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2008年6月30日

プレッシャーが未来を作る

毎月、最終の日曜日早朝に五木寛之氏の「わが人生の歌がたり」というラジオ番組があり、楽しみにしていてそれを聞くために日曜日なのに3時50分に起きる。昨日、ラジオの中で五木氏は自分の人生と日本の戦後の復興を重ね合わせて語っていた。私自身も同じ思いで、近頃は日本人らしさが失われたような物騒な事件が多く、日本は大丈夫なのかと思わず思ってしまうことがある。

私事だが、30そこそこの息子に話を聞くと、アメリカのMBAを出た日本の青年に二種類あるという。明治維新をやり遂げたのだから必ず日本はよみがえると考えて、日本のため働こうとする者。何も変わらない政治姿勢や国の構造などに愛想を尽かし、かっこよく言うと地球人として、本音はある意味では自分の富を考え海外で働く者とがいるという。私のように団塊の世代近くに生まれた人間からすると、日本を見限る日本人がいるとは大変ショックなことだった。

ここ1?2年の日本の経済界を見ていて、悲観的にならざるをえないと思っていたら、花きも果物やデパートと同じ様にしんどい局面が昨年の10月くらいから始まって、特に第1四半期の3ヶ月はずるずると落ち込んできた。しかしここに来て悪材料は折込済み、確かに油代の値上がりや肥料の値上がり、身の回り関連物資の値上がりと、生産・消費に渡って更なる困難が続くが、花き業界においては底をついた感があり、あとは鍋底を這う状態であると思われる。

さて、自分の属する業界も日本の世情もこのようにパッとしないとなると、本当に日本あるいは我が花き産業は今後どのようになるのだろうと暗い気持ちになっていく人も多かろうと思う。見通しの暗さから、イタリア人じゃないが“It’s a show time”として浮世を明るく生きていくというのも、我々成熟国家の国民が身につけなければならない性分だが、「日はまた昇る」で有名なビル・エモット氏は近著『アジア三国志』でこのように日本の未来を我々に語る。中国やインドはじめ、アジアが経済発展の中心となっていくことは、このコラムをお読みの皆様も異論のないことだろう。そのアジアの中で大国といわれる国には、日本、中国、インドがあり、今後ともお互いをライバル視しながらも、経済交流を更に強め発展してゆく。ビル・エモット氏は19世紀のイギリス、フランス、プロセイン、オーストリー、ロシアの競争と発展の仕方を例にとって、アジア三強の今後を映し出す。またエモット氏は中曽根政権から、特に橋本政権以降、改革されてきた日本の社会システムはバブル経済崩壊の中でほとんど目立つことはなかったが、今後金融機関も会社も財務状況が改善され、外にはアジアのライバル、内には少子高齢化、多額の国債・地方債を解決しなければならない状況下に置かれているから、主体的に生きていく、あるいは切羽詰って問題を解決して乗り切っていこうとする事業体が多数出てきて、手足を縛る規制は相当に少なくなっているから、十二分に今後やる気のある事業体や個人が活躍していけるのではないか、そういった企業がいくつも出て、日本が更に発展するのではないかとその可能性について語っている。必要は発明の母、あるいはピンチはチャンスということを我々にエモット氏は語っている。外需を当てにした企業だけでなく、日本の消費者を対象にした業界すべてに可能性があると言っている。閉塞感から抜け出すヨーロッパやアメリカで使ってきた手法をまだ日本はほとんど使っていない。

私自身は株主総会が終わり、開設者の東京都と監督官庁の農林水産省にご挨拶にうかがった。一昔前なら、中央卸売市場の運営会社である大田花きが福岡に卸売市場ではない九州大田花きを作って営業するということは考えられないことである。行政指導があったろう。コンプライアンスとダブルチェックを行うことを条件に、今まで業界の中は甘く、しかも閉ざされた産業界から、より開かれたものに日本は既に変わっていっている。産地偽装のうなぎや牛肉の基本的な問題はJAS法の曖昧さを指摘する声がある。これもJAS法は改善されていくことだろう。このようにより良い方向に日本社会が向かっているということを自覚すべきである。もちろん花き業界も現在の仕事の難しさはまだまだ続くが、確実に次の未来へ向かっていると思われる。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2008年6月23日

大田花きの株主総会

フラワーオブザイヤー2008春にユリオリエンタルのスイートメモリーが選ばれた。ピンクの八重種で花は小ぶり。今までのキャラ立ち(キャラクターが立っている、個性的)のものから、エレガントで優しい雰囲気をもつ花が一番人気となった。なにか時代が動いているのであろうか。

