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2009年5月25日

魅力ある花の小売店の品揃え

急激に需要の落ち込んだ高額商品である住宅、自動車、大型テレビも各国政府の経済政策によって最悪期を脱したかのような消費マインドが一方にある。一方には、昨年の10月から続く営業不振で、雇用情勢は更に厳しくなり、7月ボーナスが払えないと思い悩んでいる中小企業が大変多いと言われていて、景気は先2年間、最悪の状況が続くと考えている人が多い。昨年、自動車の販売が急速に落ち込んだとき、トヨタは部長職以上の社員に車の買い替えを促した。その後、パナソニックも役職者に10万円以上の自社製品を買うように言った。花もご他聞にもれず、昨年は10%減、また今年もそのような有様だから、これをどうするか花の消費活動について同業者組合でも社内でも話し合ってきた。消費宣伝は欠かせないが、やっぱり大切なのは自ら花を買い、家庭に花を飾る。「まず隗より始めよ」をやることであろう。トヨタやパナソニックのように買おう。今まで以上に自社と取引のある小売店の店頭で花を買うことにした。少なくとも私はそのように家内に命じ、した。正直言って、「これっぽっちでこの値段か」と当初は思っていたが、そのうち小売価格にも慣れてきた。

しかし困るのは、困るというより不満なのが品揃えだ。花の種類もそうだが、枝物や葉物は圧倒的に足りない。レモンリーフや利休草ばかりでは、そのうち飽きる。とあるホームセンターの花売場はプロのフラワーデザイナーが好んで買いに行くほどの店で、関東ナンバー1の花売場ではないかと言われている。そこまで行かずとも、その時期に最もおすすめできる花を各種週代わりで置いてほしいのだ。そのためにはせりで仕入れをするだけでは無理だ。店の大きさにもよるが、せり+仲卸。これで品揃えをしてもらいたい。仲卸からなら1把から仕入れできるので、走りのものも、旬のものも品揃えができる。地域によって、売れ筋が異なるのは花の小売店だ。また業態によっても品揃えは異なる。となると、ホームユースのものであっても、仕入れソースは卸+仲卸。とりわけ、自分の店を魅力的にしてくれる仲卸の力に頼るべきだろうと思う。卸はリテールサポートにおいて仲卸より劣る。ロットは卸だが、きめの細かいのは仲卸なのである。卸、仲卸を併用している小売店が今最も魅力度が高い小売店である。多彩は仲卸を利用する中に生まれる。その意味で直接取引は荷が偏り、値段はともかく品揃えで競争力を失う。なにやら地域に根ざしたスーパーマーケットの競争力がGMSより高いのと同じ理由になってしまったが、小売店に仲卸をもっと使うように声を大にして言いたい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年5月18日

2008年度決算概要

ここのところで株主総会があり、地方市場や仲卸の決算を見ることがよくある。幸いなことに、私のよく知る会社はわずかでも黒字決算で終わったが、配当までは覚束ないというところも中にはある。営業利益率で1%確保できなかったところがほとんどで、卸売市場にあっては需要減で単価安。業績不振のスピードが速く、経費削減策が後手にまわってしまったことによる営業利益減である。仲卸は仕入れて売る再販業者だから、卸売市場よりもこのような縮小均衡とデフレの中では経営がしやすい。人気のものなら多少高くても仕入れれば不良在庫にならない。欲を出しすぎると廃棄ロスが出て収益を圧迫する。卸の場合は収入が相場で変動する。経費は固定費がほとんどだ。仲卸は、経費は固定費がほとんどだが、仕入れ費用は相場によって変動するが、売価の変動幅は仕入れの変動幅より少なくさせることができる。そこで利益が出しやすい。小売商の場合は売価は定価がほとんどだから、仕入れ経費が変動するだけだ。その仕入れ経費の変動も大体がデフレ基調だから安くなる。店売りが落ち込んだとすると仕入数量を減らす。皆が減らそうとするから荷が余り、今までよりも仕入単価が下がる。こうやって小売商は苦しい中でも利益を確実に確保した。スクールをやっている花屋さんや花束加工業者も「荷主さんは大変だろうな」といいながら利益を出している。2008年度決算は種苗、生産、市場と川上が大変悪く、仲卸から下流の川下は今までと同じ運営はできないが、生き残っていける決算であった。今後経費を削減する、売り上げを伸ばす、需要に合わせて経費を弾力的に減らしたり増やしたりする。この3つしか利益を出す方法はない。今年、来年は少なくとも、人によっては再来年まで困難な状況が続くとしているので、どのようにその時々の状況に対処していくか、この三つの手法を使って、泳ぎきっていくことが必要だ。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年5月11日

