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2007年10月29日

日本の強さは名も知れぬ民の強さ

昨日の富士山は真っ白で大変素晴らしかった。この時期、これほど雪をたたえた富士の姿を見るのは初めてだ。

さて、先週は青山フラワーマーケットさんの東京駅、銀の鈴そばの店舗開店やら、恒例となった假屋崎さんの雅叙園百段階段の展示会、土曜日には丸ビル・新丸ビルで日比谷花壇さんが「東京フラワーアウォード2007」他を開催した。そして僕は(財)日本いけばな芸術協会創立40周年記念大会を日本橋高島屋に見に行った。日本中の生け花の流派をまとめていく構造はこのようになっている。名誉総裁として常陸宮妃殿下、副総裁に豊田章一郎氏、会社でいえば取締役は名誉会長の犬丸直氏、会長遠山敦子氏、副会長池坊由紀氏、副会長勅使川原茜氏、そして執行役は理事長肥原碩甫氏、副理事長に千羽理芳氏、野田唐峯氏となっている。この日本いけばな芸術協会は昭和41年にいけばな芸術の普及、日本の伝統文化の発展を目的として設立され、全国の諸流派365流派、会員数は4500人によって構成されている。流派はお家元をシンボルとし、世襲であるところが宗教と異なる。しかし各流派の実力者達はまさに陰徳を積むことを旨としており、匿名性が大変高い。皇居は日本の芸術や技術の粋を集めて作られているが、ここも大変匿名性が高い。下世話な我々は『カリスマ』や『ブランド』などとほざいているが、この匿名性こそ日本だけではなく、広くアジアの特徴といわれている。それは曼陀羅の構図に見て取れるし、「空」に実在感を感じることが出来るのもこの匿名性と大いに関係がある。そこには自己主張を抑え、性善説で事を行なうことによっての経済合理性に結びついている。なぜ経済合理性かというと、チェックをしなければ手間が省けるからだ。信用されて嫌な気持ちの人はいない。一方、性悪説にたって事業を行なうと、結局警察国家となってチェックのための機構、そのための書類作りなど膨大なコストがかかる。

かつて日本は世界のGDPの15%をしめていた。しかし2007年の今、10%を保持するのがやっとだ。相対的経済力はこれほど落ちてしまった。だから米国におけるサーベンス・オックスレー法の日本版J?SOX法を法に則って、株式公開会社は企業統治を行なう。セリは公開の席上ゆえチェック機能が働くが、相対でもそれと同様のチェック機能を利かせなければ企業統治が出来ているとは言えない。大田花きが営業本部を産地(仕入)と買い手(販売)の二つに分けて活動しているのは、一人で売り買いを行なうと間違いを犯すことがあるからである。現金出納でもJ-SOX法に則り、あらゆる取引の現場で、公開会社である大田花きはチェックを利かせながら業務を行なっていく。これは明らかに「人は弱いもの。Wチェックは人間たらしめるための必要な行いであること」を超えて、警察国家的になってきている。コストがかさむ。理想はもう一度性善説に則り、匿名であっても間違いを犯さない社会を作り上げることだが、それは無理。昔には戻れない。しかし、日本の持味を出したコンプライアンスの利いた仕事を作る必要がある。そのためには日本の歴史と伝統を学び、身に付けておくことが欠かせない。ワンジェネレーション30年後にそのような社会を作るべく、花き産業の立場から実働していきたい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2007年10月22日

韓国も切花は午前1時からのセリ

韓国へ行った時のことだが、サムスンはソウルにある総合病院の同じ敷地内に葬祭場を作った。韓国は土葬が7,8割だから、遺体の移動を何回もするというわけにはいかない。よって霊安室が、近い家族以外の人たちとその死者とのお別れの場になっていた。床から一段高くして靴を脱いでお参りする。必ず座敷だ。余談だが、居酒屋でも韓国では掘りこたつなどはない。宗教はキリスト教が一番多いが、葬儀に使われるのは白菊が一般的で、黄色や他の色などは使わない。白菊やグリーンの葉モノ(おもにソテツ)を使う。一部には祭壇もある。近くて遠い国であった韓国は、韓流映画が特に日本のおばさま方の心をとらえてから、お互いに文化を尊重しあう良き隣人への道を歩んできている。

