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2007年2月26日

円安で困る花き業界

今日のセリ場はスタート時から盛況であった。ひなまつり・晦日の仏花需要・高校の卒業式・週末のウェディングの需要が重なって春本番の様相を呈している。
 相場商売をしていると、日々変化がありそれだけでも十二分におもしろく、あっという間に一年が過ぎてしまう。しかしそれではよい仕事ができないので、どうにかコツコツ積み重ね、新しい仕事の形を作ろうとしている。
 
 話は横道にそれるが、国立博物館平成館で、昨日閉幕した中国国家博物館名品展は、何千年もの歴史を経た美の存在感が心に染み渡り、一種の恍惚感をもたらして、観るものを寡黙にさせた。これら美術品は都合不都合をあきらかに乗り越えている。
日頃の仕事の中では、時(の都合不都合)の意見と分かれることがある。
例えば経済諮問会議で検討されている医療改革や農業改革は、時代の都合不都合を言っている。来るべき時代の都合不都合を考慮し、国民の安寧秩序に資するため、全体最適を図ろうとする。一方業界は、国の一つの構成員であり、供給者でもあるので、時代の都合と相反することもあろうし、業界の中の一企業とすれば正に変わることは面倒な、不都合なことと捕らえられても致し方ない。
 都合不都合には、美術の世界でもよくあって、例えば近代絵画の画家などは、グッケンハイム家がいなかったら、どんなことになっていたか。生前は貧乏で、亡くなってからその絵が高値で取引されることになっていたに違いない。

 今、日銀は利上げをしても、日本国の国債・地方債の利払いや中小零細企業の経営悪化などから、ヨーロッパ並の金利になることはまだ先のことだとされている。聞いた話だが、スペインやセルビアで住宅ローンを組むとき、為替リスクがあるにも拘わらず、円建てサムライ債で住宅ローンを組むことが実際にあるらしい。
 このような状況だと我々卸は、円安で輸入商社の苦労を知る必要があり、再度輸入花の価格設定について練り直ししていかないと、質的にも量的にも消費者を満足させることができなくなるのではないかと思う。
 
 日本は暖冬気味で、開花が前進している。コロンビアやエクアドルは寒波で、一体全体赤道直下でコートがいる日などというのはあるのだろうか。本当に異常気象は恐ろしい。
そうなるとお彼岸の荷物が困る。消費者は花のことを既によく知っているから、いくら品物が足りないと言っても、消費者の持つ値ごろ感の許容範囲であれば
「高いわね」
「今年はこういう訳ですから」
とコミュニケーションすることによって花は買ってもらえる。しかし許容範囲を超えるシンギュラーポイントを抜けてしまうと、途端にいらなくなる。
これが成熟産業である花きの実態ではないか。国内生産者と同様、花の専門商社の人と卸・仲卸が緊密に連絡をとっていく必要がある。そうでないと、商品のパイを減らしてしまうことが予想されるからだ。
そして更に、輸入商社の方々と国内の主要産地は、共に日本国民へ花を供給するという同じ立場でコミュニケーションの場を持つべきである。
 同業者同士の話し合いをもつことも、時代の要請ではなかろうか。

投稿者 磯村信夫 : 12:31

2007年2月19日

東京マラソンで花プレゼント

伊豆太陽農協からいただいた大田市場の河津桜は見頃を迎えている。流通センターのところにある雪柳も早々と咲き始めてきた。なんと早いことだろう。今日の市場の荷姿を見ているとすっかり3月のお節句後の荷姿だ。春の草花が多く、季節の先取りでうれしいところだが、消費者はひなまつり用の桃を欲しがっているからちょっと需給のミスマッチがある。

さて昨日は東京マラソンであった。都内の花の関係者で作る東京都花き振興協議会という組織がある。5つの中央卸売市場花き部に多摩地域を加え、そこを利用する小売店・仲卸・卸が集まって会を構成している。生産者は参加していないが、まさに東京都内花関係者が一本化した組織である。この組織は花き業界のアンカーである小売店から会長が選出される。今期は葛西市場花き部から選出された天田会長が急逝されたので、例外的に葛西の仲卸の大矢さんが会長に就任なさった。その大矢会長のもと、何か消費宣伝活動をしたいと話し合いが持たれていたが、企画部会長のフローレ21小池社長(世田谷市場・大田市場の仲卸)のもと東京マラソンで女性の完走者6000人に花束をプレゼントしよう、男子・女子・車椅子の3部門の上位8名に花のレイをプレゼントしよう、となった。海外の市民マラソンでゴール近くにはワゴンの花店が出て、そこで完走したお父さんに花をプレゼントする、恋人に花をプレゼントする。将来こういった市民マラソンと花束プレゼントを日本でも一つの習慣にしようと振興協議会で取り組んだ。フローレ21の小池社長が花き振興協議会の企画部会長、プロジェクトのリーダーだ。そのもとに大矢会長や葛西市場の三島理事長(小売)が積極的に関わり、東京中の花店の代表と仲卸の代表、卸から派遣された社員たち、それに東京都花き市場協同組合の職員の人たちが加わって、16・17日の東京ドームでのプレイベント、17日のフローレ21作業場での花束加工やレイ作り、そして昨日本番でのプレゼントや表彰式の立会いを、まさに東京中の花き関係者が協力して行なった。特に17日のスイートピー、ガーベラ、カーネーションの花束作りでは、フローレ21さんの指示も適確であったが、一致団結の協力具合も素晴らしく、予定よりも2時間早く出来上がった。