2009年母の日

土日と暑かったがお天気にも恵まれ、小売店は「高額商品が売れにくかった」「カーネーションが売れ残った」などの傾向もあったが、まあまあというところが多い。まあまあというのは前年をクリアしたところもあり、悪いといえども2割以上悪かったところはあまりない。しかし、みどりの日から母の日に至るまでの荷動きでは、雨で売り損なったとする小売店がほとんどだ。雨で売り損なったと感じるのは、5月6日(水)から8日(金)まで、日本の花の相場を決める三大都市圏がいずれも強い雨続きだったことによる。小売店は雨の中でも週末の母の日、お天気が良かったのでほっと一息というところであろうが、生産者と卸・仲卸は安値に泣いた。

その原因を探ると、第一に雨が計4日も続いたこと。2番目に景気が悪くデフレになっていること。3番目に国産のカーネーションも多いのに、3月のお彼岸で売り損なったと感じている輸入商がコロンビア産や中国産をこれでもかと輸入して溢れたこと。4番目にJFTDやフラワーシップなどが商品の絞込みを行い、それに取り上げられなかった花が多くあって価格が下落したことであった。日本国内でカーネーションを作り始めて100年目で、今年は業界をあげてもう一度カーネーションを売ろうと意気込んでいたが、雨で園芸品や切花の商品回転率が下がり、推定1日半の在庫が滞留する形になって母の日用は切花の輸入カーネーションを中心に市況は下がった。

今日から初夏の商いとなる。花保ちや減農薬栽培など、時代にあった価値を前面に出しながら、新規性の高い花でこの不況を吹き飛ばしたい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年5月 4日

2つのポケット

決算書が出来上がってきて銀行に見せると、「このままでは融資を継続できません」と昨年より一段と厳しい査定をされていると小売店が言う。プロパーの融資が難しくなって、保証協会付きじゃないと難しいと言う。この話を仲卸にすると、仲卸でも同様の答えが返ってきた。

会社にとって資金調達は方法が二つある。一つは世界では一般に商業銀行と言われている普通の銀行からお金を借りる。もう一つは社債を発行したり増資をしたりして、市中などから資金を集める。投資銀行と言われている証券会社を通じて広く市場から資金を集める。この二番目のやり方がリーマンショック以降実際に機能しなくなった。だから財務体質が磐石な大企業も、商業銀行からお金を借りている。そうなると当然、具合があまりよくない中小零細企業にお金を貸す銀行はほとんどなくなるわけだ。年度内に処理すべき減価償却をせず、表面上の黒字確保した会社に対し、出荷者である系統農協は銀行ほど厳しく見なかった。しかし本年、資金上立ち行かないところが出てくると思われる。ようやく黒字を確保しても体裁だけではだめで、合理化をして利益を出すことを忘れてはならない。

今ベストセラーになっているスズキ自動車の鈴木会長の「おれは中小企業のおやじ」の中に、「売上総利益と利益を一緒くたにすな」との話がある。鈴木会長が八百屋さんから聞いてそれを参考に考えたという。2つポケットの付いた前掛けをして商売をする。最初は左のポケットにお金を入れ、売って売って仕入代金の金額に達したら今度は右のポケットにお金を入れる。右のポケットだって純利益ではないが、しかしこの右のポケットからスズキは新しい投資をするということだ。ここを読んでいて、昔ヨークベニマルのまだ本当に立派なスーパーになる前、商売の仕組みを見たくて、郡山に見に行ったことを思い出した。売り場にはザルがいくつもぶら下がっていて、係の人が一定時間毎に売上代金を回収する。午後3時過ぎだったと思うが、回収してしばらくしてから学校の用務員さんが使うような鐘を責任者が鳴らす。それは「ネタ代が上がった。これから儲けだ。俺たちの給料や経費がここから支払われる。まだ荷は十分ある。やってやろうじゃないか。売れー」この鐘だった。とても活気があって、商売そのものを見ている感じだった。商売とはまさにそういうこと。ヨークベニマルはこうやって店長が勤まる多数の人たちが育っていった。ごっこではなくまさに自分で責任を持ってことにあたる。会社を経営できる人たちがここから育っていく。花き業界は甘い人たちが多い。今まで良かったからだ。だからここで仕事ごっこはやめて、真の仕事をすべき時が来ている。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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