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2009年2月23日

順番に下押し荷あまる

今日23日は3月を占う日であったが、20日の金曜日は北国で久しぶりの豪雪で、東北地方の中心仙台では土曜日にも雪があり、日本海側や北国の花の売れ行きは悪かった。バレンタインの前後はポカ陽気で、先週はしょうがないと腹をくくっていたが、20日の金曜日から入荷が減って、今日23日に賭けていた産地は多かった。前年よりも少ない入荷が20日、23日と続いているので、水曜日には結婚式需要をテコに相場が2?3割上がっていく予定である。

2?3割というとずいぶん上がっているようだが、2?3割上がるのと下がるのでは大きな違いがある。下がっていくときは高いところから落ちていくわけだから、ガクっと下がっていく。しかし上がっていくときは下から上がっていくわけだから、仮に2割上がっても元の水準には戻らない。よって3割上がってきたときようやく、2割下がった元の水準に近くなって、運賃や諸経費をまかなえて手取りが残るという水準になっていくので、2?3割上がって行くと言っているわけだ。

現在の市況構造はこのようになっている。高品質な花が法人需要が少なくなって次のお客様の大衆の上の人たちに買ってもらっている。価値はあるが、価格が下がったので大衆の上の人たちは、喜んでそれを買っている。そうすると今まで大衆の上が買っていたボリュームの大きい中上の商品は相対的に価値と価格が下がり、大衆でもその下の人たちが十分に買えるようになった。こうやって下落ちしてきて大衆品のかなりの数の花が買ってもらえるお客さんを探して右往左往しているのだ。買い手がなかなか見つからなかったというのが先週16日の週だった。

法人需要と個人需要の違いは販売促進費などの経費で処理できるのか、源泉徴収されたお給料の身銭で買うかの違いだ。この違いは大変大きい。単価にしたら3?4割違って当たり前だ。法人需要が少なくなったから、良いものを扱うところ、高級品を扱うところほど苦労しているわけだ。なぜ単価が安いのか、アフタータックスのお金で個人は買うからだ。安くてよくなければマニア以外の個人は買わない。だから順繰りになって価値の低いものが行き所を失っている。これが1月15日の小正月以降、花き市場で起こっている。残念だが現実だ。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年2月16日

多様性は進化

13日から東京ドームで「世界らん展」が開催されている。これを目当てにタイや台湾から生産者や学者がいらっしゃることが多い。生産者といってもアグリビジネスの社長で、まさにビジネスマンの人たちだ。日本で生産者というと自作農で、そんなに大きな面積ではなく、米と花あるいは野菜など複合経営をしている人たちが多く、農家はまさに生産者として自分の農場のマネジメントを地元の農協に外部委託している人が多いが、海外の生産者は事業家であることが多い。その人たちと今年は為替の話しに終始した。為替を決めるのは政治と経済だから必然、アメリカやEUのそして日本の政治経済の話になる。今まで人件費高に嘆いていた台湾やタイの生産者たちも、経費を抑え、質を高め、日本に今まで以上に出荷していくことを希望していた。

春一番が吹いて、陽気に誘われて都内を散歩すると、思った以上に早咲きの桜が咲いている。関東地方で結婚式の件数ナンバー1が目黒の八芳園だそうだが、そこの庭にもすばらしい桜がある。大田市場の花き部でも河津桜はいよいよ見ごろを迎えた。今まで2月に入ると花桃の販売に集中していたせいか、早咲きの桜に無頓着であったが、こうして見ると結構あるものだ。

昨日房総半島の花の産地を駆け足で見てまわった。ここにも桜は至るところにあった。房総市丸山の石堂寺では梅が見ごろを迎えていて、その香りに魅了された。梅でも数がまとまると、ほのかな香りも濃くなって、梅の香りはこういうものであったかと思い出させる。観光地となった花摘みの房州白浜から千倉、和田にかけては、かつて市場出荷をしていた人が、「花狩り」とも言っているらしいが花摘みで身を立てている。房州をまわって花と野菜の直売所と葬儀のセレモニーホールが随分と増えたように思う。市場出荷の産地としては、若年がはりきっている丸山地区を除いて3?5%ずつ毎年落ちるだろう。岩井、富浦や館山は、後継者が比較的多くいる地域だが、学校を卒業して即後継者に入るところは少なく、少し他人の飯を食って、社会・会社とはどういうものであるかを身に付けて戻ってこさせるという花作りが何軒もいる。安房郡の花作りは昔と違って、大変交通便が良くなって、その分経営マインドを持った農家でないとやっていけないと考えているようだ。そう考えさせているのは、アクアラインと館山道の開通だけではなく、南房総市になって地区のことをさらに深く考えるようになり、また農協も鴨川市農協が安房農協になり、安房郡が一農協になっていくことも、逆説的だが農家の経営者としての自立を促しているようだ。「今度息子を連れて行きますからよろしく」とか「市場に何年、オランダの生産者に何年」とか、そのように後継者育成プログラムを相談に来る人も多い。観光農業と東京中央市場に出す農業、そして関東や東北の一定規模の市場に出す農業、直売所や道の駅で販売する農業、花束加工をする農業、花農家としての生き様の多様性を今の房州に見て取れる。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年2月 9日

