大田花き 大田花きコーポレートサイトへ
 

« もっと高所から真実を見る必要性 | トップ | 大規模栽培化するか?雲南の花き生産 »

2008年3月10日

2008年の花の供給事情

日本の農業は米、畜産、青果が三本柱である。2007年1月、ブッシュ大統領の一般教書演説でバイオエタノールについて言及し、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国等の新興国)の台頭と相まって、とうもろこし価格、小麦価格が高騰していった。そうなると日本の畜産業はたまらない。飼料の多くを輸入しているわけだから生産コストが高くなる。米については食糧庁がなくなり、価格支持政策ではなくマーケットメカニズムで価格が決定するようになったので、需要が下降気味だから当然単価も下降気味になる。石油についてはもう皆様もご存知の通りで、BRICsの台頭や中東情勢から供給においては不安定要素が付きまとう。ここではついつい忘れがちになる南米についてちょっと触れておこう。1994年クリントン大統領はNFTA(北アメリカ自由貿易協定)をさらに拡大し、中南米まで一つの経済圏になろうと提案した。しかしアメリカの意見を入れず、国境を接しているが長い間決して仲の良くなかったブラジルとアルゼンチンはウルグアイ、パラグアイと一緒に4ヶ国でメルコスールという南の自由貿易圏を作り、アメリカの政策に対峙した。このメルコスールはその後、近隣の諸国を巻き込みスール(南)が決してアメリカの言いなりにならず、独自色を出していくようになった。例えば南アメリカの諸国で協調して作ったテレスールや石油公社同士のスール一本化の話などがある。現在、中南米諸国でアメリカ親派の国が少なくなりつつあり、キューバの経済制裁など、ほとんど満場一致で反対をしている。その中でコロンビアは親米派だが、その中にも反対派が台頭してきている。そこで政情が不安定になって、一部カーネーションの出荷などにも影響が出ているわけだ。

横道にそれたが、南米の石油事情もこのようになっており、ロシアと同じ様にエネルギー資源を貧しさからの脱却の手段として使おうとする動きがあり、彼らは石油メジャーの言う通りにはもうならない。従来の読みが当てにならないことから石油価格は投資ファンドも動き、なかなか下がりえない。そうなると青果でも石油に頼るので、園芸作物においては利益確保が楽ではなくなってきている。しかし残留農薬問題や中国餃子の問題などが日本国民の一大関心事となっている現在、日本の農業を支える3つの中では青果が最も有望だと言える。

では花はどうなのか。花作りの場合、生産者のマーケティング力と生産技術の力によってどこまで収益を伸ばせるか決まってくる。食べ物ならその価値は料理人の腕、次いで食材によって決まる。材料の、例えばじゃがいもは理想的な大きさがあろうが一定の範囲内であればどのみちカットしてしまうのだからあまり変わらない。しかし花の場合、一本や一鉢をカットして使うことはほとんどない。例外的にスプレータイプの花をばらして一輪ずつ使うということはあるが、基本一本は一本、一鉢は一鉢だ。そうなると商品歩留まり率が所得を決める。もちろん内的な生命力による花持ちだとか外観の色やそのつくり、仕立て方のセンスによって価値はだいぶ異なる。品目特性上このようになっているから、今年来年の国内の花き生産は野菜に比べ分が悪い。そうなると国内の生産は減ると見ている。減った分、輸入品に頼ることになる。今年はドル独歩安だから、ドル立ての国からの輸入はしやすくなる。しかし注意したいのはユーロ高は変わらないから、アフリカ諸国の花は昨年までと同様、または昨年以上に高いということだ。また南米からはコロンビア、エクアドルなど花の産出国はいずれも情勢が不安定だ。中国は残留農薬問題で昨年12月、生鮮食料品農産物の花においても、輸出の際の検疫を厳しくし、さらにここのところで厳しくするとしている。そうなると今後とも潤沢に入ってくるとは言いがたい。このような状況にあることを花き業界の人たちは理解をしておいてほしい。

投稿者 磯村信夫 : 2008年3月10日 00:00

Copyright(C) Ota Floriculture Auction Co.,Ltd.