日本の花市場はセリ前取引とセリ取引、この二本立てで規模の大小を問わず現在営業をしている。切花と鉢物の両方を行なっている卸売会社は人員のシフト制を取っているが、どちらか一つの卸は48時間を1サイクルとして使っている。韓国には花のセリを行なっている卸売市場が4つあるが、ソウル中央卸売市場花き部は切花を日曜日を除く毎日、午前1時から、洋ラン鉢のように卸売市場経由率が圧倒的に高い鉢物類は午前8時から曜日を決めてセリ売りをする。台湾も朝1時ないし、季節によっては3時から切花を競っているし、雲南省昆明のセリ市場は午後7時から競っている。アジアのやり方は涼しいうちに夜中に取引をしてしまう。設備にお金をかけず鮮度保持する。そしてもう一方のやり方はオランダやドイツ、イタリアなどのように、早朝といっても人間が働くわけだから、6時からのセリにして、花の鮮度が落ちぬよう定温トラックや定温庫、定温売場を完備する。日本はその中間のようなものだ。

また、日本にはこのような問題もある。日本はセリ前取引、セリ取引として売っていくと、セリは最後の取引だから処分市になりやすい。そうさせないためには、誰もがほしい品物については、むしろセリ前取引に制限をかける必要がある。このような新しいルールを作り、守っていくためにはチェックシステムが欠かせない。チェックシステムとなると開設者と運営当事者が同じでないことが必要となる。今まで中央市場と地方市場の分け方をしていたが、これからは公設市場と民間市場といった風に分けるべきである。そうなると日本のセリを行なう卸売市場は一県に一つ必要というわけではなくなってきた。アジア流に午前1時からセリが出来るのか。そうするためには仲卸にさらに働いてもらわなければならなくなる。日本以外のアジア諸国でセリをやっているところは夜中からだということを我々は頭に入れて仕事をしていく必要がある。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2007年10月15日

HORTI FAIR

先週はオランダのHORTI FAIRとIFEXが同じ週に行なわれ、忙しい1週間だった。オランダでは花が国策でもありビッグビジネスになっているが、一方イタリアのチコレラはまた新たにオランダの花の輸出会社を買収し、ダッチフラワーグループに次いで、市場を除く花関連業者で第2位の会社になった。一人当たりのGDPの伸びではイタリアは、ドイツや日本と同様、脱工業化社会に十分に適用できず世界順位は下がっているが、生活を楽しむ産業の分野では更に拡大が続いており、チコレラが花に勝算ありとオランダの企業を買収しているのもそのような裏付けがあってのことだろう。

企業買収では日本のタキイ種苗さんがサーヒンを買収した。社長のケーシーが亡くなって、奥さんのエリザベートが、子供が育つまでしばらく社長をするつもりでいたようだが、グローバリゼーションの中で法人サーヒン社が今後とも発展していくためには、タキイさんの一会社として働く道を選んだようだ。ケーシーとは40年、奥さんのエリザベートとは彼女がイギリスにいたときからの付き合いになるので20年以上になるが、これで彼女も肩の荷が下りたことであろう。

同様に今回オランダでは、すでに故人となって久しいが、オランダのライデン大学のユーモア学者として名高かったホットフリーボーマンスの奥さんと会ってきた。オランダも長寿社会になって、女性一人で生活をしていることも多いが、肉親や地域に温かく包まれて生活をしている。70歳を過ぎると、さすがにPCでのEメールや携帯電話は持たないが、しかしそれなりに連絡を取り合い淡々と生きている。そこでも花は欠かさず飾ってある。

オランダのHORTI FAIRのことに少し触れると、傾向として植物は大きくなっている。観葉植物でも葉っぱ一枚が大きくなっており、スタンダードの切花であれば花が大きくなっている。赤道直下の花の産地が増えたからではなく、全体が大きくなっていることに特徴がある。そしてもう一つがラッピングペーパーや鉢など植物を売るときに包む資材の充実だ。年々植物そのものが花き、種苗商とも価格競争を避けるため限定栽培で限定サプライチェーンとなっており、展示会で本当に新しい品種と言うものはもう見ることができない。一般的な花や観葉植物を魅力的に見せ、買わせるためのラッピングペーパーや鉢はまさに洋服のコーディネーションではないが進化しつづけている。そして三つ目はこの分野の進化が一番著しいが、撰別機や播種機などの生産機材と言うか、省力化あるいは均一化マシーンの充実である。花の分野にロボットなどセンサーの技術を使い、日本が車の分野でリードしている自動化やクリーン化をこの分野で実現させている。日本のIFEXも施設園芸展と一緒に行うべきとつくづく思う次第である。産業としての花き産業のあり様は、日本で言うと農林中央金庫と同じ得意分野のラボバンクがマーケティングについての講座を会場で持っていたように、関連資材、機材まで含めて展示紹介し、アジアのメッカになる必要があると感じた。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2007年10月 8日

