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2008年4月28日

出口と同じくらい生産に重きが置かれる時代

何かをする前によく考えるということがとても大切な時代になってきた。消費者がめったなことではびっくりしないし、感動しない。我々自身が消費者の立場に立って、どこかへ行こうかと思い立っても、よく考えないと結局時間がもったいなかったと思ってしまう。消費者の立場に立って、どの花を・何月何日・どこの小売店を通じ・どういうプロモーションをして、世に出すかを前々から企画しコントロールする。しかし花は生き物でコントロールできない。生産者は作るに天候、消費者は買うに天候だから、場なりで取引する。予約では叡智でコントロールすること、短期では成り行きと2つがあいまって花は健全に流通される。青果・魚類も一緒だ。

会社というのはもともと足りないところに効率よく、物やサービスを提供するのが目的で作られたものだから、中国やベトナムで共産党が会社を作ったり、会社を認めたりすれば、どんどんとモノやサービスが提供されていく。こうして世界は21世紀デフレ基調になったのだが、発展途上国家の会社活動が盛んになって、いくつか世の中が変わってきた。一つは同じ会社でも重厚長大の産業はそんじょそこらで作るわけにはいかないから、ローマは一日にしてならずではないが、そのような会社が世界にそんなにない。日本はそのような会社が多くあり、重厚長大産業に属している会社は好業績で株価も高い。そうなのだ、余っているのは軽薄短小のものなのだ。100円ショップを見ればわかる。いかにちょっとしたモノとヒトが余っているかが。先ほど重厚長大産業が二次産業、三次産業でよいと言ったが、一次産業は押しなべて良い。石油だけでなく、長い間安値だった農産物が構造的に価格が上がり(もちろん金余りの21世紀は儲かりそうなところに投資がされる)、小麦やとうもろこし、米も国際価格が上がってきた。今度の洞爺湖サミットも環境問題に加えて、食糧について話し合われる。この第一次産業にスポットライトが当たっている今、花の供給について、今後どのように考えたら良いだろうか。21世紀は消費者起点で考えるの原則でいくと、日本の消費者は成熟国家の国民として見る目が厳しく、自分がこだわるもの以外を倹約する。花好きは新しい花やしっかり作り込んだ花などにはお金をどんと出すが、あまり関心のない人は価格である。これは何に付いても言えることだ。そうなると供給者である農家はよりコストダウンを行い、石油や資材の高騰などを自ら吸収できる経営努力を行なってほしい人が40?45%。この人たちがいわゆるコストリーダーシップと言われる人たちだ。そして作り込んで新品種を取り入れたり、企画や作付け、事前情報などを実際に正確に行うことによって信頼を得て差別化する人が40?45%。ここは若干値上がりさせても、消費者や小売店は付いてきてくれるだろう。あとの10?20%はいわゆるニッチで、この隙間狙いはプレミアムの本物を狙って最上級の花を届ける。価格ではない分野だから、利益率も高いし、買う方も満足すれば作る方も満足する。本年の国産の花き生産はこの3つのカテゴリに分けて、生産者や産地毎にやるべきことが変わってきている。輸入品まで含めても、第一番のカテゴリであるコストリーダーシップはとても重要だが、なかなかむずかしい。現在の環境下ではここの分野での淘汰を国内外ともに促すだろう。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2008年4月21日

花と緑のシーズンとソウル

丸の内でも大阪鶴見でも花のフェスティバルが開かれていて大好評だそうだが、私は家内と新緑の京都を週末楽しんだ。岡崎で第39回になる京都市花き振興協会などが主催の「花と緑の市民フェア」が行なわれていた。種苗、生産、卸売市場、小売、フラワーデザインとすべての団体が参加していて、それぞれの展示や諸活動を見るにつけ、思わずその美しさと運営の立派さに目をみはった。来場者はまさにお子様からお年寄りまで、老若男女を問わず、一般のお客様がこんなに楽しみにしており、市民が花と緑を生活の一部として取り入れていることに目をみはった。この層の厚さはなんだろう。文化の継承か。
先週は韓国にいたが、ソウルの南の江南は新しいソウルの町で、路も建物も広く大きく作られており、押しも押されもせぬ韓国経済のシンボルともいえる街である。ソウルは郊外まで入れてソウル首都圏と言っても良いが、その人口は韓国の半分以上の2,500万人おり、花の卸街は市公設の花市場以外に釜山行きなど長距離バスが出ているターミナル駅のところと、金浦の飛行場の側とで三つある。フラワーデザイン学校は2005年がピークで、その後生徒数が少なくなるとともに数は減った。日本もそうだが、韓国のいけないところはすぐお花屋さんやスクールも独立してやってしまう。だからなかなかお花屋さんもスクールも一定規模に達しない。もっとも何でも成長産業というものはそうかもしれない。それが成熟し、衰退がはじまってくると、まとまっていくのだろう。

韓国の花の産業で特徴的な点は二つある。一つは輸入切花が数パーセントくらいと本当に少ない点だ。その一番の理由は10年前1997年の通貨危機のときに輸入代金の支払いに支障をきたし、今でも韓国は世界の花の産地から信用を得るのが大変だ。二つ目は切花を飾る習慣は、20歳代?30歳代にしかない点だ。仏教国というよりキリスト教国であることや、北朝鮮との戦争などで日本より10年遅れてベビーブーマーたちがいるが、その人たちは祖国復興のために大忙しで花どころではなかった。イ・ミョンバク大統領の訪日を機に、FTAの締結目標年次などが話し合われることと思うが、韓国の財界人と話していると、「韓国から何をもって行くのかが問題なのです」と異口同音に言う。花を見ても、すばらしいバラやスプレー菊はあるが、鉢物にしてもプラザ合意のときに為替変動により日本から産地が移ったサボテン類の鉢物など、特定のものを除いて、何を日本に持ってくるかが問われている。

