大田花き 大田花きコーポレートサイトへ
 

« 昨年の冬より輸入品が増加する見通し | トップ | 花から見た今年の世相 »

2007年12月10日

松市

昨日は東京では最後の紅葉狩りの日となった。イチョウやナラ、カエデなど公園を散策する人たちが多数いた。大田市場の近辺では、今年京浜急行の平和島駅から歩いて10分のところに砂浜がきれいな“大森ふるさとの浜辺公園”ができた。旧東海道から羽田へ行く、これも江戸時代からの道があり、そこを通って少し行くとナラの林があり、その先が砂浜のある公園だ。カモやウミネコが多く、特にウミネコは餌付けをする人たちがいて群れをなしている。ウォーキングを楽しむお年寄りたちが起伏のある散歩コースを要望していたので、区はまたとないプレゼントをしたものだと思った。

大森の界隈は町工場が多かったが1980年代半ばから数は減りはじめ、特にここ10年、中国へ生産基地が移ってからピークの五分の一の数になった。その跡地はマンションになっており、あの油臭いスレートの家並がいつの間にかきれいになったので喜ぶべきであるが、しかし地元の人間としては寂しい気持ちがしてならない。こういった旧東海道の大森海岸界隈だが、伝統を守っている住人も多い。例えば供える榊はひとまわり大きい。だから中国で作られた作り榊は使えず、自分で作っている花屋さんが多い。

昨日は松市であった。門松が高騰した昨年とは異なり、今年はカラゲ松と根引松の生産量が少なかった。そのカラゲ松は大森界隈にはなくてはならない。それと根引松と五葉松の良いものも欠かせない。大森海岸の料理屋はもう一軒もなくなったが、その流れを汲む割烹や寿司、洋食屋は伝統を重んじ松を多く使う。古い家ほど松を多く使うので、この界隈の花屋さんは日本の一般の花屋さんより松の比率が高い。今、日本では季節のグリーンとして松を使うことが多いが、大森界隈は松が主役で花は脇役である。ここが違う。だから質の良いものにこだわる。昨日は良い根引と五葉松は一時の値段ではないが、現代としてはしっかりした値段であった。筋モノのカラゲ松や若松の大小も安定した動きであった。新しい花屋さんたちが多い大田花きのセリ場では、セリ人が松の良さを教える形でコミュニケーションし、セリが進む。大変生意気な言い方で恐縮だが、このコミュニケーションの取り方しか新しい花屋さんにどんな松が良くて、どんな松が良くないのかを教える手立てがない。今年の松市でとある波崎の荷主さんは小生に言う。「大田の松市は古い。どこの市場でも注文で事前に販売している。早く大田もそうするようにしてくれ」。千両はセリが主力だが、松は注文が中心取引となったようである。しかし大田では昨年の門松の不作、本年の根引とカラゲ松の不作。このように農作物は天候の影響を受ける。だから相場が必要だ。その花の今年の相場は大田のセリ場から生み出されると信じて、取引所運営に万難を排していきたい。

投稿者 磯村信夫 : 2007年12月10日 00:00

Copyright(C) Ota Floriculture Auction Co.,Ltd.