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2006年12月25日

評価眼

 今日は新しい花の評価についてお話したい。花もご多分にもれず、成熟産業となった。情報産業やIT産業であっても売上のピークは2000年前後で、2005年はそれより落ち込んでいる。国内マーケットはどの業界も大変だ。だから花産業は毎年2000に近い新品種を出して、消費を刺激しようとしているがなかなかうまくいかない。日本における花き消費を見ると成熟化しているととれる。消費が成長期にあった1970年代?80年代は珍しいものがセリに出ると、どのようにその花を水揚げしたら良いのか、何日もつのか、あるいは水やりや手入れの仕方などわからなくても、買参人は先を競って買っていた。それがどうだろう。バブルが崩壊してからというもの、新しいものに対してセリ場では普通のものと同じか、場合によっては安いということが起きてきた。知られていないから安いのか。そこで卸会社はショーケースに飾ったりして、この品種はこういうものですよと知ってもらおうと、いわゆるPRをここ10年以上している。しかし、セリ場ではよく名の通った品種が売れ、新品種が安いということが繰り返されている。例えば、黄色のフリージアではアラジンが、白バラではティネケがまだ流通している。この古い品種に指名買いがあるのは日本だけではないだろうか。では、バブル経済が崩壊したので小売店が新しい品種を評価できなくなったのかというと、経済の理由だけではなく、人材の若返り、つまり番頭さんや後継者がセリ場にきていないことにもその理由がある。僕は大森の町工場の中で育ったから、今でも元気な町工場はどういうところか解かる。社長がいて、番頭さんがいる。10歳か15歳くらい若い。社長さんが得意とするものプラス、番頭さんがこれはいけそうだというものを作っている。そこに息子が入る。息子はしばらくすると若い感性で今の流行のものをとらえて作ろうとする。天才的にできる親父がいて、時代を乗り越えて、いいものを作っている人もいるが、一般的には会社にもさまざまな年代の人がいて、それぞれが会社を盛り立てる。その構造が花屋さんにない。今人気の花は30歳代の働く女性が決めているから、その人たちをお客さんにしている花店は新しい花を評価するがそうでない花店も多い。どちらかというと評価眼を持つ花店は仲卸を利用することが多い。仲卸の社員は若く、感性も磨かれているので仲卸が小売店を代弁するようになってきた。そして仲卸の店頭で新しい花が小売店とデザイナーなどの買出人によって評価される。そういう時代に花はなってきた。産地もフェアーをするとき、セリ場での挨拶と、セリ場上での商品展示が今まで定番だったが、この頃仲卸さんの店頭で販促活動をするようになった。評価をする場所は少なくとも大田市場の場合、仲卸通りが評価の場所とここ10年で変わってきた。

成熟した国家はいずれもそうで、「あなたの欲しいものはこれでしょう」と現物を見せて、評価してもらうしかないのである。

今年は今回で最後です。一年間毎週目を通していただき、大変ありがとうございました。
来年も宜しくお願い致します。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2006年12月18日

花は経済のバロメーター

今日18日(月)のセリ前、「FLOWER OF THE YEAR OTA2006」の表彰式が行なわれた。消費者の心をとらえた花であることは言うまでもないが、日本語が世界語になった「かわいい」であらわれるエレガントな中にも愛情をにじませる健康的な美しさや、健康・環境への価値観を体現した30歳代の女性が好む花が各シーズンのグランプリとなった。詳しくはHPを参照下さい。

さて今日はもう一つ、景気動向が非常に敏感に花の消費に影響を与えはじめたと思われるので、その実態をお話ししたい。昨年、よく地方の花市場の社長が「東京は景気が良くなってきたので、もうそろそろうちの方も良くなるはずだ。一年遅れるか一年半遅れで良くなるだろう」というので、僕は率直で失礼だが、「それは昔の話で今はそうではないのでは」と話した。今は基本的に経済の動向が変わり、人口動態も変わっているから、今までの経験が通用しない。10月から実感として景気が下向きだ。アメリカの景気減速、ユーロ圏の景気減速で来年の9月くらいまで企業のセクターは今までよりも良くない。しかし日本の個人消費セクターはわずかだが失業率が改善され、所得も向上してきた。団塊の世代のリタイアに合わせ、品質重視の消費性向は益々高まっていくだろう。
さて今言った経済そのもののパイの縮小を意味する少子高齢化の中で、食と住の産業はかなり再編が進んできた。花も当然、その中に組み込まれてゆくが、花の小売店舗は小料理屋と同様、チェーン展開しなくてもやっていけるし、また私生活ではそういう家族付き合いができる花屋の需要はしっかりあるので、そうは簡単に小売業、そして花の問屋の流通再編にはならない。しかし10月からの日々の取引の中で垣間見ることができる取引から見た経済はこうだ。

昨日の苔松・苔梅はよく売れた。会社の受付や料理屋などに飾る高級品の需要は昨年よりも強い。特に飲食店は花飾りに前向きだ。しかし、門松は減だ。正月休みのときに会社に福をもたらせるといっても、コストからして省いてもよいと合理的に判断している。お金の使い方はより個人と家族の絆へ使うべきだと会社の役員と総務も考えている。そういった価値観の流れであろう。10月から今まで油をたかなくてもよい時期に出荷しようとする人たちが多かった。これが例年の天候なら需要は秋・冬物が売れるからそれで良いが、今年は暖冬だから消費者はその気にならない。よって今は安くしても売れる時代ではないので、価格はストックやスナップ、スイートピーを中心に続落し、カスミソウのようにケニア産に足を引っ張られる格好で、出荷しても手取りがほとんど残らない結果となった。これは仕事需要が少なかったことと、個人需要が堅調だといっても欲しいものが許容範囲の値段じゃないと売れないことを示している。スタンダードタイプで花が大きい、咲き方がフリンジ咲きやらカップ咲き、野菜や果物のおもしろい形の実物、あるいは実付花木のように、たくさんあっても飛ぶように売れていくものがあり、また昔覚えた僕の相場観の3分の1や4分の1で取引されているものものある。このように時代は変わった。以前よりも前向きにはなったが、かつての前向きの伸び率とは全然違う。今流行りの言葉の“リセット”と同じように、リセットはシクラメン生産者だけでなく、生産流通業者に特に求められている。足元では従来通り仏花でも良いが、供給するものの狙いは「FLOWER OF THE YEAR OTA 2006」が示すように30歳代の女性の価値観に置くのが良いだろう。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2006年12月11日

