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2008年12月29日

2008年3大ニュース

今日の止市は入荷量、買参人数とも例年の2?3割増。しかしスプレー菊、小菊、キンセンカは低調。暮れ相場はカサブランカなどオリエンタルハイブリッドであった。

2008年を振り返ると、手数料率の自由化と奨励金制度の取決めを妥当な線で決着したことが最も大きな出来事である。手数料率については、卸売会社は開設者である東京都へ中期計画を添えてパーセンテージの届け出をし、東京都は経営状況を鑑み、それを認めるというものである。今回出された委託物品に対する手数料率を改定する場合は、3年後の2011年となる。出荷奨励金については、都内の花き卸売市場に歴年で10億円以上出荷した県連を対象にし、東京都に申請して承認を受ける。一農協あたりでは5億円以上とし、同様の手続きをとる。額は2/1000?3/1000である。完納奨励金については、都内の買参人・仲卸・卸で構成する東京都花き振興協議会での決議に従い、花きの買参人組合は代払い制度を行なっていないので廃止する。ただし個々の買参人と取引契約締結の時期が異なるので、不公平にならぬよう2011年3月31日までを猶予期間とした。さて手数料率の自由化が方針付けられたが、生産食料品と花き、それぞれの卸売市場の市場流通とは今後どうあるべきか、方針を出したいと考え、中央魚類の伊藤社長を会長に、東京青果の大井副社長、東日本板橋花きの樋口社長、そして事務局を東京農業大学の藤島先生にお願いし、「市場流通ビジョンを考える会」を立ち上げた。2008年、2009年の二ヵ年をかけて方針を出していくために、今年は2回勉強会を行なった。

二つ目の重大な出来事として、MPSが環境意識の高まりとともに花き業界では必要な資格となってきたことである。春に弊社ではMPSトレサートをオランダのラインズブルグの市場に次いで、世界で二番目に取得をしたが、この動きは生産者と仲卸の間にも広まっていった。また環境問題の広がりとともに、花き業界では日比谷花壇殿がカーボンオフセットの花束や鉢などを売り出し、弊社の関連会社である大田花き花の生活研究所はC.H.C.システム殿と一緒にC.O.P.ステーションを作り、実際に炭酸ガスを吸って酸素を出す植物C.O.P.を販売して注目を浴びた。

三つ目の大きな出来事として、資材の高騰と世界同時不況が生産者の経営を直撃したことが挙げられる。2008年1月から法人ギフトの数が少なくなりはじめ、母の日以降は前年の半分となり、さらに10月以降は半分すら行かない状況となった。石油・製品・運賃・ダンボールの高騰は生産者手取りを直撃した。冬作を計画する夏に、原油先物価格が高騰し、生産者の先行き不安をあおった。その後、原油価格は急落したものの、今度は世界同時不況が実体経済に影響を及ぼし、自動車産業や輸出が多い大手メーカーの工場などがある地域はクリスマスだけでなく正月までも低調な市況展開となり、生産者の収入を直撃した。来期は需要がどこにあるかを見極め、個人消費にターゲットを絞って生産出荷していくことになろう。


本年1年、ご愛読いただきまして誠にありがとうございました。
皆様方におかれましては、良いお年をお迎えください。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2008年12月22日

