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2008年9月29日

乱調相場をストップさせる

お天気がおかしいのと重油代や生産資材も運賃も高くなり、出荷作型や一部には出荷先の変更があった。例年だとこの時期はこの産地からこういう花がどのくらい出てくるといった経験や過去の記録が通用しないのが今年の特徴だ。9月の果物はここ5年間で最も安かったそうだが、花も同様で天気・景気・やる気の3つが揃うと爆発するのだが、どうも湿っぽくていけない。産地と連絡をさらに密にして、精度の高い出荷計画を月ベース、週ベースでもらい、販売作戦を仲卸まで含め三社で協議していかないと相場の乱調を止めることは出来ない。

そこまで時間が取れないという産地や買受人もいよう。もちろん卸の社員も全部の産地のものを作戦会議を開いて計画を作ることなぞ難しいだろう。そのために産地は自分の荷はどのように販売されたかを担当者に電話をするなどして、きちんと把握することが必要だ。大田花きでは関係会社の花の生活研究所が当日のデータだけでなく、今までの実績のデータを加えたものを分析し、傾向値を示して未来予測をしたり、自分の産地の上得意先を知らせたりしている。この「ここほれわんわん」のシステムをぜひとも花市場で広く取り入れて、産地に流通実体を知ってもらった上で共に販売戦略や新品種の導入などにつなげ、より魅力ある産地を作っていく必要がある。

カサブランカで有名な高知県のある産地の方から、「社長、この番号の人に売らんといてや。いつも安くてしょうがない」と言われたことがある。小生から「この人はスイーパーと言おうか、ストッパーと言おうか、ぎりぎりのところで支えてくれる人です。こういう人がいるから御地の名声が保たれ、カサブランカの平均単価が高いのです。」と話した。ここまで産地に知ってもらい、共に今後どうしようかと作戦を練っていかなければならない。

それにしても出荷期と出荷物が不安定な年回りになっているし、生産経費が上がったのに消費する力が弱い。これから2年、選択と集中で卸は産地や買い手と連絡を密に取りながら仕事をして、消費者に良いものを受け入れられる価格で提供していこうと思う。まずは出荷情報を正しく、狂いのないものにするところからだ。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2008年9月22日

上半期最終月の動向

今日は三点をお知らせします。

1、9月の彼岸の商況
台風にたたられた一週間であった。景気が良くないから下振れの幅も大きい。過去2年間、8月・9月と相場がしっかりしていたこともあって、作付けも先週は需要よりも多かった。前年比だけで見れば、2ケタマイナスの需要となった。

2、汚染米に端を発する安全安心と不当表示問題
日本の農業関係者は消費者の理解をいただき、値上げで少しでも手取りを増やし、資材の値上がり分のマイナスを跳ね返したいところだ。ところが農水大臣と事務次官の更迭があったわけだが、それがまた多大な迷惑を及ぼした。トレーサビリティーによって安全安心基準を担保する必要がある。残留農薬問題、ポジティブリスト、ユーレップGAP、世界の花の安全安心運動MPS、そして近頃はカーボンフットプリント、そしてフェアトレードなどいくつもの農産物表示がある。ここで大切なのは第三者がチェックしている基準はどれなのかということである。これらの表示を信用できるのか。コンプライアンスからも必ず第三者チェックが必要で、本当に不当表示はないのか自主検査のみのところと分けて表示させるよう業界の運動と行政指導が必要だ。

3、緊急特別販売対策会議
先日、2つのJA県連で緊急販売対策会議が開催された。今年に入ってから花も野菜も果物も、過去3年間で単価が最も低い状況が続いている。燃料、肥料、ダンボール、保温ビニール、運賃などが高騰し、生産者は「もう農業を続けたくても出来ない」と言うのだ。今まで「厳しい」いう形容詞が使われていたが、厳しさを通り越して「深刻」だ。

生産側では種苗会社からJAや輸送会社まで、農家を応援する組織がある。農家は市場に販売を委託し、消費地では卸売市場(卸・仲卸)は再販業者である小売店に買ってもらい花を消費者に届ける。チームの一員である小売店にもっと産地の現実を理解してもらう必要がある。サプライチェーン全体が全体最適でない限り、生産は持たないのだ。具体的には卸売市場で主要な買い手を集め、販売対策会議を開く。各県がバラバラに開催しては大変だから、県連の消費地事務所の横の連絡会で調整をし、担当を決めて行なう。一度だけではダメで、少なくとも中央卸売市場で、東京でも3回は必要なのではないか。同時に契約でも生産者の再生産単価をきちんと提示する必要がある。

個人の生産者は冬に暖房をしないで休む人もいて、昨年同様冬もしっかり出荷しますと言う人はまれだ。花き部会など組織化されている出荷団体は需要期を外してしまったり、温室の回転率が下がったりすることが、結局消費者に迷惑を掛けることになり、取引先に当てにされないようではいけないと、せいぜい少なくなっても一割くらいの出荷減を予定している産地が多い。

2009年の冬、はなを消費者に届けるために、この秋のうちに生産者の現状を買い手に理解してもらうことが卸売市場として必要だ。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2008年9月15日