21日の土曜日、第20回株式会社大田花きの株主総会が開催された。大田花きの株主総会は質問がいくつもあり、出席いただいた株主の皆様方へ会社の方針を私から直接お話し、株主の皆様にご理解を賜わるまたとないチャンスとなっている。今回の株主総会は第20期事業報告等についての説明の他、買収防衛策について二つの議案をお諮りし、新取締役の承認をお願いするといった三つの決議議案があった。

質問の中で手数料自由化や規制緩和についてどう対処するかとの質問があり、現在日本列島に花の欲しい人があればどこでもお届けできるよう、日本全国におよそ150の卸売市場と200の仲卸、そして2万4000の花・植木小売業者があり、スピーディーに過不足なくお届けすることが出来る今の流通システムは今後とも大切にしていかなければならないと考えている。今、各流通業者の営業利益率は決して高くなく、手数料率が0.5%でも下がったら営業が立ち行かなくなるところが出る。行政府は提出された希望の手数料率を受理する際、その会社の財務体質を良く調べ、無理のないものであると判断したとき、その料率を認める。2009年4月から第一回目は3年間で2012年3月末までとし、二回目からは2年毎に申し出で、財務体質を条件に承認するという形になる。そうすれば自分の存続しうる利益を確保しながら各社は営業を続けていくことになる。大田花きにおいては、花の生活研究所からはじまる花のサプライチェーンをより効率的にすべく、自前の組織や意見を一にする方たちと協業していく所存だと、こう方針をお話した。

買収防衛策については、東京証券取引所が今後上場するにあたり、議決権なしの株式を公開するとした考えを見習い、日本で最大のせり取引所を運営する会社としてより偏りがなく、どこの産地もどんな種苗会社の品種であろうとも、今まで通り適正に評価されるよう、30%以上を取得する株主が出てきたとき、社外取締役で構成する第三者機関を作り、株主の立場で30%以上の買収を認めるかどうか判断をしてもらうこととした。

また大田花きは8名の取締役のうち6名が社外の役員で、取締役会で決定された方針を執行役が実行することになっている。今期は卸売市場流通のエキスパート2人と、花の育種・種苗、そして世界の花の産地と種苗業界に詳しい方。商社マンとしてその中でも農産物の流通やら世界の権力機構、国の動向などに詳しい方。また会計士でありながら税理士でもあり、会計上の知識だけでなく考え方が現実的な方、そして弁護士で法務に詳しい方と多様な陣容が整った。今日から実質新しい執行体制で会社が運営されている。

生産者と小売店が今までにない困難に立ち向かっていらっしゃるとき、どのようにすれば花き産業は持続的発展が出来るかどうか、弊社は少しでもお役に立ちたいとこれからも努力いたしますので、引き続きご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2008年6月16日

安値の原因調査

昨日は京橋と日本橋では日枝神社のお祭りがあり、銀座通りは久しぶりに日本の伝統の香りがした。前日、「築地魚河岸三代目」の映画を見たところだったので、時間軸が大変長くなってしまって、昨日の目的である次なる仮説の検証に思考回路がなかなか働かなかった。その仮説というのは、4月から菊類が安い。特に仏様の花の売れ行きが鈍っているという。その理由に後期高齢者の健康保険問題がある。負担がいくらになるのか。年金生活者だけでなく、現役で働いていらっしゃる中小企業のオーナーも不安で消費が鈍っているのではないか。これが花の価格が安い理由ではないか。もう一つの原因は昨年秋から、特に昨年末から今年になって、40歳代、50歳代の子どもや各種ローンにお金のかかる世代の支出が、旅行などを中心に急速にしぼんでいる。それでそれが実際花にもあらわれているのではないか。60歳を中心とした人たちは花をコンスタントにいつも通り買っているが、しかし40歳代、50歳代が買い渋っているのではないか。それが花の相場の下げにつながっているのではないか。

昨日、新橋から日本橋、八重洲、丸の内と半日かけて探索をした。私が想像していたよりも実際ものを買っていない。花ももちろんだが、衣料品から化粧品、爪、あらゆるものが色とデザインにこだわって個性を打ち出している。多様化で、靴にしてもとんがっている靴、丸い靴も並んでいる。ミュールも、夏だから当然サンダルもある。しかし今ひとつ消費に結び付いていない。今買わなければならない今後流行する形は多様化でそれと似たようなものをもう持っている。一消費者として、そのようにあらゆるものが私の目には映る。プランタンの花売り場や銀座三越の食器売り場、生活雑貨売り場なども同様、この花のあしらいは斬新だと感じても、今ここで買わなければ後悔するという気を起こさせる品物が少ない。もちろん努力している。しかし店頭売りという一分野での話だが、花もさらに形と色にこだわっていかないといけないと思うが、しかしどの店がそれを引っ張って行ってくれるのかが、特に40歳代、50歳代にとって大切である。40歳代、50歳代の消費手控えが花き業界の相場の安値につながっているのか、70歳代の仏様の花が菊類の安値、そして菊は三分の一を占めているからそれが全体の価格安へつながっているのか。昨日の時点では明らかに40歳代、50歳代の消費の手控えが相場安の原因となっていると判断した。