千両市、苔松・苔梅市

昨日は千両市、苔松・苔梅市であった。20日を過ぎての千両市は初めてのことで、日本列島を見渡しても東京は一番遅い千両市であったと思う。先に市を行なったところでは、九州の相場は昨年並みから3割安。それ以外のところでも3割安が一般的で、卸売市場によっては昨年の半値のところもあった。今年の千両は表年で実付きが大変良く、上位等級が多かったから、当然箱数が多く出る。本数でも多く、さらに箱数が多かったわけだから日本中の市場では平均して2割以上多かったわけである。3割増の半値は我々プロが持つ花の相場感だが、今年もまさにそうなった。安値相場の中でも、気を吐いていたのは撰別が厳しい(自らに厳しい荷主さんの)千両であった。特・1・2・3上・3としっかり撰別が出来ている産地は相場がしっかりしていた。しかし「これで1等か・・・」、「これが2級か・・・」という撰別のあまい産地もあり、そういうところの品物は特級はそこそこ売れたが、それ以下がいけない。大勢でやる仕事が松や千両の仕事だ。トップの心意気によってこうも変わるのかと相場の格差にビックリする。景気が悪いときほど買参人の要求は厳しい。厳しく自己を律して撰花、撰別した産地のものは高い評価を得ていた。よく言われる「世間は嘘をつかない」であり、「目は節穴ということはありえない」のだ。

苔松の話しを若干すると、今年はよく売れた。荷主さんはこんな景気だから大きな苔松の数を少し控えていたが、西洋人のクリスマス同様、日本人は正月をきちんと行なう。ホテルや料理屋など、例年通りの良いものを仕込んでいった。苔松・苔梅は昨年よりよく売れた。花き業界の心意気を見たようで、昨日は大変嬉しかった。


今、花き卸売市場業界では、相対とせりの比率が逆転してきた。せりが活性化され、活きている市場はそんなに多くない。せりを販売の手段として使っていても、相対だと1人1人を相手にしなければならないが、せりだと多数を相手にできる。「この値段でどうだ?」と言って、誰もいなければ値段を下げ、「この値段でどうだ?」というように、せり下げ定価売りをしているところが増えてきた。もちろんすでにせりを行なわない卸売市場や、せり前相対で残ったものをせりで処分する卸売市場が多くある。こういう状況の中で今年の松市と千両市が行なわれた。景気が悪いから、需給バランスは供給の方が多いという中での松・千両市であった。焦って販売し、せり前相対で安値で仕切ってしまった市場も多い。せりをやらないのならそれで良いのだが、松と千両の市はせりを行なう。よって昔と同じ様に品揃えが大切なわけだ。欲しいものがなくて花屋さんはせりに参加するだろうか。「ろくなものがないと」買参人はせりに参加しなかったから、今年いくつもの市場でとんでもない相場となった。来年は必要数量だけ注文するようになるだろう。それが生産者の声だし、小売店の声でもある。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2008年12月15日

消費者中心経営

昨日は松市だった。景気の悪さを反映して、1?2割の安値といったところである。しかし昨年までは人気薄であった根引松や五葉松など、生け花やアレンジの素養がないと使いこなせない松が活発に動いた。
それには二つの理由があろう。一つは男松にせよ女松にせよ、良い根引きやナタ切りのものなど、生産量が少なくなって地方の大手の花屋さんや市場の人たちが大田花きのせりに参加するようになったこと。二つ目はこの経済の調整局面を自分たちの生き残りの局面と捉えて、専門店は積極的に量販店で売りにくい根引松や五葉松を売ろうと前向きに取り組んだこと。

このように花の専門店としての持味を前面に押し出し、この難局を乗り切っていこうとする意欲は今年のフラワーオブザイヤーOTAにも表れている。詳しくはHPのサイトを見ていただきたいと思うが、2年連続でダリアの‘黒蝶’が年間グランプリに輝き、しかも昨年の新ふくしま農協から、今年の秋グランプリは山形おきたま農協、そしてさらに年間グランプリではダリアを安定して年間出荷することを目的に作られたみなみ信州農協花き部会の‘黒蝶’が選ばれた。

私はこのことをこのように捉えている。不安定な時代にあって仕事を続けていくためには、時代を映し出す花を選ばなければならない。そこで花屋さんは‘黒蝶’を仕入れた。そしてその花屋さんは‘黒蝶’を使い、飾った。お客様はお金を払っただけのことはあると感じ、花屋さんは対価以上のものをお客様へ差し上げることが出来た。消費者に買ってもらう「第一の真実の瞬間」に‘黒蝶’は勝利し、ユーザーや消費者に使いやすさや花保ち、揃い、そして美しさなどを与えたみなみ信州農協は「第二回目の真実の瞬間」に勝利した。特に経済の調整局面ではリピーターを作る「第二回目の真実の瞬間」で必ず勝利しないと明日はない。

