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2009年2月 9日

利益確定から取引先分析をしはじめた花き業界

立春も過ぎ温室の中ははや春で、入荷も少しずつ増えてきた。忙しくさせてもらっているが、売上減で利益減となっている花き業界は法人のお祝いの需要が少なくなり、消費者の節約思考から購買数は変わらないものの買上げ単価が下がっているからしょうがない。そうした状況の中にあって、産地や仲卸は利益確保のため新たな戦略を取ってきた。取引先を「利益を出させていただいている先」と「儲けさせてくれない先」、あるいは「ほとんど赤字に近い先」と、こういった顧客の分析を行い、特に「赤字の先」、「利益をほとんど出させてくれない先」には取引条件の改善交渉をお願いし、どうしても聞き入れてくれない場合には残念だけれど取引をやめる方向に出てきたのだ。

現在の環境下で花が売れていくためには「良いもの安く」、少なくとも「良いものがリーズナブルな価格」でないといけない。これは必要条件で、十分条件は「物語性」がお店やその花、あるいはブーケなどの製品にあるかどうかである。近年、大脳生理学で解明されたところだ。脳が動き、購買につながっていく。そのことを聞いただけでワクワクして買ってしまうのだ。

さて話しを元に戻すと、産地は今まで個別の仕入先や出荷先ごとに収益分析を行なってこなかった。仲卸もその取引先である仕入先・販売先に対して利益分析を行なってこなかった。ところがもうプール計算の名の元のどんぶり勘定ではやっていけなくなったのだ。だからそれを現在行い、産地や仲卸は取引先に改善を求めたり、選択と集中を行なったりしているわけだ。

卸売市場においても平成19年度の社団法人花き卸売市場協会のプロジェクトとして、手数料自由化をどう乗り切るか、一体全体卸売市場業務はどのようなビジネスプロセスで成り立っていて、それらはコストがいくらかかっているのかを東京農大の藤島先生のチームにお願いして、アクティビティー ベイスド コスティングから検証していただいた。いくつかぞっとすることが解かったが、そのうちの一つに同一荷口3個でせり業務やらせり前取引業務がペイする。2個や1個ではペイしない。経費倒れになってしまうのだ。そうするとせりにせよ、せり前取引にせよ、3個以上出荷してもらわなければならないわけだから、現在どの産地がその条件を満たしているかチェックする必要があるし、出荷要請のときに同一荷口3個以上を要望する必要がある。ケース3,000円でこの有様だから、これより安いものとなると同一荷口4個以上、場合によっては5個以上となる。一体全体そういう産地はどれくらいあるだろうか。産地の集出荷場はせりやせり前取引をしないだけで、市場と同じ様に入れて並べ替えて出すのが仕事だ。そうすると農協の共撰の手数料率によるが、9.5?10%の仮に1/3だとしても、同様に同一荷口3個じゃないとコスト倒れになる。

これで分かる通り、スケールメリットが利かない花は集中と選択でスケールメリットを高める必要があるわけだ。もちろん消費者は少量多品目を望んでいることが多い。高く買ってくれれば良いがそういう時代ではない。だから消費者の支持を得られる花やサービスにおいてはスケールメリットを利かす時代に入った。それは「利益は経費である」からである。今あるのは昨日努力したおかげ。今、明日の努力をしていかなければ明日がない。そのためには応分な投資が出来る利益が欠かせないのである。儲からない時代だからこそ、利益が出せる体制づくりを急がなければならない。

投稿者 磯村信夫 : 2009年2月 9日 00:00

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