利益確定から取引先分析をしはじめた花き業界

立春も過ぎ温室の中ははや春で、入荷も少しずつ増えてきた。忙しくさせてもらっているが、売上減で利益減となっている花き業界は法人のお祝いの需要が少なくなり、消費者の節約思考から購買数は変わらないものの買上げ単価が下がっているからしょうがない。そうした状況の中にあって、産地や仲卸は利益確保のため新たな戦略を取ってきた。取引先を「利益を出させていただいている先」と「儲けさせてくれない先」、あるいは「ほとんど赤字に近い先」と、こういった顧客の分析を行い、特に「赤字の先」、「利益をほとんど出させてくれない先」には取引条件の改善交渉をお願いし、どうしても聞き入れてくれない場合には残念だけれど取引をやめる方向に出てきたのだ。

現在の環境下で花が売れていくためには「良いもの安く」、少なくとも「良いものがリーズナブルな価格」でないといけない。これは必要条件で、十分条件は「物語性」がお店やその花、あるいはブーケなどの製品にあるかどうかである。近年、大脳生理学で解明されたところだ。脳が動き、購買につながっていく。そのことを聞いただけでワクワクして買ってしまうのだ。

さて話しを元に戻すと、産地は今まで個別の仕入先や出荷先ごとに収益分析を行なってこなかった。仲卸もその取引先である仕入先・販売先に対して利益分析を行なってこなかった。ところがもうプール計算の名の元のどんぶり勘定ではやっていけなくなったのだ。だからそれを現在行い、産地や仲卸は取引先に改善を求めたり、選択と集中を行なったりしているわけだ。

卸売市場においても平成19年度の社団法人花き卸売市場協会のプロジェクトとして、手数料自由化をどう乗り切るか、一体全体卸売市場業務はどのようなビジネスプロセスで成り立っていて、それらはコストがいくらかかっているのかを東京農大の藤島先生のチームにお願いして、アクティビティー ベイスド コスティングから検証していただいた。いくつかぞっとすることが解かったが、そのうちの一つに同一荷口3個でせり業務やらせり前取引業務がペイする。2個や1個ではペイしない。経費倒れになってしまうのだ。そうするとせりにせよ、せり前取引にせよ、3個以上出荷してもらわなければならないわけだから、現在どの産地がその条件を満たしているかチェックする必要があるし、出荷要請のときに同一荷口3個以上を要望する必要がある。ケース3,000円でこの有様だから、これより安いものとなると同一荷口4個以上、場合によっては5個以上となる。一体全体そういう産地はどれくらいあるだろうか。産地の集出荷場はせりやせり前取引をしないだけで、市場と同じ様に入れて並べ替えて出すのが仕事だ。そうすると農協の共撰の手数料率によるが、9.5?10%の仮に1/3だとしても、同様に同一荷口3個じゃないとコスト倒れになる。

これで分かる通り、スケールメリットが利かない花は集中と選択でスケールメリットを高める必要があるわけだ。もちろん消費者は少量多品目を望んでいることが多い。高く買ってくれれば良いがそういう時代ではない。だから消費者の支持を得られる花やサービスにおいてはスケールメリットを利かす時代に入った。それは「利益は経費である」からである。今あるのは昨日努力したおかげ。今、明日の努力をしていかなければ明日がない。そのためには応分な投資が出来る利益が欠かせないのである。儲からない時代だからこそ、利益が出せる体制づくりを急がなければならない。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年2月 2日

日本の技・第58回関東東海花の展覧会

今年は1月30日(金)?2月1日(日)まで、池袋サンシャインシティで開催された。日本花き卸売市場協会は今年で50年目を迎えるが、それより8年前に既に開催されていた。生産者の技を競うその出来栄えにいつも深い感動を覚える。今年はまわり番で東京都が主催した。だから伊豆諸島や都下の生産者は関東東海の品評会にめがけて、例年の何倍もの力が入っていたように思う。関東東海花の展覧会で農林水産大臣賞の栄誉に浴すと、必ずその地域あげての祝賀会を催す。それほど栄誉ある会である。今年気になったのは、千葉県からの出品が少し少なかったように思う点である。適地である千葉は関東の消費者にとって欠かせない産地である。高速道路網が整備され、地域事情がかなり変わって、後継者難があると聞く。そのような中でも高い生産技術が地域に埋蔵している千葉県にがんばってほしいと思う。

関東東海花の展覧会を見に行った土曜日の夜、テレビのCSで麻生総理のダボス会議での演説を見た。アジアと共に生き、インドまで含めたアジア圏の経済活性化を日本はリーダーシップを取って行なっていく意気込みを述べたステイトメントであった。日本国の総理として誠に時局を得たものであると思った。というのは、1月21日ガイトナー財務長官の指名公聴会がワシントンであり、ガイトナー氏は民主党政権として政府の介入を為替政策の面においても辞さないことを意思表示した。また同様に中国の為替政策を名指しで非難した。アメリカは大きな景気刺激策をこの二年間でとってゆくが、その恩恵を受けるのは中国や日本を中心とした国々であってはならず、いわゆる「ただ乗り論」に警告を発し、内需を引き上げることとそれぞれの域内貿易の活発化をアメリカとして強く要望する態度を示したものであった。ガイトナー氏は、ドル安はエコニューディール政策で必要不可欠としている。中国は早い時期から4兆元(約54兆円)の内需拡大経済政策を国として発表しており、日本も早く有事における経済対策を出す必要があると私は思っていた。それがダボス会議で発表された。進路も内容も正しいものであったので一定に評価できる。そうなると花はドル経済圏の中南米の花も、ユーロ経済圏のオランダやアフリカの花も、ドル経済圏のアジア、オセアニア地域からも、日本には入りやすくなる。国内生産者は競争が激しくなるので、?製品化技術が高いこと、?円安で今まで導入できなかった海外の優良種苗を積極的に導入すること、の2つが必要となる。関東東海花の展覧会の品質レベルが日本と海外産品との棲み分けの鍵になる。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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