちに要望していた。台湾の品種よりも勝る品種を日本で作ってほしいというのである。
 そして胡蝶蘭の鉢が今後も続く理由として、顧客が変わるということがある。ヘビーユーザーが3年で変わっていくそうで、結局贈る側が胡蝶蘭に飽きたということもあるかもしれないが、それよりも会社の業績などが3年くらいすると変わってくるのだという。法人の場合とにかく3年?5年くらいでお客様は変わるという。だったら良いものを作っていれば大丈夫だ。
 個人の消費者を対象にした場合はどうだろう。ギフトではすでに白50、白赤(白の赤リップ)・ピンク・黄色など含めて50の比率だそうだ。(実際は法人需要も多いので白70の比率になる。)
さて、個人をターゲットにした場合の論議のとき、ここ10年で進んだ4層の社員構成に話が及んだ。パート・アルバイト社員、派遣社員、契約社員、そして正社員の4層である。一定の職位や学歴でここ10年所得が少なくなっている人たちを通称「プアーホワイト」というのだそうだ。アメリカで1960年代の前半、黒人に選挙権が与えられ、所得が下がった白人が多数出た。この人たちはどこに不満をぶつけるか、弱いものへ怒りを爆発させていった。右翼化と家庭内暴力である。それと同じ状況がここ10年、日本では展開されてきている。2005年夏の衆議院選挙で小泉自民党はこの不満をうまく票につなげたと言われている。郵政と官僚は特権である。だから自由化するのだ。民主党の支持基盤である労働組合は社員4層のうち、最上級の正社員を対象にした組合で、それ自体職位や所得を落としていった人からすると特権に感じる。この1960年代のプアーホワイトと同様の意識が日本には蔓延している。当然花き業界でも顕在化するほど存在していることを知っておく必要がある。中傷や妬みは意味のあることとはいえないが、日本には5000人に1店舗の割合で花売り場が存在している。ドイツの3倍、イタリアの7倍、イギリス・フランスの10倍の店舗密度の中で競争しあっている小売店。石油が上がっても価格に転嫁することができず、じっと辛抱するか、やめるしか選択肢がない生産者。仲卸との競争に敗れ、売上を減少させる卸会社。それぞれ不満が鬱積しつつある。
さて本題に戻って、胡蝶蘭鉢の個人消費のターゲットは、4層トップの正社員の役職者、役職者の奥さんである。そうなると日本のトップの品質でないといけないことはその所得の構造からわかる。良い品種を時間を掛けてじっくり作る、花保ちを最低でも一ヶ月以上にする、これは胡蝶蘭の鉢の座を維持・発展させていくには欠かせないというのが土曜日の結論であった。

投稿者 磯村信夫 : 2006年9月18日 00:00

Copyright(C) Ota Floriculture Auction Co.,Ltd.