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2007年7月30日

個人消費をどのように活発化させるか

今、日本では貯蓄を取り崩して生活している家庭が少なくない。現に4世帯に1世帯は貯蓄が何もない。だから当初予測していたのは、企業にお金がまわり、個人にも一定のお金がまわったこの7月のボーナス期、個人消費が活発化するというもの。しかし実際は減った貯蓄を元に戻そうと今は定期預金ではなくいろいろなお金の預け方で各家庭は今後に備えようとした。今後に備えるというのはなんと言っても将来不安だ。グローバリゼーションへの不安感、そしてもちろん年金の問題もあろう。

ヨーロッパにしてもアメリカにしても、60年代から70年代、そして80年代と日本が世界で第2位のGDPを稼ぎ出すようになった過程でいずれも今日本人が感じている新興勢力の競争力の強さに対して自分たちがどのように生きて行けば良いのか、その解決施策を実行してきた。一つは自由貿易体制をさらに推し進め、豊かでない人にも良くて安い海外のモノやサービスを提供することによって苦痛のないようにすること。そしてもう一つが教育に力を入れることである。アメリカ合衆国にしても、EUにしても、ステイツ(地域国家)のまとまった国や地域だから、いずれも陸続きで貿易に関しては経験上、自由化も実行されやすい。アメリカでは確かに性分とも言えるモンロー主義があり、貿易摩擦は絶えなかったわけだが、しかし結局自由貿易主義を実行し、世界をけん引していった。日本にこの政策が当てはまるかというと当然そうせざるを得ないわけだが、日本の国民を説得するのはなかなか骨が折れそうだ。これはちょうどイギリスのサッチャー政権以前、イギリス人を説得するのに大変骨が折れ、結局イギリスは第一次世界大戦から1980年までGDPは縮小均衡を極め、イギリス病といわれるまで競争力の弱い国になってしまったのと同じである。かつての大英帝国も島国ゆえに国民はなかなか説得されにくかった。

消費活動は今、日本の経済において最も重要なポジションをしめている。将来不安の一つである年金問題は、自助努力によって解決できるので行なわれるが、グローバリゼーションと自由貿易体制の堅持は都合不都合を乗り越えて行っていくべきものなので、現時点では政局のより戻しも相まって、日本人が覚悟を決めてこちらの方向に進むと決心するのは、実際にASEAN統合とアジア自由貿易体制が整い、実行され始めてからになる可能性がある。安定した個人消費は具体的に年金問題を解決し、グローバリゼーションあるいは海外の会社のもたらす富が国内循環したときに行なわれるだろう。実際に起こってみて体験し、それらの将来不安が取り除かれてはじめて、衣食住以外の花きなど嗜好品の個人消費が活発になると思われる。それまで花の個人消費の厳しさが続くと見るがよいのではないだろうか。消費全般について日本国民は厳しい見方をしていると思われる。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2007年7月23日

大山講

89年前の今日23日は米騒動があった日。米騒動から近代の卸売市場での取引が規定された。セリと入札の原則、現物を見せ公開の席で取引すること、これが商物一致の原則である。1999年、そして2004年の卸売市場法改訂でセリと入札、プラス相対取引を正式な取引と認め、卸売会社の買付を許可し、そして一部だがITを使った商物分離を認めた。このように卸売市場は取引所としての重要性もさることながら、その地域の生鮮食料品花きの物流デポとしての色彩を強めて来た。

先週の19日、大山講を行なった。丹沢山系にある大山は丹沢の中で最も相模湾寄りに位置し、「雨降り神社」である阿夫利神社で、農業の神であり同様に漁師は魚場を確認するため大山を一つの目印としたので漁師たちからも信仰を集めた。うちの先導師は織部さんだが、そこは神田市場の流れを継ぐ東青卸と同じ先導師だ。参道には魚や青果市場の講の名前が刻まれた石づつみを見ることができる。豊作と安寧秩序を願い、講を作り参拝して来たわけだが、江戸時代から続くこの大山講の時間軸で卸売市場を思うとき、いかに便利な世の中になろうとも、日本が少子高齢化になろうとも、卸売市場が流通の中で重要な地域のインフラストラクチャーであることを痛感し、身の引き締まる想いであった。

それと同様に身の引き締まる想いをしたのが21日土曜日。花き部では最後の中央卸売市場開場となるであろう新潟県新花の開場記念バーティーで轡田社長や玉木副社長の挨拶を聞いたときであった。新潟に本来そうあるべき大規模な花の中央卸売市場ができたことは新潟県民のみならず我々市場流通関係者にとってもありがたきことだと強く思った。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2007年7月16日

