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2006年11月27日

陰りを吹き飛ばす

 10、11月と花は消費意欲に陰りが見えてきている。上半期、前年よりも2?3%客単価が上がり、品薄感が漂ったが、暖秋・暖冬のせいばかりではなく、高額商品が多くなった11月中旬以降、消費者が価値を認めてくれているのはごく一部の花だけとなっているようだ。11月は2ケタに近いマイナスである。

 花は「三気商売」で、「天気」「景気」「やる気」で構成されている。「天気」は暖冬なので暖かいだけでなく雨が多い。これが問題だ。「景気」は各企業設備投資の意欲は高いが、従業員の所得までお金が回っているところは多くない。花の顧客は概して高齢者が多いが、ここのところの株安で少し消費意欲を締めている。株高か、定期預金の金利がはっきり上がってくると、花の消費意欲が高まる。最後に「やる気」だが、花き小売店も自分の代で終わりという人が少なからずいる。大田市場の新規登録の買参人は300キロ圏内の大手の小売店が多く、新規登録の人と同数、買参権を返上する人もいる。その人たちは半径50キロ圏内の小売店の人たちが多い。

 新しい試みとして、後継者がいないのでやめようと思っているところを集めてチェーン化していく商売に乗り出したところもある。会社の一支店にそのかつてのオーナーだった人はそのまま勤める。給料取りになるのである。
 
 さて、今年の12月は団塊の世代のリタイアも近く、年末年始の日めぐりからいってもお正月を自宅で過ごす人が多そうだ。よって12月22日?23日頃からは日本中相場は堅調に推移しようが、その前のお歳暮・クリスマス需要などは団塊ジュニアが子育て真っ最中で、まだ赤ちゃんも多いことから、花までそうはまわってこない。ポインセチアはこの層まで取り組むことに成功したが、シクラメンの価格が毎年下がるのは団塊ジュニアの支持がないからだ。

 さて、三気商売で一番気になる「やる気」の問題だが、この「やる気」を消費者を買う気にさせるその商品提案、商品開発力に使う必要がある。スタンダードなものにお金を使うのはやはり2割なのではないか。新しいものや珍しいもの、質の高いものなど、少なくとも昨年と比べていいなと感じるものに価値を見出すのではないか。これが8割だ。花は衣料品ほどまでにピンきりではないが、同じようなものでも確実に値段がばらついてきている。「気」を提案力と開発力とマーケティングに使う必要がある。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2006年11月22日

クリスマスツリー

大田花きのお客さんはアメリカ・オレゴン州やワシントン州のクリスマスツリーもないと承知しない。国産は強い風に吹かれて成長がとてもゆっくりな富士山のもので、オレゴンのクリスマスツリーと富士山のクリスマスツリー、それが弊社のクリスマスツリーだ。

オレゴンのクリスマスツリーは2004年、2005年と2年間も植物検疫で輸入できず、納品先が決まっている大手の仲卸さんや小売店さんに、突然のキャンセルで大変ご迷惑をお掛けした。もし今年植検で引っかかるようなら、もう縁がないものとしようと輸入商の方と入念に打ち合わせをし、本年は無事に通関ができた。銀座並木通りのシャネルやエルメスなどこのオレゴンのクリスマスツリーじゃなければいらないと言われている得意先にも、ようやく面目が立つ。

大田花きのクリスマスツリーの取り扱いは日本の中でも特異な存在だと思う。それは大森園芸の頃からの歴史と伝統に基づく。大森山王にドイツ学園があった。良いクリスマスツリーはドイツ学園に出入りしているすぐ近所のお花屋さんが何百本も一手に受注していた。米軍とアメリカ大使館に出入りしていたお花屋さんは別にいる。この人もまた大量に扱った。羽田がまだ国際空港だった頃、アジアや中東からの要望で毎年100本くらい輸出をしている羽田のお花屋さんがいた。横浜から横須賀にかけての米軍と繁華街に横浜方面を得意としていた仲卸さんたちが毎年トラック2台分くらいセリで買い付けた。その頃は国産だけで富士山と長野県の八ヶ岳のものだったが、富士山のものは独立国だったから寒く、風が強く、成長が遅い。それが絵に描いたようなクリスマスツリーを作り上げる。そこを中心に販売していた。大田になってアメリカの農商務省USDAがアメリカの農産物輸出振興策の一環としてレザーファン、レザーシダだけでなく、クリスマス仕様のものも出荷することとなり、大田花きは毎年現地に赴き、販売するものを品定めした。

こういう経過から、日本の花き市場の中でも、特異なクリスマスツリーを扱う卸がまた生まれた。クリスマスツリーは販売促進用に今でもよく使われている。しかしこれはいわゆる業務需要だ。このビジネスユースでなく、ホームユースにとなると、昔のほうが明らかに多かったように思う。クリスマスツリーを飾らなくても、ライトアップならぬイルミネーションを楽しむ方向にクリスマスが変わってきたのはなんとも残念なことだが、しかしこれも世の常。いつか必ず多様化の中でクリスマスツリーが一定の割合を占めていくものと思われる。クリスマスツリーの足元にプレゼントを置いておく、そしてプレゼントを交換しあう。クリスマスを楽しんだ後、今度はお正月。おせち料理とお年玉へと続く。この一家団欒こそ、花が家庭需要で使われる条件である。ツリーとポインセチア、まだ飾っていない読者の皆様は、ぜひとも早速花屋さんへ行ってください。