帰りに池上の母のところに寄り、歩いて自宅まで帰る道すがら、本門寺で仏様の花を見たが、本門寺のように由緒あるお寺のお墓は墓石が縦長だから伝統的な仏花が似合うが、しかし供えてある花を見ると、スプレー菊を中心に供えているところ、菊を大切に入れているところ、菊をまるっきり使わないところもあり、ここでも多様化がすすんでいる。花店では70歳代の仏様用の花も多様性をもって作っていくことが必要だと思う。

最後に店売りの売れ具合は天気が第一だと言うことをお忘れなく。次に景気なので、景気の花き業界に対する影響は、足元ではこのような形になっています。天気が続けば消費は活発化する。これが花の一つの特性だと思う。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2008年6月 9日

国内消費をどうするか供給を考える

オランダと連絡を取り合っていると、ガソリン代が1リットルあたり1ユーロ50セントもするという。1ユーロを160円で換算すると、240円だ。為替のマジックだろうが、それにしてもガソリン代は大変高い。日本の生産者と話していると、燃料代や資材の高騰、運賃の値上がりで売上高営業利益率が1.5%?2%落ち込んだという。これを頭に入れて、我々は力売しなければならない。しかし消費者に買ってもらえなければ、花を生産したり流通させたりする意味がないわけだから、プライシングに気をつけながら、生産者がきちんと商売になるようにしたいと思う。

オランダのとある友人とまたアメリカのマイアミの友人と連絡を取り合っていたのは、次のような仮説をどう思うかアドバイスをもらうためである。小生まで含め三人は、このような点でまず意見が一致している。現在の食料品高や石油はじめ鉱物資源の値上がりは、アメリカ・ヨーロッパが必要以上にバイオエタノール燃料の生産振興、補助金支給をしたため。そして次に産油国はドル決済で、ユーロに対しドルが弱くなるとその分ニューヨークやシカゴの先物取引所で石油や他の希少金属類が上がる傾向になっていること。貿易黒字国である中国や日本など、そして石油産油国などの国々はお金がたまり、低金利で過剰流動性を持っているから、投機筋は実需に裏付けされていると言われている石油やコモディティーに資金を向け、高値をあおる格好となっている。これら3つの因果律で意見が一致している。

これを確認した上でディスカッションしたのだが、2人はこの高値相場は2年以内に収束すると、1人は異常に高くならないがOECDが5月29日に発表した通り、食料品は向こう10年で3?4割高くなることは認めざるを得ないと言う。3人が詳しく知りえる、アジア地域、アフリカ地域、南アメリカ地域の花の生産動向を見ると、アフリカではタンザニア・エチオピアの一部、南アメリカではチリ・ブラジルの一部、アジアでは中国の一部を除いて新規の面積拡大は既に止まり、既存のところは縮小を計画したり、現に縮小を余儀なくされたりしているところがいくつもある。

小生から「今後の食料品高で花の生産はここ1?2年はもう増えないと見て良いか」との質問に「増えない」で3者は一致した。国内の生産はというと、天然ガスを使っているオランダやデンマークなど、そして21世紀になってもう一度花の大規模栽培が行なわれてきたカルフォルニア州は生産面積で横ばい。日本は海外と比べてみると一戸あたりの面積が小さく、それぞれの生産者も採算が悪化しており、5?10%出荷量が落ちるのではないかと予測される。

