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2008年2月25日

デッドライン(納期)は2015年

土・日と東日本は大荒れの天気だった。電車も止まり、雪の多い地域では飛行機も止まり、一般道でさえ止まった地域がある。肝心の土・日だったのに、春の花の需要期本格化は一週間順延され、3月1日(土)からとなる。それでも例年通り池上本門寺にある梅園は賑わい、大田市場の河津桜も咲き始めた。

日本の花き産業は、地域経済に支えられてこれまで発展してきた。日本の面積自体はカリフォルニア州と同じしかないが、47都道府県のうち、それぞれに知事がいて議会もある。道州制は少子高齢化でシンプルな行政システムに変更しようという考えだが、もう一つは経済力の大きさも兼ね備え、地方分権をしていく上でのくくりなおしと考えているのだ。これはあくまでも現時点でのGDPの話だが、北海道のGDPはデンマークより大きい。九州と四国のGDPは韓国よりも大きい。大阪のGDPはカナダより大きく、首都圏はフランスのGDPより大きいのだ。こうなっているわけだから、道州制に根ざした花き流通のこれからの発展の仕方を考えておく必要がある。日本中の卸と仲卸は今までの中央集権的に東京あるいは大阪から荷物を引くのではなく、まず道州制の地域の中でやっていこうとする気持ちが必要だ。

2006年の暦年で日本花き卸売市場協会の卸売会社の30%弱は経営が大変苦しかった。これではいけないと当事者たちは業態変革をしていった。格好よく言うと商社的な業務だが、むしろシンプルに問屋業務と言ってよいだろう。そうなると地域の仲卸だけでなく、中央の転送業務を中心とする仲卸と競合が激しくなり、仲卸の収益を圧迫し始めた。それが2007年暦年の状況だ。商売がうまく行っているかどうかは自助努力もさることながら、その地域がプラスの富を産んでいるかどうかにかかわっている。良い地域とは海外から集金する能力を備えたグローバル企業が活躍する地域のことである。それは主に中京圏と関東圏だ。また日本は現在、毎年1%ずつ生産年齢人口が少なくなっている。よって生産性を少なくても数%上げていかないと同じ生産能力を維持できない。だから富は減額されるが、それは花き産業のような国内相手の企業に言えることで、海外から富を集めることの出来る企業は別格だ。このような現状ではどのサービス業も自ら海外に出て行かないと成長は難しいと言われている。花の流通業者の話に戻って、では道州制の中で商売を完結できるかと言うと決してそうではない。すなわち地域だけで合併し、大きくなることによって会社数を少なくすればよいかと言うと決してそうではない。グローバリゼーションで国際競争に打って出る気概のある国内産地は野球なら大リーグの試合をやるスタジアムに荷を出す。よく知られた花を作る大産地の場合もあれば、いわゆるプレミアム商品を作る国内外の職人たちもそこに出荷をする。道州制をにらんでいくと、地域でまとまるが1、東京圏・大阪圏とつながりを強くつけまとまるが2、この二つを地域住民のため、花の卸や仲卸は行なっていく必要がある。グローバリゼーションとともに、流通業一般は縦の統合である垂直統合が多くなっているが、花の場合まずは水平統合だ。地域的に水平に統合し、そこの中でまとまって初めて、地域の卸や仲卸が力をつけ、主体性を持って大手企業とのサプライチェーンができるのである。この整理整頓を2015年までに目処をつけていくことが花き流通業界にとって好ましい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2008年2月18日

薬師の真言

瀬戸内寂聴さんの『秘花』という本を読んでいて、主人公の世阿弥が最晩年、佐渡に流刑され、長谷の観音様に続いて薬師如来様を拝んだ折、薬師の真言「おん、ころころ、せんだり、まとうぎ、そわか」と唱えるところを16日の土曜日の最後に読んで、スキーをしに外に出た。それから2時間して、素直に転んでおけばよいのに、リフトの下だったから他人の目を気にして格好つけて踏ん張ってしまったため、右足のふくらはぎに激痛が走った。右腕の上腕の筋肉を断裂したことがあるから、ひどい肉離れだとすぐ思ったが、なんと不謹慎というか、ありがたいというか、薬師の真言が思わず出てきて、「おん、ころころ、せんだり、まとうぎ、そわか」と言いながら、大丈夫な左足で時間をかけて下まで滑って降りてきた。世の中には偶然というものがあって、どうも年齢を重ねたせいか必然のような気がして、真言の「おん、ころころ、せんだり、まとうぎ、そわか」を唱えるたびに家内は笑い出す。

それだけ湯沢ではまさに深々と積もる雪が先週は続いていた。関東地方ではようやく土・日が晴天となって、季節柄春の草花が売れ始まってきた。そうは言っても、暖冬だった昨年に比べると人気のチェーン店や量販店で95%くらいだから、一般的にはそれよりも少し落ちるであろう。また日本海側や東北、北海道は今年は寒さが厳しいから店頭需要が1割ほど少ないという。今日も静岡県下の優良花の産地の連合会が消費宣伝でお越しになり、大田市場の買参人に「今年は油が高いこととことの外の寒さで、ようやく量がここに来てまとまってきました」と今後が期待できる旨セリ場で御挨拶いただいたが、前年に比べて出荷量で2月は?10?15%、消費も5?10%ほど少ない状況が今週一杯続きそうだ。そんなことから大田花きはJASDAQへ第3四半期の財務・業績の概要の提出と同時に「通期業績予想」も見直し、目標対比を99.3%、取扱高を293億円とさせていただいた。生産者と販売小売店のご苦労に報いるためにも、消費者の要望する時期に流通させることが出来るように今後とも生産者と取り組んでいきたい。

『秘花』の中で、「おん、ころころ、せんだり、まとうぎ、そわか」と繰り返し、薬師の真言を唱えた世阿弥は、人が耐えうるだけの労苦しか仏様は我々に与えないと確信するようになり、気が晴れていく様を語っている。様々な業界があるが、我々の業界は人に喜びを与え、喜びを感じてもらえる業界であることをつくづく感謝したいと思う。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2008年2月11日

じわじわ浸透 バレンタインデーのバラ ?原産地表示?