勝手に作るのはもう危ない

 物日と普段の差が開いてきていると感じている小売店は多い。確かに諸物価の値上がりで財布の紐を締めている消費者もいる。しかし、仏花に力を入れるのは地域の花店として絶対必要なことだが、それプラアルファの日頃使いに、今ひとつその小売店が力を入れていなかったのも事実だ。もう一度自分の店を道路の反対から見てみよう。店を出している限り、車屋であろうがケーキ屋であろうが花屋であろうが、客の目で店をチェックすることは欠かせない。

 今、花き業界で重要視しているのは燃料代の高騰とダンボール代の高騰である。どうすれば合理的な流通が出来るか、卸は自分が担当する販売網では、どのように品物を流通させれば買い手と出荷者双方に無理がないかをよく話し合って、きめ細かい打ち合わせをする必要がある。そうでないと、もし我々が生産者であったら、情報がない中で生産するのは不安だから、結局コストの掛からない時期に出荷することになろう。それは10月、11月と5月の母の日過ぎから6月である。これを需要にあわせて作ってもらう当たり前の作業はもう失敗できない。失敗したら損失になってしまう現状では、消費地での販売担当の卸売会社と密接なコミュニケーションからすべてをはじめていただきたい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2007年10月 1日

増える花束売り

彼岸の需要期の最中、北東北や北海道は大雨で販売も出荷も大変ご苦労された。米価がピーク時の三分の一になったとはいえ、米が倒伏したりして、この時期に優先しなければならない仕事が多くでき、この地域の花き消費は下がった。上半期を振り返ると、天候異変に翻弄された月日であったが、生産者や小売店の不断の努力で花き需要は大きく落ち込むことなく六ヶ月を終えた。

10月から下半期に入ったが、重油が1リッター70円台に跳ね上がったり、ダンボールやプラ鉢など生産資材がいずれも大きく値上がりしたりと、生産者はさらなる困難に立ち向かって頑張ってくれている。販売側のこちらもそれらを念頭においた応力の努力を惜しまないつもりだ。

さて9月の彼岸期はもちろん、この上半期を通じ花束加工の依頼が増えているとパッカーの人たちは異口同音に言う。仲卸さんも水揚げや花束製造依頼を取引先から要望されるそうで、切花でも一本売りから束売りへ少しずつ移行してきていることがわかる。これは近い将来を思うとますます束売りの形態が切花では増えるのではないかと思う。お惣菜のおいしいスーパーマーケットは流行っているが、まずいところは素材売りでは評価されると言っても、全体の評価からすると「あそこは・・・」となってしまう。

花の売り方も今後、例え専門店であってもそういった売り方が増えてくると思うのだ。その理由は少子高齢化の中での女性の社会進出だ。EUでも北の方は、事実婚や同棲が一般的だ。さすがに40歳代になると、入籍する人たちが3分の2くらいとなるが、とにかく結婚のあり様が日本とは違っている。スウェーデンのように内閣の中で女性の大臣が半分を占める国では、子どもの半分以上が婚外嫡子で事実婚の夫婦が育てている。だから家族のあり様というのが基本的に問い直されているのが今の先進国だ。日本や日本より出生率の低い韓国はいずれも「そんなに長いこと同棲しているのなら早く結婚しなさい」と言われる。しかし僕の友人のフランス人も、子どもが二人もいるオランダ人も日本流の結婚はしていない。しかしそれぞれの国では認め合う一つの家族のあり方だ。私は娘が結婚するとき、「同棲して、この人とならと確信したら結婚しなさい」とまず結婚を先にすることを禁じた。このような家族の形態が増え、女性が専業主婦ではなく、子どもを両親と社会で伴に育てようとすることが日本の社会の一つのあり様として模索されはじめている。今の大田花きの女子社員たちもきっとそのような中で、夫婦で子育てしよう、花も時間があればゆっくり選ぶがなければ花束になっているものを買う。こうなってくるのではないだろうか。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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