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2008年11月17日

来るべき冬の価格設定

9、10、11月と三大都市近郊で、花が露地で作れる時期なのに入荷が前年を下回る月が続いている。特にここ数年は小菊が少ない。そう実感するようになったのは農薬問題からだ。最初は指定農薬で花の消毒に使える農薬が少なくなった。だから効く農薬がなくなったと特に露地栽培の生産者は嘆いていた。そのうち農薬はポジティブリスト制になって、この農薬以外は使ってはならないとなった。露地菊の産地は露地野菜の産地にある。隣が野菜を作っているとなると、野菜の農薬検査をしたときに、指定外の農薬が入っていたのでは困る。また残留農薬の問題もあろう。そういうことから野菜の畑の中に花の畑が点在するということが徐々になくなってきた。

だいたい露地花は高齢者が作っている。若い花作りは簡易温室のところもあるが、ビニールハウスかガラス温室が普通だ。3年くらい前から肥料や農薬、運賃が上がり始めた。特に今年に入ってからは本当に値上がりがきつく、生産費がかさむばっかりであるのに消費不振から市場の相場はパッとしない。こうなるとやる気が失せて、露地物は本当に少なくなった。またご高齢の生産者が花つくりをやめていくことが多くなった。今年の夏は集中豪雨があったが猛暑ではなかった。台風も来なかった。それなのに露地花のシンボルである小菊が足りない。これは意欲が減退した、やる気が失せた、少なくても「無理することはない、やってもしょうがないのではないか」という気持ちが蔓延しているのだろう。困ったことだが事実は事実。単価にはまだあらわれてこないが、消費が減退していくスピードよりも、供給の先細りの方が早く起こっており、今後需給バランスを押し測った価格設定をどのように行なっていくかがポイントになる。
消費者は景気が悪いから節約志向になっている。その中でも限られた財源で、元気に明るく快適に生活したいと思っている。だから安全安心な国産野菜や果物、次いで花と青果花きでは順番付けられる。野菜や果物は重要度が高いし、中国製品の問題があるから前年並みの売上を確保できるかもしれない。しかし花はその次に来るから少し需要は減るだろう。だがそれよりも供給量が少ないとなると、価格設定が難しい。どうしてもこれだけ生産経費が値上がりしたから、加工食品と同じ様に値上げと考えがちになる。だがそのとき、このように考えて欲しい。「いや、待てよ。消費者もボーナスが減って、しかも生活費はかさんでいる。とにかく花を選んでもらわなければならない。いっぱいある商品の中から花を選んで買ってもらうにはここは我慢のしどころ。とにかく花のある生活をしてもらう。そして消費者から買っていただこう。」こういう風に考えて商売してもらうのが今年だ。

年度前半(4月から9月まで)は昨年よりも1割以上も単価が安い日が続いた。10月も同様。仕入れが安かったので今年は楽だと利益を出している花屋さんが少なくとも全体の中で三分の一はいる。そういう人たちは高く買えるだけの余裕がある。そうでない人たちは商店街立地や駅前立地などかつては良かったが、街が変わってさびれたところで花屋さんをやっている。そういった三分の二の花屋さんは本年度のように単価が安くても利益があまり出ていない。どうも花き小売業界においても、皆が良いということはないようだ。だから時期によって消費者やがんばっている花屋さんに認められている花や産地は、消費者の生活の優先順位からいって今後、前年並みの単価をまず目標にする。ここからこの冬の価格設定を始めていきたいと思う。

投稿者 磯村信夫 : 2008年11月17日 00:00

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