今期の第1四半期である4?6月が前年度と最も違う点は、一輪菊が安いことだ。葬祭の飾り付けの洋風化もあるが、それよりももっと大きいのが白の一輪菊の大産地が燃料高で過去にない出荷パターンとなっており、花き業界人が経験してきた相場見通しが大幅に狂ってしまい、結局景気動向を反映して安値になっている点だ。足元では緊急の出荷調整とまた今後の生産計画段階での国内主力産地の出荷量の適正化を計る以外にないが、原油高が更に進むとなると12月?4月までの菊・バラ・カーネーション・鉢物類の作型が大幅に狂ってくることもリスクとして覚悟しておかなければならない。これは日本の花き事情を知るアメリカ人とオランダ人の意見だが、小生もそう思う。日本の農業者の場合、目標は赤字にならず事業を存続し、後継者を育成することにあり、決して利益を得るために花作りをしている訳ではない。そうなると、今後の対策としてこの考え方はどうだろうか。花作りを4つのカテゴリーに分けて、収入の得方を考えるべきではないかと思う。1つは地元の道の駅やファーマ?ズマーケット、あるいは農協の直売所などで花や苗を販売する生産者。自分で持ち込んで、場所代などで10?15%手数料を払う。次にもう少し広く地元の卸売市場にも出す、あるいは拠点的な直売所に出す生産者。3番目には道州制に基づいた地域の拠点的な市場に出荷する生産者。最後に政令都市や大消費地に出荷していく生産者や産地。この4種類に分けて、出荷先や販売先から逆算して花き生産の有り様を考えなければならないのではないか。現在、日本国内で増えているのは規模の小さい、あるいはお母さん方が取り組んでいる地産地消型の花作りだ。直売所での価格設定が安すぎる場合が多い。裾物だからこの値段でということが多いのは解かる。この値段を見た地域の小売店はもっと安くしなければいけないと安売り競争になってしまっている。また花屋さんが成り立たなくなっている時期や地域もある。しかし今はこの山を越えないと4つの類別の生産者が活躍することが出来ず、日本農業の新しい形も生まれない。産業としての農業、自分で作り自分で消費することの延長線上の農業、それぞれに合った農産物流通にきちんと分けて、農業を再生するまたとないきっかけが今だと、私はアメリカ人とオランダ人とのディスカッションで強く感じた。農業に対する更なる理解を日本国民に促す絶好のチャンスが訪れたので、生産者と販売、それに合わせた流通業者の役割など新たに定義しなおして、農業分野でも21世紀に通用する農業の有り様を再構築していきたいと思う。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2008年6月 2日

白のシャクヤク

シャクヤクのシーズンは終盤になってきた。年々肥培管理が良くなり、あの大きな花を支える茎のつくりが上達して、満開になっても垂れ下がらないものが多い。日本の生産者の技術進歩はたいしたものだと敬服する。今年の白のシャクヤクは、もっと結婚式で多く使われるのかと思ったらその伸びは止まった。業界関係者に聞くと、「いいのですが、ちょうど良い時期に咲かせるそのタイミングがむずかしいのです。この時期にしかないのでできればシャクヤクを使いたいところですが、その納めるタイミングと開花のバランスのむずかしさ、どうしてもロスが出てしまうのです」と言う。

仕事は質(スペック)、単価、納期だが、事前に買って咲かせておく手間と納期のむずかしさがシャクヤクにあるのだと言う。それでは何に代わられたのか。アジサイの白に替わることが多いようだ。大量に必要な場合にはオランダから取るが、一定数量だったら切花のアジサイを周年化に近く作っている生産者もいらっしゃるし、この時期なら鉢物もあるから結婚式ではアジサイがシャクヤクの代わりになっているわけだ。

マイケル・ポーターの競合状態を示す4要素というと、新規参入、代替品、買い手の圧力、売り手の圧力の4つだが、どうしてもシャクヤクで結婚式をしたいという人以外は業者としてはアジサイをすすめてゆくようだ。

この競合状態と同じことが切花・鉢物・苗物を扱う花き卸売市場業界でも起きている。8年前は卸売市場流通の金額は6000億円あったが、今では市場間転送を除いて推定4000億円。2000億円少なくなった。1000億円分は新規参入で代替品でもある本物そっくりに作られた水や肥料いらずの観葉植物や蘭の鉢、造花のアレンジメントやプリザーブドフラワー。また他の1000億円が市場外流通。売り手である荷主との交渉から市場外流通が発生し、また買い手との交渉からこれも市場外流通と単価の下げ。

そこで今後だが、5月29日のOECDの発表によると、農産物価格は10年で3?4割高くなると言われている。よって花き生産は世界レベルでこれ以上増えてこない可能性がある。だから今まで先人たちが苦労して作ってきたサプライチェーンをしっかり守り、進化させていく必要がある。足元では、卸売市場は作り手と買い手にとって最も信頼のおける、安心して出荷・仕入ができる「場」でなければならない。その役割は規模経済を考えるか、地域の経済を考えるかは立地条件、規模によって異なる。いずれにせよ与えられたその卸売市場の使命を大小かかわりなく発揮されることを期待したい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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