産地や輸入商からも素晴らしい花を協賛いただき、本当にありがとうございました。

P.S.
より詳しくは株式会社セロンの芹沢社長が振興協議会のカメラマンとして良い写真をお撮りになっていらっしゃいましたので、株式会社セロンのHPへ。
また東京ドームでのプレイベントの様子は弊社のHPでも見ることができます。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2007年2月12日

2009年以降へ向けてのルール作り

どのようにサプライチェーンを効率的に作っていくか、その話になると川上の産地から需要家に向けて直接物流させる方法と、消費地の配送センターにすべて持ってきて、そこから分ける方法の2つを併用していくことになる。花と青果の卸売市場はほとんど消費地にあるので、農協や全農の流通センターと協力して物流コストが下がるサプライチェーンを作っていく必要がある。

経済合理性から、また農水省が目標としている物流コスト20%削減の目標達成のために、産地での仕向け先調整を消費地の卸が行なうとすると商物分離取引になり市場法で例外取引とされる。すべてを一度消費地に持ってきて、そこからまた再配分するとなるとコストがかかりすぎてしまうことがある。そのコストは結局消費者が負わなければならない。消費者にそれを負わせたくない小売業者は卸売市場以外で買うようになる。商物分離をどのように一般化させていくか次の差し迫った課題がここにある。

また卸売市場で一定の条件下で受託拒否を行うことが出来ないのは日本だけであるから、受託品として上場するための条件を決める必要がある。

さらに海外の卸売市場では、入数の違いや送り状の違いがあったときにその訂正のために卸売業者はコストがかかるから、ペナルティーを科するのが一般的である。一回目のミスは仕方ないので注意、二回目からは一件につき10ドルや10ユーロだとか、送り状を決められたコンピューターの様式で時間までに送ってこないところは一行に3ドルや3ユーロだとか、ペナルティーを科している。取引所の使用手数料以外にこのような形でペナルティーが細かに決められており、出荷者や買い手はルールに則った運営を行なっている。

日本でも時代が動き、相対取引が販売額においてはセリよりも多くなっていると聞く。さらに卸の買付販売も認められるようになり、卸の業務は問屋業にもっとも近くなってきた。花の場合、開設者が中央卸売市場から地方卸売市場へと転換を予定しているところも少なからずある。2009年の手数料自由化後も規制緩和とともに新たなルールを作り上げていく必要がある。この場合の規制とはペナルティーを伴った新たなルールのことである。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2007年2月 5日

規制緩和の理由

 政府の規制改革会議は毎週300程の案件を俎上に乗せている。
皆さんはウィンブルドン現象と言うのをご存知だろうか。ウィンブルドンではイギリス人以外の人たちが活躍しているが、それを運営し世界に発信しているのはイギリスの人たちだ。すなわちプレイヤーは違うがイギリスが稼いでいるのである。この規制緩和に伴うウィンブルドン現象がもうかれこれ10年以上もイギリスの経済成長に貢献している。前年よりも絶えず伸びているのである。このウィンブルドン現象は中国の経済成長の一因でもある。外資や合弁を入れ、成長してきているのだ。とすると、少子高齢化で生産人口が減るとされる日本において、どのように国力を保ち発展させていくか。

その答えの一つが外国のプレイヤーたちが日本に投資を入れてくれることだ。そしてもう一つは、日本の工業の物つくりの力は国際競争力が高い。他に我々市場のサービス業や農業の生産性は韓国よりも劣るとされているが、この生産性をあげていくことだ。この2つを行うことによって移民を促したりしなくてもやっていける。このように政府は考えているわけだ。だから海外からの投資が得られるよう、国際的なルールに則った透明感のある会社の財務諸表やJ-SOX法による内部統制、そして外資による三角合併などのルール化を急いでいるし、花の卸売会社の手数料自由化の問題なども話し合われている。いずれも参入障壁を低くし、利便性を高めようとするものだ。確かに日本のインターネット網や現在行なわれている携帯電話競争はカスタマーベネフィットをもたらし、生活の質を高めるものである。規制改革は優勝劣敗となり、並行してセーフティーネットを作るためには税負担が必要となる。企業が税負担するのか、個人が税負担するのか、それはチョムスキーが言っているように、企業は国際人であり、ケイマン島などに握らされてはたまらないから、個人負担するという構造が良いであろう。

友人のドイツ人から電話があって、日本の花が花束にしてもアレンジメントにしても同じ5%の消費税であることにビックリしていた。形状によって、付加価値によって、税が異なるのが嗜好品の花では当たり前なのに、その点だけを見ると日本の花き業界は恵まれている。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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