時代が流れていると実感するのは、予期せぬことが起こっていることを発見したときだ。ヨーロッパではバレンタインデーというとバラの需要が高まり、卸売価格では日頃の価格の3?5倍になる。少し前の日本での母の日のカーネーションのようだ。日本では母の日にはカーネーションの年間消費量の約1割が消費される。カーネーションの鉢に至ってはほぼ100%母の日で消費されている。これと同じ様にヨーロッパ、北アメリカではバレンタインデーにはたった一日のために年間のバラの1割近くが消費される。予期せぬこととは、大田のセリ場を見るとバレンタインデーで赤や茶系のバラや他の花を贈る、できれば真っ赤なバラを贈ったり、販促用や室内に飾ったりする需要がかなりしっかり湧き上がっていることだ。花はホワイトデーに賭けていたが、どうもそうばかりではないらしい。

冬のバラの生産は今年のように寒いと本当に大変だ。しかし日本のバラ生産者は日本ばら切花協会が絶えず前向きに新しい事象を追いかけ会員に連絡をしているから、ヒートポンプの普及は本当に早く、今後もさらに暖房費削減だけでなく、熱い夏にもクーラーで品質を上げる努力が実りそうだ。日本ばら切花協会を手本に、日本花き生産協会の中でもヒートポンプやラジアントなどの加温設備の検討、省エネ対策など他品目の分野でも早めに取り組んで欲しい。というのも、今年の冬は太平洋側でも日射量が少なく低温で推移しており、温室の設定温度がどうしても低くなりがちだ。場外の問屋の方からだが、「菊の葉っぱがもたないのは温室の温度設定が低いのではないか。花が小さいのは温度が十分足りていないのではないか。」との指摘を受けた。1日と15日で仏花としての菊は必需品だ。その国産の一輪菊の商品性が劣るとなると、そのことはライバルである台湾や中国、マレーシアを利することにならないか。今、農林水産省の花き産業振興室や日本花き卸売市場協会で、小売の店頭で産地表示をしてもらおうという運動をし始めたところだ。原産地をきちんと明示し、良いものは良い、悪いものは悪いと消費者に納得してもらいながら花を流通させる。このことが今花の流通業者にとって重要な新しい仕事である。グローバリゼーションの中、それぞれのシッパーごとのブランドや現地農園のブランドで海外産は評価される時代になっている。国内生産者の皆さんは海外の産地をよき仲間でありライバルであるとしっかり認識し、バレンタインデーのバラの高値ではないが、消費者が日本の誰よりも国際化していることを知って欲しい。フェアーに海外の産地とも競争するのだ。どちらが日本の消費者の満足を勝ち取ることが出来るかの競争である。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2008年2月 4日

成熟社会の花き業界にいることを認識しよう

建築家である慶応大学の隈先生がとある本で「東京の街で面白いのは秋葉原と町田だ」とおっしゃっていた。JRのおどろおどろしさを私鉄の明るさで覆い尽くす。そんな街、吉祥寺や池袋、新宿、渋谷、そして町田が人を中心とした街として大変魅力あるものに育ってきている。JR-JRではない、JR-私鉄の街で歓楽街と老舗がある街、ここが集客力があり、花屋さんもパワーがあるのだ。そう見ていくと都内で最も元気なお花屋さんの一つ、小田急フローリストさんは基幹店が新宿と町田にあり、重要な小田急線の駅や私鉄のターミナル駅にしっかり根付いている。小売店は立地産業だが、地域の文化の背景を生かした店づくりが欠かせない。良い例が戸塚の鈴花園さんだが、横浜と大船に挟まれた横須賀線の通り宿場町戸塚でこれほど地域に密着して、また地元の人が「地元の花屋さんが一番だ」と思っている店はない。

現在の日本は自笑的にかつては『ジャパンバッシング』、次に『ジャパンパッシング』、今自虐的に『ジャパンナッシング』と言っている。なんと自信を失わせる虚無的な言い回しだろうか。日本は高度成長が終わり、そこから落ち着いて成熟期に移行せずにバブったためさらに高度成長が続き、今度は急転直下、他の先進諸国のように時間をゆっくり掛けることなく心がついていかないくらいの猛スピードで成熟社会に突入した。バブル経済が成長期と成熟期のちょうど狭間にあったため、我々は成熟期に突入したとしっかり認識することができなくて、今でもまた景気が良くなると、かつての成長期にいるときのような生活の質の向上を期待する。脱工業化社会で、しかもグローバリゼーション、花の活け方もブーケやアレンジメントの商品化も、消費者よりも先回りして「あなたのほしいものはこれでしょ」と提案しないと選んでもらえない。取引においても今年はこれでやりましょうとより顧客価値を高めてやっていかないと信頼関係の維持が出来ない。これはすなわち成熟社会で皆がもう成長できないことを意味している。ごく一部の人たちに会社の成長は限られていくのだ。

心の準備が出来る前に成熟産業になった花き業界。少子高齢化で葬儀と仏花は見込み通りだが他がいけない。どんな需要を開拓しようとしているのか、ヒントは繁盛店にある。決して無理することなく、常連さんと一緒に実績を積み重ねている。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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