もう一度環境問題を考える

昨日、地元のスーパーに買い物に行ったら、自前の買い物袋を持っている人も結構いて、環境問題への意識が高まっていることがわかる。近くのワンルームマンションの外にゴミ置き場があるが、分別しそこないのものをあえて清掃局の係官は持っていかないのでいつまでも整理整頓されていない。管理人のいるところでは管理人が指導するのだろうが、大森近辺のようにワンルームマンションが多いところも困ったことだ。

先週の迎え火の日に、娘と娘の子どもたちと一緒に母のところへ行った。キリスト教の幼稚園なので、盂蘭盆会のことを教えたがどうも怪訝そうな顔で理解ができたかどうか。しかしそんな子どもたちもなんとなく地球温暖化のことはわかっているらしい。それは団塊の世代のヤングママたちが子どもたちのアトピーが普通のこともあって環境問題は結構関心が高いからだ。

だが、その知識もマスコミの受け売りが多いのが残念で、例えば北極海の氷が溶けたら本当に海水が上がると思っているから恐ろしい。学校時代にアルキメデスの原理を勉強したはずだから、北極海の氷が溶けても水面が上がらないことを知っているだろうに、オランダが環境問題に一所懸命なのは自分の国が水没しそうだからで、大森界隈は危ないのではと思っているらしい。もともと水だったものが氷になって浮くわけだから、氷は水より軽いわけだ。だから溶けたって同じ水面になるだけだ。それは水割りを飲んでいるからアルキメデスの法則など出さずとも僕は実感でわかる。南極は陸地で氷が張っているから温暖化で氷が溶け出すという人もいれば、むしろ冷蔵庫の霜は開けたり閉めたりして温かくなるとつくので、氷の面積が大きくなるというのが科学上の常識だ。

オランダ人たちとこの辺をよく議論するが、CO2にしても日本の場合は割り箸や楊枝にしても、あるいはクリスマスツリーにしても、森や木を育てるためには光を多く入れる必要があるから、間伐し伐採して手を入れなければいけないのは自明である。ワンガリ・マータイさんが言う通り、外来の木ではなく、その地に生えている木を植林することが森を作る上でふさわしいが、それとてもきちっと間伐し、枝を落として手を入れなければならないのは言うまでもない。日本は70%以上も森林だが、若い森はCO2を吸収するが、年を取った森はすでにCO2を吸収しないし、朽ちていけば当然CO2を出すことになる。だから一方的なコマーシャルベースで展開されているグリーン購買やリサイクル活動など、本当にそうなのかもう一度しっかり考えてみる必要がある。思い込みと、極端な判断は要注意だ。

2002年までにコロンビアの首都ボコタにあったカーネーションのハウスは標高を上げて2500mに移した。地球が暖かくなっているからだ。長野県の伊那谷でカーネーションを出荷している人たちは「俺たちは愛知と同じ時期に出荷した方が良いものができる」と言っていたが、北海道でも寒くて今まで出荷時期が限られていたのに出荷時期が延びたり、他の品目を作ってみたりと、北海道、東北では温暖化をプラスに考えている産地も多い。今の地球の平均気温は15℃、地球の氷河期でも10℃くらいあったわけだから、地球上の生物は歴史上暑いほうが得意なのだ。そう考えてみると暑くて眠れずぐったりしてしまうが、さりとてもう一度温暖化や環境の問題、経済成長の問題、石油資源の問題をしっかり考える時期に来ている。マスコミを盲信するのではなく、もう一度自分なりに環境問題を考えて生活することが花を扱う我々にとってどうしても必要だと思う。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2007年7月 9日

