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2007年6月11日

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生産者にしても花の小売店にしても、後継者問題は花き業界全体の重要問題である。戦中派や団塊の世代に生まれた人たちは当然、長男であれば親の後を継ぐものだとして後を継ぎ、現在花き業界を盛り立てている。しかし後継者のことになるとこのようなことが今起きている。いずれも社長は戦中派と団塊の世代の人で、65歳になったら働きたくないのだろう。

「私の代で前の仕事に加え、花店とチェーン店のコーヒー屋もやっているのです。花店で都合3店舗、全部で小売を5店舗やっているのですが、そろそろリタイヤをしようと思いましてね、息子は違う仕事していて後を継がないといいますし、どうでしょう誰か良い人がいたら紹介して下さい。」

とある仲卸の社長は、「大学時代の友人は定年の時期になった。大田市場が開場して15年、自分なりに一生懸命やって来たし、ご覧のとおり不良債権もない。だから社長、誰かここをやってくれる人いませんかね?自分は大学時代の友人と同じように一度リタイヤして、違った人生を歩んでいきたいと思うのです。」

とある駅前立地で土地をそのスーパーマーケットに貸しているいい角店の花店の社長は、「一億以上売ってやろうと頑張ってやってきました。でも60以上にもなって、女房にも楽をさせたいし、子どもは女ばかりで嫁いで幸せにやっているし、誰かここの後をきちんとやってくれる人はいませんかね?」

小売店2店と仲卸、この3社はいずれも繁盛店で、後継者探しをというより、リタイヤを考えて会社を売りたい、こういう考えの経営者が花の流通業に出てきたわけだ。とある仲卸は後継者がいない花店をチェーン化して準社員として使い、一部固定給、一部歩合給にして品物は自分のところから取ってもらう、そういうフランチャイズチェーン、フランチャイズというよりそれぞれの店は同じ看板を掲げただけで統一化されていないから、ボランタリーチェーンの本部のような役割を担っている仲卸に変わっているところもある。日本の世の中全体がサラリーマン化してきたといえばそういうことなのかもしれないが、しかし花の小売業界の中には、このようなことがかなり起きているのではないか。とすると、卸としてこの花店の後継者づくりや新しいやる気のある若者に店を買ってもらうことなど、なんらかのお手伝いをすべきではないか。花店の数が少なくなることは決して花き業界にとって良いことではない。


このようなことは当然産地においても起こっている。千葉の千倉や白浜などはお父さんが働きに行っている、お母さんがパートアルバイト感覚で花を作っている。こういった房州の「お母ちゃんの伝統」があったわけだが、それも団塊の世代まで、少なくても40歳代の奥様は花つくりを選ばず、館山にパートに行く。その方が安気だという。それだから生産量が急速に減ってしまっているのである。日本中各所でこういった現況があり、我々は後継ぎがしっかりいる地域へ足しげく通わざるを得ない状況になっている。生涯現役、それが農業の良さでもあるが、しかし嗜好性が高い消費財としての花、これをやってもらうにはどうしても時代に先がけた美意識が必要だ。大田花きにいる限り、毎年5名以上の後継者を研修生として預かり、いっしょに現場作業をしているので、あたかも後継者問題はないと感じてしまうが、実際産地に行ってみると団塊の世代のその次、ここがあまりにも少ないのに唖然とする。小売流通業界にしても、花き生産業界にしても、花の卸売会社として本腰を入れて後継者つくりの手伝いをしなければならないと決心した次第である。

投稿者 磯村信夫 : 2007年6月11日 00:00

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