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2009年3月 9日

アジアの花事情

先週、2010年ASEAN統合で花の生産流通の拠点となる中国雲南省の昆明とタイのチェンマイ、バンコクへ今後の東アジアの花き業界を展望する意味で休暇を使って訪問してきた。

1、昆明
雲南省の昆明には相対市場の斗南市場とせり市場の昆明国際花市場の二つがあり、実績はいずれも前年を大きく上回っている。60年ぶりの暖かい冬だった昆明は、切花本数が多く、カーネーション中心の斗南市場は全体で2割増の売上。バラ中心の昆明国際花市場は北京オリンピックの効果もあり5割増となっている。3月の初旬も昆明の花市場の300席は開場前に満員御礼で、物日ではないのに日本の市場の物日のように活気があった。見学者も多く産地ブローカーは自分の荷がいくらで売れるか見に来ており、これが夜9時から始まる市場かと思うほどの熱気であった。オランダの大手生産者のフィンレー(カーネーション)もファンデルベルクローズ(バラ)もようやく軌道に乗り始めている。中国国内はもとより、ASEANからオーストラリア、日本やロシアまで見据えて生産・販売を行おうとしている。ただ昆明の問題点は近頃の異常気象だ。今年は違うが昨年は雪が降ったし、7・8月の天気の悪さは、赤道に近い高地として産地化されようとしている昆明の泣き所になろうとしている。新たな適地を求めて生産地が開発される可能性が高い。ただ昆明にはすでに花き産業を構成する必要な要件を満たすサービスをする業者があり、花き産業のメッカとしての昆明は変わりそうにない。弊社とアルスメール市場は昆明国際花市場の立ち上げに協力してきたが、今度の活況を見て大変うれしく思った。

2、タイ
タイは花の需要が大変しっかりした国だ。タイフードが好きな人は「インド料理と中華料理の良いところを取って独自の味付けにしたから一番美味しいのです」と言う。まんざら嘘でもなさそうだが、インドからの文化的な影響は大変濃いように思う。花の需要は黄色の花を使う神様の花の需要、香りの花とハスを使う仏教の需要、王族への花はバラやランなどを使う。この3つを月最低2回、よく使う人は週1回ずつ花を買って供えている。だからその需要は半端じゃない。それに鉢物や植木が大好きだから、日本の路地裏園芸に負けないくらい植物の鉢が置かれている。昔日本に来た外国人が白山通りの植木屋街を見て日本人の文化性に驚いたように、タイに行くと本当に人間の生活に欠かせないものとして花があることを痛感させられる。花は嗜好品ではなく、精神生活、人の文化生活に欠かせないものなのだ。

チェンマイの花博の跡地はそのままきれいに手が施され、開放されている。このことだけでもメンテナンスコストを考えれば大変なことだが、タイは当然のように公園として残している。オランダのズータメーアも、ハーレムミーアも、また大阪万博花博も中国昆明の花博もいずれも一部を売却したり、不動産宅地にしたりして収益を上げている。そのことは合理的だとも言えるが、しかしチェンマイはそうしないのである。チェンマイの切花市場と鉢物市場を見ると、実績は前年よりも若干良い程度と言うのがこの地域だそうだ。メコン川を使って中国からチェンライへ、チェンライからトラックでチェンマイへ運ばれたバラやカーネーション、鉢物は大変多い。ユリも中国産はなかなか品質が良い。チェンマイの花産業は中国とのFTAの前倒し政策で、かなりのダメージを受けたが、ようやくここのところで落ち着いているようだ。

バンコクはASEANの中で最も新しい植物が集まり取引されるところとして有名だが、今回も仕立を変えたアイディア商品まで含め、いくつかの新商品を見ることが出来た。ASEANの花き業界の中心として力が入っているのはフィロデンドロンとアンス、ヘリコニア、クルクマの類で、今後切花、切葉、鉢物とも多数の新品種が出回ることになる。タイの生産者はASEAN諸国はもちろん、インド、スリランカ、ネパールまで含め、取引のネットワークがある。ただ問題はタイ洋ラン輸出協会のような地元業者の横のつながりがないこと。農協はあるが生産部会活動がされていないこと、すなわち農協活動が未発達であること。東南アジアの国々では街を作るときに中心部に市場を作るところから始めるが、タイは古い市場が中心になっている。そのため新しいタラッドタイはロジスティックを考えて作っていても力不足で、業界全体あるいは国としての花きの位置付けや戦略などを描ける段階ではまだないことが問題である。

日本の強みを中国の昆明に住むアメリカ人とタイのチェンマイに住む日本人と話し合った。あらゆる種類の花があること、そのレベルは高いこと、農家が品種改良するなど世界で最も育種家が多いこと。この3つが日本の圧倒的な強さで競争力だそうだ。海外から当然花は日本に入ってくる。その中で棲み分けていく。どのように日本の消費者に買ってもらうか、あるいはアジアの消費者に買ってもらうか、この強さを武器にどうプロモーションしていくか、どうコストを抑えて生産・出荷・輸出していくかがポイントになる。切花輸出と種苗輸出は日本の成功パターンのはずだ。今後、アジアの花の消費拡大に向け協業していこうと意見の一致を見た。

投稿者 磯村信夫 : 2009年3月 9日 00:00

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