花き業界のすべての人たちのお客様はただ一人、消費者だ。その消費者にお金を払ってもその花のある生活のシーンが良かったと思ってもらい、リピーターになってもらうこと。これが種苗・生産・農協・運送・卸・仲卸・小売の花のサプライチェーンを構成するすべての人たちの共通で唯一の目標である。花き業界は今、消費者中心経営をしようとする人たちによって再編されようとしている。景気が悪くなればなるほど、消費者主義の花き業界の完成度が逆説的に高くなってゆく。誰しも今つらいところだが、消費者に喜んでもらえることを念頭に、自分の役割に磨きをかけ、花き業界全体の最適のために取り組めればと思う。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2008年12月 8日

第50週の荷動き

いつもだと繁華街だけ定点観測を行なうが、昨日はそのうちの一つのお台場と品川、大井、大森の住宅地や商店街で観測を行なった。

お台場ではアクアシティを見てみた。新しく開発された商業地として人が集まるが、お台場という土地柄か海のイメージでクリスマスということではなさそうで思ったよりも人は少なかった。買い気については他の商業地との競争による減が半分、そして景気の悪さがそれに追い討ちを掛けているといった感じだ。一方、ホテルは二つあるがいずれも結婚式はコンスタントに行なわれていて昨日も何件もあり、その意味では結婚式のスポットとしての人気は高いようだ。

高輪、品川から大森、蒲田にかけての花店は日曜には5軒に3軒は営業しているが、2軒は休んでいるといった風で、質の良いシクラメンやポインセチア、シンビジュームなどが店頭を賑わせてはいるが、荷動きは今ひとつといったところであった。特にシクラメンについては、ヨーロッパと同じ様に多くの人は小さな鉢の方が好きで、大きな鉢の方が好きな人は以前に比べて少なくなってきている。だから市場でも大きいものを作る技を持つ荷主さんの荷をしっかり評価し販売しなければならない。来年はさらにフォーマルな感じのシクラメンからカジュアルなシクラメン、小さなシクラメンに移行するだろう。需要は街の花屋さんでもそのようになっている。家族も個人化しており、花鉢もシクラメンだけでなく、シンビジュームも一回り小さくなっている。景気動向から大鉢の業務用から小鉢のパーソナルユースへの流れは加速化している。


P.S. COP商品のPR
日経流通新聞に大田花き花の生活研究所が参画しているCOPステーション発売のカーボンオフセットプラントが紹介されたので問い合わせがあり、ここでもポイントのみお答えします。

今年の4月、丸の内フラワーウィークスでCOP(カーボンオフセットプラント)の商品紹介をしました。大田花き花の生活研究所と大田花きの商品開発室で商品を開発し展示したのです。その後、実際にどのくらい炭酸ガスを酸素に代えているか実測し、計器を使って目に見える形で商品の効能を説明しようと、町田にある株式会社C.H.C.システムと協業し、「COPステーション」というショールームをつくり、そこで実測をしてきました。

科学的な検証に加え、観賞価値の高いデザインも盛り込みましたので、この度日経流通新聞にお知らせしたわけです。夜間も炭酸ガスを吸って、屋内で長生きする。そして見た目にも大変美しい。良いところだらけの商品がCOPです。ご興味のある方は「COPステーション」までお問い合わせください。(TEL:03-3485-2830)

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2008年12月 1日

A重油下がる しかし・・・

昨日の夕方の交通情報では、行楽地に行った人たちの帰り渋滞で、どこの高速道路も混雑していたという。ガソリン代が下がったから、家族でドライブを楽しむ人たちが復活した。