投稿者 磯村信夫 : 15:50

2006年11月13日

要は心の持ちよう・改革・イノベーション

 相場を扱っていると認識や意識の違いによって流れが大きく変わることを経験する。コップの水を半分しかなくなったと思うのか、まだ半分あると思うのか、それによって試合の流れに相当する時の機運が違ってくるのだ。
 今年のオランダの市場は2ケタ成長している。青果の東京青果さんより大きな売上を持つオランダの2つの花市場はいずれも9月までで10数%増の取り扱いだ。1995年から10年間、投資や合併を繰り返しながら売上微増を辛抱してきた。一定規模以上の生産者から構成される生産組合、一社で日本のその品目(例えば菊、バラ、ポインセチアなど)の何分の1を生産する大規模海外生産者、そして大規模流通会社。小売店向けのキャッシュ&キャリー。このようにサプライチェーンがいずれも一定規模以上であるから、意志が徹底され、作戦がムダなく遂行される。2004年EUが旧東ヨーロッパまで拡大し、二ヶ年間デフレが先行したが、昨年末より景気はじわじわ上げてきている。今期、花もしっかり上向いてきた。さすが5億人以上を消費ターゲットにするオランダの市場は、耐えるときは耐え、打って出るときは果敢に打って出て、グローバリゼーションに的確に対応し、これを絶好のチャンスだとして生かしている。そしてこれが2008年1月、アルスメール市場とオランダ花市場の合併発表となった。
 さて、どのようにこのグローバリゼーションを見るか、オランダの花き業界は「変化はチャンス」と見ようとしている。日本も同様に見るべきだろう。では、どのようなチャンスかというと、?消費者にとっての利便性は??自社の有り様、自分の属している業界の有り様は今のままで良いのか、どのように変えるべきか??自分の取り扱うものやサービスのチェーンの中で、最適なサプライチェーンはどんなものか??そのとき自社は何をなすべきか?チャンスは4つの問いにある。
 消費者は一人一人、あるいは一家庭である。例えばホームユース需要なら、専門の小売店は地域に密着して、人口相応の店舗数がなければならない。また結婚式や葬式をつかさどる儀式の場所はそれよりもずっと少なくて良い。学校で言うと、義務教育の小中学校の数と同じ数だけ花のホームユース用花店があればよいし、高校と同じ数だけ葬儀場があれば良い。そして大学と同じ数だけ、結婚式場があれば良いと、こういう勘定になる。
 生産サイドは一定の規模拡大が必要だ。農協の花き部会とか、○○出荷組合などと、少なくても出荷団体としての規模拡大は必要になる。小売店やできれば消費者にまでも、その生産者名を、あるいは生産地域を知ってもらう必要があるからだ。そうでないとブランド化は図れない。ブランド化が図れなければ価格競争をしなければならない。「良いもの安く」競争だ。これを日本人はどこまでできるか、移民を決意しなければならないのか。茨城のトルコ生産者のように思い切って海外に出て行くのか。オランダのバラ作りはそうしている。
 さて今日は「日本ばら切花協会創立50周年記念大会」が東京で開催される。多様化の代表とも言えるバラ切花は、現在5本に1本が輸入品である。まだまだ輸入品が増えると言われている。今後をどう読むのか、そして多様化の中でどこまで国産のシェアを保つことができるか、それは健全な精神をばら切花協会の会員がしかと持つところからすべてがはじまるのである。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2006年11月 6日

オランダHorti Fairの花の傾向

 1960年代のファッションを再現している。これも事実だが、女性が身に付ける光り物やベルト、あるいは上着を見ていると、パンクロックならぬ、もう少しハードでセクシーなものも良く売れていて、一つの基調になっている。また女性のハンドバッグを見ても、この基調プラス産業革命以前の色調や、もっと言うとなんとなく中世の感じがするものに人気が集まっている。
 今度のオランダHorti Fairに行くのに、昔のオーストリア・ハンガリー帝国のウィーンから入ったので、なるほど数年前から気を吐いているウィーン・デザインがなぜもてはやされているのか、色使いや形などよく理解できた。これらと同じ上記三つの傾向がオランダのHorti Fairで先端的な動きとして見ることができる。特に染物や蝋人形ならぬ蝋で加工したバラ、日本でも紹介されたらしいがアールスメール市場の染物専門業社が開発したレインボーローズ、ますます自然に反する、自然を征服して私たちの都合のいいように色付けしたり、加工したりした花の比率が高まっているのが目に付く。プリザーブドフラワーは生の花と変わらないから不人気で、加工するならもっとはっきりした自然界にはない色合いを出さなければならない。映画を見ても、洋服を見ていても、シンプルではないものに関心が移ってきているのがよくわかる。花も同様である。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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