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2009年3月16日

次の局面に入った花き消費

2007年7月、食料品の値上がりやガソリンもリッターあたり140円になって、生活が苦しくなってきた。ボーナスも上がらず主婦は消費を手控え始めた。そこから百貨店協会が発表する婦人服消費がマイナスに転じたのだ。当時、ワンピースが流行り始め、単価が落ちたから私は前年比割れしたと思ったが、そこから明らかに主婦は生活防衛を始めたのだった。今まで花の消費が堅調に伸びているときというのは業務需要が堅調なときだ。百貨店協会の指標で、男性衣料が売れているときは花も絶好調だ。

現在の花の消費構造は、法人需要が低調だから法人需要の多い三大都市圏は最も打撃を受けている。失われた10年の後、日本のグローバリゼーション対応とは会計やコンプライアンスをアメリカ基準にすることだけでなく、輸出企業がアメリカの個人消費を目当てにモノを作り、日本から直接の場合もあろうが、アジア経由でアメリカに買ってもらい、そこから得たお金を三大都市圏中心に分配していた。三大都市圏、とりわけ東京は2002年からの好景気の恩恵を受けてきた。自動車、弱電、金融業、不動産業が活発な地域は少なくとも2007年7月まで、長くて2008年の第1四半期まで景気が良かったわけだ。その間、日本は内需拡大政策を取ってこなかったから、地方は好景気の影響すら受けず、少子高齢化でちっとも景気が良くないと言っていた。だから日本花き市場協会の150社の花の売上は横ばいから微減だったわけである。

当時は日本を三つの地域に分けていた。輸出企業で上場会社の本社がある地域(政令都市)、道州制の中心地で支店経済の地域(札幌、仙台、福岡に代表される地域)、農業と大手企業の工場で成り立っている地域の3つである。

昨年末(2008年11月、12月)は、派遣切りなどで工場経済の地域に不安が広がり、花の売れ行きが鈍った。本年に入り、1月15日過ぎ、グローバリゼーション企業による相次ぐリストラ政策が発表され、支店経済、本社が多い政令都市のいずれもが世界恐慌に類する100年に一度の不況を認識し、花の単価は史上最低の記録を更新した。生産者から小売店までため息をつく日々が続いた。しかし3月に入り、今相場を引っ張っているのはついこの間好景気の恩恵を受けなかった地方である。私の実感として、地方にうかがうと東京ほどの落ち込みはない。そのことを地元の方にお話しすると「最初から景気が良くなかったから、もちろん悪くなっていますがあまり変わりません」というのが実感だそうだ。ここが3月の花の消費を引っ張っている。もちろん花は三気商売で天気・景気・やる気である。暖冬で今年は東北・北海道地域は道路に雪がなく、3月にお墓参りをするなど花の需要が喚起されているが、しかしもっと大切なのは心理的な影響だ。日本は世界第2位の経済大国として内需拡大を目指さなければならない。もったいない精神でムダはいけないが、環境問題を考えた消費をすることや人間として生まれたからにはオシャレを楽しんだり、花のある生活をしたり、豊かな居住空間を手に入れるなど、たくさんのなすべきことがある。2005年、アメリカの家計はカードやローンを使って15%借金をしてまで消費をしつづけた。これでは破産してしまうから、当然リバランスしなければならない。日本は所得が上がらないから貯蓄の取り崩しもあるだろうが、マンションは年収の5倍と言っている。これはおかしい。EUやアメリカと同様年収の3倍で人心地ついた住宅が供給できなければならない。いくつか抜本的な政策を施し、内需による経済発展ができなければならない。そちらを向いた政策変更の時期となっている今、地方の暮らし向きが元気なうちに、21世紀の日本はこうあるべきという抜本的な経済政策を練り上げ、さらに内需を活発化させる施策を取るべきであると日本は政府に期待したい。

投稿者 磯村信夫 : 2009年3月16日 00:00

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