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2007年8月13日

多品種少量栽培

8月11日(土)地震のあった柏崎で今年も花市が開かれたと新聞で知ってホッとした。父方の両親も母方の両親もいずれも新潟出身なので、昔の新潟のことは普通の人よりよく知っている。柏崎の花市は江戸時代より続き、今年も菊や小菊、アスターやグラジオラスなど盆特有のミソハギやガマ、柿や栗などと一緒に飛ぶように売れていたらしい。

“前進開花に高値なし”の法則通り、8月の盆は昨年の1?2割安で推移した。加工業者は2日ほど早く手当てをするが、昔のようにそんなに前から品物を仕入れてはクーラーから出したとき鮮度が落ちてしまい、店頭での日持ちと消費者へ行ってからの日持ちが悪くなってしまう。したがって買参人は物日のときも直前間際買いで、今年の場合昔通り10日(金)の仕入で、8日(水)も若干仕入れようかというところである。

秋の彼岸の契約や仕入れの参考にしてほしいが、前進開花はストックしておかないとならないため、その分場所や冷蔵庫代、水揚げ代などコストがかかる。だから当然間際より価格は安いとした方がいい。アメリカの例なら、契約に合わせてもちろん出荷するのだが、コロンビアやエクアドルの産地は若干だが遅れ気味に作る。そして納期に切り前からするとやや固めで追っていく。物日のときは全体が固めで行くから採花やそのあとの出荷箱詰作業でも生産性が上がる。作業中の傷みはもちろんかなり抑えられる。そして契約通り出荷が終わったらクレーム対処分の枠を残して残りは捨てる。だいたい万が一のために、最低でも1割余分に作っておくから、1割程度捨てることになる。日本の産地も花は生き物だから物日に合わせて、固めに出荷できるよう日頃より少し後ろにずらして作付けをすべきだ。そうしていくと質と価格が見合って、消費者やお取引先から「来年もまた頼む」と言われる生産者になることができる。ここの納品技術を持ってもらえると本当にありがたい。

あともう一つ、今週はお話したいことがある。同じく8月11日(土)の日本経済新聞の記事のことだ。『国産切り花 多品種少量栽培に活路』という記事である。利益を出しやすいのは、少品種多量栽培で、スケールメリットで売っていくこと。これは誰でも分かる。しかし、輸入品と競合する分野だ。一輪菊の神馬のようにパテントがなくなった品種を国内も海外も作っているわけだから、仕事の三原則、“質・価格・納期”の勝負となっている。仕事屋さんに好まれる白菊の品種を国内主力産地が共同で開発していくことが望まれる。開発して仕事屋さんに使ってもらわなければならない。

さて、11日のこの日本経済新聞の記事はまさに多品種少量という日本の花き生産の特性をよく調査し、記事にまとめたものだ。国産切り花は多品種少量生産を現在行なっているし、これからももっと儲かる多品種少量生産を行なうべきである。ガーベラのように同一作物で多品種少量というのもあれば、いろいろな花を作って1年間出荷しつづけるというのもある。関東の近辺では千葉県がなぜ魅力があるかといえば、房州の長い伝統の中でこの夏はクルクマやタマスダレやトウガラシ、これから秋にかけては・・・、というふうに草花を周年まわしている。まさに輸入されにくいものを選んで作っているようだ。海外と競合する菊、バラ、カーネーション、ラン、ハモノを生産している国内生産者と、それ以外の鉢物まで含めたものを生産している生産者と、今後の戦いの土俵の設定具合が変わってくるのだ。ここをよく日本経済新聞の記事は捉えており、大変勉強になった。

投稿者 磯村信夫 : 2007年8月13日 00:00

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