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2009年1月19日

花市場にとって最も大切な荷主さん

1年で1回しか行なわない市に1年の計をかける松と千両の荷主さん。その荷主さんと市場のつながりは太い絆で結ばれている。

17日(土)と18日(日)、千両と松の荷主さんである遠藤小左衛門農園の会長にあたる照一さんの葬儀があり茨城県波崎町に出向いた。波崎は利根川を挟んで銚子の対岸に位置する温暖なところだ。照一さんの父君である小左衛門さんが千両を導入し、私の祖父謙蔵が経営をしていた大森園芸に出荷をしてくださった。照一さんは私の父民夫を信頼してくださり、一番の千両の荷主さんとして花屋さんから高い評価を受けた。現在の棟主である幸夫さんの代になり、さらに品質を極め、大田花きで最も信頼される松と千両の荷主さんの一つとなっている。市は1年で1回のことだから信義しかない。

松は種蒔きをして3年目、ないし4年目に若松やカラゲ松、門松などを出荷する。3?4年のサイクルで絶えず仕事をする。これら若松の類をスジものと言うが、かつては鹿島の松、波崎の千両と特産地が分かれていた。しかし、撰別・荷づくりをする熟練工の人材確保が1ヶ月くらいの短期間だと所得の面から難しくなってきた。今では松だけの鹿島の生産者の数は10人と減って、2ヶ月以上雇用の期間を設定できる松と千両の波崎の生産者が日本のお正月を祝う縁起物の大産地となっている。その中でも有数の生産者が遠藤照一さんであった。同業者の後輩である岡野三男さんを弟のようにかわいがり、自分の出荷先に荷を出すことを認めてきた。たまたまだったのかもしれないが、弊社大田花きと大阪のなにわ花いちば殿をメインに出荷しており、質や量の面で競争が最も激しいといわれるこの2市場で弟分の岡野農園を好敵手としながら、消費者と花屋さんの立場に立った生産・出荷を行い、時代と共に重きを置くポイントを変えながら現在に至っている。

農産物である千両や松は天候など自然の影響を受ける。だから契約取引をお願いしても遠藤さんは確実にできる量しか受けてくださらない。「そこまで硬く見なくてもいいんじゃないですか?」と言っても、「もうそれ以上は受けられない」と言って、断ってしまう。そんな風だから、せりで仕入れてくれる決して大きくないお花屋さんの1人1人の期待に応えようと、やってみなければわからないせりにどんと出荷してくる。安定収入を求める事業家としての当然の要望よりも、遠藤さんの価値観はそれよりもさらに高いところにあるようだ。尊敬する荷主さんのうちの1人である遠藤小左衛門農園の遠藤照一さんの葬儀に参列してきた。

投稿者 磯村信夫 : 2009年1月19日 00:00

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