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2008年6月 2日

白のシャクヤク

シャクヤクのシーズンは終盤になってきた。年々肥培管理が良くなり、あの大きな花を支える茎のつくりが上達して、満開になっても垂れ下がらないものが多い。日本の生産者の技術進歩はたいしたものだと敬服する。今年の白のシャクヤクは、もっと結婚式で多く使われるのかと思ったらその伸びは止まった。業界関係者に聞くと、「いいのですが、ちょうど良い時期に咲かせるそのタイミングがむずかしいのです。この時期にしかないのでできればシャクヤクを使いたいところですが、その納めるタイミングと開花のバランスのむずかしさ、どうしてもロスが出てしまうのです」と言う。

仕事は質(スペック)、単価、納期だが、事前に買って咲かせておく手間と納期のむずかしさがシャクヤクにあるのだと言う。それでは何に代わられたのか。アジサイの白に替わることが多いようだ。大量に必要な場合にはオランダから取るが、一定数量だったら切花のアジサイを周年化に近く作っている生産者もいらっしゃるし、この時期なら鉢物もあるから結婚式ではアジサイがシャクヤクの代わりになっているわけだ。

マイケル・ポーターの競合状態を示す4要素というと、新規参入、代替品、買い手の圧力、売り手の圧力の4つだが、どうしてもシャクヤクで結婚式をしたいという人以外は業者としてはアジサイをすすめてゆくようだ。

この競合状態と同じことが切花・鉢物・苗物を扱う花き卸売市場業界でも起きている。8年前は卸売市場流通の金額は6000億円あったが、今では市場間転送を除いて推定4000億円。2000億円少なくなった。1000億円分は新規参入で代替品でもある本物そっくりに作られた水や肥料いらずの観葉植物や蘭の鉢、造花のアレンジメントやプリザーブドフラワー。また他の1000億円が市場外流通。売り手である荷主との交渉から市場外流通が発生し、また買い手との交渉からこれも市場外流通と単価の下げ。

そこで今後だが、5月29日のOECDの発表によると、農産物価格は10年で3?4割高くなると言われている。よって花き生産は世界レベルでこれ以上増えてこない可能性がある。だから今まで先人たちが苦労して作ってきたサプライチェーンをしっかり守り、進化させていく必要がある。足元では、卸売市場は作り手と買い手にとって最も信頼のおける、安心して出荷・仕入ができる「場」でなければならない。その役割は規模経済を考えるか、地域の経済を考えるかは立地条件、規模によって異なる。いずれにせよ与えられたその卸売市場の使命を大小かかわりなく発揮されることを期待したい。

投稿者 磯村信夫 : 2008年6月 2日 00:00

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