伝える力

昨日、定点観測に出た。一部の新聞にも出ているようにガソリン価格の値下がりで消費マインドはいくらか明るさが増しているようだ。だが、秋物の洋服は気温が高いせいで動きが鈍い。昨年は真夏に秋物を出していて売れていたが、節約志向で準備するだとか先取りするだとかの楽しみ方をしなくなっているようだ。これは花も一緒で、季節の先取商品や新品種が出たときにプロモーションをしっかりやっておかないと評価されにくくなっている。今年の9月のように、暑いときもあるし夕立があるなど、天候も今ひとつだとするとどうも見過ごされてしまう。物日は売れるが、間の日が効かないと小売り商は言う。それは無理して先取品を買わないというマインドが消費者にあるからだろう。どのようにお客様に周知させるか、B2CにしてもB2Bにしてもプロモーション活動の必要性を強く感じる。

この9月、冬場の作付けをどうするか産地は意思決定する。真冬も変わらず生産すると決めたところは特別に販売対策会議を開き、どのように消費者や小売店に生産地の苦しい胸の内現状を知ってもらい、いかに販売につなげるか、対策をともに話し合う。

つい4年前までは卸売市場はプロの集う場所として、何の説明もせずして淡々と取引が行なわれていた。しかし相対がセリと同様の取引と認められ、比率が高まり、買付も正式な取引と認められるようになった今日、かつての卸売市場と全く違った形態になっている。際立った違いはプロモーションの力があるかないか、やり方が上手か下手かである。それによって産地はその卸と付き合うか付き合わないかを決める。プロモーションは少し長い目で見れば、必ず産地に利をもたらすからだ。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2008年9月 8日

カーネーション?日本で作りはじめて100年

エコロジーと季節感、花保ちの良さとボリュームをつける花材として、枝物は珍重されている。活け花やフラワーデザインなどお稽古需要が少なくなって、枝物の相場が出る市場が限られてきた中で、大田花きは都心の大きな空間やオフィス・飲食店などの活け込みの需要が大変多くあるので、枝物の比率が際立って高い。そしてもう一つ、都市型の卸売会社の割には比率が高いのがカーネーションである。

財団法人花普及センターによると、日本で切花のカーネーションを栽培し始めて100年だそうだ。カーネーションは花保ちが良く、スプレーカーネーションは花束やアレンジを構成する基礎の花、大輪カーネーションはメインの花として使われる。特に一本立ちの大輪はすばらしい品種が近年作出され、特別な栽培方法によるレリシアカーネーションなど、一本だけでなく二本を重ね合わせた花も出回って、女王の地位を確保している。

国産のカーネーションはこのようにがんばっているが生産が少なくなっているのも事実で、市場によってはコロンビア産のカーネーションを主力に売っているところもある。コロンビアのカーネーションは適地適作で、切花後1週間から10日経って小売店の手元に届くが、鮮度管理の良さもあって花保ちは良い。また昨年からイタリアのノビオ博士の品種が作られるようになり、地中海の花カーネーションの文化がコロンビアから発信されるようになってきた。これは日本の消費者にとっても魅力である。

中国のカーネーションは物日の仏花素材として使う人も増えてきているが、品質にムラがある。中国はコロンビアに学ばなければならない。コロンビアと中国雲南省のカーネーションは競争力がある。よって国内産地は販売委託先の卸売り会社とよく連絡を取り、出荷時期からどのような品種を誰に売るのかなど目標をともに作り上げる必要がある。

100年目にして、石油はじめ生産資材の高騰で苦慮しているカーネーション生産者は多いが、12月・3月・母の日の需要期を外してしまっては何もならない。ぜひとも経営の課題として、リスクを勘案し、生産原価アップをどこでどうやって賄うか検討し、今期の出荷を決めてほしい。その際この経営環境は来年も続くとして意思決定してほしい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2008年9月 1日

新しいバラ生産の段階

日本のGDPは第一四半期、年率換算でマイナス2.4%となった。シンクタンクの分析では、余剰の設備も人員もあまりないとして、第一四半期を底に、大企業は業績を反転させるとしている。しかし、生活関連物資の値上がりで個人消費がしぼみ、中小零細企業を中心に底ばい状態が続くとしている。今回の特徴は中小零細企業、とりわけ内需関連が上がらないということだ。シンクタンクは言う。「しかし以前のようにどんどん悪くなるという状況下にはありません。」

石油はじめ、生産資材の急激な高騰で対応が追いついていけず、不安な気持ちを持つ人が多い花の生産業界ではあるが、8月30日(土)に第18回大田花き薔薇会議が盛大に執り行われた。花作りで冷房をしていたのは胡蝶蘭栽培だけであったが、夏場の品質を上げようと西南暖地のバラ生産者が最初に導入した。2年前から石油が値上がりし、深夜電力を使って油代の節約にも使った。こうして農業分野でヒートポンプをいかに使い、湿度のコントロールまで行なって一年中品質の安定した多種多様な薔薇を需要に合わせて作って行くかという段階に日本のバラ生産は突入した。需要にあわせる、あるいは半歩先取りする、そういったタフで攻撃的なバラ生産に入ったわけだ。現段階はヒートポンプを組み入れた栽培方法は先駆的生産者が試行を繰り返し、会合を持ちながら意見交換をし、自分の新しい技術とする。こういった進化の過程にあるが、バラの切花は日本の花き産業の大看板であるから、この機に進化し、多数の成功者が出ることを願っている。もちろん日本の花き市場は助力を惜しまない。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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