ただ今採花日に関心

このところセリをよく見ている。新しくセリデビューした3人の上達具合に関心を持ちながら見ているのだが、もう一つは営業本部内で取引所ビジネスをきちんと行なおうとする原点回帰の運動で新たな執行体制がしかれたからだ。取引所の運営はもちろんセリがメインだが、荷物を買い手に引き渡すところまでが責任の範囲だ。その意味で従来の商流だけの責任ではないところが改善のポイントだ。

さてセリを見ているとバラなどは本当に湿式輸送のものが多くなった。だからもう湿式だから値段が張るということはなくなって、買い手の関心はもう一度どんな作り方をしているか、その産地のブランドに変わってきている。赤バラでいつも高値を取る産地は湿式ではない。残念ながらインド産のバラは湿式にしているところが多いが、安値に泣いている。カスミソウもそうだが全体の品質が上がり、湿式か乾式かということはもう買い手にとって際立った関心事ではなくなったということだろう。現在の買い手の関心事はいつ切ったかという採花日に移ってきた。例えば、上海や中国の海南島から来ている「神馬」は船便である。今朝もそうだが、先月の26日に切ったものと29日に切ったものの2つがあった。ちゃんと箱に書いてある。26日のものはちょっと咲いていた。外国のもので採花日が書いてある海南島の出荷者のものは大変信用できると買い手は言っていた。セリ機に表示して売るわけにはいかないし、送り状にも採花日について書かれていないから、知ることができるのは現場で夜らしい。だとすれば送り状にきちんと書いてそのように取引をするべきではないか。この11月、アルスメール市場の花保ち試験室で見たケニアのバラは船便で温度コントロールをしっかりして送られてきたものだという。「21日かかったけれど、飛行機便のものよりも良いかもしれません」と花保ち試験室の職員は言っていた。インフラが整っていれば、また適切な指示があれば20日以上経っていても大丈夫なのであろう。科学の進歩、あるいはイノベーションというものはそういうものだ。しかしインフラの整備がオランダのようにはまだできていないASEAN+3との間の花の物流、あるいは中南米からの花の輸送、これを考えるとき、どこまで花の生命力を一見の外観で判断することができようか。それができなかったので再度水揚げしたにもかかわらず、インドのバラは現在流通しているバラの中では最も安い価格になっている。ケニアやエチオピア、コロンビアやエクアドルものも、咲くか咲かないかが品種やシーズンによって異なるのである。これを明確に買い手に情報伝達していかないと、せっかくリパックあるいは水揚げして評価が出ないことになってしまう。今、湿式や水揚げしたものに無関心なのは、今までの情報伝達の仕方が問題だと思うのである。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2006年12月 4日

暮れの準備

12月に入り、ようやく寒くなってムードが盛り上がってきた。売る方の私たちは11月の月中から入れ込んでいたが、昨年は寒波が早々と襲来したので売り手と買い手の息はぴったり合った。今年は暖冬だから12月に入りようやくというより、例年通り12月から買い手もその気になってきた。

今年の曜日回りから、もう12月の最終週の納品分については注文を受けきれないなど、スペース上、人手の上からもむずかしくなっているようだ。特に今年は人手が久しぶりに足りない。今後の一つの基調になっていくだろう。

駐車禁止から、大手宅配業者は運転手以外にもう一人、人をつけている。体力のないトラック会社は油高で収支合わせが大変で、運転手さんへ十分な手当てが支給できないでいる。だからトラックの台数はあるが、運転手がいない。こういった状況に今年はなっている。そうなると搬入も搬出も極端なピークは無理で、なだらかな山にせざるを得ない。余分にお金を出すというのであればともかく、価格据え置きとなると要望に応えることがなかなかできにくいとトラック会社は言う。

労働分配率を運送業界は世間と比べて下げたままだったので、人手不足に泣いている。花き業界はいかがであろうか。賃金水準を見ていてかなりばらつきがあるが、総じて人が資本の割には割安ではないだろうか。

以上見てきたように、今年の暮れが以前と異なるのは、人手が不足している点だ。よってどのように合理的に消費者に荷を届けるかを考えなければならない。そうすると、切花も鉢物も29日までだらだら引っ張るということになる。また実際の業務を進めていく上で、商流の打ち合わせはもちろんだが、物流の打ち合わせをトラック会社とよくしておく必要がある。もう一度繰り返すが、都内にある三つの共同荷受け所はいずれも10・11月、何年かぶりに前年の取扱量を上回った。それは油をたかなくても良い時期に出荷したいという荷主、生産者の意向で、10・11月の量が増えたこともあるが、それプラス運転手の手配がつかず、産地は市場への直送をやめて、荷受け所経由とするところが多くあったということだ。物流は我々花き業界にとって生産や品揃えに、勝るとも劣らない大切な機能だ。ジャストインタイムに物流させるにはどうしたら良いのか。それぞれ取引先と入念に打ち合わせをして欲しいと思う。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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