研修

 欧米では7月7日で、催しやパーティーが多く、結構花が動いたようだ。日本では七夕とミルキーウェイでカスミソウの日である。カスミソウは大田市場でもセリ室上の通路、仲卸の中央花卉さんのところでフェアを行い、人気を博した。繰り返しやることによって認知度が上がってくるだろう。七夕の笹はどのように売っていくか悩ましいところだ。葉が瑞々しいままのものはビニールで包んで品質を保っているが、今はもう床がビチャビチャな花屋さんは少ないから横に寝かせて打水をするわけにはいかない。どうしても店頭に笹を置くと笹の葉が丸まってしまう。とある素敵な花屋さんの店員さんは「品物が悪いから売れない」と笹を下げてしまう。解決策は葉の瑞々しいものの値段とこのように葉が丸まってしまったものの値段を別々に付ける。そして店の前には短冊をつけて笹を飾っておく。当然この笹は葉がもう丸まってしまっている。だから葉が丸まってしまったものを商品として売っても良いのだ。七夕の前、とあるお店で素晴らしい七夕のアレンジメントを見た。皆様方はひなまつりのアレンジメントはご存知だろうか。お内裏様とお雛様を一つずつ、ガーベラやら何かそのような花を顔に見立てて、葉物とラッピングペーパーで上手に包み、それを2つ合わせて飾ってもらうのだ。これと同じように織姫と彦星を一つずつ作る。ミソは笹葉ルスカスだ。イタリアンルスカスをサッと入れて小さな短冊をしつらえる。これで出来上がり。季節を楽しむ、今風に焼きなおしたアレンジだ。「これはご自分でお考えになったのですか」と聞くと、「本社の企画室で計画し、全体のイメージをもらったのです」と言っていた。今、“工夫”、要するに“知恵”をどう出すかという時代になってきているから、その“知恵”を生み出す基礎学力だ。基礎の上に知恵が花開く確率が当然高いからだ。採用もそうであろう。そして今花き業界で必要なのは研修である。勉強会に行くことも重要であろう。また社内で研修することもとても大切だと思う。とある大手商社だが、バブル崩壊後、義理の弟が休みのたびに研修をしていた意味がようやくわかった。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2007年7月 2日

“Unbowed”へこたれない

第一四半期が終わった。切花では昨年と全く反対の展開、今年は4月が良く、母の日前から値崩れが始まり、6月は住民税の支払いなどもあり特に店売りが不振。鉢物は出荷量が底を打ち、都心部を中心に家具やペットとしての新しい鉢物の需要も見え、単価がじわじわ上がる気配となった。総じて6月は15%近く売り上げを落としているところが多く、第一四半期で10?5%近くマイナスのところが多いようだ。需要はこのような形で縮小均衡化しており、例えばこの6月に大田市場で行なったフェアの中でトロピカルフェアは久々のヒットだった。このように需要を的確に捉えて、「あなたたちが欲しいものはこれですか?」と具体的に提案しないと消費に繋がらない。このような状況になってきている。一般消費者を巻き込んだ展開は以上の通りだが、業者同士の取引では新商品に付ける名前も重要になってきている。これも昔とは違い、消費者に受け入れられるものでないといけないので、例えば草花ではライステリアのように、このテリアという言葉を単語の語尾に使われているので、言葉の響きからセンスの良さを表したり、覚えてもらいやすくなったりしている。

この時代を反映した売り方のうち、減農薬や無農薬などの安全・安心の運動が県指定でエコファーマーの表示をしたり、GAPやMPSの認証準備中などの表示をしたりしているが、このように考えるべきではないかと私は思っている。世界は単一経済になり、同じ経済価値で世界中の人たちが動いている。経済システムでいうと、世界経済システムがメインストリームで、その下に個別のその国の経済システムがあるという風だ。私はワンガリ・マータイさん(ケニアでグリーンベルト植林をしたことによりノーベル平和賞受賞)の“unbowed”を読んで、彼女がノーベル平和賞を受賞したのは、平和活動、持続的な資源管理の必要性、良い統治、この3つに向けて努力することが多国籍企業に対して世界経済が単一化した中で大変必要なことであり、ケニアで地道にグリーンベルト活動をしてきたマータイさんがこの3つの要件を満たしていたので、新しい時代を体現している人としてノーベル平和賞受賞者に選ばれたのだろうと思う。

1985年のベルリン会議で先進国が自分の領地を地図の上で線引きした。そこから国が部族を考慮することなくできてしまった、それがアフリカの国々だ。その中にあってケニアのマータイさんが毎日新聞の招きで来日、「もったいない」や「風呂敷」を世界に広めてくれている。先進国の7億人の消費者はグリーン購買やフェアバイイングなどの諸活動を日頃の消費活動の中で行い、大きな単一国家としての地球を意識した消費活動をしている。こうなるとその国独自の環境保全システムは例えばエコファーマーなどは現段階では良いと思うが、これはサブシステムである。メインの環境保全システムは花の場合、世界に通用しているMPSを使うことが日本の生産者として正しい選択であるというのが私の考えだ。世界基準になっている*EUREP GAPをどのように日本流に焼き直すかがMPSを使うことになるのではないか。世界の消費者の団体であるコーデックスがいくつかの検証を重ねてそう言っている以上、すすんでそれを受け入れるべきだと思われる。
それにしてもワンガリ・マータイさんの笑顔、67歳だというのにこんなに透き通った笑顔の人は初めてお目にかかった。すごい笑顔の力を持っている人であった。“unbowed”の出版記念パーティーのときそう思った。

*EUREP GAP・・・Euro-Retailer Produce Working Group Good Agricultural Practices(適正農業規範)

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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