今、切花・鉢物の関税は24%で、これが輸入品の障害になっている。ソウルの卸売市場では韓国産でない外国の花は扱わない。農民に対する感情の問題から現在は扱えないとしている。将来は韓国で作っていないものなら輸入品で扱う動きはあるものの、農家感情からそれも無理ではないかと思う。輸入品はソウル市内の業者が扱い直接小売に卸し、中央市場では仲卸が扱うのみである。ソウルの若者は就職難だとは言え、日本人の初任給と何ら変わることはない。経済的に台北と並んで日本人と同じ生活をしているし、日本より格差社会であるので、新しい花のある生活の提案はかなりアッパークラスのソウル市民に魅力的である。一般論として企業は消費者の潜在需要を先回りして提案できないと生きていけないということがグローバル経済で当たり前だが、生活関連資材である花はホームファッションが本格的になってきたソウルの若者向けに価値ある商品と映るのではないかと思った。

京都の人たちの見せるためではない、ごく自然な花のある生活とソウルの花ビジネスは明らかに隔世の感ある。仏教国だと例え1人当たりのGDPが1万ドル近辺でも、こうは差がないのにと韓国との花でのお付き合いの仕方をあれこれ考えてみる。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2008年4月14日

21世紀の最初の30年で行うべきこと

ニュースを見ているとアメリカの事は良く分かるが、ヨーロッパの事があまり分からないのでNHKBSを見たり、BBC2を見ることがある。

21世紀に入り最初の10年の後半となって、日本が国際社会の中でやらなければならない事が明確になってきていると思う。花き産業の分野では、世界の花き業界と交流を深めて行くこと。特にアジア太平洋地域とは輸出入を経て、生産や消費の分野で共に国や国民の生活が豊かになる事を目指す。
また、国内においては日本がこれまで培ってきた農業を、国民の安寧秩序の為の食料としてだけでなく、国土保全やさらに文化的な側面から国民の理解を得て、応援・推進できるようにし、
補助金なしで育った日本の花き生産をさらに日本農業の中で重要な地位が占められるように育成する、この2つを同時に行うこと。

又、少子高齢化となっているので、国民の居住空間、生活空間を生活のしやすさだけでなく、景観からも捉え再開発を行い、花のある、たしなみをもった生活をしてもらえるよう官民を上げて事を行う。

これら3つのことを花き産業の分野では21世紀最初の30年、新しい大東亜共栄圏と緑豊かな美しい国 日本の再現に向けて花き業界挙げて努力する必要があると信じている。
これら3つの仕事を通じ、各事業の発展を期していくことが必要である。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2008年4月 7日

謙のみ福を受く

今日、現場で「なんで菊のところに作り榊が置いてあるのか」といつも中国産の作り榊の入っている箱に近づくと、ほとんど正方形に近い小さな箱に小菊が入っているではないか。赤・白・黄と三色そろえて出荷があった。中国からの作り榊は根っからの花の業者でない人が開発をし、需要を拡大していって、今では花き業界の輸入率では最も高くなっている。これからどのように中国の小菊生産が出てくるかわからないが、日本への出荷が始まったことは事実である。

土曜日、久しぶりにブルーミストの簔口社長と会い、話をする時間が持てた。今年を入れてあと3年で2010年はおしまい。それまでにもっと家庭用の花をたくさん届けたい、それが簔口社長の願いだ。大学を出て、自動車会社のセールスマンになり、何故この人がと思うくらい話し方は朴訥なのに、1位か2位を争う車のセールスマンになり、その後ブルーミストという花の小売会社を興す。そして現在15店舗。「さらにもっと一人一人に花を届けたい。お客様は花を欲しがっているのです」と簔口社長は熱く語る。創業以来毎年120%で伸びているこの力は何なのだろう。ブルーミストのスタート時からお付き合いいただいているが、半年振りに会ってこの謙虚さと初々しさには頭の下がる想いであった。「出店を重ねるにつけ人を集めるのが大変でしょう」と言うと、「うちは人に恵まれていてどうにかなっちゃうのです」と言う。オランダ屋の屋号で展開する独特の看板や店の雰囲気は改装費が捻出できずにほとんど手作りでやった。よく売るが儲けようと思わないから儲からない。創業5?6年まで出店経費がかさみ苦しかったが、どんなに苦しくても社員をオランダに連れて行き、レンタカーを借りて社長自ら運転し、オランダの花き業界を社員に見せてまわる。簔口社長は「今年の正月、市場で生産者の声が聞けました。ボードに張ってあった手紙を読んでも油高や経費高で生産の大変さが伝わってきました。今まで景気が悪くなっていましたから、お客様の負担を考え安く売ろうとしていました。それを今年の正月から、それではいけないと思ってやめました。昨年よりも高く買って高く売る。少しですが高くしたらお客さんが離れるかなと思いましたが、社員が荷主さんも大変なんです。うちも頑張りますから、ちょっと上げさせてもらいますと説明して売っています」と言う。

わが花き業界のアンカーとして、簔口さんのように思ってくれている小売店は多い。花き生産者はぜひとも安心して生産して欲しい。ただし、国内生産者の皆様方、言ってくれないとわからないことも多いのです。ぜひとも我々に教えてください。そしたらその声を小売店に届けます。それを小売店に消費者に届けてもらいましょう。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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