花作りで使う重油はA重油だ。11月はリッターあたり85円だったが、12月には65円となった。地域によっては今も70円台のところもあるが、もうかなり下がってきている。しかしニュースでは経済的に暗い話しばかり。花き業界もシクラメンやポインセチア、シンピジュームなど、冬の商戦が始まったがどうもいけない。給料支給後の最初の土、日だというのに、昨日、一昨日は店頭の荷動きが良くなかった。こうなると今週の4日や5日にボーナスを支給する会社が多いが、受け取った社員は前から聞かされているものの、実際に昨年より少ないとなるとやっぱり消費意欲は減退する。これは一般社員についてだが、今年はパート・アルバイトにまで賞与が支給できる状態の会社は本当に少ないと見るべきだろう。世の奥さん方が家計を握っているわけだから、第51週の15日頃まで、あるいは少し長く見て20日頃まで、個人消費は少し元気のない状況となるのではないかと推測する人たちが多い。こういう状況下ではA重油がリッター65円になっても、なかなか生産者は焚ききれないところだ。特にこの冬、出荷するかしないかを決めたところで、農協の部会や地域の生産出荷組合の活動が活発な地域は情報交換して、暖房効率の良いハウスは加温し出荷するが、効率の悪いハウスや冬出荷するには新たな設備投資が必要なハウスは出荷しないことにしている。花き部会の活動が活発でない個人出荷が多い地域は、高齢化や後継者がいないこともあって冬は休むところが多い。こうなると品目によって違うものの、この冬2割以上少なくなることが想定される。

話しは変わるが、先日ソウルに行ったとき、「今度の不況で花の需要が3割減っています。日本はどうですか」と聞かれたので、「今のところ1割減っていますが、今後の実態経済への影響を考えると15%?20%減るかもしれません。今までの努力しかしない場合には10%?20%減。しかし消費者に花の良さや花のある生活の楽しさ、そして割安であることを伝えることができれば1割の需要減で止めることが出来ると思います。ヨーロッパでは不動産バブルが激しかった国を除いて、5%のデフレで済み、消費量は変わらないと見ているようですが、日本は残念ながらお客さんが減って、消費本数や鉢数が1割減ると見ています」と答えた。そのソウルの著名な経済人は「日本は3万5000ドルの年収、韓国は2万ドル。ウォンが下がり、今後輸出は急増すると思いますが、輸入品である油代はそうは下がらず、国内の施設園芸に打撃を与えています。パプリカなどの果菜類と花を日本に輸出していますがどこまで帳尻が合うか、工業はどうにか乗り切っていきますが農業が心配です。韓国国内で花の需要が3割減になっていると推測しますから、どうしても12月は日本に頼らざるを得ないところです。日本の全体の出荷量は12月どうなりますか」と聞くので、「大産地は昨年よりも1割多いですが、日本の多数の小産地や小さな生産者は花の栽培をやめており、全体で昨年よりも1割以上少ないのではないかと推測しています。1割少ないとなると、今年の傾向として需給バランスが取れ、単価は昨年よりも安くなっていますが、80%代になると単価が反発します。12月20日以降、年末年始の花の需要は例年と比べてそんなに落ち込まないでしょう。クリスマスと正月を迎えるとき、そんなにケチってどうするのだと考えている人が多いでしょうから、月の前半が難しそうですが、月の後半は悲観することないのではないでしょうか」と話してきた。

その方は花に関係のない人だが、日本に留学の経験もあり、お母さんが生け花を学んでいたこともあって、韓国民の豊かさのシンボルとして花のある生活があると考えている方だ。文化の交流もお互いにできるようになり、共々今後良き隣人として交流を深めていく。その中に花の輸出入がある。今は日本に来るばかりだが、日本のすばらしい花をウォン相場が落ち着いたら韓国に輸出できると思う。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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